借上とは日本史における金融業者
借上を地頭代官にすると御家人の土地が20年以内でも取り戻せなくなります。
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借上の語源と基本的な意味
借上(かしあげ)とは、平安時代末期から南北朝期にかけて活動した高利貸業者、またはその行為そのものを指す言葉です。
語源については二つの説があります。
第一の説は、高い利率で銭を借し上げることから生まれたとするものです。第二の説では、「借」は出(かし)、「上」は挙(あげ)を意味し、出挙(すいこ)の和訳であるとされています。
出挙とは古代の稲の貸付制度のことですね。
史料上の初見は1136年(保延2年)の明法博士勘文案で、近江国日吉神社の神人が所領荘園からの上分米を預かり、これを諸人に出挙していたという記録があります。借り手には下級官人や受領層が多く見られました。つまり当時のエリート層も利用していたということです。
借上業者の実態と山門との関係
借上業を営んだのは、主に延暦寺(山門)の下級僧侶である山僧や、日吉神社の神人、熊野の寄人など、荘園制下の交易・輸送などに従事して財力を蓄えた人々でした。
山門には巨大荘園領主として所領経営の実務に通じた山僧が多く、彼らが京都の高利貸の主流となりました。山僧は山門に集積された大量の米銭から融資を受け、山門の威力を背景に債権回収を強行したのです。
これが彼らの強みでした。
日吉神人は大津に活動の基礎を置き、日吉社が収納した神物である上分米(年貢米)を預かり、北陸道をはじめ諸国で高利を取って貸し付けていました。借米の返済が不能になれば抵当の田地が流れ、それが神人を介して本所である山門の所領・荘園化する事態が生じました。
担保権の実行ですね。
参考)https://www.library-archives.pref.fukui.lg.jp/fukui/07/kenshi/T2/T2-0a1-02-01-01-06.htm
借上による土地流出と幕府の対応
鎌倉時代に入ると、借上の活動は大きな政治問題となりました。貨幣経済の進展とともに、一般庶民の中で富を蓄えた者が高利貸業を営むようになります。
しだいに窮乏した御家人の所領をも蚕食するようになったため、鎌倉幕府は1239年(延応元年)に地頭が借上を代官とすることを禁じました。翌1240年には凡下借上が領地を買うことを抑制しようとしましたが失敗に終わります。
禁止令の効果は限定的でした。
参考)https://hiroseki.sakura.ne.jp/tokusei.html
所領の経営能力を見込まれたり、貸付金回収の手段として、従来無縁の荘園領主や地頭にまで所領の代官請負契約を結ぶ例が増えていきました。これは現代の不動産管理代行業務に近い仕組みといえます。幕府は地頭所領の流出や山門の関与を嫌っていたのです。
永仁の徳政令(1297年)では、非御家人や借上などが御家人から質流れで買い取った土地については、20年を経過していても売主(元の御家人)が領有できると定められました。
通常の時効期間の例外です。
借上から土倉・酒屋への変遷
鎌倉時代に借上と呼ばれた高利貸業者は、室町時代中期には土倉(どそう)と呼ばれる業者に移行していきます。土倉は担保として預かった高価な品物を倉に保管していたため、この名称がつきました。
参考)借上(かしあげ)、土倉と酒屋、区別する! – 教育しん研
酒屋は、もともとお酒を造っていた蔵元が金融業も兼業するようになった業者です。「酒屋なのにお金も借りられる」という状態になりました。
業態の多角化ですね。
室町時代の高利貸しの分類を問われた場合は、「土倉、酒屋」と答えるのが正解です。
鎌倉時代なら「借上」となります。
時代区分が重要です。
刀剣ワールドの解説ページでは、問丸・馬借・土倉について、鎌倉時代の商業発展との関連でわかりやすく説明されています。
借上の仕組みと現代不動産業との共通点
借上の金融手法は、現代の不動産担保融資に通じる部分が多く見られます。土地や建物を担保として融資を行い、返済不能になれば担保物件を取得するという基本構造は変わりません。
代官請負の仕組みも、現代の一括借上げ(サブリース)と類似しています。現代の一括借上げでは、不動産管理会社がオーナーから建物を一括で借り上げ、入居者に転貸する形態です。借上の時代にも、所領の経営能力を買われて代官請負契約を結ぶ例がありました。
ただし重要な違いとして、中世の借上は山門などの権威を背景に強引な債権回収を行うことができた点が挙げられます。現代では法的手続きが整備され、貸金業法や不動産業法などで厳格に規制されています。この規制環境の違いを理解しておく必要があります。
不動産従事者にとって、歴史的な土地担保融資の問題点を知ることは、現代の融資実務におけるリスク管理の参考になります。借上による土地流出が社会問題化し、幕府が規制に乗り出した経緯は、適切な規制の必要性を示す歴史的教訓といえるでしょう。
コトバンクの詳細解説では、借上の複数の意味や時代による変遷について、辞書的な正確さで説明されています。

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