違約手段と解除方法の注意点

違約手段と契約解除

契約解除に催告が必要と思っていませんか?

この記事の3つのポイント
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違約解除の成立要件

契約違反の事実、違法性、催告の3要件を満たした場合に違約解除が可能となり、違約金は売買代金の10~20%が一般的

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手付解除との違い

手付解除は履行着手前まで理由なく解除可能だが、違約解除は債務不履行を理由とし催告が必要

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宅建業法の制限

宅建業者が売主の場合、違約金と損害賠償の合計は売買代金の20%が上限で、それを超える部分は無効

違約手段の基本概念と契約解除の関係

不動産売買契約において違約手段とは、契約当事者の一方が契約上の義務を履行しない場合に、相手方が契約を解除したり損害賠償を請求したりする法的な救済手段のことです。この仕組みは取引の安全性を確保し、当事者間の権利義務を明確にする役割を果たしています。

違約手段には主に「契約解除」と「違約金請求」の2つがあります。契約解除とは、売買契約そのものを白紙に戻す法的行為を指します。一方、違約金請求は契約違反によって発生した損害を金銭で補填する手段です。不動産業従事者として理解しておくべきは、これらの手段が契約書に明記されているかどうかで、実際の運用が大きく変わってくる点でしょう。

契約解除には複数の種類があります。当事者の合意による「合意解除」、手付金を放棄または倍返しする「手付解除」、そして契約違反を理由とする「違約解除」です。それぞれ成立要件や効果が異なるため、状況に応じて適切な手段を選択する必要があります。

例えば3000万円の不動産売買契約で買主が代金を支払わない場合、売主は違約解除を主張して契約を解除し、違約金として300万円から600万円程度を請求できるのが一般的です。

これは売買代金の10~20%に相当します。

この金額設定には、契約違反を抑止する効果と、実際の損害を補填する両方の意味が込められています。

実務では、違約手段を行使する前に当事者間で話し合いによる解決を試みることも重要です。しかし法的権利を明確に理解していなければ、適切な交渉も困難になります。

つまり基本が重要ということですね。

違約手段における手付解除と違約解除の違い

不動産売買契約における解除方法には、性質の異なる2つの重要な手段があります。

手付解除と違約解除です。

この2つは混同されやすいのですが、成立要件も法的効果も全く異なるため、不動産業従事者は正確に区別して理解する必要があります。

手付解除は、契約時に交付された手付金を基に行われる解除方法です。買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を返還することで、理由を問わず契約を解除できます。ただし、この権利を行使できるのは「相手方が履行に着手するまで」という時間的制限があります。履行の着手とは、単なる準備行為ではなく、客観的に外部から認識できる形で履行行為の一部を実行することを指します。

例えば売主が既に物件の引渡しを完了している場合や、買主が売買代金の一部を支払った後では、手付解除は認められません。手付解除は契約違反の有無とは無関係に行使できる権利であり、当事者の都合による解約を想定した制度です。いわば「気が変わった」という理由でも使える解除方法ということですね。

一方、違約解除は契約違反を理由とする解除方法です。

成立には3つの要件が必要になります。

第一に契約違反の事実があること、第二にその違反が違法であること、第三に相手方に履行を催告したことです。催告とは、相手方に対して書面で義務の履行を促し、一定期間内に履行しなければ契約を解除する旨を通知する手続きを指します。

実務では配達証明付き内容証明郵便を使用するのが一般的です。「本書面到着後7日以内に売買代金をお支払いください。お支払いいただけないときは、右期間経過をもって本契約を解除します」といった内容を記載します。この催告期間は通常7日から10日程度が相当とされていますが、物件の性質や状況によって柔軟に設定できます。

2つの解除方法の大きな違いは、違約金の扱いにあります。手付解除では手付金の放棄または倍返しで済みますが、違約解除では契約書に定められた違約金全額を請求できます。5000万円の物件で手付金が500万円だった場合、手付解除なら買主は500万円の損失で済みます。しかし違約解除では違約金が売買代金の20%と設定されていれば、1000万円の支払い義務が発生するのです。

損失額が倍になるわけです。

さらに重要な点として、手付解除では実損害の証明は不要ですが、違約解除後に違約金を超える損害が発生していても、契約書で「違約金の増減を請求できない」と定めていれば追加請求はできません。これは紛争の長期化を防ぐための実務上の工夫です。

違約手段の成立要件と催告の必要性

違約解除を適法に行うためには、法律上定められた要件を厳格に満たす必要があります。この要件を満たさないまま契約解除を主張しても、法的には無効となり、逆に自分が契約違反の責任を問われる可能性すらあるのです。

