委任状の書き方を手書きで簡単に作成する方法
フリクションペンで書くと無効になります。
委任状に記載すべき6つの必須項目
不動産取引における委任状作成では、法的効力を持たせるために必ず記載しなければならない項目があります。これらの項目が一つでも欠けていると、法務局や不動産会社で受理されない可能性が高くなります。
まず第一に「委任状」という表題を明記してください。書類の冒頭に大きく記載することで、この文書が委任状であることを明確にします。第二に、委任状を作成した日付を正確に記入します。年月日まで具体的に書くことが重要で、西暦でも和暦でも構いませんが、統一して記載してください。
第三に、代理人(受任者)の情報として、住所・氏名・生年月日を正確に記載します。住所は住民票に記載されている通りに書く必要があります。第四に、委任者(依頼する本人)の情報も同様に、住所・氏名・生年月日を正確に記載してください。不動産登記簿謄本に記載されている住所氏名と完全に一致させることが重要です。
第五に、委任する内容を具体的かつ明確に記載します。「不動産売買契約の締結」「所有権移転登記の申請」「売買代金の受領」など、代理人に任せる具体的な行為を列挙してください。「一切の件を委任する」といった曖昧な表現は避けるべきです。
第六に、対象となる不動産の情報を正確に記載します。所在地、地番、家屋番号、土地の地積、建物の床面積など、登記簿謄本に記載されている情報をそのまま転記してください。一文字でも間違えると手続きが進まなくなります。
最後に、委任者本人が実印を押印します。
認印やシャチハタでは受理されません。
実印の押印と併せて、発行から3か月以内の印鑑証明書を添付することで、本人の意思による委任であることを証明します。
委任状を手書きする際の用紙と筆記具の選び方
委任状の用紙選びは意外と重要なポイントです。法律上は特定の用紙を使用する義務はありませんが、実務上はA4サイズの白い便箋または上質紙を使用するのが一般的です。コピー用紙でも構いませんが、破れにくく長期保存に適した用紙を選ぶことをおすすめします。
筆記具の選択には細心の注意が必要です。消えるボールペン(フリクションペン)は絶対に使用してはいけません。これは温度変化や摩擦によって文字が消えてしまう性質があり、多くの自治体や法務局で明確に使用禁止とされています。実際に、フリクションペンで作成された委任状は受理されず、再提出を求められるケースが多発しています。
黒色または青色の油性ボールペン、万年筆を使用してください。鉛筆やシャープペンシルも改ざんの恐れがあるため使用できません。文字は楷書体ではっきりと読みやすく書くことが大切です。
手書きで作成する場合、修正液や修正テープの使用も避けるべきです。もし記入ミスをした場合は、二重線を引いて訂正印を押すか、新しい用紙に書き直すことをおすすめします。特に不動産取引の委任状では、改ざんを疑われる余地を残さないことが重要です。
委任状のコピーも必ず取っておきましょう。原本は提出してしまいますが、控えがあれば後日内容を確認したい時に役立ちます。委任した内容について後から確認が必要になるケースは少なくありません。
委任状作成で絶対に避けるべき3つのミス
不動産業務における委任状作成で最も危険なのが「白紙委任状」の作成です。白紙委任状とは、委任事項や対象不動産などの重要項目が空欄のまま署名・押印された委任状を指します。「後で記入しておきます」という言葉を信じて白紙委任状を渡してしまうと、代理人が本人の意図しない内容を勝手に記入し、不動産を無断で売却されるといった深刻なトラブルに巻き込まれる可能性があります。
実際に白紙委任状によるトラブルは法的紛争に発展することが多く、実印が押された白紙委任状と印鑑証明書があれば、受任者は法律上多くの重大な法律行為ができてしまいます。信頼できる親族であっても、白紙委任状は絶対に渡してはいけません。
すべての項目を埋めてから押印してください。
二つ目のミスは「捨印」の押印です。捨印とは、文書の余白部分にあらかじめ印鑑を押しておき、後で訂正が必要になった時に使用できるようにするものです。一見便利に思えますが、不動産取引の委任状では捨印を絶対に押してはいけません。
捨印があると、代理人が委任状の内容を自由に書き換えられてしまいます。売却価格や委任範囲を勝手に変更されるリスクが生じるため、たとえ仲介業者や司法書士から求められても、捨印の押印は丁寧に断るべきです。訂正が必要になった場合は、その都度本人に連絡して訂正印を押すか、新しい委任状を作成すればよいのです。
三つ目のミスは登記情報との不一致です。委任状に記載する住所や氏名が、登記簿謄本や印鑑証明書の記載と一文字でも異なると、手続きが受理されません。特に旧住所から新住所への変更がある場合、住民票の除票や戸籍の附票を別途取得する必要があります。
