準委任とはIT契約形態の違い請負メリットデメリット

準委任とはIT契約での違い

準委任契約と思っていても損害賠償請求される可能性があります。

この記事の3つのポイント
📋

準委任契約の基本

法律行為以外の業務遂行を目的とした契約形態で、IT開発やシステム保守に多用される

⚖️

請負契約との違い

成果物の完成責任がなく、業務遂行自体に報酬が発生するが善管注意義務は負う

⚠️

不動産業界での注意点

顧客管理システム導入時の契約形態選択ミスで訴訟リスクや追加コスト発生の危険性


<% index %>

準委任契約の定義と特徴

 

準委任契約とは、法律行為以外の業務遂行を委託する契約形態です。IT業界では、システム開発の要件定義や保守運用、コンサルティング業務などで広く使われています。

参考)https://hnavi.co.jp/knowledge/blog/time_and_material_contract/

この契約の最大の特徴は、成果物の完成責任がないことです。受託者は依頼された業務を適切に遂行すれば報酬を受け取れます。例えば、月40時間の作業で10万円という形式で報酬が設定されるケースが多いです。

参考)【フリーランスのITエンジニア向け】システム開発契約書の請負…

つまり業務遂行が基本です。

ただし、成果責任がないからといって何でも許されるわけではありません。受託者には善管注意義務が課され、職業や能力に応じた注意をもって業務を遂行する義務があります。この義務に違反すると、損害賠償請求の対象となります。

参考)準委任契約に契約不適合責任は当てはまる?トラブルへの対応や防…

不動産業界でも、物件管理システムの導入や顧客データベースの構築など、IT関連業務を外部委託する際にこの契約形態が使われます。業務範囲を明確にしておかないと、後でトラブルになる可能性があるため注意が必要です。

参考)準委任契約(業務委託契約)とは何か? 契約書作成時の注意点と…

準委任契約とIT業界での報酬体系

IT業界における準委任契約の報酬体系は、主に工数ベースで算定されます。

具体的には以下のようなパターンがあります。

参考)システム開発委託基本契約(準委任型)のサンプルとポイントの解…

  • エンジニア1名あたり月額定額(標準業務時間を設定)​
  • エンジニア1名あたりの時間単価制​
  • 業務の進行度に応じた支払い​
  • マイルストーン到達ごとの支払い​

例えば若手エンジニアを1名、月140~170時間稼働で月単価60万円という契約が一般的です。140時間を超過または下回る場合は、1時間単位で別途精算します。

参考)【契約書テンプレ付】システム開発の契約形態 -請負と委託(準…

費用の妥当性が明快ですね。

この報酬体系により、発注者は予算管理がしやすくなります。契約期間中は最低限の金額が確保されるため、受託者側も収入の見通しが立てやすいメリットがあります。

参考)【超ざっくり】ITエンジニア向け、開発で使われる契約種別につ…

不動産会社が顧客管理システムの保守運用を外部委託する場合、月2回クライアント先に入り午前中3時間だけメンテナンスするという形式も可能です。柔軟な契約設計ができる点が、準委任契約の強みといえます。

請負契約との違いと不動産業界への影響

準委任契約と請負契約の最大の違いは、成果物の完成責任の有無です。請負契約では成果物を納品する責任が発生しますが、準委任契約では業務遂行自体が目的となります。

参考)エンジニアが知っておくべき請負契約と準委任契約の違い #プロ…

契約不適合責任についても大きな違いがあります。請負契約では納品から5年以内なら修正や損害賠償請求が可能ですが、準委任契約にはこの責任がありません。ただし善管注意義務違反があれば債務不履行として損害賠償責任が発生します。

参考)善管注意義務とは?各分野の範囲例や違反と判断される4つのポイ…

完成義務の有無が鍵です。

契約解除の条件も異なります。準委任契約では双方がいつでも契約を解除できますが、請負契約では発注者のみが解除可能で、損害賠償の支払いが必要になることがあります。

参考)準委任契約とは? 請負契約との違いやメリット・デメリット、注…

不動産業界でシステム開発を委託する際、契約形態の選択を誤ると大きなリスクを抱えます。例えば基幹システム開発を準委任契約で発注したのに、完成を期待していた場合、システムが未完成でも報酬を支払う必要が生じます。逆に請負契約なのに途中で仕様変更を繰り返すと、ベンダー側が契約不適合を主張できず、トラブルになります。

参考)システム開発の委託でよくある「準委任契約」の落とし穴、プロジ…

準委任契約のメリットとデメリット

準委任契約のメリットは、業務遂行における柔軟性の高さです。仕様変更や方針転換に対応しやすく、契約解除も比較的容易に行えます。IT業界では要件が固まっていない段階での開発に適しています。

参考)準委任契約と請負契約の違いとは?メリット・デメリット、注意点…

発注者側から見ると、成果物が不明確になるリスクがあります。どの程度業務が進んでいるのか把握しづらく、評価の曖昧さから報酬の減額交渉や契約終了時のトラブルを招くことがあります。

