相続と名義変更の違い
相続登記を放置すると、あなたの顧客が10万円の過料を払います。
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相続の法的意味と発生タイミング
相続とは、被相続人(亡くなった方)の財産や権利義務が、法律の規定に基づいて自動的に相続人へ承継されることです。
つまり死亡の瞬間に発生します。
参考)https://www.invest-concierge.com/qa/difference-between-inheritance-and-title-transfer
手続きをしなくても権利は移ります。
民法の規定により、配偶者や子どもなどの法定相続人が、遺言がない限り法定相続分に応じて財産を取得する仕組みです。不動産も預貯金も株式も、すべて死亡と同時に相続人のものになります。
参考)相続と名義変更の違いを徹底解説|不動産の手続き・費用・税金の…
ただし、実務上は誰がどの財産を取得するか明確にするため、遺産分割協議を行うのが一般的です。協議が成立するまでは、財産は相続人全員の共有状態となります。
参考)相続登記(名義変更)の手続きの流れについて – 行政書士 本…
つまり相続は自動発生です。
名義変更の実務上の役割と必要性
名義変更とは、不動産登記簿や銀行口座、証券口座などに記載されている所有者名義を、被相続人から相続人へ正式に書き換える手続きのことです。相続によって権利は移転していても、対外的に証明できなければ売却も管理もできません。
どういうことでしょうか?
不動産を例にすると、登記簿上の名義が亡くなった方のままでは、売却契約を結んでも買主は所有権を取得できません。銀行預金も、名義変更なしでは引き出せない仕組みになっています。
参考)https://areps.co.jp/knowledge/how-change-name-inherited-property
名義変更は権利の「見える化」です。相続によって法的に取得した権利を、第三者に対して主張できる状態にする重要な手続きなのです。
手続きをしないと権利行使できません。
相続登記と単純な名義変更の違い
相続登記は、被相続人の死亡を原因とする不動産の所有権移転登記です。一方、単純な名義変更には売買、贈与、離婚による財産分与など、さまざまな原因があります。
参考)https://www.daiwahouse.co.jp/stock/column/souzoku/vol05/
原因によって必要書類が違います。
相続登記では被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書などが必要です。売買による名義変更なら売買契約書と登記識別情報(権利証)が中心で、贈与なら贈与契約書が必要になります。
参考)自分でやる不動産名義変更(相続登記)の方法・流れ・必要書類
税金面でも大きな違いがあります。相続登記の登録免許税は不動産評価額の0.4%ですが、贈与による名義変更は2.0%と5倍です。また相続税と贈与税では課税方式が全く異なるため、生前贈与と相続のどちらが有利かは慎重な試算が必要です。
参考)相続登記(相続による不動産名義変更)の費用と登録免許税
税率の差は非常に大きいですね。
相続と名義変更の手続き上の関係性
相続と名義変更は「権利の承継」と「権利の公示」という別々の段階です。相続が発生した後、名義変更を行うことで初めて権利関係が対外的に明確になります。
順序が重要ということですね。
実務の流れは次の通りです。まず相続発生(被相続人の死亡)により、法定相続人が権利を承継します。次に相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が何を取得するか決定します。その合意内容を遺産分割協議書にまとめ、相続人全員が署名・押印します。
最後に法務局や金融機関で名義変更手続きを行います。不動産なら登記申請、預金なら解約または名義書換、株式なら証券会社への届出が必要です。
名義変更で権利が確定します。
この一連の流れを理解していないと、顧客対応で混乱が生じます。「相続したのに使えない」という相談は、名義変更が完了していないケースがほとんどです。
相続登記における中間省略の特例