結婚や離婚による氏名変更がある場合も同様に注意が必要です。登記上の氏名と現在の氏名が異なる場合、戸籍謄本を添付して氏名変更の経緯を証明しなければなりません。記載する前に必ず登記簿謄本を取得して、正確な情報を確認してください。
委任状と一緒に準備する必要書類一覧
委任状単体では不動産取引の手続きを進めることはできません。委任状と併せて複数の書類を準備する必要があります。
まず最も重要なのが印鑑証明書です。
委任者本人の印鑑証明書は発行から3か月以内のものが必要で、通常は1通から2通求められます。
印鑑証明書の有効期限については、法務局への登記申請では作成後3か月以内と明確に定められています。ただし、相続登記における遺産分割協議書に添付する印鑑証明書には有効期限がないという例外もあります。不動産売買の場合は3か月以内と覚えておけば間違いありません。
代理人の印鑑証明書と実印も必要です。代理人の印鑑証明書も発行から3か月以内のものを用意してください。さらに代理人の本人確認書類として、運転免許証やマイナンバーカードなど写真付きの身分証明書が求められます。
委任者本人の住民票も必要書類に含まれることが多く、こちらも発行から3か月以内のものが有効です。住民票には本籍地やマイナンバーの記載は不要とされる場合がほとんどですが、事前に不動産会社や司法書士に確認しておくと安心です。
対象不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)も必ず取得してください。これは委任状に記載する不動産情報を正確に確認するために不可欠です。法務局の窓口やオンラインで取得でき、手数料は1通あたり480円から600円程度です。
不動産の権利証(登記済証または登記識別情報通知)も手続きに必要となります。古い不動産の場合は紙の権利証、比較的新しい不動産の場合は12桁の英数字で構成される登記識別情報通知が交付されています。これらは再発行できないため、紛失しないよう厳重に管理してください。
不動産業務における委任状の独自ポイント
不動産業務において委任状を活用する場面は、一般的な行政手続きとは異なる特殊性があります。
特に重要なのが「委任範囲の限定」です。
不動産売買では高額な資産が動くため、代理人に与える権限を明確に限定することが極めて重要です。
具体的には「売買契約の締結権限のみ」「登記申請手続きのみ」「売買代金の受領のみ」など、段階ごとに委任状を分けて作成することも検討してください。一つの委任状にすべての権限を盛り込むと、代理人の裁量が大きくなりすぎてリスクが高まります。
不動産取引特有の注意点として、売買代金の受領権限を委任する場合、振込先口座を委任状に明記することをおすすめします。「売買代金〇〇万円を、委任者名義の△△銀行△△支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇に振り込むこと」と具体的に記載すれば、代理人が勝手に別の口座に振り込むことを防げます。
また、不動産売買契約では手付金や中間金の授受が発生することがあります。これらについても委任状に明記しておくと安全です。「手付金として金〇〇万円を受領する権限を委任する」「残代金として金〇〇万円を受領する権限を委任する」と段階的に書き分けてください。
不動産業者として顧客から委任状を預かる場合、その保管管理にも細心の注意を払う必要があります。委任状は個人情報が記載された重要書類であり、情報漏えいがあると大きな問題になります。鍵付きのキャビネットで保管し、取り扱う担当者を限定するなど、社内ルールを明確にしておくべきです。
委任状の有効期限についても、実務上の工夫が必要です。法律上は委任状に明確な有効期限はありませんが、不動産取引では「本委任状の有効期限は令和〇年〇月〇日までとする」と明記することが推奨されます。これにより古い委任状が悪用されるリスクを減らせます。
さらに、複数の共有者がいる不動産の場合、全共有者分の委任状が必要になることを理解しておきましょう。共有者それぞれが個別に委任状を作成し、全員分の印鑑証明書を添付する必要があります。一人でも委任状が欠けていれば手続きは進みません。
不動産業務では司法書士に登記申請を委任するケースが大半ですが、この場合も委任状の内容を事前に確認してください。司法書士が用意した委任状の雛形に署名押印する前に、委任範囲や対象不動産の情報が正確かどうかチェックする習慣をつけましょう。不明な点があれば遠慮せず質問することが大切です。
法務局ホームページでは、不動産登記に関する各種様式や記載例をダウンロードできます。委任状作成の参考資料として活用できる公的な情報源です。
委任状作成における最終チェックポイントとして、すべての記載内容を声に出して読み上げることをおすすめします。黙読では見落としがちな誤字脱字や記載漏れも、声に出すことで気づきやすくなります。特に金額や日付、住所表記など数字が含まれる部分は慎重に確認してください。