参考)準委任契約とは?メリット・デメリット、注意点、他の契約形態と…

評価が難しいのが難点です。

受託者側のデメリットとしては、指揮命令権の線引きが難しく、偽装請負のリスクがある点が挙げられます。発注者が過度に細かい指示を出すと、契約の趣旨を逸脱し偽装請負とみなされる危険性があります。特にIT業界やアウトソーシングの現場では誤解が生じやすいため注意が必要です。

不動産会社が物件管理システムの開発を準委任契約で外注する場合、成果保証がないためコストパフォーマンスが読みにくいというデメリットもあります。プロジェクト管理ツールを導入し、定期的な進捗報告を契約書に盛り込むことで、このリスクを軽減できます。

詳しい契約管理の手法については、経済産業省が公開している「情報システム・モデル取引・契約書」を参照すると良いでしょう。

経済産業省 情報システム・モデル取引・契約書

システム開発契約のモデル条文やガイドラインが掲載されており、準委任契約と請負契約の使い分けについて詳細な解説があります。

不動産業界特有の準委任契約リスク

不動産業界でシステム開発を委託する際、契約形態の理解不足が重大なトラブルを招きます。東京高等裁判所の令和3年4月21日判決では、準委任契約であるにもかかわらずベンダーが提案段階からシステムの完成を約束するかのような言葉を発注者に伝えていたケースが問題となりました。

このケースでは、ユーザー企業が基幹業務システムの開発をITベンダーに依頼し、プロジェクトがスタートしましたが、最終的にシステムの安定稼働には至りませんでした。ユーザー側はシステムが完成していないことを理由に契約解除と損害賠償を求めて提訴しました。

契約書の確認が必須です。

別の事例では、プログラム開発契約に基づく開発が中途で頓挫し、ベンダーが準委任契約として作業分の報酬を請求したのに対し、ユーザーは請負契約であり未完成なので報酬は払えないと反論したケースがあります。契約段階で請負か準委任かを明確にしていなかったことが原因です。

参考)システム・ソフトウェア開発契約におけるトラブル事例とリスク対…

不動産会社が顧客管理システムや物件検索システムを導入する際、業務範囲の曖昧さによる追加対応要求もよくある問題です。「準委任契約により業務支援を行う」との趣旨で契約したが、委託者は業務の中にシステム設計やプロトタイプ作成といった「完成」を伴う業務も含まれると誤認していた例もあります。

こうしたリスクを回避するには、契約前に「指揮命令権がどちらにあるのか」「成果物の定義は何か」「報酬発生の条件は何か」を文書で明確にすることが重要です。特に不動産業界では、IT知識が不足している担当者が契約交渉を行うケースもあるため、専門家のレビューを受けることをお勧めします。


IPA 情報処理推進機構 システム開発契約ガイド

IT業界以外の企業がシステム開発を委託する際の契約ポイントをまとめたガイドで、不動産業界の担当者にも参考になる内容です。

準委任契約締結時の注意点とチェックリスト

準委任契約を締結する際は、業務範囲を具体的に定義することが最優先です。「システム保守」という曖昧な表現ではなく、「月2回の定期メンテナンス、障害発生時の対応(24時間以内)、月次レポート作成」のように具体化します。

参考)システム関係委託契約における「請負」と「準委任」 – 弁護士…

報酬の算定方法も明確にすべきです。時間単価制なのか月額定額制なのか、標準業務時間を超過した場合の精算方法、支払いタイミングなどを契約書に記載します。

標準業務時間の設定が鍵です。

善管注意義務の具体的な内容も定めておくと安心です。例えば「業界標準のセキュリティ対策を実施する」「週次で進捗報告を行う」「重要な判断前には委託者に確認する」など、具体的な行動指針を示します。

契約解除の条件と手続きも重要なポイントです。準委任契約はいつでも解除できますが、相手方に不利な時期に解除すると損害賠償責任が生じる可能性があります。契約書には「解除の場合は30日前に書面で通知する」などの条件を盛り込みます。

不動産会社がシステム開発を外注する際のチェックリストは以下の通りです。

✅ 業務範囲が具体的に定義されているか

✅ 報酬の算定方法と支払い条件が明確か

✅ 善管注意義務の具体的内容が記載されているか

✅ 再委託の可否が明記されているか​

✅ 秘密保持条項が含まれているか

✅ 契約解除の条件と手続きが定められているか

✅ 紛争解決の方法(管轄裁判所など)が記載されているか

契約書は必ず法務担当者や弁護士にレビューしてもらいましょう。

知らなかったでは済みません。

契約書のひな形については、日本弁護士連合会が公開している「業務委託契約書の作成ガイド」が参考になります。不動産業界特有のリスクを考慮した条項の追加も検討してください。


揉め事なしのソフトウエア開発契約