土地無償譲渡 税金の仕組みと注意点

土地無償譲渡 税金

個人から法人へ土地を無償譲渡すると譲渡側に所得税が課税されます。

この記事の3つのポイント
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無償譲渡でも税金が発生

個人間の無償譲渡では受け取る側に贈与税、個人から法人へは両者に課税される

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登記費用と取得税の負担

登録免許税は固定資産税評価額の2%、不動産取得税は評価額の3%が原則

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みなし譲渡所得課税のリスク

個人から法人への無償譲渡では時価で譲渡したとみなされ所得税が課される


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土地無償譲渡における税金の基本構造

土地を無償で譲渡する場合、税法上は「贈与」として扱われ、さまざまな税金が発生します。無償譲渡だから税金がかからないと考えるのは大きな誤解です。むしろ、通常の売買とは異なる税務処理が求められるため、不動産従事者としては正確な知識が必要になります。

参考)無償譲渡の会計処理と仕訳の基本

税金の種類は譲渡する側と受け取る側の属性(個人か法人か)によって大きく変わります。個人から個人への譲渡では主に受け取る側に贈与税が課税され、個人から法人への譲渡では両者に税金が発生するのが原則です。

つまり両者に課税です。

取引態様別の課税関係を把握することが、顧客への適切なアドバイスにつながります。特に個人から法人への無償譲渡は、譲渡する個人にとって予想外の税負担が生じるケースが多いため、事前説明が重要です。

参考)土地の譲渡を無償でしたら誰が損する!? タダでもらっても税金…

課税関係の基本パターン

  • 個人→個人:受け取る側に贈与税が課税される
  • 個人→法人:譲渡側にみなし譲渡所得課税、受け取る側に法人税
  • 法人→個人:譲渡側に法人税、受け取る側に所得税
  • 法人→法人:両者に法人税が課税される

贈与税には年間110万円の基礎控除があります。不動産の評価額がこれを超える場合、超過分に対して累進税率(最大55%)が適用されるため、高額な土地の無償譲渡では多額の税負担が生じる可能性があります。

110万円超が分岐点です。

参考)空き家を無償譲渡する方法とは?利点と手放す際の注意点について…

個人から法人への土地無償譲渡と「みなし譲渡所得課税」

個人が法人に土地を無償で譲渡した場合、譲渡した個人には「みなし譲渡所得課税」が適用されます。これは実際には対価を受け取っていなくても、時価で譲渡したものとみなして所得税を計算する制度です。

何も受け取らなくても課税されます。

参考)みなし譲渡とは何か-個人から法人に資産を譲渡するときには要注…

具体例で考えてみましょう。個人が2,000万円で取得した土地を法人に無償譲渡した際、その時点での時価が2,600万円だったとします。この場合、2,600万円-2,000万円=600万円の譲渡益があったとみなされ、その600万円に対して所得税が課税されることになります。

参考)みなし譲渡とは?所得税・消費税が課税されるケースと遺贈時の注…

譲渡側は手元に現金が残らないのに税金を支払う必要があります。この点が個人間の贈与と大きく異なる部分であり、顧客に十分な説明をしないとトラブルの原因になります。

現金はゼロでも納税義務は発生です。

参考)個人から法人への贈与(みなし譲渡)【不動産・税金相談室】

法人側の税務処理も重要です。法人は無償で不動産を取得したため、時価相当額を受贈益として認識し、その受贈益に対して法人税が課税されます。贈与税は個人間の贈与にのみ適用されるため、法人に贈与税が課されることはありません。

参考)個人から法人に贈与する場合

この二重課税とも言える仕組みは、個人から法人への資産移転による課税逃れを防ぐために設けられています。個人間の贈与では課税の繰り延べが認められる一方、個人から法人への贈与では課税を繰り延べず、その時点で課税を確定させる考え方が採用されているのです。

参考)法人と個人に対するみなし譲渡 – 公益社団法人 全日本不動産…

土地無償譲渡における登録免許税と不動産取得税

土地の無償譲渡では、所有権移転登記が必要となり、登録免許税が課税されます。無償譲渡の場合は「贈与」とみなされるため、固定資産税評価額の2.0%が登録免許税として課税されます。売買の場合は1.5%(土地)ですが、贈与は高めの税率です。

参考)土地をタダで譲渡する場合の税金

例えば固定資産税評価額が3,000万円の土地を無償譲渡する場合、登録免許税は3,000万円×2.0%=60万円となります。この税金は通常、不動産を取得する側(譲受人)が負担するのが実務上の慣例です。

60万円は大きな負担ですね。

不動産取得税も重要な税金です。土地を取得した側には、原則として固定資産税評価額の3%の不動産取得税が課税されます。ただし、宅地の場合は評価額を2分の1にする特例措置があるため、実質的な税率は1.5%になります。

登記と取得にかかる税金(評価額3,000万円の土地の場合)

税金の種類 税率 税額
登録免許税(贈与) 2.0% 60万円
登録免許税(売買) 1.5% 45万円
不動産取得税(原則) 3.0% 90万円
不動産取得税(宅地特例適用時) 1.5%相当 45万円

贈与を受ける側は、贈与税だけでなくこれらの税金も負担する必要があります。仮に評価額3,000万円の土地を無償で譲り受けた場合、110万円の基礎控除を差し引いた2,890万円に対して贈与税が課税され、さらに登録免許税60万円と不動産取得税45万円(宅地特例適用時)が加算されます。

