行政代執行の流れを解説|不動産従事者が知るべき手続きと注意点

行政代執行の流れ

勧告を受けた物件でも戒告までに約1か月しか猶予がない

📋 行政代執行の基本的な流れ
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戒告から代執行令書の通知

義務の履行期限を文書で明示し、不履行の場合は代執行の実施時期・責任者名・費用概算を通知

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代執行の実施と動産処理

執行責任者が証票を呈示して代執行を実行し、建物内の動産は搬出・保管される

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費用納付命令と強制徴収

代執行に要した費用の徴収額・納期日を文書で通知し、滞納時は滞納処分で強制徴収


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行政代執行における戒告の意味と期限設定

 

行政代執行における戒告とは、行政代執行法第3条第1項に基づき、義務者に対して履行期限を明示して文書で通知する手続きです。これは命令とは別の事務として、代執行の戒告であることを明確にして行うべきとされています。

参考)行政代執行とは?費用徴収、実行までの流れなどをわかりやすく解…

戒告から代執行実施までの期間は、自治体によって異なりますが、実際の事例では約1か月から2か月程度のケースが多く見られます。埼玉県の事例集によれば、ある案件では戒告から行政代執行まで「約1か月」、別の案件では「結果的に2か月程度」となっています。この期間は所有者が自主的に履行する最後の機会です。

参考)https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/124019/19_zireisyuu.pdf

履行期限内に適切な対応がなされれば、行政代執行は回避できます。しかし緊急性が高い場合は、戒告の通知が行われないまま行政代執行が実施されることもあるため注意が必要です。行政代執行法第3条第3項では、非常の場合または危険切迫の場合には、戒告や代執行令書の手続を経ないで代執行を行う緊急代執行の制度が定められています。

参考)https://www.rilg.or.jp/htdocs/img/003/pdf/r3_daishikkou01.pdf

不動産従事者としては、クライアントが戒告を受けた時点で、残された期間が極めて短いことを理解し、迅速な対応を促す必要があります。

戒告が原則です。

行政代執行の代執行令書による通知内容

代執行令書は、行政代執行法第3条第2項に基づいて所有者等に送付される正式な通知書です。これは行政が所有者に代わって解体や撤去を実施するという最終的な通知を意味します。

参考)空き家の行政代執行とは?基礎から流れ・費用・リスクまで詳しく…

代執行令書には、具体的に以下の内容が記載されます。代執行の実行時期、執行責任者の氏名、代執行に要する費用の概算が明示されます。この通知により、所有者は行政代執行がいつ実施され、誰が責任者として執行し、どの程度の費用がかかるのかを事前に把握できる仕組みです。

実際の費用は、物件の規模や状態によって大幅に異なります。埼玉県の事例では、約65万円から約1,040万円まで幅があり、京都市の事例でも約150万円から約700万円に上るケースが報告されています。代執行令書の概算金額は、後の費用納付命令の基礎となるため、所有者にとって重要な情報です。

参考)行政代執行の危険性と費用を解説!放置された空き家は強制解体も…

不動産従事者は、クライアントが代執行令書を受け取った段階で、概算費用の妥当性を確認し、自主的な対応との費用比較を行うことが求められます。自主解体の方が費用を抑えられる場合も多いためです。

つまり最後のチャンスです。

行政代執行制度の基本と実務(地方自治研究機構)では、代執行の要件や手続きについて詳細な解説があります。

行政代執行の実施プロセスと執行責任者の役割

行政代執行の実施段階では、執行責任者が行政代執行法第4条に基づき証票を携帯し、これを呈示して代執行を実行します。執行責任者は自治体の職員または委託を受けた事業者の代表者が務め、現場での作業全体を監督する権限を持ちます。

代執行の実施には、建物の解体作業だけでなく、建物内の動産の搬出も含まれます。動産は民事と異なり差押手続がなく、不動産が代執行宣言後に行政庁の占有物となり、付随して内部の動産も占有物となります。搬出された動産は搬出動産目録が作成され、保管場所へ移動されます。

参考)https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/124019/18daishikou.pdf