数次相続(相続が連続して発生すること)が起きた場合、原則として中間の相続登記をすべて順番に行う必要があります。しかし中間の相続が単独相続であれば、中間の登記を省略して最終相続人へ直接名義変更できる特例があります。
参考)相続登記をしないまま単独相続人が死亡した場合の不動産名義変更
これを中間省略登記といいます。
具体例を見てみましょう。祖父A→父B→子Cと相続が続いた場合、通常はA→BとB→Cの2段階の登記が必要です。ただしBが単独相続人なら、A→Cへ直接登記できます。
中間相続が遺産分割協議で単独承継になったケースも同様です。兄弟3人が相続人でも、協議で1人が不動産を取得すると決めれば、その1人への直接登記が可能になります。
参考)数次相続が発生したときの相続登記の方法や手続の注意点などを解…
登記の手間が半分になりますね。
この特例を活用すれば、登録免許税や司法書士報酬を節約できるため、不動産従事者として顧客に提案する価値があります。ただし中間相続の単独性を証明する書類(遺産分割協議書など)が必要なので、事前準備が重要です。
相続登記義務化による実務への影響
2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記申請しなければなりません。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
過去の相続にも適用されます。
2024年3月31日以前に発生した相続についても、2027年3月31日までに登記を完了させる必要があります。つまり何十年も放置していた不動産も、この期限までに対応しなければ過料の対象になるのです。
参考)<令和7年2月更新>相続登記をしないと10万円の過料?タイム…
不動産従事者にとって、この義務化は顧客対応の最優先事項になります。売却相談を受けた際、登記簿を確認して名義が故人のままなら、まず相続登記を促す必要があります。放置すれば顧客が過料を払うリスクがあるからです。
義務化は遡及適用されます。
ただし過料を払っても相続登記の義務は消えません。過料はあくまで行政罰であり、登記申請義務は別途残り続けます。このため早期対応を顧客に強く勧めるべきです。
相続登記の必要書類と取得方法
相続登記の必要書類は、相続のパターンによって異なります。
基本的には以下の書類が必要です。
被相続人関係の書類
- 出生から死亡までの連続した戸籍謄本(450円/通)
参考)相続した家の名義変更は自分でできる?手続きの流れや費用、必要…
- 除籍謄本・改製原戸籍謄本(750円/通)
- 住民票の除票または戸籍の附票(300円前後)
相続人関係の書類
- 相続人全員の現在戸籍謄本(450円/通)
- 相続人全員の印鑑証明書(300円前後)
- 不動産を取得する相続人の住民票(300円前後)
不動産関係の書類
- 登記事項証明書(500円/通)
- 固定資産評価証明書(300円前後)
書類取得費用は合計1万~2万円程度です。
参考)https://www.authense.jp/souzoku/column/inheritance/200/
遺産分割協議を行った場合は、相続人全員が署名・実印押印した遺産分割協議書が必須です。遺言がある場合は遺言書の原本(公正証書遺言なら正本または謄本)を提出します。
戸籍は本籍地の市区町村役場で取得しますが、遠方なら郵送請求も可能です。請求には定額小為替と返信用封筒を同封します。
書類準備が最大の難関です。
相続登記の費用内訳と計算方法
相続登記の費用は、必ずかかる実費と、専門家に依頼した場合の報酬に分かれます。
登録免許税
固定資産評価額×0.4%(1,000分の4)です。例えば土地2,500万円+建物1,000万円=合計3,500万円の不動産なら、3,500万円×0.4%=14万円になります。
参考)相続登記と登録免許税の非課税(免除)(令和7年(2025年)…
課税価格の1,000円未満は切り捨てです。
書類取得費用
戸籍謄本・住民票・登記事項証明書などの発行手数料で、合計約1万~2万円です。
司法書士報酬
相場は6万~15万円程度です。不動産の数や相続人の人数、遺産分割協議書作成の有無によって変動します。