第一の要件は「契約違反の事実があること」です。これは単に約束を守らなかったというだけでなく、契約書に明記された義務を履行していない状態を指します。売主であれば引渡期日までに物件を引き渡さない、所有権移転登記に必要な書類を準備しない、抵当権を抹消しないといった行為が該当します。買主であれば売買代金を期日までに支払わない、融資の申込手続きを怠るといった行為です。

ただし、すべての義務違反が解除事由になるわけではありません。例えば境界明示義務や物件状況報告書の交付義務に違反しても、それだけで直ちに契約解除が認められるとは限りません。義務の重要性や実質的な損害の程度によって判断されます。契約の本質的な部分か付随的な部分かが基準です。

第二の要件は「契約違反が違法であること」です。たとえ契約違反の事実があっても、それが違法でなければ解除権は発生しません。不動産売買では引渡しと代金支払いが同時履行の関係にあるため、買主が代金を支払わないという契約違反があっても、売主が物件の引渡しを拒んでいれば、買主の契約違反は違法とはなりません。

お互い様ということです。

同時履行の抗弁権という法律用語がありますが、これは「相手が義務を果たすまで自分も義務を果たさなくてよい」という権利です。

民法533条に規定されています。

実務では、決済日に双方が決済場所に集まり、書類と代金を同時に交換することで、この問題をクリアしています。

第三の要件は「催告を行うこと」です。これは契約解除の正当性を確保するために極めて重要な手続きです。相手方に対して書面で義務の履行を促し、一定の猶予期間を与えた上で、それでも履行されない場合に初めて契約解除ができるという仕組みです。この催告を経ずに一方的に契約解除を通知しても、法的には無効となります。

ただし例外的に催告が不要なケースもあります。民法542条では、債務の全部が履行不能である場合、債務者が明確に履行を拒絶している場合、定期行為で期限を過ぎた場合などが規定されています。例えば売主が物件を第三者に売却してしまい所有権が移転した場合は、履行不能ですから催告なしで解除できます。買主が「絶対に買わない」と明言している場合も同様です。

無駄な手続きは省略できるということですね。

催告の際に重要なのは、履行を求める内容と期限を明確に記載することです。「速やかに支払ってください」といった曖昧な表現では不十分で、「令和○年○月○日までに」と具体的な日付を指定する必要があります。この期限設定は「相当な期間」である必要があり、通常は7日から14日程度が妥当とされています。

実務上のポイントとして、催告を行う側も自己の債務を履行する準備を整えておく必要があります。

これを「履行の提供」といいます。

売主が違約解除を主張するなら、物件を引き渡せる状態にして決済日に決済場所で待機する必要があります。これを怠ると、相手方から「あなたも義務を果たしていない」と反論され、解除が認められなくなる可能性があります。

違約手段における違約金の相場と法的制限

不動産売買契約における違約金の設定は、契約の安定性を保つための重要な要素です。違約金には契約違反を抑止する効果と、実際に発生した損害を補填する効果の両方があります。

違約金の相場は、一般的に売買代金の10%から20%の範囲内で設定されるのが実務上の慣行です。

この割合には明確な根拠があります。

不動産取引では契約から引渡しまでに一定期間があり、その間に相手方が契約違反をした場合、再度買主を探すコストや機会損失が発生します。仲介手数料は売買代金の3%プラス6万円ですから、両手取引でも6%程度です。これに加えて時間的損失や価格変動リスクを考慮すると、10~20%という水準が妥当と判断されているのです。

例えば4000万円の中古マンションの売買契約で違約金を20%に設定すれば、800万円となります。買主がローン審査に通らず融資特約も適用されない状況で契約を破棄すれば、この金額を支払う義務が生じます。売主の立場では、この金額で次の買主を探すまでの損失をカバーできるという計算です。

ただし違約金の設定には法的制限があります。最も重要なのが宅地建物取引業法38条の規定です。売主が宅建業者である場合、損害賠償額の予定と違約金を合算した額が売買代金の20%を超える定めは無効となります。これは消費者保護の観点から設けられた強行規定で、当事者間の合意があっても超過部分は認められません。

具体的には、宅建業者が売主で一般消費者が買主の場合、契約書に「違約金は売買代金の30%とする」と記載しても、20%を超える10%分は法的に無効です。この制限は片面的強行規定と呼ばれ、宅建業者を保護するものではなく、消費者のみを保護する目的で設けられています。

一方、売主買主ともに宅建業者でない個人間取引や、買主が宅建業者の場合には、この20%制限は適用されません。理論上は50%でも80%でも当事者間で合意すれば有効です。ただし民法90条の公序良俗違反に該当する場合は無効となります。売買代金の80%という違約金は、実質的に契約解除を不可能にする水準であり、公序良俗違反と判断される可能性が高いです。

消費者契約法による制限も考慮する必要があります。消費者契約法9条1号では、事業者と消費者の契約において、解除に伴う損害賠償額の予定または違約金の定めは「平均的な損害額」を超える部分が無効とされています。不動産売買では宅建業法の20%制限がより厳格なため、通常は宅建業法が優先適用されますが、個人売主と消費者買主の取引では消費者契約法が適用される可能性があります。

