個人情報保護法 宅建業者 義務
個人情報保護法 宅建業者 義務 利用目的の特定と明示
宅建業の実務で最初に崩れやすいのが「利用目的の特定」です。国土交通省は、不動産流通業は氏名・住所だけでなく物件情報や成約情報など多様な個人情報を扱い、第三者提供が仕事の重要な内容という特色があると整理しています。したがって、申込書・媒介契約書・Web問い合わせフォームなど、入口ごとに利用目的の書き方が統一されていないと、後工程(広告、紹介、審査、管理)で“目的外利用”の疑いが生まれやすくなります。
実務では「契約締結のため」「連絡のため」といった抽象表現だけで済ませると、社内の説明ができず、現場が“結局どこまで使っていいか”判断不能になります。利用目的は、少なくとも「物件提案・内見手配」「申込受付・入居審査(保証会社/管理会社への提供を含むか)」「契約手続」「入居後管理(修繕、更新、解約)」「成約情報の統計・業務改善」など、工程単位で分けるとブレが減ります。国交省の整理が示す通り、不動産流通では提供・広告が業務に含まれるため、広告や紹介の文脈も利用目的に織り込む設計が重要です。
参考)建設産業・不動産業:不動産流通業における個人情報保護法の適用…
また、宅建業法の「秘密を守る義務」と、個人情報保護法の枠組みは別物です。全日本不動産協会の解説でも、宅建業者は宅建業法上の秘密保持に加えて個人情報保護法も遵守すべき旨が示されています。守秘義務があるからといって、利用目的や第三者提供ルールが免除されるわけではありません。
参考)宅建業法上の秘密を守る義務 – 公益社団法人 全日本不動産協…
参考:不動産流通業の特性(第三者提供が業務に含まれる)と、ガイドライン改正経緯の前提
建設産業・不動産業:不動産流通業における個人情報保護法の適用…
個人情報保護法 宅建業者 義務 安全管理措置と従業者監督
宅建業者の義務は「書類に同意文言を入れる」だけでは終わりません。個人情報保護法では、個人情報取扱事業者に対し、個人データの漏えい等を防止するための必要かつ適切な安全管理措置を講じる義務があるとされ、さらに従業者に対する必要かつ適切な監督も求められると整理されています。現場でいうと、紙の申込書・本人確認書類のコピー・鍵情報・内見予約の履歴・メール添付など、漏えい経路が多すぎるのが宅建業の特徴です。
安全管理措置は「技術」だけでなく「組織・人・物理・技術」の束で設計するのがコツです。例えば、店舗のカウンターに申込書を“仮置き”する運用、退職者のメール転送設定が残ったままの運用、内見手配で個人名入り資料を業者間で回す運用など、些細な“いつもの癖”が事故につながります。安全管理措置の条文趣旨は「必要かつ適切な措置」であり、規模や実態に応じて説明可能な対策を積み上げることが求められます。
参考)個人情報の安全管理措置義務とは?具体例とガイドラインを解説 …
不動産業で意外に効くのは、個人データを「顧客マスタ」「申込・審査」「契約」「管理」「解約後保管」の5箱に分け、箱ごとにアクセス権・保管場所・持ち出し可否を決める方法です。箱が決まると、従業者監督(教育・誓約・ログ確認)の論点も、“どの箱に触れる担当か”でルール化できます。安全管理措置と従業者監督がセットで求められる、という整理に沿った運用になります。
参考:安全管理措置・従業者監督・委託先監督を条文ベースで体系整理(実務の切り分けに有用)
個人情報の安全管理措置義務とは?具体例とガイドラインを解説 …
個人情報保護法 宅建業者 義務 第三者提供とオプトアウト
宅建業の実務は「第三者提供」との距離が近く、ここを誤ると一気にリスクが上がります。国交省は、不動産流通業は物件情報の広告など第三者への提供が業務の重要な内容という特色があると述べています。つまり、広告掲載、他社紹介、内見調整、保証会社・金融機関・管理会社への連携など、日常業務の中に“提供”が混ざり続けます。
