利益相反と双方代理禁止と両手媒介

利益相反 双方代理 禁止

利益相反・双方代理禁止を現場で誤解しない
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「代理」と「媒介」は法律効果が違う

双方代理禁止が直撃するのは「代理」行為。両手媒介は原理的には別枠だが、説明不足だと利益相反トラブルに発展しやすい。

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重要事項説明と書面で“疑い”を潰す

依頼者が「知らされていない」と感じた瞬間に紛争は加速する。どこまで、いつ、どう記録するかが実務の勝負所。

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独自視点:利益相反は“構造”で管理する

担当者の善意に頼ると破綻する。KPI、反響ルート、広告運用、査定ロジックまで含めて利益相反リスクを設計で下げる。

利益相反の基本と双方代理禁止の射程

 

利益相反は「当事者の利益がぶつかる構造がある状態」を指し、意図的な不正がなくても発生します。両当事者の利益が同時に最大化しない局面(価格、引渡し条件、契約不適合責任の範囲、解除条件など)がある以上、誰がどの利益を優先して動くのかが問題になります。

一方、民法の「双方代理禁止」は、同一人が同一の法律行為について当事者双方の代理人になることを原則として許さない、という発想です。代理人は本人に代わって意思表示を行い、場合によっては意思決定にも踏み込み得るため、片方の利益を害する危険が高いからです。

現場で重要なのは、利益相反=即違法、ではない点です。利益相反の“可能性”があるだけで直ちに無効になるわけではありませんが、「説明不足」「不利益事実の不開示」「恣意的な誘導」が重なると、紛争・クレーム・行政処分リスクが一気に跳ね上がります。

利益相反と両手媒介と媒介の違い

検索上位でも頻繁に出る論点が「両手媒介(両手仲介)=双方代理なのか?」という誤解です。結論から言えば、両手媒介は“双方代理そのもの”とは別概念で、媒介は本人に代わって意思表示をする行為ではなく、契約成立に向けた取次ぎ・調整が中心です。

実務上も、同一業者が売主・買主双方の代理人になることは、民法の双方代理禁止(108条)の問題として原則できず、行われた代理行為は無権代理として扱われる、という整理が示されています。ところが、売主・買主双方と「媒介契約」を結ぶ両手媒介は、代理と異なるため、双方代理禁止とは“全く異なる”と説明されています。さらに、双方を媒介した方が、紛争時に間に入って解決が早い場合もある、という現場感覚にも触れられています。scielo.conicyt+1​

ただし、ここで安心してはいけません。両手媒介は法概念として直ちに禁止されないとしても、「どちらの依頼者のために、どこまで動くのか」という期待値調整に失敗すると、利益相反の疑念が残ります。疑念が残ると、結果が良くても「たまたまうまくいっただけ」と評価され、トラブルが起きた瞬間に“悪意の推定”のような空気が生まれます。

利益相反で問題になる場面と禁止の誤解

利益相反が実際に問題化するのは、「行為」より先に「場面」があります。たとえば次のような局面は、説明の仕方ひとつで燃えやすいです。

・売主側の希望価格と、買主側の指値余地が同時に存在する場面

・売主が急いで処分したい事情(買換え期限、相続、離婚等)を、買主側が知れば交渉材料になる場面

・買主の資金計画やローン審査の弱点を、売主側が知れば契約条件を変える可能性がある場面

・契約不適合責任(旧瑕疵担保)や設備免責、境界、越境など“揉めやすい論点”が見えている場面

・囲い込み疑念(広告・内見・紹介の出し方)により、売主が「機会を奪われた」と感じる場面

ここで「双方代理禁止」と混線しやすいのが、依頼者が“仲介=代理”だと理解しているケースです。依頼者は、仲介会社が自分の代理人として100%味方で動くと思いがちですが、媒介は本質的に取次ぎであり、意思表示や決定は本人が行うという建付けです。両手媒介が直ちに双方代理禁止に当たらない、という整理はこの点に基づきます。

