代金減額請求条文の要件と実務の留意点

代金減額請求条文の内容と権利行使

催告せず即座に減額請求すると買主保護が後退する

この記事の3ポイント
📋

民法563条が定める代金減額請求権

契約不適合時の買主の権利として追完請求後の代金減額を規定、催告不要の例外4類型も明示

⚖️

売主帰責事由は不要だが買主帰責事由で消滅

代金減額は売主の過失を問わず請求可能、ただし買主に原因があれば権利行使不可

1年以内の通知が権利保全の絶対条件

契約不適合を知った時から1年以内に通知しないと追完・減額・解除・損害賠償の全権利が失効

代金減額請求の条文規定と民法563条の構造

 

民法563条は、契約不適合があった場合の買主の代金減額請求権を規定しています。この条文は2020年4月施行の改正民法で新設されたもので、従来の瑕疵担保責任では認められていなかった権利として注目を集めました。

条文の第1項では、民法562条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができると定めています。

つまり原則として追完催告が前提です。

第2項は催告不要の例外を4つ列挙しています。履行の追完が不能であるとき、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき、契約の性質又は当事者の意思表示により特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき、そして買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるときの4つです。

第3項は買主の帰責事由による免責規定です。不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は代金の減額請求をすることができないと明記されています。つまり買主側に原因がある場合、この権利は行使できません。

民法563条の詳しい条文解説と判例(クレアール司法書士講座)

代金減額請求の追完催告要件と無催告行使

代金減額請求は原則として追完催告を経る必要があります。買主は相当の期間を定めて履行の追完を催告し、その期間内に売主が追完しない場合にはじめて代金減額を請求できる仕組みです。この「相当の期間」については、不適合の内容や修補の難易度によって個別に判断されることになります。

ただし催告不要で直ちに代金減額請求ができる場合が4つあります。

第一に履行の追完が不能であるときです。

例えば建物の主要構造部分に致命的な欠陥があり修補が技術的に不可能な場合がこれに当たります。

第二に売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したときです。売主が明確に「修理しない」と意思表示した場合、買主に催告を強いる必要はありません。第三に定期行為の場合において売主が履行の追完をしないでその時期を経過したときです。結婚式場や季節商品など特定の日時に意味がある契約では、その時期を過ぎれば催告の意味がなくなります。

第四に買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるときです。売主の経営状態や過去の対応状況から追完が期待できない場合がこれに該当します。不動産取引では売主が倒産寸前であるような状況が典型例でしょう。

無催告での代金減額請求が可能な状況を見極めることは実務上極めて重要です。誤って催告を省略すれば権利行使が無効になるリスクがありますし、逆に催告不要な場面で時間を無駄にすることも避けなければなりません。契約書で催告不要の範囲を明確化しておく対応も有効です。

代金減額請求における売主帰責事由と買主帰責事由

代金減額請求の特徴の一つは、売主の帰責事由が不要である点です。損害賠償請求では債務者の帰責事由が要件とされますが(民法415条1項ただし書)、代金減額請求ではそのような制限がありません。売主に過失がなくても、契約不適合があれば買主は代金減額を請求できます。

この仕組みは契約の対価的均衡の回復という代金減額請求の性質から説明されます。買主は契約で合意した品質や数量の目的物に対して代金を支払う約束をしたのですから、実際に引き渡されたものがそれに満たない場合、代金も減額されるべきだという考え方です。売主の落ち度とは無関係に対価の調整を図る制度なのです。

一方で買主の帰責事由がある場合は代金減額請求ができません。

民法563条3項が明確に規定しています。

例えば買主が指定した材料に問題があったために契約不適合が生じた場合や、買主の不適切な保管により目的物が劣化した場合などがこれに当たります。

実務では買主帰責事由の有無が争点になることが少なくありません。不動産取引では、買主が事前に現地を確認していた場合や、買主側の設計ミスが関係している場合など、帰責事由の判断が微妙なケースがあります。契約書で想定される買主帰責事由のパターンを列挙しておくと紛争予防に役立ちます。

買主帰責事由の立証責任は売主側にあると解されています。売主が代金減額請求を拒む場合、買主に帰責事由があることを売主が証明しなければなりません。

証拠の保全が重要です。

代金減額請求の1年以内通知義務と期間制限

代金減額請求を含む契約不適合責任の追及には期間制限があります。民法566条は、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければならないと規定しています。この通知を怠ると、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除のすべての権利が失われます。

「知った時」の解釈が実務上重要です。単に不具合の存在を認識しただけでは足りず、それが契約不適合に該当することまで認識することが必要だという見解が有力です。ただし厳密な法的評価までは不要で、契約内容と異なることを認識すれば足りるとされます。

「通知」の内容についても注意が必要です。具体的な請求内容(修理してほしい、代金を減額してほしいなど)まで特定する必要はなく、単に「契約不適合がある」という事実を通知すれば権利は保全されます。ただし後日の紛争を避けるため、どのような不適合があるのか具体的に記載した書面を配達証明付き内容証明郵便で送付するのが実務の定石です。

1年という期間は比較的短期です。引渡し後1年ではなく「知った時から1年」である点に注意してください。隠れた不適合の場合、引渡しから数年後に発見されることもありますが、そこから1年以内に通知すれば権利行使は可能です。

ただし消滅時効の制限もあります。民法166条により、権利を行使することができる時から10年、または権利を行使することができることを知った時から5年で消滅時効にかかります。1年以内に通知して権利を保全しても、その後放置すれば時効で権利が消滅する可能性があります。通知後は速やかに具体的な請求や交渉を進めることが重要です。

契約不適合責任の期間制限の詳細解説(BUSINESS LAWYERS)

代金減額請求の算定方法と不動産実務での計算基準

代金減額請求により実際にいくら減額されるのかは、実務上最も関心の高い論点です。民法563条は「その不適合の程度に応じて」代金の減額を請求できると規定するのみで、具体的な算定方法は示していません。

解釈に委ねられている状況です。

学説では主に2つの考え方が対立しています。第一は「契約時の主観的価値減少説」で、契約締結時点での当事者の主観的評価を基準に、適合品の価値と不適合品の価値の差額を減額分とする考え方です。第二は「引渡時の客観的価値減少説」で、引渡時点での市場価格を基準に、適合品と不適合品の価値差を算定する方法です。

不動産取引の実務では、修補可能な不適合については修補費用相当額を減額分とする運用が一般的です。例えば外壁の亀裂を修理するのに200万円かかる場合、200万円の代金減額が認められるという考え方です。これは買主が修補費用を負担せずに済むようにするという実務的配慮に基づいています。

数量指示売買の場合は計算が比較的明確です。1平方メートルあたり300万円で100平方メートルの土地を売買する契約で、実測が95平方メートルだった場合、5平方メートル×300万円=1500万円の減額請求が認められます。

面積不足の割合に応じた代金減額です。

ただし修補不能な場合や、建物の構造的欠陥など修補費用が売買代金を上回るような場合は、別の算定方法を検討する必要があります。契約締結時に当事者が想定していた価値と実際の価値の差額を算定することになりますが、これは鑑定評価などの専門的判断を要する難しい作業です。

実務的には、契約書で代金減額の算定方法をあらかじめ定めておく対応が推奨されます。「修補費用相当額とする」「鑑定評価額の差額とする」などと明記しておけば、後日の紛争を大幅に減らせます。宅地建物取引業者が売主の場合、買主に不利な算定方法は宅建業法40条により無効になる可能性があるため注意が必要です。


ナカバヤシ 賞状額縁 金ケシ(樹脂製) JIS A4判 フ-KWP-33 N