両手取引と媒介と宅建業法の囲い込み

両手取引と媒介と宅建業法

両手取引×媒介×宅建業法:実務で揉めない要点
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両手取引は直ちに違法ではない

ただし「囲い込み」やレインズ虚偽登録など、宅建業法・施行規則の別論点で処分対象になり得ます。

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媒介契約の運用が最大のリスク源

専任・専属専任ではレインズ登録と取引状況(ステータス)管理が重要で、説明と記録が弱いと紛争化します。

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独自視点:両手は「情報管理」業

利益相反の疑念を抑える鍵は、紹介制限の基準・問合せ対応ログ・ステータス根拠を設計して“疑われない運用”にすることです。

両手取引の媒介と宅建業法の基本整理

両手取引(両手媒介)とは、同一の不動産取引で、宅建業者が売主・買主の双方から媒介(仲介)を受託して成約させる形を指します。

この形自体は「直ちに違法」と断定されるものではなく、売主と買主の間を取り持ち契約成立へ調整する仕組みとして現実に広く使われています。

一方で、両手を狙う過程で、他社からの客付けを不当に排除する「囲い込み」や、レインズ上の取引状況の不適切な扱いが入ると、両手取引ではなく別の法令・運用ルールの問題としてリスクが顕在化します。

両手取引が批判されやすい背景は「中立性」の疑念で、売主の高値希望と買主の値引き希望が正面衝突する以上、どちらにも“自社の手数料最大化を優先していないか”と見られやすい点にあります。

参考)両手取引

したがって、実務では「両手か片手か」ではなく、媒介としての説明・記録・情報開示の設計が勝負になります。

参考)https://ijersc.org/index.php/go/article/download/445/453

両手取引の媒介契約(専任・専属専任)とレインズ運用

囲い込みが成立しやすい典型ルートは、売主側の媒介(特に専任媒介・専属専任媒介)を握ったうえで、情報や取引状況の扱いを理由に他社の問合せを遮断し、時間を稼いで自社で買主を見つける、という流れです。

専任媒介・専属専任媒介を締結した場合、宅建業者はレインズ(指定流通機構)に物件情報を登録する義務がある、という前提を外すと一気に宅建業法違反になり得ます。

さらに近年の改正では、レインズ上で“取引の申込み受付に関する状況”も登録対象に含める整理が進み、虚偽の取引状況(ステータス)登録が問題化しやすくなっています。

現場で起きがちな事故は、「公開中」なのに電話に出ない等の“運用”で実質ブロックするケースと、「申込みあり」「紹介停止」等を根拠薄く入れてしまう“入力”のケースの二系統です。jurnal.unpad+1​

前者は処分リスクの立証が難しい一方、後者は事実と異なる登録として問題になりやすく、社内統制(誰が・何を根拠に・いつ変更したか)が弱い会社ほど危険です。jurnal.unpad+1​

参考:囲い込みの定義、レインズ登録義務とステータス虚偽の論点(媒介契約運用の注意点)

不動産取引における「囲い込み」の規制について | スプリング法律事務所 - SPRING PARTNERS
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両手取引の媒介報酬(仲介手数料)と宅建業法の誤解ポイント

両手取引が増えがちな最大の動機は、売主側・買主側の双方から報酬(仲介手数料)を受領でき、片手より収益機会が大きい点です。

実務での説明としては、「一方当事者からの報酬限度額」を前提にしつつ、両当事者と媒介契約を結んだ場合は“合計として2倍まで”受け取り得る、という整理が基本線になります。

この“2倍まで”がひとり歩きして、「両手=取り放題」あるいは逆に「両手=全面禁止」といった極端な社内トークになりやすいので、報酬はあくまで契約と上限制の枠内で決まる、という当たり前を丁寧に言語化するのが安全です。

意外に見落とされるのは、売主・買主の双方と媒介契約を結んでいないのに、現場の空気として“両手を狙っている扱い”になってしまい、説明義務や苦情対応だけが重くなるパターンです。

両手にするかどうかを「結果論」にしないためにも、いつどの時点で双方から正式受託したのか(媒介契約書・依頼者への説明・重要事項説明との整合)を事後に追える状態にしておくと揉めにくくなります。

参考)https://jurnal.fh.unpad.ac.id/index.php/jphp/article/download/1362/619

両手取引の媒介と宅建業法上の囲い込み(虚偽登録・指示処分)

囲い込みは、両手仲介(両手取引)を目的に、物件情報を開示しなかったり、虚偽情報を公開して他社の申込みを妨げる行為として説明されます。

とくに「レインズの取引状況の虚偽登録」を処分対象として明確に位置づける方向が示され、事実と異なる登録内容は指示処分の対象になり得る点が実務上重要です。

この枠組みは、“囲い込みを完全に消す”というよりも、「入力として嘘を付く」「証拠が残る形で遮断する」行為をやりにくくする設計なので、現場ではステータス変更の根拠資料(申込書面、売主指示、紹介停止理由)の保全が効きます。

また、囲い込みには「①そもそも物件情報をレインズ等に出さない」「②出しているが取引状況などを偽る」といった複数パターンがある、という整理は社内研修で特に使いやすい分類です。

この分類を使うと、営業管理職は“注意すべき行動”を具体的に指示でき、担当者も「何がアウトになり得るか」を日報・ログに落とし込めます。

参考:施行規則改正と囲い込み(虚偽登録、是正指示〜処分の考え方)

2025年から適用が始まった宅建業法施行規則の改正は“囲い込み”抑止に有効?
2025年から施行された改正宅建業法施行規則は、不動産流通を阻害する「囲い込み」の抑止に有効でしょうか?物件情報の虚偽登録などに対する行政処分が明確化されたものの、情報のステータスを偽る行為など、囲い込みの2パターンについて、改正後の実効性...

両手取引の媒介を宅建業法リスクから守る独自視点:ログ設計と説明台本

検索上位の解説は「両手は違法か」「囲い込みは悪」になりがちですが、実務の炎上は“やったかやってないか”以前に「説明できない」「記録がない」ことで起きやすいのが現実です。

そこで独自視点として、両手取引を“情報管理の業務”と再定義し、疑われないためのログ設計を先に作る方法が有効です。

例えば次の3点をテンプレ化すると、売主・買主・他社仲介からのクレーム耐性が上がります。

  • 問合せ対応ログ:他社からの内見打診・資料請求・申込み意思表示に対し、「受領時刻」「折返し予定」「回答内容」「回答根拠」を1件1行で残す。​
  • ステータス変更ログ:レインズの取引状況を変えるときに「変更前→変更後」「変更者」「根拠書面(申込書、売主指示)」を紐づける。​
  • 説明台本:売主には「レインズ登録証明書の確認」「ステータスで最新状況が確認できる」旨を噛み砕いて説明し、どの資料を渡したかチェック欄を作る。​

この運用の良いところは、担当者の善意・経験に依存せず、繁忙期でも最低限の証跡が残る点です。

結果として、両手取引そのものを“しない”よりも現実的に、両手取引を“しても疑念を招かない”状態へ近づけられ、会社の免許リスク・ブランド毀損リスクを下げやすくなります。jurnal.unpad+1​

論点 危険な状態 安全に寄せる実務
レインズ登録 登録遅延・未登録で進める(情報秘匿) 登録期限管理+登録証明書の交付・説明をセット運用
取引状況(ステータス) 「申込みあり」等を根拠なく入れる(虚偽登録) 申込書面・売主指示を根拠に変更、変更ログを残す
他社対応 理由を付けて折返さず“実質ブロック” 問合せログ(受領→回答→根拠)で再現可能にする