自分で手続きすれば司法書士報酬は不要ですが、書類の不備で何度も法務局に足を運ぶリスクがあります。一方、専門家に依頼すれば手間が省け、確実に登記が完了します。
総額は自分でやれば約13万円、司法書士に依頼すれば約23万円が目安です(評価額3,000万円の場合)。この10万円の差をどう評価するかは、顧客の時間と知識によって変わります。
費用対効果を比較すべきですね。
相続登記を司法書士に依頼するメリット
司法書士に依頼する最大のメリットは、戸籍収集から登記完了まで一貫して任せられることです。特に相続人が多数いる場合や、被相続人が何度も転籍している場合は、戸籍の収集だけで膨大な時間がかかります。
専門家なら効率的に進めます。
さらに相続人の確定調査も任せられます。戸籍を読み解いて法定相続人を正確に特定し、知らない相続人の存在を見落とすリスクを防げます。遺産分割協議書の作成も依頼できるため、書式の不備で法務局に差し戻される心配がありません。
参考)相続手続は司法書士に依頼すべき?基本から費用まで徹底解説
法務局とのやり取りも代行してもらえます。申請後の補正(訂正)対応や、登記完了後の書類受領まで、すべて司法書士が対応してくれるため、平日に何度も法務局へ行く必要がなくなります。
時間の節約になります。
不動産従事者として顧客に司法書士を紹介する際は、信頼できる専門家を複数確保しておくと、スムーズな対応が可能です。報酬相場を把握し、顧客の状況に応じて「自分でやる」か「依頼する」かを助言できれば、付加価値の高いサービスになります。
相続登記の申請先と手続きの流れ
相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。複数の不動産がある場合、それぞれの管轄法務局に申請が必要です。
管轄は法務局のウェブサイトで確認できます。
手続きの流れは次の通りです。まず必要書類を収集し、遺産分割協議書を作成します。次に登記申請書を作成し、固定資産評価証明書を基に登録免許税を計算します。
登録免許税は収入印紙で納付します。法務局や郵便局で購入し、申請書に貼付します。
申請書と添付書類を法務局に持参または郵送で提出します。オンライン申請も可能ですが、添付書類は別途郵送が必要です。
申請から登記完了まで数週間かかります。完了後、法務局から登記識別情報(昔の権利証に相当)が交付されます。この書類は不動産の売却時に必要なので、大切に保管するよう顧客に伝えましょう。
登記識別情報は再発行できません。
相続した不動産を放置するリスク
相続登記を放置すると、複数のリスクが発生します。まず2024年の義務化により、10万円以下の過料が科される可能性があります。過料を払っても登記義務は消えないため、結局登記をしなければなりません。
痛い出費です。
さらに時間が経つと相続人がさらに亡くなり、数次相続が発生します。すると関係者が増えて遺産分割協議が困難になり、連絡が取れない相続人や認知症の相続人が出るリスクも高まります。
売却や担保設定もできません。登記簿上の名義が故人のままでは、買主は所有権を取得できないため、不動産業者も仲介を断るケースがあります。
固定資産税の納税義務者も曖昧なままです。市区町村は便宜的に相続人代表者に納税通知書を送りますが、実際の負担割合が決まっていないと、相続人間でトラブルになる可能性があります。
早期対応が不可欠です。
不動産従事者として顧客に売却相談を受けた際、登記簿を確認して相続登記が未了なら、まず登記を完了させるよう強く勧めるべきです。放置すれば取引自体が成立しないばかりか、過料のリスクまで負うことになります。
名義変更を怠った場合の税務上の問題
名義変更を怠ると、税務上も問題が生じます。相続税の申告期限は相続開始から10カ月以内ですが、名義変更していなくても申告義務は発生します。
申告を怠れば延滞税や加算税が課されます。
相続税と登記は別の話です。
不動産を売却する際、譲渡所得税の計算で問題が起きる可能性もあります。取得費は被相続人が購入した時の価格を引き継ぎますが、名義変更していないと売主として契約できないため、そもそも売却自体が不可能です。
さらに将来的に相続人が亡くなると、その不動産の評価額が次の相続税の課税対象に含まれます。名義変更せずに放置している間に不動産価格が上昇すれば、次世代の相続税負担が増える可能性があります。
