宅建の過去問解説

宅建の過去問が全然解けない

宅建の試験て、どんなもんかな~、と当時、令和2年の宅建試験の第一問を見てみたときのこと。

で、正解は3だそうです。えー、3は書いてある内容が誤りで、「誤りのあるものを答えろ」なので、3が正解です。ややこしい。

でも、3が正解である理由もなにもわからないです…。

宅建の過去問のわからない点を分解

理解できる気がしない

当時のわたしは、1から10までなんっにも!カケラも!わかりませんでした。何がわからないの?と聞かれたら、何もかもがわからない!というレベル。

でも、いちおう問題文は読めるよね?と聞かれたら、「それは読めるけど」。そこで、何がわからないのかを整理していくことにしました。

「不法行為(令和2年4月1日以降に行われたもの)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば誤っているものはどれか」

分解するとこう。

    • 不法行為に関する問題。

    • 4つのうち誤ってるものを選ぶ。

    • 誤ってるかどうかは、民法の規定と判例で判定する。

で、1,2,4は「正しい」で、3は「間違い」ということ。じゃあ、3のどこが間違いかを見ていきましょう。

列車事故

「責任能力がない認知症患者が線路内に立ち入り、列車に衝突して旅客鉄道事業者に損害を与えた場合、当該責任無能力者と同居する配偶者は、法定の監督義務者として損害賠償責任を負う」

んー、それっぽいキーワード「責任無能力者 監督義務者 損害賠償」で検索したところ、民法714条がヒット。

第714条【責任無能力者の監督義務者等の責任】

1 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

あー、監督義務者が損害賠償を負うのは正しいっぽいですね。

では、「責任無能力者と同居する配偶者」は、「法定の監督義務者」なのかどうか。

平成19年のJR東海での事故事例がありました。

JR東海(原告)の駅構内の線路に,高齢(当時91歳)で認知症患者の男性Aが立ち入り列車に衝突して死亡した事故(平成19年12月7日発生)に関して,原告が列車に遅れが生ずるなどして損害を被ったとして,Aの妻及び長男らに対して,振替輸送費等の損害賠償(719万7740円)を求めたもの

引用)最高裁の判決(平成28年3月1日判決)

この判例では、配偶者の妻は体の85歳と高齢で、要介護1の判定を受けていて、左右下肢に麻ひ拘縮があり、「男性AのJRへの加害を防止するために常に監督することが可能であったと言えない」ので、「法定の監督義務者に準ずべき者に当たらない。」となっています。

なるほど。

つまり問題文の「当該責任無能力者と同居する配偶者は、法定の監督義務者として損害賠償責任を負う」の部分は、法定監督義務者に当たらないケースが判例で存在するので、誤りということですね。

まじかよ…「例外がある」ときに、言い切ってしまうものは誤りということになるのか。これは難しいですね…。

1~3も見ていきましょう。

建物の安全性

1は「建物の設計や工事で安全性に関わるミスしちゃった人は、設計や請負契約者、住んでる人にも損害賠償責任を負うことがある」っていことですね。これはまあ、感覚的には「正しい」かな…と予想。

「安全性が欠ける建物 損害賠償責任」で検索すると以下が出てきました。

建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵には、放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる瑕疵も含まれるとされた事例(平成23年7月21日の最高裁判決)

不動産適正取引推進機構の記事

「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵(かし)」があったら、損害賠償責任が生じるってことですね。ちなみに、最高裁前は「わざとじゃないから、無罪!」みたいな判決が出てたみたいです。瑕疵(かし)というのはざっくり言うと、「責任が生じる間違い、ミス」くらいの意味合いかな。

なにこれ、メッチャ勉強になるじゃん。

宅建の勉強は、特徴的なキーワードを探して検索して、該当する判例を探し当てればとりあえず解けるような気がしてきました。

次行ってみましょう。2番。

トラック事故の賠償

これは、問題文からはわかりませんけど、調べていくとトラック会社の事故の賠償の問題でした。

「被用者が…」なんだ被用者って。雇用されてる人ってことかな…「被用者とはサラリーマンなどで本人が全国健康保険協会や健康保険組合などの社会保険被保険者である人など」のこともあるけど、この問題では「雇用されてる人」って意味で使われてるっぽいです。

んー、それでも2番の言ってる内容がわからない。

「被用者 損害の公平な分担 求償」で検索。福山通運の裁判がヒット。

被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え,その損害を賠償した場合には,被用者は,諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について,使用者に対して求償することができる。令和2年2月28日

ひめじ市民法律事務所

読んでみたけど、まあ難しい。

トラックの運転手が事故を起こして訴訟され、支払った額を会社に請求できるのか?というようなことらしい。

「相当と認められる額」はケースバイケースなんだろうけど、まあ普通に請求可でしょう。でも最高裁以前の原審では「訴えられたのはトラックの運転手なんだから、会社は払わなくていいよ」みたいな判決だったっぽい。ひでぇ。

判例までさかのぼって調べると、ドラマが感じられますね…。

最後、4行きましょう。

加害者の時効

「人間の命や体を害する不法行為は、加害者を知ったときから5年放置すると時効になって損害賠償できなくなる」というような内容。

いやいや、5年って短すぎない?これ正しいの?

「人の生命又は体を害する不方向 損害賠償請求権 時効」で検索。

改正民法第724条の2

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。

2020年4月1日施行

不法行為に基づく損害賠償請求権の時効期間 – 小西法律事務所

もともと3年だったけど、5年に長くなったんだ…。でも、同時に「除斥期間(じょせききかん)」ていうのが廃止されてました。除斥期間というのは、加害のときから20年経ったら、問答無用で時効になっていたというもの。20年逃げ切ったら無実になる、というものだったんですね。

それが「加害者を知ってから5年」になったので、30年間逃げていても、加害者がわかった時点で損害賠償責任が問えるということみたいです。

なお「加害者を知った」というのは、加害者の氏名と住所が判明したということを指しているそうで、事実上、書面で損害賠償請求が出来る状態じゃないと「知った」ということにはならないっぽいですね。

以上、1問の4択を調べるのに約1時間半かかりました。

1試験分が50問で、6年分くらい過去問やるとしたら、300問で、450時間か…。重複問題もあるだろうから、やっぱり300時間~400時間くらいは勉強が必要になりそうですね。

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