参考)https://scielo.conicyt.cl/pdf/rchdp/n33/0718-8072-rchdp-33-0143.pdf

だからこそ、現場では「当社は代理人ではなく媒介(仲介)として調整する立場であること」「両手媒介の場合は双方から依頼を受けていること」「それでも守るべき説明・誠実義務があること」を、曖昧にせず言語化しておく必要があります。

利益相反を避ける説明と書面の実務

利益相反対策は、道徳ではなく“手続”です。口頭で丁寧に説明したつもりでも、後で争いになった瞬間、相手は「聞いていない」と言います。そこで勝負を決めるのは、説明内容の粒度と、書面・ログの整備です。

おすすめは、次の3点を「媒介契約締結時」「申込み前」「契約前(重説・37条書面前)」のタイミングで分けて管理することです。

・誰が依頼者で、当社がどの立場(媒介/代理)で、報酬がどの条件で発生するか

・両手媒介(双方から媒介依頼を受ける状態)の場合に起こり得る利益相反の典型例(価格交渉、条件調整、情報の非対称)

・情報の取扱い方針(相手方へ共有する情報/共有しない情報、共有の条件、本人同意の取り方)

また、両手媒介が「双方代理」ではない、という説明は、単なる理屈ではなく、依頼者の安心材料として機能します。公的な相談事例でも、代理は意思表示・意思決定を行い得るため双方代理が原則禁止である一方、媒介は取次ぎであり意思表示・意思決定は本人が行う、と整理されています。

さらに意外に効くのが「合意形成の見える化」です。価格交渉の過程で、

・売主へ:指値の根拠(相場、成約事例、資金計画)

・買主へ:売主側の譲れない条件(引渡し時期、残置物、境界確定)

を“同意が取れた範囲で”提示し、メールやCRMに残しておくと、後日の疑念が大きく減ります。

利益相反の独自視点の現場設計

検索上位の記事は、条文趣旨や「両手媒介と双方代理は別」という整理に寄りがちです。しかし現場で効くのは、利益相反を「担当者の倫理」ではなく「仕組み」で抑える発想です。ここは独自視点として深掘りします。

利益相反が生まれる根は、担当者が悪いからではなく、評価指標と情報経路が“片側最適”になりやすいからです。例えば、反響獲得がKPIの組織では、売主の囲い込み疑念が最も燃えやすく、買主の紹介ルートが偏ると「市場に広く出していない」という疑念が生じます。

そこで、運用として次のような設計を入れると、利益相反が“結果として起きにくい”状態を作れます。

・広告出稿・レインズ登録・内見受付のルールを、担当者裁量ではなく最低基準で固定する(例:受付停止の要件を明文化)

・価格改定提案は「成約事例」と「内見数・反響数」の両方をセットで提示し、恣意的な誘導を減らす

・両手になった案件は、契約前に別担当(管理職・コンプラ担当)が説明ログをレビューする

・申込みの優先順位(条件・資金確度・期日)を売主と合意し、後出しで覆さない

ここで重要なのは、両手媒介そのものが直ちに双方代理禁止ではない、という前提を踏まえつつ、依頼者が「公平に扱われた」と実感できる証拠を積み上げることです。双方代理禁止は“代理という強い権限”を前提にした規制であり、媒介は構造が違う、という整理があるからこそ、媒介では手続設計が信用の柱になります。

両手媒介・双方代理・利益相反の違いを説明できるだけでは、クレームは止まりません。説明と記録と運用設計をセットにして、疑念を「起こさない」「残さない」ことが、従事者の最大の防衛線になります。

参考:両手媒介と双方代理(民法108条)の違い、代理行為の無権代理扱い等の整理(監修者コメント)

https://www.retpc.jp/archives/1613/

利益相反の自己管理 しくみを知って説明責任をはたそう: しくみを知って説明責任をはたそう;シクミヲシッテセツメイセキニンヲハタソウ