実際の代執行では、義務者の抵抗を排除する権限も執行責任者に与えられています。所有者や占有者が任意に引渡に応じない場合、公売の場合は明渡請求訴訟の提起から始めなければならないという手続き上の制約もあります。

参考)行政代執行による除却の事務手続き

不動産従事者は、代執行が実施される際に立会いが可能かどうか、動産の処理方法について事前に確認しておくことで、クライアントの損失を最小限に抑えることができます。

立会いは重要です。

行政代執行における動産処分の実務上の課題

行政代執行における動産の取り扱いは、実務上の複雑な課題を含んでいます。代執行終了宣言を行った翌日から動産の保管・廃棄を行った場合、その費用は民法上の事務管理に要した費用であり、民事債権となります。このため、民事上の手続きにより債務名義を取得し、さらに強制執行の申立てを行う必要があります。

参考)動産の処分に係る事務手続き

動産の行政庁の管理責任は代執行宣言後から発生します。保管された動産について、所有者に引き取り依頼が行われますが、実際には引き取りに応じないケースも多く見られます。先進事例では、様々な廃材があったため、廃材の撤去も命令書に含め、廃材を含めて除却をかけて行政代執行を実施したケースもあります。

動産の中には、所有者にとって価値のある品物が含まれている可能性もあります。どういうことでしょうか?家財道具、書類、貴重品などが適切に保管されず廃棄された場合、後に所有者との間でトラブルになるリスクがあります。

不動産従事者としては、代執行前に可能な限り動産を搬出するようクライアントに助言することが重要です。特に価値のある動産や重要書類は、戒告の段階で確実に移動させておく必要があります。

動産保護が基本です。

行政代執行費用の確定と納付命令の手続き

行政代執行の実施後、行政庁は代執行に要した費用を確定し、行政代執行法第5条に基づき費用納付命令を発します。費用納付命令では、代執行に要した費用の徴収額と納期日が文書で通知されます。

参考)https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kenchikujyuutakuka/akiyamanyuaru2_d/fil/09.pdf

実際の費用には、物件調査委託費、設計委託費、解体工事費などが含まれます。埼玉県の事例では、物件調査委託に30万2千円、設計委託に144万7千円、解体工事を含めた総額が約1,040万円に達したケースもあります。このように、代執行令書の概算金額と実際の確定費用には差が生じる場合があります。

費用の内訳には、動産の搬出・保管費用も含まれる可能性があります。延べ作業日数も費用に影響し、同じく埼玉県の事例では延べ約70日かかったケースや、延べ約14日で完了したケースなど、物件の状況によって大きく異なります。

不動産従事者は、費用納付命令を受けた段階で、費用の内訳を精査し、不当に高額な項目がないか確認する必要があります。透明性の確保と費用の妥当性検証は、所有者の権利を守る上で重要な役割です。

確認作業は必須です。

埼玉県行政代執行マニュアルには、費用確定の実務手続きが詳しく記載されています。

行政代執行費用の強制徴収と滞納処分の流れ

所有者が費用納付命令に応じない場合、行政庁は行政代執行法第6条第1項に基づき滞納処分により強制徴収を行います。滞納処分は、国税徴収の例により強制的に債権を回収する手続きです。

滞納処分の具体的な流れとしては、まず差押えが行われます。差押不動産の公売が実施され、公売公告を行い、公売通知書を所有者等に送達します。公告と同時に、公売通知書兼債権現在額申立催告書を公売不動産上の担保権者に送達する必要があります。

入札の執行では、物件ごとに概要説明を行い、入札、開札、入札価格の読み上げを経て最高価額申込者の決定を行います。入札終了後、不動産公売最高価申込者等決定の公告を行い、同通知書を買受申込者及び公売不動産上の担保権者に送達します。

売却決定後、買受代金納入通知書を買受人に交付し、買受代金の納入を確認後、売却決定通知書を買受人に交付します。換価財産が不動産の場合は、買受人の換価財産の取得に伴う権利移転登記を行い、登記完了後に登記済証を買受人に交付します。代執行に要した費用徴収金に優先する地方税債権への配当並びに滞納処分費及び代執行に要した費用徴収金への充当処理を行い、換価配当手続が終了します。

