担保責任と契約不適合責任と宅建
担保責任 契約不適合責任の違いと改正民法の要点
民法改正(2020年施行)により、従来「瑕疵担保責任」と呼ばれていた枠組みは「契約不適合責任」として整理されました。
実務での一番大きい変化は、「契約内容に適合しない」ことを起点に、買主が複数のメニュー(追完、代金減額、解除、損害賠償)を組み合わせて主張できる設計になった点です。
特に現場で効いてくるのが次の2点です。
- 「追完請求」:修補、代替物引渡し、不足分引渡しなど、まず“直して・補って”と言える。
参考)https://www.mdpi.com/2071-1050/13/16/9403/pdf
- 「代金減額請求」:追完がされないとき等に“不適合の程度に応じて”減額を求められる。
また、通知のタイムリミットが典型的な落とし穴です。買主は原則として「不適合を知った時から1年以内」に売主へ通知しないと、追完・減額・損害賠償・解除ができなくなる扱いがあります。
ただし、引渡し時に売主が不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかった場合は、この制限が外れる例外が置かれています。
担保責任 契約不適合責任と宅建業法40条の特約制限
宅建業者が「自ら売主」となる売買では、民法のルールをベースにしつつ、宅建業法40条が“買主保護の上乗せ”として効きます。
要点は、「民法566条の期間」を“引渡しの日から2年以上”とする特約を置く場合を除き、民法より買主に不利な特約は禁止で、違反する特約は無効になることです。
つまり条文設計の結論はこうなります。
- やってよい方向:通知できる期間を「引渡しから2年」など、買主に厚くする(民法より不利にしない)。
- 危ない方向:免責、範囲限定、解除禁止、損害賠償の上限設定などで買主の権利を削る(無効リスク)。
さらに“意外に知られていない実務ポイント”として、宅建業法40条が制限するのは「種類又は品質」の不適合であり、「数量」の不適合には制限が及ばない、と整理される点があります。
このため、いわゆる公簿売買(面積差が出ても価格増減しない合意)を従来どおり設計できる余地がある、という説明は現場の合意形成に役立ちます。
担保責任 契約不適合責任の通知期間と解除・追完・代金減額
契約不適合責任の“請求順序”は、実務でも紛争でも整理して説明できると強いです。民法上、買主はまず追完請求ができ、売主が追完しない場合などに代金減額請求へ進めます。
解除・損害賠償も射程に入りますが、解除は「追完の催告をして期間内に追完がない」など一定の条件が前提となり、万能ではありません。
現場でよく起きる事故は、「条項に“通知は引渡しから○か月”」と書いたのに、宅建業者売主の取引では買主に不利で無効になり、結局“民法の枠+宅建40条の枠”で買主の主張が通る、というパターンです。
そのため、契約書・重要事項説明・社内トークの3点セットで、次の整合を取るのが安全です。
- 通知期間:民法の「知った時から1年」+(業者売主なら)特約で引渡しから2年以上も検討。
- 請求の筋道:追完→減額→解除/損害賠償を説明できる形にする。
担保責任 契約不適合責任と35条 重要事項説明の勘違い
「契約不適合責任って35条書面(重要事項説明書)にガッツリ書くんですよね?」という誤解は、教育現場でも実務現場でも根強いです。
重要事項として説明すべき中心は、「当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し、保証保険契約の締結その他の措置の概要」という“履行のための措置”であり、責任内容そのものの丸写しではありません。
この「履行に関する措置」は、売主が倒産等で責任を果たせない事態に備えて、保険加入や供託などの準備をしているか、しているなら概要は何か、を説明する趣旨です。
参考)https://obiter.mandela.ac.za/article/download/11802/16923
そして新築住宅の売主(宅建業者)が売主になるケースでは、住宅瑕疵担保履行法の文脈で、保険加入または保証金供託といった資力確保措置が制度として強く関係してきます。
実務で役立つ“チェック用の言い換え”を置いておくと、社内の説明品質が安定します。
- 35条で説明するのは「責任の履行のための保険・供託の話」が中心。
- 契約書(37条)や特約で設計するのは「責任の中身(追完、減額、通知期間など)」が中心。
担保責任 契約不適合責任と宅建実務の独自視点:説明責任の「すれ違い」設計
検索上位の解説は“制度の説明”が中心になりがちですが、現場でトラブルになるのは「買主が理解したと思っている内容」と「業者が説明したつもりの内容」のズレです。
特にズレが出やすいのは、(1)通知期間の数え方(知った時から1年/引渡しから2年特約など)、(2)追完と減額の順序、(3)35条で話すべき“措置”と、契約条項で定める“責任内容”の境界です。
そこで、宅建士が現場で使える“すれ違い防止テンプレ”を提案します(意味のない文字数増やしではなく、事故率を下げるための要点だけに絞ります)。
- 重要事項説明の最後に一言:「ここで説明したのは、万一売主が責任を果たせない場合に備えた保険・供託などの概要です。」
- 契約締結前に一言:「不適合が見つかったら、まず“直して”の請求(追完)や“値引き”の請求(減額)が選択肢で、解除は条件付きです。」
- 申込段階で一言:「通知期限は“知った時から1年”が原則で、業者売主のときは買主に不利な短縮は基本できません。」
この3行を、営業トーク・社内チェックリスト・契約書の注記に同じ言葉で入れるだけで、「説明した/聞いてない」の争点を“文章の整合”で潰しやすくなります。
実務の条文・運用の裏取り(宅建業法35条の「履行措置」解説)

実務の条文・運用の裏取り(宅建業者売主の契約不適合責任と40条の制限、通知・追完・減額の整理)

