低廉な空き家800万円以下の媒介報酬特例
買主からも33万円請求できると知らずに損している不動産業者が7割います。
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低廉な空き家800万円以下特例の改正経緯
2024年7月1日、国土交通省は「不動産業による空き家対策推進プログラム」に基づき、宅地建物取引業法の報酬規定を6年ぶりに改正しました。改正前の2018年から存在していた「低廉な空家等の媒介特例」は、対象が400万円以下の物件に限定され、売主からのみ最大18万円(税抜)までしか請求できませんでした。
この制度では実務上、現地調査費用や人件費をまかなうことが難しく、不動産業者が低価格物件を取り扱うインセンティブが不足していました。
つまり赤字案件ということですね。
参考)【長崎】低廉な空き家等取引の媒介報酬、上限が実質33万円(税…
そこで今回の改正により、対象範囲を800万円以下に拡大し、報酬上限を30万円(税込33万円)に引き上げました。さらに重要なのは、買主からも特例報酬を受領できるようになった点です。
これは大きな変化です。
総務省のデータによると、2023年時点で日本の空き家は900万戸に達し、空き家率は13.8%と過去最多を記録しています。
空き家流通の促進が急務です。
地方部では不動産事業者の廃業も増えており、低廉物件の流通を支援する仕組みが必要とされていました。
この改正はそうした背景から生まれました。
参考)低廉な空家等(800万円以下)の仲介手数料上限が30万円に変…
低廉な空き家の対象範囲と適用要件
特例の対象となる「低廉な空家等」とは、売買代金または交換に係る宅地建物の価額が800万円以下(税抜)の物件を指します。重要なのは、物件価格のみで判断され、宅地・建物の使用状態を問わない点です。
空き家でなくても対象になります。居住中の物件、戸建て、区分マンション、土地など種類も問いません。ただし、賃貸集合住宅(アパート・マンション)の空き室は事業用のため対象外です。
参考)【法改正】800万円以下低廉な空き家等の対象は土地建物?
具体的な計算例を見てみましょう。売買価格200万円の物件の場合、原則通りの計算では「200万円×5.5%+100万円×4.4%=15.4万円」ですが、特例を適用すれば33万円まで請求可能です。
差額は17.6万円にもなります。
ここで注意が必要なのは、売主・買主双方から最大33万円ずつ、合計66万円まで受領できる点です。従来は売主からのみでしたが、改正により買主からの請求も可能になりました。
収益機会が倍増ということですね。
参考)【2024年7月改正】800万円以下の売買、仲介手数料が上限…
ただし、800万円を1円でも超えると特例は適用されず、通常の報酬計算となります。
この境界線は厳密です。
参考)低廉な空き家を売却した際の仲介手数料はいくら?計算方法を具体…
低廉な空き家特例の媒介契約時の説明義務
特例を適用する際、最も重要なのが媒介契約締結時の説明と合意です。不動産会社は、売主・買主それぞれに対して特例の内容を事前に説明し、合意を得なければなりません。
参考)https://jyuhan.totate.co.jp/qa/commission.html
合意が得られなかった場合、原則通りの計算方法で算出した金額が上限となります。説明を怠ると、後から33万円を請求しても支払いを拒否されるリスクがあります。
これは重大な落とし穴です。
具体的には、媒介契約書に特例適用の旨を明記し、報酬額が通常より高くなる理由を丁寧に説明する必要があります。「空き家対策のための国の施策であり、現地調査や価格査定に相応の費用がかかること」を伝えることが重要です。
国土交通省の資料によると、特例の趣旨は「低廉な空家等の媒介に要する費用を勘案」することにあります。単に報酬を増やすためではなく、実際にかかるコストを適正に反映させる制度です。
参考)https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749923.pdf
売主・買主の理解を得られなければ、せっかくの特例も活用できません。説明資料を事前に準備しておくことをおすすめします。
低廉な空き家の現地調査費用の上乗せルール
特例では、仲介手数料に加えて現地調査費用を上乗せして請求できます。ただし、仲介手数料と現地調査費の合計が30万円(税込33万円)の上限を超えることはできません。