不動産従事者として、クライアントが滞納処分を受ける前に、分割納付の相談や土地・建物の任意売却による費用捻出など、代替案を提示することが求められます。滞納処分まで進むと、所有者の経済的負担はさらに増大するためです。

早期対応が条件です。

行政代執行における略式代執行との違いと選択基準

行政代執行には、通常の代執行と略式代執行の2種類があります。通常の代執行は所有者が特定できる場合に行われる強制執行であるのに対し、略式代執行は所有者が特定できない場合の措置です。略式代執行は「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づいて実施されます。

参考)行政代執行とは|実施される要件と回避方法を解説

略式代執行に要した費用を債権として、相続財産管理人を所有者の最後の住所地の家庭裁判所に選任審判を申し立て、選任された相続財産管理人にて費用回収を図る方法もあります。しかし、実際には費用回収が困難なケースも多く、自治体の財政負担となる場合があります。

また、特定空家等について全ての所有者等が確知できており、かつ、全ての所有者等に対し勧告がなされていて、緊急時の代執行の要件を完全に満たしている場合には、空家法に基づく緊急代執行を実施してもよいし、条例に基づく緊急安全措置を実施してもよいとされています。

参考)https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000264596

不動産従事者は、所有者不明物件の調査を依頼された際、略式代執行のリスクを踏まえた上で、相続人調査や所有権の明確化を進める必要があります。所有者が特定できれば通常の代執行となり、費用徴収の可能性が高まるためです。

所有者特定が原則です。

行政代執行の要件と裁量判断における注意点

行政代執行が実施されるためには、行政代執行法第2条に定められた3つの要件を満たす必要があります。第一に、代替的作為義務の不履行があること、第二に、他の手段によって履行を確保することが困難であること、第三に、不履行を放置することが著しく公益に反すると認められることです。

「著しく公益に反する」かどうかの判断については、行政庁に裁量があります。この判断は代執行の「必要性」に置き換えて考えられ、具体的には、人の生命や財産に具体的な危機が生じていることが明らかな場合、「必要性」があるといえます。

特定行政庁は、措置命令を行った場合、命ぜられた者が履行しないとき、履行しても十分でないとき、履行しても期限までに完了する見込みがないときに代執行できます。これらの要件は、行政の恣意的な代執行を防ぐために設けられています。

参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/000214691.pdf

不動産従事者としては、行政の裁量判断に対して異議がある場合、要件を満たしているかどうかを法的に検証し、必要であれば行政不服審査や行政訴訟の検討を助言することも重要です。

裁量には限界があるためです。

法的検証が重要です。

国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針」では、行政代執行の要件と裁量判断について詳細なガイドラインが示されています。

行政代執行前の勧告・命令段階での対応戦略

行政代執行を回避するためには、勧告・命令の段階での適切な対応が不可欠です。助言に従わないと次に指導、指導に従わないと次は勧告、勧告を受けても是正をしないと次は命令、命令にも従わないと最終的に「行政代執行」という流れになります。

参考)特定空家に対する行政代執行とは?知ってるようで知らないこと!

勧告を受けると、固定資産税等の住宅用地の軽減特例を受けることができなくなり、土地の固定資産税等が上がります。これは所有者にとって大きな経済的負担となるため、勧告の段階で対応することが重要です。

命令が出されると、猶予期間を過ぎた後、相当の履行期限を設定して行政代執行の戒告が行われます。履行期限経過後も未履行の際には「代執行令書」で代執行の時期などが通知されます。

不動産従事者は、クライアントが助言・指導の段階で相談に来た場合、自主的な改善工事や売却、解体などの選択肢を早期に提示することが重要です。勧告を受けてからでは固定資産税の負担が増え、命令を受けてからでは選択肢が限られてきます。早い段階での対応が、経済的損失を最小限に抑える鍵となります。

早期対応なら問題ありません。

特定空き家の指定を受けた段階で、自治体との協議を通じて改善計画を提出し、具体的な履行スケジュールを示すことで、代執行を回避できる可能性が高まります。

痛い出費です。


行政代執行法 (有斐閣双書)