第三者提供の場面では、まず「同意が必要か」「委託として整理できるか」「共同利用に当たるか」を切り分けます。ここで便利なのが、宅建業法45条の守秘義務と個人情報保護法の関係を理解することです。宅建業法上は「正当な理由なく秘密を漏らしてはならない」とされ、宅建業をやめた後も義務が続くと解説されていますが、これだけで第三者提供が正当化されるわけではありません。個人情報保護法のルール(利用目的、同意、例外)で説明できる形に整える必要があります。
実務の“落とし穴”は、広告や資料の中に、本人が特定できる情報が混入してしまうケースです。例えば「売主の姓」「部屋番号と入居者名」「転居理由」などが、仲介図面や内見案内メールの本文に残り、第三者提供の自覚なく拡散します。第三者提供の管理は、同意書の有無よりも「何が混ざると個人情報になるか」を現場が理解しているかで事故率が決まります。
個人情報保護法 宅建業者 義務 委託先監督と管理会社・保証会社
不動産取引は一社完結しにくく、委託先(クラウド、コールセンター、管理受託先、書類保管、鍵管理等)が増えがちです。安全管理の整理では、個人情報取扱事業者は安全管理措置に加えて委託先の監督も義務として整理されており、委託に出した瞬間に責任が消える発想は通用しません。宅建業の現場では、ITベンダーや賃貸管理システム、電子契約・本人確認サービスなども“委託先”になり得ます。
委託先監督を「契約書に条項を入れて終わり」にしないためには、監督の証跡を作る必要があります。たとえば、年1回のセキュリティチェックシート回収、個人データの取り扱い範囲(閲覧・編集・出力・再委託)を表で固定、事故時連絡ルートの事前合意、退職者アカウントの無効化手順の確認など、監督の粒度を揃えます。これらは安全管理措置・従業者監督・委託先監督を一体として求める整理に沿った、説明可能な運用になります。
「意外に見落とされる委託先」として、物件撮影や鍵開け、現地案内を外注するケースが挙げられます。現地で入居者情報や管理情報に触れる可能性があるなら、単なる業務委託ではなく“個人データへのアクセス”として設計するべきです。委託先が増えるほど、委託の範囲外利用や再委託が発生しやすくなるため、委託範囲を狭く定義するほど監督が楽になります。
個人情報保護法 宅建業者 義務 漏えい等報告と本人通知(独自視点:内見・鍵の事故)
2022年4月1日から、個人データの漏えい等が発生し、個人の権利利益を害するおそれがあるときは、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が必要になることが示されています。宅建業では、メール誤送信や書類紛失だけでなく、内見・鍵・現地案内の“オフライン事故”が漏えい等につながりやすい点が特徴です。たとえば、鍵番号の管理不備から第三者が入室できる状態になった場合、単なる鍵トラブルではなく、個人の権利利益を害するおそれがある事態として評価される可能性が出ます。
この観点は検索上位で「サイバー漏えい」中心に語られがちなため、現場では盲点になりやすいところです。内見の現場では、案内図面に氏名が残っている、郵便受けに表札がある、部屋に書類が置かれている等、個人情報の“二次流出”が起きます。安全管理措置はシステムだけでなく業務全体に及ぶため、鍵の受け渡しログ、持ち出し禁止、現地案内時の資料の回収などを、漏えい等対策として位置づけると事故後対応が早くなります。ppc+1
漏えい等が疑われるときに備え、社内フローを「初動→評価→報告/通知→再発防止」に分けておくと混乱が減ります。個人情報保護委員会が示す通り、報告・通知が義務化される前提を踏まえ、誰が“権利利益を害するおそれ”の評価をするのか(現場任せにしない)を決め、管理者・宅建士・情報システム担当の連絡順を固定します。
参考)漏えい等報告・本人への通知の義務化について |個人情報保護委…
参考:漏えい等報告・本人通知が義務化されること、施行日(令和4年4月1日)と基本要件

