権利証登記識別情報いつから移行か完全ガイド

権利証から登記識別情報への移行時期

登記完了から3ヶ月受取らないと登記識別情報は法務局に破棄されます。

この記事の要点
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移行開始日

平成17年3月7日に新不動産登記法施行、平成20年7月14日に全国完全移行

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法務局ごとに異なる指定日

各法務局のオンライン指定日により権利証から登記識別情報への切替時期が変わる

⚠️

紛失時の対処コスト

本人確認情報作成で司法書士費用5万円~10万円、事前通知制度は無料だが時間がかかる

権利証から登記識別情報への制度変更の背景

 

平成17年3月7日に不動産登記法が改正され、従来の登記済権利証(通称「権利証」)に代わり、登記識別情報という新しい制度が導入されました。この改正の最大の目的は、登記手続のオンライン化に対応することです。

従来の権利証は、和紙に登記申請書が記載され、最後に法務局の赤い「登記済」の印鑑が押印された紙媒体の書類でした。この書類そのものに権利を証明する効力がありました。一方、登記識別情報は12桁の英数字で構成されるパスワード形式です。つまり紙自体ではなく、その紙に記載されたパスワード(符号)に意味があります。

オンライン申請では紙の書類を提出できないため、パスワード形式への移行が必須でした。登記のIT化により、申請から完了までの時間短縮、書類保管スペースの削減、情報管理の効率化といったメリットが生まれています。

不動産業従事者にとって、この制度変は取引の現場で日常的に関わる重要事項です。顧客が所有する不動産の取得時期により、権利証と登記識別情報のどちらが発行されているかが決まります。

法務省「新不動産登記法Q&A」

登記識別情報が発行される具体的な時期と法務局指定日

平成17年3月7日に不動産登記法が施行されましたが、全国の法務局で一斉に登記識別情報制度が始まったわけではありません。各法務局が「オンライン指定庁」として個別に指定された日から、その法務局管轄内の不動産登記で登記識別情報の発行が開始されました。

最も早い例では、平成17年3月22日にさいたま地方法務局上尾出張所がオンライン指定庁となりました。その後、各地の法務局が順次指定され、平成20年7月14日までに全国すべての登記所がオンライン指定庁となっています。

つまり全国完全移行です。

具体例を見てみましょう。東京法務局本局は平成17年12月5日、横浜地方法務局本局は平成17年11月28日、大阪法務局本局は平成17年9月26日にそれぞれオンライン指定されています。名古屋法務局本局は平成17年8月29日と比較的早い時期でした。

この指定日以降に登記申請された不動産については、登記識別情報が通知されます。指定日前に登記された不動産の所有者は、従来の権利証を保有しています。不動産業務では、取引物件の登記年月日を確認し、管轄法務局の指定日と照合することで、どちらの形式かを判断できます。

判断を誤ると決済当日のトラブルにつながります。売主が「権利証がない」と言った場合、本当に紛失したのか、そもそも登記識別情報しか発行されていないのか、正確な判断が求められます。

司法書士法人関根事務所「登記識別情報いつから一覧 法務局オンライン指定庁一覧」

権利証と登記識別情報の実務上の違いと取扱い

権利証と登記識別情報は、役割は同じでも形式と取扱いが大きく異なります。不動産業従事者として、この違いを正確に理解していないと顧客への説明ミスや取引トラブルにつながるリスクがあります。

権利証は紙媒体そのものに効力があるため、原本の提出が必須です。

コピーでは登記申請できません。

一方、登記識別情報は12桁の符号(パスワード)に意味があり、紙は単なる通知書に過ぎません。登記申請時には、その符号を登記申請書に記載するか、封筒に入れた書面で提出します。

登記識別情報通知書には、目隠しシールまたは折込式で符号が隠されています。平成27年2月23日からは、QRコードも追加されました。このQRコードにより、オンライン申請時にスキャンして符号を読み取れるようになっています。

開封のタイミングも重要です。シールを剥がすのは、売却・贈与・担保設定など具体的な登記手続の直前です。

通常は司法書士が登記申請時に開封します。

好奇心で早期に開封してしまう所有者もいますが、開封自体は登記の効力に影響しません。ただし符号が第三者に知られるリスクが高まります。

保管方法については、印鑑登録証(印鑑カード)・実印とは別の場所に保管することが推奨されます。これらを一緒に保管すると、盗難時に不正登記のリスクが高まるためです。

銀行の貸金庫での保管も一つの方法です。

登記識別情報には、所有者が「いらない(不通知の申出)」「もらったけど失効させる(失効の申出)」という選択肢もあります。

この点は従来の権利証にはなかった制度です。

登記識別情報の受取期限と破棄リスク

登記識別情報通知には受取期限があります。登記完了から3ヶ月以内に受け取らなければ、法務局で破棄されます。この事実を知らない不動産所有者は意外に多く、後日売却時に「登記識別情報がない」という事態に陥ります。

