相続した不動産の賃貸債権/令和5年の宅建解答解説

宅建の過去問解説

相続した不動産の賃貸債権

令和5年の宅建問題を解説。

【問  1 】 次の 1 から 4 までの記述のうち、民法の規定、判例及び下記判決文によれば、
誤っているものはどれか。
(判決文)
遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。

  1. 遺産である不動産から、相続開始から遺産分割までの間に生じた賃料債権は、遺産である不動産が遺産分割によって複数の相続人のうちの一人に帰属することとなった場合、当該不動産が帰属することになった相続人が相続開始時にさかのぼって取得する。
  2. 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属し、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
  3. 遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼって生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
  4. 遺産である不動産が遺産分割によって複数の相続人のうちの一人に帰属することとなった場合、当該不動産から遺産分割後に生じた賃料債権は、遺産分割によって当該不動産が帰属した相続人が取得する。
解答

判例及び判決文の内容から考えると、1が誤りです。

理由は以下の通りです。

相続人が複数いる場合、相続財産は共同相続人の共有に属し、各共同相続人はその相続分に応じて被相続人の権利義務を承継するとされています(民法898条)。これは正しい記述です。

遺産分割の効力は相続開始時にさかのぼるとされていますが、第三者の権利を害することはできないとされています(民法909条)。これも正しい記述です。

判決文にあるように、遺産分割後に特定の不動産が帰属した相続人が、その後の賃料債権を取得するのは当然です。これも正しい記述といえます。

しかし、判決文では、「相続開始から遺産分割までの間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するもの」とされています。

つまり、相続開始から遺産分割までの賃料債権は、遺産分割の結果にかかわらず、各相続人が法定相続分に応じて確定的に取得するのであって、遺産分割によって不動産を取得した相続人に遡って帰属するわけではありません。

したがって、1の記述は判例の立場に反しており、誤りであるといえます。

以上より、1が誤った記述であり、2、3、4は正しい記述といえます。

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遺産分割後、賃料債権はどのように分割されるのか

相続開始から遺産分割が成立するまでの間の賃料の帰属について、もう少しわかりやすく説明しますね。

相続開始から遺産分割までの賃料

相続が開始してから遺産分割が成立するまでの間に発生した賃料は、遺産とは別の財産とみなされます
この期間の賃料は、各相続人が法定相続分に応じて分割して取得します。

例えば、相続人が配偶者と子供2人の場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子供が4分の1ずつなので、その割合で賃料を分けることになります。

後に遺産分割で不動産の帰属が決まっても、それまでに取得した賃料の帰属には影響しません。

遺産分割成立後の賃料

遺産分割が成立して、その不動産を取得した相続人が、以後の賃料を取得することになります。

遺産分割の効果は相続開始時に遡りますが、遺産分割前に他の相続人が取得した賃料を取り戻すことはできません

つまり、相続開始から遺産分割までの賃料は、遺産分割の結果にかかわらず各相続人の法定相続分で分割します。

そして、遺産分割成立後は、不動産を取得した相続人がその後の賃料を取得するということになります。

相続人間のトラブルを避けるためにも、遺産分割前の賃料の取扱いは、事前にしっかり話し合っておくことが大切ですね。

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