手付金相場不動産売買金額決め方注意点

少額手付金は仲介手数料で赤字になる

この記事の3つのポイント
💰

手付金の相場は売買代金の5~10%

不動産価格高騰で近年は5%前後が主流。

宅建業者が売主の場合は20%が上限。

⚠️

少額手付は解除リスクが高い

10万円程度の少額手付は買主・売主ともに気軽に解除でき、仲介手数料で赤字になる危険性がある。

📋

保全措置の義務を忘れずに

工事完了前は5%または1,000万円超、完成物件は10%または1,000万円超で保全措置が必須。

手付金相場と不動産売買代金の関係性

不動産取引において手付金は、売買契約が正式に成立したことを証明する重要な金銭です。手付金の相場は売買代金の5~10%が一般的とされていますが、この割合には実務上の明確な理由があります。

3,000万円の物件であれば、150万円から300万円が標準的な手付金額となります。つまり、3,000万円の物件なら150万~300万円です。4,000万円の物件であれば200万~400万円、5,000万円の物件なら250万~500万円が目安になるということですね。

この金額設定には契約の安定性を保つという狙いがあります。手付金が少なすぎると、買主が気軽に手付放棄をして契約を解除するリスクが高まってしまうのです。逆に高すぎると買主の資金負担が重くなり、契約成立そのものが難しくなります。両者のバランスを取るための水準が5~10%なのです。

また、近年は不動産価格が高騰している影響で、実務上は5%前後に設定されることが増えています。物件価格が高額になるほど、10%の手付金は買主にとって大きな負担となるためです。売主が宅地建物取引業者である場合は、宅地建物取引業法により20%が上限と定められています。個人間売買では法的な上限・下限はありませんが、相場から大きく外れた金額設定は避けるべきでしょう。

HOME4Uの解説ページでは、手付金の基本的な役割と相場について詳細に説明されています。

手付金額設定が少なすぎる場合のリスク

10万円程度の少額手付で契約を締結すると、売主にとって深刻なリスクが発生します。買主が手付解除をした場合、売主の手元には手付金10万円しか残りません。

ここで重要なのが仲介手数料の扱いです。不動産仲介業者は売買契約が成立した時点で報酬請求権を得るため、手付解除があっても仲介手数料を請求できる権利があります。例えば3,000万円の物件なら、仲介手数料は「売買代金×3%+6万円+消費税」で計算され、約105万円になります。

つまり、手付金10万円を受け取っても、仲介手数料105万円を支払うと差し引き95万円の赤字になるわけです。

これは非常に痛いですね。

売主が手付解除をする場合も同様に不利です。手付金の倍額(20万円)を買主に返還しても、買主の手元には10万円しか残りません。この金額では契約準備にかかった費用すら回収できない可能性が高いのです。

少額手付のリスクを回避するには、契約前に手付金額を慎重に検討する必要があります。売主の立場では、仲介手数料を上回る手付金額を設定することが基本です。物件価格の5%を下回る提案があった場合、安易な解除を防ぐため売主側から増額を求めるべきでしょう。

少額手付のリスクを解説した記事では、手付解除時の仲介手数料トラブルについて具体的な事例が紹介されています。

手付金と保全措置の義務要件

宅地建物取引業者が自ら売主となる場合、一定額を超える手付金を受領する際には保全措置を講じる義務があります。

これは買主を保護するための重要な制度です。

保全措置が必要となる基準は、物件の工事完了前か完了後かで異なります。工事完了前の物件では、手付金等が売買代金の5%を超える場合、または1,000万円を超える場合に保全措置が必要です。工事完了後の物件では、手付金等が売買代金の10%を超える場合、または1,000万円を超える場合に保全措置が義務付けられます。

具体例で見てみましょう。3,000万円の未完成物件で手付金200万円を受領する場合を考えます。3,000万円の5%は150万円ですから、200万円はこれを超えています。

つまり保全措置が必要です。

一方、3,000万円の完成物件で手付金200万円を受領する場合はどうでしょうか。3,000万円の10%は300万円なので、200万円は10%以下です。

また1,000万円も超えていません。

保全措置は不要となります。

保全措置を講じない場合、買主は手付金等を支払う必要がありません。これは宅地建物取引業法第41条4項および第41条の2第5項で明確に定められています。

保全措置の方法には、銀行等による保証、保険事業者による保証保険、指定保管機関による保管があります。全国宅地建物取引業保証協会や不動産保証協会が提供する手付金等保管制度を利用するのが一般的です。手続きには時間がかかるため、契約スケジュールを組む際には余裕を持った計画が必要になります。

全宅保証の手付金等保管制度では、保全措置の具体的な仕組みと申込方法が説明されています。

手付金相場の地域別・物件種別の実務傾向

手付金の実務相場は、地域や物件の種類によって微妙に異なる傾向があります。特に東京都心部の中古マンション取引では、物件価格の3~5%程度に設定されるケースが増えています。