税負担が増えるリスクがあります。
不動産従事者として顧客に税理士を紹介できる体制を整えておくと、相続税申告と相続登記を同時進行でサポートでき、顧客満足度が高まります。司法書士・税理士・不動産業者の連携が、相続不動産のワンストップサービスの鍵です。
参考)相続登記と不動産の名義変更の違い|親が亡くなったときの手続き…
生前贈与と相続の名義変更費用の比較
親が存命中に名義変更する生前贈与と、相続後の名義変更では、費用負担が大きく異なります。
最も大きな違いは登録免許税の税率です。
登録免許税の比較
- 相続:評価額×0.4%
- 贈与:評価額×2.0%
5倍の差があります。
例えば評価額3,000万円の不動産なら、相続登記は12万円、贈与は60万円です。
48万円もの差が出ます。
さらに贈与税と相続税の課税方式も異なります。贈与税は年間110万円の基礎控除を超える部分に累進税率で課税され、最高税率は55%です。一方、相続税は基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)があり、実際に課税される人は限られます。
税負担の差は慎重に試算すべきです。
生前贈与のメリットは、確実に特定の人に財産を渡せることです。相続だと遺産分割協議が必要ですが、贈与なら贈与者と受贈者の合意だけで完結します。
ただし不動産の時価が購入時より大きく上昇している場合、相続で取得したほうが売却時の譲渡所得税が有利になるケースもあります。顧客の状況に応じて税理士への相談を勧めることが、不動産従事者としての適切な対応です。
相続人申告登記という簡易手続き
相続登記の義務化に伴い、新たに「相続人申告登記」という制度が創設されました。これは遺産分割協議が成立していない段階でも、相続人であることを法務局に申告することで、過料を回避できる仕組みです。
暫定的な対応策ですね。
通常の相続登記には遺産分割協議書が必要ですが、相続人申告登記は自分が相続人であることを示す戸籍謄本だけで申告できます。申告後3年以内に遺産分割協議が成立したら、改めて正式な相続登記を行います。
この制度は、遺産分割で揉めている場合や、相続人の一部と連絡が取れない場合に有効です。とりあえず申告しておけば過料のリスクを回避でき、時間をかけて協議を進められます。
期限内対応で過料を回避できます。
ただし相続人申告登記は正式な所有権移転登記ではないため、不動産の売却や担保設定はできません。
あくまで義務違反を防ぐための暫定措置です。
不動産従事者として、協議が難航している顧客には、まず相続人申告登記で過料リスクを回避し、その後じっくり協議を進めるよう助言すると良いでしょう。
これにより顧客の不安を軽減できます。
不動産従事者が押さえるべき顧客対応のポイント
不動産従事者として相続案件に対応する際、以下のポイントを押さえておくと顧客満足度が高まります。
登記簿の事前確認
売却相談を受けたら、必ず登記簿を確認して名義人を把握します。故人名義のままなら、まず相続登記が必要であることを説明します。
期限の明示
相続登記の義務化により3年以内の登記が必要であること、過去の相続も2027年3月31日までに登記すべきことを伝えます。
法的リスクを明確に説明します。
専門家の紹介
司法書士や税理士と連携し、ワンストップでサポートできる体制を整えます。顧客が複数の専門家を自分で探す手間を省けます。
費用の概算提示
登録免許税と司法書士報酬の相場を示し、自分でやる場合と依頼する場合の費用差を説明します。
顧客が判断しやすくなります。
中間省略登記の提案
数次相続が発生している場合、中間省略登記が可能かどうか確認し、費用削減の提案をします。
付加価値の高いサービスになります。
これらの対応により、顧客は安心して相続不動産の売却や活用を進められます。不動産従事者としての専門性と信頼性が高まり、リピートや紹介につながる可能性も高まります。
参考リンク:法務省の相続登記義務化に関する公式情報
相続登記義務化の詳細や正当な理由、過料の運用方針について解説されています。
参考リンク:相続登記の具体的な手続き方法
2024年相続登記が義務化|期限3年・過料10万円のポイント…
相続登記義務化の期限、必要書類、相続人申告登記の詳細について網羅的に説明されています。
