計算方法や両手仲介、違反時の罰則を解説。
法令遵守と適正請求は事業継続の基本ですが、あなたの請求は本当に正確ですか?
仲介報酬上限の基本と計算方法
賃貸で0.5ヶ月分超を請求すると100万円の罰金対象です
仲介報酬の上限額を定める法的根拠
仲介報酬の上限額は、宅地建物取引業法第46条に基づいて国土交通大臣が定める報酬告示によって厳格に規制されています。この規制は、不動産取引における消費者保護を目的として設けられたもので、不動産業者が恣意的に高額な報酬を請求することを防ぐための重要な仕組みです。
上限額を超えて報酬を受領した場合、宅地建物取引業法第82条第2号および第80条により、100万円以下の罰金が科されます。さらに重要なのは、実際に受領していなくても上限を超える金額を請求しただけで、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科という罰則の対象になるという点です。故意や過失を問わず処分されるため、計算ミスも許されません。
不動産業従事者として、この法的枠組みを正確に理解し、日々の業務で適切に適用することが求められます。
つまり法令遵守が基本です。
報酬規制は消費者保護だけでなく、業界全体の信頼性を維持するための土台となっています。
国土交通省の公式サイトでは、仲介手数料の上限額に関する最新の規制内容と計算方法の詳細が確認できます
仲介報酬の速算式と価格帯別の計算
売買仲介の報酬上限額は、取引価格の区分によって異なる料率が設定されています。200万円以下の部分は5%、200万円超400万円以下の部分は4%、400万円超の部分は3%という三段階の料率構造です。この構造により、高額物件ほど料率が下がる累進的な仕組みになっています。
実務では、この三段階計算を簡略化した速算式が広く使われています。400万円を超える物件の場合、「売買価格×3%+6万円+消費税」という速算式で一発計算が可能です。この「+6万円」は、200万円以下の部分(5%)と200万円超400万円以下の部分(4%)の差額を調整するための定数で、数学的に導き出された便利な数値です。
例えば、3000万円の物件の場合を見てみましょう。速算式で計算すると、3000万円×3%+6万円=96万円(税抜)となり、消費税10%を加えると105万6000円が上限額です。この金額は、元の三段階計算で求めた場合と完全に一致します。両手仲介の場合は、売主と買主それぞれから最大この金額を受領できるため、合計で211万2000円までの報酬が可能です。
速算式を使う際の注意点は、必ず税抜価格で計算することです。
消費税は最後に加算します。
また、200万円以下の物件は5%、200万円超400万円以下の物件は「×4%+2万円」という別の速算式を使います。価格帯の判定を誤ると計算ミスにつながるため、まず物件価格の確認が必須です。
仲介報酬の2024年7月改正内容
2024年7月1日に施行された報酬規定の改正により、800万円以下の低廉な空き家等を対象とした特例が大幅に拡充されました。従来は400万円以下の物件が対象で上限18万円(税抜)でしたが、改正後は対象が800万円以下に拡大され、上限が30万円(税抜、税込33万円)に引き上げられました。これは空き家問題の深刻化を受けて、地方の低価格物件の流通を促進するための政策的措置です。
この特例が適用される条件は明確に定められています。まず物件価格が800万円以下であること、そして「現地調査等の費用を勘案して報酬を算定する」という趣旨から、通常の仲介業務を超える調査や説明が必要な物件であることが前提です。重要なのは、媒介契約時に依頼者の事前承諾を得ることが必須という点です。承諾なしに33万円を請求すると違法になります。
改正の実務的インパクトは大きいです。例えば、500万円の空き家を仲介する場合、従来の計算式では500万円×3%+6万円=21万円(税抜)が上限でしたが、特例を使えば30万円(税抜)まで請求できます。
つまり約43%の増収です。
ただし、800万円を1円でも超えると通常の計算式に戻るため、価格設定の境界線には十分注意が必要です。
特例適用時の注意点として、報酬額の根拠を明確に説明できる準備が求められます。依頼者に対して、現地調査にかかった時間や交通費、建物状況の詳細な確認作業など、通常業務を超える対応を具体的に示すことが、トラブル回避のために重要です。契約書への記載と口頭での丁寧な説明を徹底しましょう。
全日本不動産協会の解説記事では、空き家媒介報酬改正の詳細な適用条件と実務上の留意点がまとめられています
仲介報酬の両手仲介と片手仲介の違い
両手仲介と片手仲介は、不動産会社が受け取る報酬額に直接影響する重要な区分です。両手仲介とは、1社が売主と買主の両方と媒介契約を結び、双方から仲介手数料を受け取る形態です。一方、片手仲介は売主側業者と買主側業者が別々に存在し、それぞれが依頼者から手数料を受け取る形態を指します。
両手仲介の場合、不動産会社は売主・買主それぞれから上限額まで受領できるため、収益は片手の2倍になります。例えば4000万円の物件なら、売主から138万6000円、買主からも138万6000円で、合計277万2000円の報酬です。片手なら138万6000円だけですから、両手の方が圧倒的に収益性が高いです。このため、業界では両手仲介を目指す営業行動が一般的になっています。