違約金条項を契約書に記載する際の実務上のポイントとして、「違約金の増減を請求できない」という文言を入れるのが一般的です。これは損害賠償額の予定条項と呼ばれ、実際の損害額が違約金より多くても少なくても、その差額を請求できないとする定めです。この条項により、損害額の立証という面倒な手続きを省略でき、紛争の早期解決につながります。

実損額を証明する手間が省けるわけです。

宅地建物取引業法第38条の条文はこちら

こちらの条文には、宅建業者が売主の場合における損害賠償額の予定と違約金の上限規制について詳しく記載されています。不動産業従事者として必ず確認しておくべき重要な法令です。

違約手段を巡る実務トラブルと対策

不動産取引の現場では、違約手段の行使を巡って様々なトラブルが発生しています。理論上は明確に見える契約解除や違約金請求も、実際の場面では予想外の問題が起こるものです。

最も多いトラブルが「履行の着手」の判断に関するものです。手付解除は相手方が履行に着手するまで可能ですが、何をもって履行の着手とするかで争いになるケースが後を絶ちません。売主が引越業者に見積もりを依頼しただけでは履行の着手とは認められません。しかし既に引越しを完了し物件を空けている場合は、明らかに履行の着手です。その中間の段階、例えば引越代金を支払った段階や、荷物の一部を運び出した段階はどうなるのか。判例では「客観的に外部から認識できる形で履行行為の一部をなした」ことが基準とされています。

具体例として、買主が住宅ローンの本審査を申し込んだだけでは履行の着手とはなりません。しかし金融機関から融資承認が下りて、実際に売買代金の一部を支払った場合は履行の着手となります。この境界線は微妙で、当事者間で認識が食い違うことが多いのです。トラブルを避けるため、契約書に「手付解除期日は令和○年○月○日とする」と明記し、履行の着手とは無関係に期限を設定する方法が推奨されます。

期限を明確にすれば争いは起きませんね。

次に多いのが催告の不備によるトラブルです。違約解除を主張したものの、催告手続きが不適切だったため解除が無効と判断されるケースです。よくある失敗例として、催告期間が短すぎる場合があります。「明日までに支払え、さもなくば解除する」という内容では、相手方に履行の機会を与えたとは言えません。判例では最低でも1週間程度の猶予期間が必要とされています。

また催告の内容が不明確な場合も問題です。「速やかに支払ってください」という表現では、具体的にいつまでに何をすべきかが不明確です。「令和○年○月○日午後5時までに、当社指定口座に売買代金残金○○円を振り込んでください」と具体的に記載する必要があります。この点を疎かにすると、後で裁判になった際に催告が無効と判断されるリスクがあります。

さらに深刻なトラブルとして、違約解除後の連絡が取れなくなるケースがあります。内容証明郵便で催告を行い、期限が過ぎたので契約解除を通知したものの、相手方が行方不明になってしまう。手付金は受領済みだが違約金の差額を支払わない、あるいは物件を占有したまま退去しない。このような状況では、最終的に弁護士に依頼して訴訟や強制執行の手続きを取らざるを得なくなります。

ある実例では、買主が契約を履行せず連絡も取れなくなったため、売主が弁護士に依頼して違約金の回収を図りました。訴訟には6ヶ月、強制執行にさらに3ヶ月を要し、最終的に違約金を回収できたものの、弁護士費用や時間的コストを考えると割に合わない結果となりました。

金額を回収できても時間は戻りません。

こうしたトラブルを未然に防ぐための実務上の対策がいくつかあります。第一に、契約締結時に相手方の資力や信用状態を可能な限り確認することです。買主であれば住宅ローンの事前審査承認を契約の条件とする、売主であれば登記簿謄本で担保権の状況を確認するといった基本的なチェックが重要です。

第二に、契約書の解除条項を詳細に記載することです。どのような場合に解除できるのか、催告期間は何日か、違約金はいくらか、原状回復の方法はどうするか。これらを具体的に明記しておけば、後の紛争を最小限に抑えられます。

曖昧な表現は避けるということです。

第三に、トラブルの兆候が見えた時点で早めに専門家に相談することです。相手方の対応が怪しいと感じたら、契約解除の手続きを進める前に弁護士や宅建士に相談し、適切な手順を確認すべきです。自己判断で強硬に進めると、逆に自分が不利な立場に追い込まれる可能性があります。

不動産業従事者として重要なのは、違約手段はあくまで最後の手段であるという認識です。まずは当事者間での誠実な話し合いによる解決を試み、それが不可能な場合にのみ法的手段に訴える。この原則を守ることが、長期的な信頼関係の構築と円滑な業務遂行につながります。