これは首都圏の不動産価格高騰が背景にあります。例えば1億円のマンションで10%の手付金を設定すると1,000万円になってしまい、買主の資金準備が困難になるためです。5%の500万円でも相当な金額ですが、これが現実的な上限となっています。

新築マンションでは、デベロッパーが売主として統一的な基準を設けていることが多く、5~10%の範囲内でやや高めに設定される傾向があります。建売住宅も同様に、売主である建築会社や不動産会社の方針で5~10%が基本となります。

一方、個人間の中古戸建て売買では、売主と買主の交渉により柔軟に決められます。地方都市では物件価格が比較的低いため、金額ベースで100万~200万円の固定額を設定するケースも見られます。1,500万円の物件で手付金150万円なら10%、2,000万円の物件で手付金150万円なら7.5%といった具合です。

投資用不動産の取引では、買主が投資家であることから資金力が比較的高く、10%またはそれに近い割合で設定されることが多い傾向にあります。収益物件の売買では契約の確実性が重視されるため、手付金を高めに設定して安易な解除を防ぐ狙いがあるのです。

ただし地域差があるものの、基本的には5~10%の範囲内で設定されることに変わりありません。相場から大きく外れた金額設定は、取引相手に不信感を与える可能性があるため注意が必要です。

手付金減額交渉への対応と売主側の判断基準

買主から手付金の減額交渉を受けた場合、売主としてどう対応すべきか悩むケースがあります。手付金は法的に下限が定められていないため、理論上は極端な減額も可能です。

しかし安易な減額は大きなリスクを伴います。

減額交渉があった場合、まず買主の購入意欲と資金力を見極める必要があります。手付金の準備が困難ということは、住宅ローンの頭金や諸費用の支払いにも不安がある可能性を示唆します。契約後に資金トラブルで解除となるリスクが高いということですね。

他に購入希望者がいる物件であれば、減額交渉に応じる必要性は低くなります。適正な手付金を用意できる別の買主を探した方が、取引の安全性が高まるためです。一方、長期間売れ残っている物件や早期売却を希望する場合は、ある程度の減額を検討する余地があります。

ただし減額する場合でも、最低限のラインを設定することが重要です。前述のとおり、仲介手数料を下回る手付金では手付解除時に赤字になってしまいます。物件価格の3~5%、または仲介手数料の1.5倍程度を最低ラインとして設定するのが実務的な判断基準となるでしょう。

減額交渉への対応を仲介業者と相談することも効果的です。経験豊富な不動産会社であれば、買主の本気度や市場動向を踏まえた適切なアドバイスをしてくれます。契約条件全体のバランスを考慮しながら、総合的に判断することが求められます。

買主側の視点では、手付金の減額交渉は可能ですが、売主に不信感を与えないよう慎重に進めることが大切です。単に「お金がない」という理由ではなく、住宅ローンの承認待ちで手元資金が限られているなど、具体的な事情を説明すると理解を得やすくなります。

手付解除と仲介手数料請求の関係

手付解除が行われた場合の仲介手数料の扱いは、不動産実務において重要なテーマです。結論から言えば、手付解除があっても仲介業者は原則として仲介手数料を請求できます。

仲介手数料は売買契約が成立した時点で発生する成功報酬です。民法や商法の原則に基づけば、仲介によって契約が成立すれば報酬請求権が発生し、その後の契約解除は報酬請求権に影響を与えないとされています。

ただし実務では、全額を請求できるとは限りません。手付解除の場合、売買の目的が最終的に達成されていないため、裁判例では報酬額の減額が認められるケースがあります。具体的には、約定報酬額の50%程度に減額されることが多い傾向にあります。

不動産会社によっては、顧客との継続的な関係を重視して手付解除時の報酬を減額または免除する方針を取っているところもあります。媒介契約書に手付解除時の報酬の取り扱いを明記している場合もあるため、契約前に確認しておくことが重要です。

売主の立場では、手付解除のリスクを考慮して手付金額を設定する際、仲介手数料の支払い可能性も織り込んでおく必要があります。買主の手付放棄で契約が解除された場合、手付金を受け取っても仲介手数料の支払いで実質的な利益がマイナスになる可能性があるからです。

特に少額手付で契約している場合は要注意です。手付金50万円で契約した3,000万円の物件が手付解除された場合、仲介手数料の50%である約50万円を請求されると、手元に残る金額はほぼゼロになってしまいます。

仲介業者の立場では、手付解除のリスクを見据えて適切な手付金額を売主・買主双方に助言する責任があります。少額手付を提案された場合は、解除リスクと仲介手数料の関係を丁寧に説明し、適正な金額設定を促すことが求められるでしょう。

全日本不動産協会の見解では、手付解除時の報酬請求について法的根拠と実務対応が解説されています。