参考)低廉な空き家の仲介手数料(400万円以下の部分につき)改正
現地調査費用の一般的な相場は5~10万円程度といわれています。現地調査とは、物件に出向いて実際の状態、周辺環境、インフラ整備状況などを確認する作業です。登記簿や地図では把握できない情報が多々あります。
具体例を見てみましょう。売買価格500万円、現地調査費7万円(税抜)の場合、原則の仲介手数料は「500万円×4%+2万円=22万円(税抜)」です。これに現地調査費7万円を加えても29万円で、上限30万円以内に収まります。
計算は慎重に行う必要があります。
重要なのは、現地調査費を請求できるのは「売主依頼による現地調査」が発生した場合のみという点です。
買主依頼の調査では上乗せできません。
この違いを理解しておきましょう。
また、物件価格が800万円を超える場合、低廉な空き家に該当しないため、現地調査費を別途請求することはできません。
特例の範囲内でのみ認められます。
現地調査費の内訳は、交通費、測量費、建物診断費など実費相当額です。見積もりを明確にして依頼者に提示することが信頼関係の構築につながります。
低廉な空き家物件の契約不適合リスクと対策
800万円以下の低廉物件は、築年数が古く建物の状態が悪いケースが多いため、契約不適合(旧:瑕疵)リスクが高いという特徴があります。これは不動産従事者にとって最大の注意点です。
具体的なリスクとしては、「リフォーム見積が想定外の高額になった」「床下が腐食していて床全面の交換が必要になった」「シロアリ被害が隠れていて居住できない」といった事例が報告されています。買主が購入後に手放すケースも発生しています。
これは痛い出費です。建物の状態を正確に把握し、買主に詳細に伝えることが紛争防止の鍵となります。インスペクション(建物状況調査)の実施を推奨し、報告書を共有することが有効です。
一方で、低廉物件にはメリットもあります。リノベーション前提で自由度が高く、DIYや古民家活用がしやすい点です。ただし、再建築不可やインフラ未整備の恐れもあるため、事前調査は必須です。
対策としては、契約書に「現状有姿」条項を明記し、買主が建物の状態を十分理解した上で購入することを確認する必要があります。写真や動画で状態を記録しておくことも重要です。
また、売主には契約不適合責任免除の特約を設けることを提案し、買主にはリスクを十分説明した上で合意を得ることが、後のトラブル回避につながります。
透明性が大原則です。
低廉な空き家特例を活用した実務上の独自視点
特例の活用により、これまで大手不動産会社が避けてきた低価格物件にも参入する動きが見られます。従来は上司から「そういう媒介契約は預からないように」と指示が出るほど効率の悪い取引でしたが、報酬上限の緩和で状況が変わりつつあります。
地方の不動産事業者にとっては、事業継続の重要な収益源となる可能性があります。空き家流通のビジネス化が現実的になってきました。
参考)2024年7月1日以降、800万円以下の不動産契約で仲介手数…
ただし、注意点もあります。特例を適用できるのは「売買」と「交換」の媒介のみで、代理の場合は計算方法が異なります。
代理の場合は仲介手数料の2倍となります。
契約形態は確認が必要です。
また、2024年7月改正では「長期の空き家等の貸借媒介」についても特例が設けられました。少なくとも1年超にわたり居住者が不在の物件について、貸主から家賃の2.2倍以内で媒介報酬を受け取れるようになりました。
売買だけでなく賃貸も対象です。
実務上のポイントとして、特例適用物件のデータベースを整備し、空き家バンクとの連携を強化することが効果的です。自治体の空き家対策部門と協力関係を築くことで、案件の紹介を受けやすくなります。
さらに、特例を活用した空き家再生プロジェクトを企画し、リノベーション業者や移住支援団体とネットワークを構築することで、付加価値の高いサービスを提供できます。単なる仲介にとどまらない総合的な提案力が求められます。
<参考リンク>
国土交通省の公式資料「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」では、特例の詳細な要件と計算方法が示されています。
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749923.pdf