業務停止命令 処分 事由
業務停止命令 処分 事由の監督処分基準
業務停止命令は、宅地建物取引業者の違反行為に対する「監督処分」の一つとして位置づけられ、指示処分・業務停止処分・免許取消処分の流れの中で判断されます。
国土交通大臣が定める監督処分の基準では、処分対象は宅地建物取引業法65条の指示処分・業務停止処分、および66条の免許取消の対象行為と整理されています。
実務で重要なのは、同じ条文違反でも「損害の程度」「悪質性」「違反状態の長期化」「社会的影響」などが加重要素になり、結果として業務停止期間が伸びる仕組みが明確に書かれていることです。
また、都道府県の基準(例:和歌山県)も国の枠組みと同様に、原則「過去5年」の違反行為を対象に監督処分を行う運用を示しています。
この「5年」は、現場の体感より長く効くため、過去の軽微な指摘が“後で効いてくる”点が意外と見落とされがちです。
監督処分基準は「絶対」ではなく、特段の事情があれば加重・軽減が妨げられないとも明記されており、行政側が裁量判断を組み込める設計になっています。
業務停止命令 処分 事由と業務停止期間の別表
監督処分基準の別表には、違反行為ごとに「標準の業務停止期間(日数)」が並び、実務で最初に参照すべき早見表の役割を果たします。
例えば、誇大広告等の禁止違反は基本7日だが、損害発生で15日、損害の程度が大きいと30日へと段階的に重くなる構造が示されています。
重要な事項に関する故意の不告知等(47条1号)は標準90日とされ、説明不足ではなく「故意の不告知・不実告知」が別格に重い扱いである点が読み取れます。
名義貸しも重く、営業目的の名義貸しは標準90日、表示・広告目的でも15日とされ、特に“営業目的”が重いことが別表から直感的に理解できます。
さらに「35条(重要事項説明)と47条1号の双方に違反」した場合は、標準日数の読み替えで90日とする特則があり、複合違反が一気に重くなる仕組みも明記されています。
つまり、現場でありがちな「説明書面の不備」と「都合の悪い事実を言わない」がセットになると、単発よりも別次元で評価されうるため、チェック工程の設計が重要になります。
業務停止命令 処分 事由の加重と軽減
基準では、別表の標準日数をそのまま当てはめるのではなく、加重・軽減で調整するルールが細かく定義されています。
加重の典型は、損害が特に大きい、詐欺的・暴力的など態様が悪質、違反状態が長期、社会的影響が大きい、といった要素で、標準日数に「2分の3」を乗じた日数を上乗せできる設計です。
また、過去5年以内に指示処分や業務停止処分を受けていると、業務停止期間に「2分の3」を乗じた日数をさらに加重するルールがあり、“再発”が重く評価されることが条文化されています。
一方で軽減もあり、損害が発生していない・是正が迅速・補填が合理的で誠実、などの要件を満たすと、指示処分に軽減できる場合があるとされています。
ただし「営業目的の名義貸し」「表示・広告目的の名義貸し」「故意の不告知等」「不当に高額の報酬の要求」などは軽減の適用ができない旨が明記され、救済されにくい“レッドカード領域”が存在します。
実務的には、内部監査で「軽減が効く違反」と「軽減が効かない違反」を分けてリスク管理する発想が有効です。
業務停止命令 処分 事由と業務停止期間中の禁止
業務停止命令を受けると、停止期間中は「開始日前に締結された契約(媒介契約を除く。)に基づく取引を結了する目的の範囲内」を除き、宅地建物取引業に関する行為ができないとされています。
禁止行為の例として、広告(物件が特定可能な表示)、電話照会への応対・来客対応、モデルルーム運営、媒介契約の締結・更新、申込証拠金の受領、売買・交換・賃借契約の締結などが列挙されています。
この列挙は「営業行為の停止」が単なる契約締結禁止に留まらず、集客・受電・展示といった周辺業務も止まることを意味し、現場オペレーションの影響が非常に大きい点がポイントです。
一方、許容される行為として、停止開始日前に締結した契約に基づく登記・引渡し等の結了行為、自ら賃貸する行為、造成・建築工事や許認可申請、資金の借入れ等が挙げられています。
「媒介契約は除く」という但し書きがあるため、停止直前に媒介契約を大量に積み上げて“停止中に処理する”という発想は基準上通りにくいことが読み取れます。
実務では、停止開始日までの準備期間が原則2週間(命令書交付日から起算)とされる運用も示され、広告撤収や関係者連絡などの段取りが必要になります。
業務停止命令 処分 事由の独自視点:地域を限定した業務停止
あまり一般記事で深掘りされない論点として、監督処分基準には「地域を限定した業務停止処分」という考え方が明記されています。
違反が特定の一事務所のみで起き、役員が違反の存在を知らず、かつ知らなかったことに責めに帰すべき理由がないことが明らかな場合など、一定要件下で“当該事務所の業務”などに限定した停止を命じうるとされています。
これは、複数拠点を持つ会社にとって「全社停止」だけが結論ではない可能性を示す一方、重大損害・社会的影響が大きい場合などは限定が不適切とされ得るため、平時からの統制(役員が知らないで済む体制ではなく、知り得る統制)が逆説的に重要になります。
同様に都道府県基準でも、違反が一事務所のみで、役員の認識要件などを満たす場合に、当該事務所のみの停止を命じ得る旨が記載されており、国と地方で整合した設計になっています。
つまり、支店型の組織は「支店で事故が起きたら全社が止まる」だけでなく、「支店停止で済む余地」がある一方、その判断は“組織としての管理状況”にも左右されます。
リスクの観点では、拠点別の広告管理・重要事項説明のレビュー・苦情一次受付のログ化など、事務所単位で説明可能な統制資料を整備しておくと、処分局面での説明力が上がり得ます。
国交省の監督処分基準(加重・軽減、停止中の禁止行為、地域限定停止の根拠)
https://www.mlit.go.jp/common/000170679.pdf
都道府県の監督処分基準例(停止開始日を原則14日後にする運用、禁止行為・許容行為の具体例)
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/080800/takken/syobun_d/fil/gyousyakijun.pdf

アブラハム社「業務停止命令」を通して学ぶ「金商法」