登記完了後、登記識別情報通知は法務局の窓口で受け取るか、郵送で受け取るかを選択できます。オンライン申請の場合、電子データとしてダウンロードする方法もあります。しかし書面申請の場合、多くの所有者は司法書士経由で受け取るため、受取を忘れることは少ないでしょう。

問題は、所有者本人が直接申請した場合や、司法書士から受け取ったことを忘れてしまった場合です。3ヶ月という期限は意外に短く、仕事や引越しで多忙な時期だと見逃しがちです。法務局から再発行の案内は来ないため、完全に自己責任となります。

破棄された後はどうなるか。

登記識別情報は再発行されません。

これは権利証も同様です。将来、その不動産を売却・贈与・担保設定する際には、代替手段が必要になります。具体的には、司法書士による本人確認情報の作成(費用5万円~10万円)、事前通知制度(無料だが時間がかかる)、公証人による本人確認(費用3,500円)のいずれかです。

不動産業従事者としては、新築物件の引渡し時や相続登記完了後など、顧客が登記識別情報を受け取るタイミングで「必ず3ヶ月以内に受け取ってください」と明確に伝えることが重要です。

この一言で、将来の余計なコストを防げます。

権利証紛失時の対処法と不動産取引への影響

権利証や登記識別情報を紛失した場合でも、不動産の所有権は失われません。登記簿上の名義は変わらないため、法的な権利に影響はありません。しかし、その不動産を売却・贈与・担保設定する際には代替手段が必要になり、時間とコストがかかります。

最も一般的な方法は、司法書士による本人確認情報の作成です。司法書士が所有者本人と面談し、運転免許証や印鑑証明書、不動産購入時の売買契約書、固定資産税納付書などを確認します。その上で「この人物が真正な登記名義人である」という書面を作成し、登記申請に添付します。

費用相場は5万円~10万円です。

事前通知制度は無料ですが、時間がかかります。登記申請後、法務局から登記名義人の住所宛に「本当にあなたが申請しましたか?」という通知書が郵送されます。本人が「間違いない」という旨を記載し、実印を押印して返送すると登記が完了します。通常、2週間程度かかるため、決済日が決まっている不動産売買では使いにくい方法です。

公証人による本人確認は、費用が一律3,500円と安価です。公証役場で本人確認を受け、公証人が作成した認証文を登記申請に添付します。ただし、公証役場へ出向く手間と時間がかかります。

不動産業従事者の立場では、売買契約前の段階で売主に権利証または登記識別情報の有無を確認することが必須です。紛失している場合、決済日までに代替手段を準備する必要があります。契約後に判明すると、決済日の延期や追加コスト負担の問題が生じます。

また、紛失の理由も重要です。盗難の可能性がある場合、登記識別情報の失効申出をすることで、その符号を無効化できます。失効申出には、申出人の印鑑証明書(作成後3か月以内)が必要です。失効後は、別の不正登記防止策として、不正登記防止申出も検討できます。

登記識別情報制度を知らないと発生する実務トラブル事例

不動産業従事者として、登記識別情報制度の理解不足が引き起こす具体的なトラブル事例を知っておくことは、同じ失敗を避けるために重要です。

よくあるトラブルの一つが、「権利証を持ってきてください」と売主に依頼したところ、「そんなものはもらっていない」と言われるケースです。調査すると、その不動産は平成18年に取得しており、管轄法務局はすでにオンライン指定庁でした。つまり登記識別情報が発行されているはずですが、売主は受け取った記憶がないと主張します。

この場合、可能性は二つです。一つは本当に受け取っていない(3ヶ月以内に受取らず破棄された)、もう一つは受け取ったが紛失または保管場所を忘れているケースです。どちらにしても、決済日までに司法書士による本人確認情報の作成が必要になり、追加費用5万円~10万円が発生します。この費用負担を売主と買主のどちらが負うかで揉めることもあります。

別の事例では、相続登記後に登記識別情報通知を相続人全員で受け取ったものの、誰が保管しているか分からなくなったケースがあります。共有名義の不動産を売却する際、共有者全員分の登記識別情報が必要ですが、一部の相続人が「見たことがない」と主張しました。結局、その相続人分だけ本人確認情報を作成し、決済日が2週間遅れました。

不動産業従事者が注意すべきは、契約段階での確認の徹底です。売買契約前に、売主に対して「権利証または登記識別情報通知を確認させてください」と依頼し、実物を見せてもらうことです。口頭で「ある」と言われても、実際にはない場合があります。

また、登記識別情報通知の様式も時期により異なります。平成27年2月23日以前はシール方式のみでしたが、それ以降はQRコード付きです。古い様式を見慣れていない若手担当者が、QRコード付きを見て「これは本物ですか?」と疑問に思うケースもあります。

さらに、登記識別情報の「不通知」という制度も理解が必要です。所有者が登記申請時に「登記識別情報は不要」という申出をしていた場合、そもそも通知されません。この場合、将来の売却時には必ず代替手段が必要になります。不通知の申出は登記事項証明書には記載されないため、売主への聞き取りが重要です。


補訂新版 不動産登記申請memo 権利登記編