合計すると相当な金額です。

土地無償譲渡時の固定資産税の負担と日割り計算実務

固定資産税は、毎年1月1日時点の登記簿上の所有者に対して課税されます。そのため、年度途中で土地を無償譲渡した場合でも、その年度の固定資産税の納税義務は1月1日時点の所有者(譲渡人)にあります。

これは法律で定められた原則です。

しかし実務では、譲渡人と譲受人の間で固定資産税の負担割合を日割り計算で按分するのが一般的な慣例です。これは法律上の義務ではなく、売主と買主の間の合意に基づく処理であり、無償譲渡の場合にも適用されることがあります。

日割り計算は慣例にすぎません。

参考)固定資産税の日割り計算方法はどうする?不動産売却時の流れも解…

日割り計算の方法は、年間固定資産税額を365日で割って1日あたりの額を求め、譲渡人・譲受人の負担日数に応じて按分します。例えば年間20万円、起算日を1月1日、引き渡し日を8月31日とすると、譲渡人負担は「20万円÷365日×243日=約13万3,164円」、譲受人負担は残り「約6万6,836円」となります。

起算日の設定によって負担額が変わるため、事前に双方で合意しておくことが重要です。関東では1月1日起算、関西では4月1日起算が多いという地域差もあります。合意内容を契約書に明記しておけば後々のトラブルを防げます。

無償譲渡の場合、固定資産税の負担をどちらがどの程度受け持つかは、譲渡の条件や双方の関係性によって異なります。顧客に対しては、法律上の納税義務者は1月1日時点の所有者であること、日割り計算は合意に基づく処理であることを明確に説明することが求められます。

低廉譲渡との境界線と贈与税課税の判断基準

無償譲渡ではなく、時価よりも低い価格で土地を譲渡する「低廉譲渡」の場合も、税務上の注意が必要です。所得税法施行令第169条では、譲渡価格が時価の2分の1未満の場合は「著しく低い価額」とされ、税務上は実際の売値ではなく時価で売却したものとみなされます。

時価の半額未満が基準です。

参考)低額譲渡は贈与税の対象に?課税ルールとリスクをわかりやすく解…

不動産業界では、個人間の低廉譲渡について「時価の70%未満」が一般的に「著しく低い」と判断されやすく、「時価の50%以下」ではほぼ確実に贈与とみなされるという実務上の目安があります。これらの基準は、個人の棚卸資産の低廉譲渡や個人から法人への低廉譲渡に関する考え方を参考にしています。

参考)個人間で時価よりも低い金額で不動産やモノを譲渡したときの税金…

具体例として、市場価格1億円の土地を5,000万円で売却した場合、差額の5,000万円が贈与と認定される可能性があります。形式上は売買契約であっても、実質的には贈与と判断され、買い手に贈与税が課税されることになります。

形式より実質で判断されます。

個人から法人への低廉譲渡では、さらに複雑な課税関係が生じます。譲渡価格が時価の50%以上であれば「著しく低廉でない」と判断され、通常の譲渡課税となります。一方、50%未満の場合は時価でのみなし譲渡として扱われ、個人側に譲渡所得税、法人側には受贈益課税が行われます。

参考)低廉譲渡の判断基準と課税関係

低廉譲渡の判断は税務署の判断に委ねられる部分も大きいため、グレーゾーンの取引については事前に税理士への相談を推奨することが重要です。顧客が意図せず税務リスクを抱えることを防ぐため、不動産従事者としては価格設定の段階から慎重なアドバイスが求められます。

公益法人や自治会への土地無償譲渡における特例措置

土地を公益法人や認可地縁団体(自治会など)に無償譲渡する場合、一定の条件下で税制上の優遇措置が適用されることがあります。自治体が施設協力金を財源として土地を取得し、それを自治会に無償譲渡するケースでは、公共性・公益性が認められることが判例でも示されています。

参考)https://www.yuhikaku.co.jp/static_files/serekuto2011_2_sasikae.pdf

特に地方自治体が関与する無償譲渡では、地方自治法に基づく「公益上必要」という要件を満たすことで、適法な処理として認められる可能性があります。町内会館の敷地として無償貸与していた土地を自治会に遺贈した事例など、地域コミュニティの維持・発展に資する譲渡は一定の配慮がなされています。

公共性が判断基準です。

ただし、すべての公益法人や自治会への譲渡が自動的に優遇されるわけではありません。認可地縁団体に該当しない自治会が遺贈により財産を取得した場合は、相続税の課税対象となるケースもあります。法人格の有無や認可の状況によって税務処理が変わるため、事前確認が必須です。

参考)https://www.tokyozeirishikai.or.jp/common/pdf/tax_accountant/bulletin/2018/jan_04.pdf

穴水ニュータウンの宅地無償分譲のように、自治体が直接無償譲渡を行う場合、譲受人は不動産取得税・固定資産税・登録免許税などの公租公課を負担する必要があります。土地代金は無償でも、これらの税金は免除されないのが原則です。

参考)穴水ニュータウン(宅地無償分譲)について|移住・定住のご案内…

不動産従事者としては、公益法人や自治会への譲渡を検討する顧客に対して、税制優遇の可能性と適用要件を正確に伝えることが重要です。また、地方自治体の担当部署や税理士と連携して、適切な手続きを進めるサポート体制を整えることも求められます。

国税庁「贈与税がかからない場合」では公益法人への贈与に関する非課税要件が詳しく解説されています