インスペクション 宅建業法 義務
インスペクション 義務化の誤解と宅建業法
インスペクション(建物状況調査)が「義務化された」と言われがちですが、宅建業法のポイントは“必ず調査をやれ”ではなく、“取引の節目で説明・記載をせよ”にあります。国土交通省のQ&Aでも、既存住宅売買で建物状況調査を必ず実施しなければならないものではない、と整理されています。
つまり、現場のリスクは「実施しないこと」よりも、「必要な説明・記載が欠けること」です。 ここを誤ると、買主・借主の期待形成がズレ、引渡し後のクレームが“説明不足”として再燃しやすくなります。
では宅建業者が負う“義務”はどこにあるのか。国交省資料では、媒介契約(34条の2)で「あっせんに関する事項」を書面に記載し交付する流れが示されています。 また、重要事項説明(35条)では「結果の概要」や「書類の保存状況」を説明する設計が制度の中心に置かれています。
参考)https://ph.pollub.pl/index.php/bia/article/download/457/384
要するに、義務対応の本体は「書面の整備」と「説明の筋の通った運用」です。
インスペクション 媒介契約 あっせん可否の告知
媒介契約の段階で重要なのは、「建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項」を媒介契約書面に記載し、依頼者へ交付することです。 ここでいう“あっせん”は、単なる連絡先提示ではなく、見積の伝達など具体的なやりとりが進むよう手配すること、と国交省Q&Aは定義しています。
実務では、依頼者が「紹介された=もうやる流れ」と誤解する一方、業者側は「情報提供したから足りる」と思い込むズレが起きます。 まず“あっせん”の定義を社内で統一し、媒介契約書面の「有・無」を形だけで終わらせない運用にすることが肝です。
また、あっせんの“義務”を運用するコツは、可否だけでなく次の要素を同時に説明することです。国交省Q&Aでは、あっせんを受けても実施するかどうかは費用・内容の説明を受けた上で決められる、とされています。
そこで媒介契約時点から、依頼者の心理的負担を下げる説明テンプレを用意します。例えば、以下のように「義務」「任意」「選択肢」を一枚にまとめると、後工程の炎上(“聞いてない”)を抑えやすいです。
・📌説明で入れておくと強い一言(例)
・「調査を“必ず実施”する制度ではなく、希望に応じて実施できる制度です」
・「ただし、実施した場合は結果概要が重要事項説明で扱われます」
・「買主側が実施したい場合、売主の承諾が必要です」
インスペクション 重要事項説明 実施有無 結果概要 書類保存
重要事項説明では、建物状況調査(インスペクション)の「結果の概要」と「書類の保存の状況」が中核です。 結果概要は、既存住宅状況調査技術者が作成する書面で、部位ごとの劣化事象等の有無が記載され、宅地建物取引士がそれを重要事項として説明する建付けです。
ここで重要なのは、調査報告書を“全文読み上げる”ことではなく、結果概要に基づいて取引判断に必要なポイントが伝わる説明を組み立てることです。 購入希望者等から詳細説明を求められた場合、売主等を通じて調査実施者へ連絡し調整するのが望ましい、と国交省Q&Aは示しています。
次に「書類保存」。国交省Q&Aでは、重要事項説明の対象となる書類の考え方として、建築基準法令適合を証明する書類、新耐震適合性を確認できる書類、設計図書類、調査点検の実施報告書類などの類型が示されています。
そして意外に効くのが、“実物確認の要否”です。国交省Q&Aでは、売主に照会し必要に応じて管理組合・管理会社にも問い合わせることで調査義務を果たし、実物を見て有無確認する必要はない、とされています。
つまり、社内のチェックリストは「見た/見てない」より、「誰に照会したか」「回答は何か」「備考にどう残したか」を残す設計にすると、監査・トラブル対応で強くなります。
参考:建物状況調査(インスペクション)と重要事項説明の考え方・Q&A(国交省)
改正宅地建物取引業法に関するQ&A(建物状況調査・重要事項説明・37条書面の実務論点)
インスペクション 37条書面 当事者双方が確認した事項
37条書面では、「当事者の双方が確認した事項」を記載する義務が入り、インスペクションとの接続点になります。 国交省Q&Aでは、当事者は売主・買主であり、専門的な第三者による調査の結果概要が重要事項として説明された上で契約に至った場合が典型として位置づけられています。
ただし重要なのは、当事者双方に“確認義務”があるわけではないことです。国交省Q&Aは、構造耐力上主要な部分等の状況について確認する義務はないが、トラブル防止の観点から確認が望ましい、と整理しています。
また、実務で迷うのが「確認した事項がない場合」です。国交省Q&Aは、確認した事項がない旨を記載して37条書面として交付する、と明示しています。
ここを曖昧にすると、契約後に「確認したことになっていた」「書面に空欄があるのは何を意味するのか」で揉めやすくなります。
さらに“告知書”との関係も盲点です。国交省Q&Aでは、告知書の内容は原則として当事者双方が確認した事項に該当しないが、双方が客観的に確認し価格交渉や免責に反映して契約に至った特別な場合は、37条書面に記載して差し支えない、とされています。
つまり、インスペクション結果概要・告知書・写真など複数資料がある案件ほど、「どれを契約内容として採用したのか」を“当事者の合意として文章化”する設計が、現場の防波堤になります。
インスペクション 独自視点 1年以内 災害 調査できなかった
検索上位の解説で“さらっと流されがち”ですが、実務で効くのは「いつの調査を使うか」「使える形か」「説明の注意点」です。 国交省Q&Aでは、重要事項説明の対象となる建物状況調査は“調査を実施してから1年以内のもの”とされています。
さらに、1年以内の調査が複数ある場合は、現況との乖離が最も小さい直近のものを重説対象としつつ、取引判断に重要な影響を及ぼす別の調査結果を認識しているなら、47条違反にならないよう説明することが適当、という踏み込みがあります。
この視点は、単なる「1年以内」を超えて、“不利益事実の黙秘”を避けるコンプライアンス設計に直結します。
次に、災害が挟まったケース。国交省Q&Aは、調査実施後に大規模な自然災害が発生した場合でも、その調査を重要事項説明の対象とし、併せて災害発生の事実も説明することが望ましい、としています。
現場では「災害後だから調査は無意味」と切り捨てるか、「再調査しないと説明できない」と硬直するかに振れがちですが、制度の趣旨は“情報の不確実性も含めて伝える”にあります。
そして、地味にトラブルが多いのが「調査できなかった」の扱いです。国交省Q&Aは、点検口がない・家具で見えない等で調査できない場合、結果概要・報告書に「調査できなかった」と記載される、としています。
この一文があると買主は「リスクが隠れているのでは」と感じやすいので、宅建士は“未確認=欠陥”と短絡させない説明を準備しておくべきです。 例えば、次のような説明が実務では効果的です(意味のない水増しではなく、判断材料を増やす説明)。
・🧠説明の型(例)
・「調査は原則、目視・計測等の非破壊で実施されます」
・「点検口がない等で非破壊では確認できない部位は“調査できなかった”となります」
・「必要なら売主承諾の上で追加調査や点検口設置等も検討できます」
参考:制度化の背景(インスペクションの位置づけ・条文の方向性)

