宅建主任者は、宅地建物取引士に変更
宅建主任者は2015年4月から「宅地建物取引士」に名称変更されました。主な変更点は以下の通りです。
- 正式名称が「宅地建物取引主任者」から「宅地建物取引士」に変更された
- 士業化されたことで、信用失墜行為の禁止、知識及び能力の維持向上などが宅建士の業務処理の原則として新たに定められた
- 宅建業者に対して、従業員の教育が業務処理の原則として追加された
- 宅建士や宅建業の免許取得の欠格事由として「暴力団員等」が追加された
ただし、以下の点に変更はありませんでした。
- 宅建業者は事務所ごとに、業務に従事する者5人に1人の割合で、専任の宅建士を設置する義務がある
- 宅建士試験の難易度や合格率に大きな変化はない
- 宅建士の業務内容や役割に実質的な変更点はない
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つまり、名称が変更されて士業化されたものの、宅建士資格の位置づけや重要性に大きな変化はないと言えます。宅建業者にとって必須の国家資格であり、不動産取引の専門家として重要な役割を担い続けています。
宅建主任者の名称が変更になった理由は?
宅地建物取引主任者から宅地建物取引士への名称変更には、以下のような理由があったようです。
士業としての地位向上
宅建業界から、「主任者」よりも「士」の方が専門家としてふさわしいとの要望があり、弁護士や税理士などの他の士業と同等の地位を目指して名称変更が行われました。
業務の適正化と信頼向上
改正宅建業法では、宅建士の業務処理の原則として公正誠実な業務執行や信用失墜行為の禁止などが明文化されました。名称変更と合わせ、宅建士の業務の適正化と信頼向上を図る狙いがあったとみられます。
具体的な信用失墜行為とは以下の通り。
- 顧客や取引の相手方に対して、横暴な態度をとったり、虚偽の説明をすること
- 物件の瑕疵や瑕疵の可能性について、買主に告げないこと
- 売主の了解なく、預かった物件の鍵を不特定多数の人が見つけられる場所に置くこと
- 物件情報の囲い込み
- 宅建試験でのカンニングや替え玉受験などの不正行為
- 原野商法における名義貸し
重要なのは、宅建士の職務として行われるものだけでなく、職務に直接関係しない行為や私的な行為であっても、信用失墜行為に該当する点です。
従業者の資質向上
宅建業者に対し、宅建士だけでなく一般従業者への教育義務も新たに課されました。業界全体の従事者の資質向上を後押しする意図があったと考えられます。
以上のように、単なる名称変更だけでなく、宅建士の地位向上と宅建業界全体の信頼向上を目指した法改正の一環として、「宅地建物取引士」への改称が行われたのだと言えるでしょう。ただし法改正の実効性を高めるには、今後も宅建士の研鑽と宅建業者の取り組みが求められると思われます。
信用失墜行為を行った場合のペナルティは?
宅建士が信用失墜行為をした場合、直接的な罰則規定はありませんが、以下のような不利益処分の対象となる可能性があります。
- 指示処分 宅建士の事務に関し不正または不当な行為をした場合、都道府県知事から必要な指示を受ける可能性がある。
- 事務禁止処分 指示処分に違反した場合や、宅建士の事務に関し著しく不正・不当な行為をした場合、一定期間の事務禁止処分を受ける可能性がある。
- 登録消除処分 事務禁止処分に該当する行為で情状が特に重い場合、宅建士登録が消除される可能性がある。
- 宅建業者への処分 宅建士の信用失墜行為が宅建業者の監督責任に関わる場合、宅建業者が業務停止や免許取消等の処分を受ける可能性もある。
以上のように、信用失墜行為をした宅建士は直接の罰則はないものの、都道府県知事による行政処分の対象となったり、所属する宅建業者への処分に繋がったりする可能性があるため、宅建士法第15条の2で禁止されているのだと考えられます。