しかし、両手仲介には「囲い込み」というリスクが潜んでいます。囲い込みとは、売主から預かった物件情報を他社に公開せず、自社で買主を見つけようとする行為です。これにより売主の機会損失が発生し、本来なら高く早く売れたはずの物件が滞留する可能性があります。宅建業法上は違法ではありませんが、売主の利益を損なう行為として問題視されています。
両手・片手の区分は、賃貸仲介では異なる扱いになる点に注意が必要です。賃貸の場合、仲介手数料の合計上限は「賃料の1ヶ月分+消費税」で、これを貸主・借主の双方で分け合う形になります。つまり両手仲介でも報酬総額は変わらず、配分が変わるだけです。
売買のように2倍にはなりません。
賃貸では両手を狙うインセンティブが売買ほど強くないという構造的な違いがあります。
仲介報酬における代理契約と上限額の違い
媒介(仲介)と代理は、法律上まったく異なる契約形態で、受領できる報酬の上限も大きく異なります。代理契約の場合、売買取引では媒介の上限額の2倍まで受領することが認められています。例えば3000万円の物件を売主の代理として売却する場合、媒介なら105万6000円(税込)が上限ですが、代理なら211万2000円まで受領可能です。これは代理人としての重い責任と権限に対する対価と位置付けられています。
ただし、代理で2倍の報酬を受け取れるのは売買・交換取引のみです。賃貸借取引では、代理であっても受領できる報酬の合計上限は「賃料の1ヶ月分+消費税」で、媒介と変わりません。この違いを理解していないと、賃貸の代理契約で誤った報酬を請求してしまうリスクがあります。
賃貸は売買と別ルールです。
代理契約で注意すべきは、取引全体での報酬上限の制約です。売主の代理業者が2倍の報酬を受け取る場合、買主側の媒介業者がいても、全体として受領できる報酬は「基本報酬額の2倍以内」に制限されます。つまり、代理業者が満額の2倍を受け取ると、買主側業者は何も受け取れないという配分になる可能性があるのです。
実務では、代理契約は一般媒介や専任媒介に比べて圧倒的に少数です。理由は、代理人として契約を締結する権限を持つため、依頼者にとってリスクが高く、業者側も慎重にならざるを得ないからです。ただし、遠方に住む売主や高齢の売主など、自ら契約行為を行うのが困難なケースでは、代理契約が有効な選択肢となります。2倍の報酬を受け取る正当性を説明できる状況を確認しましょう。
仲介報酬に消費税が課税される仕組み
仲介手数料には消費税が課税されます。これは、不動産会社が提供する「サービス」に対する報酬であり、消費税法上の「事業者が事業として対価を得て行うサービスの提供」に該当するためです。現在の消費税率は10%ですから、報酬額を計算する際は必ず消費税を加算して請求する必要があります。
消費税の計算で重要なのは、不動産の売買価格そのものに消費税が含まれるかどうかの判断です。土地の売買には消費税はかかりませんが、建物には消費税がかかります。ただし、個人が売主の中古住宅の場合、建物にも消費税はかかりません。一方、不動産会社が売主の新築や買取再販物件では、建物価格に消費税が含まれています。
仲介手数料の計算基礎となる「売買価格」は、原則として税抜価格を使います。例えば、土地2000万円+建物2200万円(税込)の新築戸建ての場合、建物の本体価格は2000万円(消費税200万円)ですから、仲介手数料の計算基礎は土地2000万円+建物2000万円=4000万円(税抜)となります。この4000万円に対して「×3%+6万円」を計算し、その結果に消費税10%を加算するという手順です。
消費税の扱いを間違えると、報酬額が上限を超過してしまう危険があります。特に注意が必要なのは、売主が免税事業者か課税事業者かの確認です。不動産会社は課税事業者ですから、受け取った仲介手数料に含まれる消費税は納税義務が生じます。簡易課税制度を選択している場合、みなし仕入率は第五種事業の50%が適用されるため、消費税の納税額は受取消費税の半分程度になります。
仲介報酬の賃貸における上限と承諾の必要性
賃貸仲介の報酬規制は、売買とはまったく異なる構造になっています。最も重要なルールは、居住用物件の場合、借主または貸主の一方から受け取れる仲介手数料は原則として「賃料の0.5ヶ月分+消費税」が上限であるという点です。双方合わせても「賃料の1ヶ月分+消費税」を超えてはいけません。これは宅建業法の報酬告示で明確に定められています。
しかし、実際の賃貸市場では、借主に対して「賃料の1ヶ月分+消費税」を請求している不動産会社が多数存在します。これが合法になる条件は、「依頼者の承諾を得ている場合」という例外規定です。つまり、媒介契約を結ぶ前に、借主から「1ヶ月分の仲介手数料を支払います」という明確な承諾を得ていれば、1ヶ月分まで請求できます。
承諾なしに1ヶ月分を請求すると違法です。
東京地裁令和元年8月7日判決では、借主の承諾を得ずに賃料の1ヶ月分を受領した不動産会社に対し、0.5ヶ月分を超える部分の返還を命じました。この判決は業界に大きな衝撃を与え、「承諾の取得方法」が実務上の焦点になっています。口頭だけの承諾では後でトラブルになるリスクがあるため、媒介契約書に明記し、借主の署名捺印を得ることが必須です。
賃貸仲介の報酬上限違反は、売買と同様に100万円以下の罰金や1年以下の懲役の対象になります。特に注意すべきは、借主が承諾していても、その承諾が「事前」に得られていなければ違法と判断される可能性がある点です。契約後に「実は0.5ヶ月分が原則でした」と借主が知った場合、返還請求や行政処分のリスクが生じます。承諾の時期と方法を記録に残すことが、リスク管理の基本です。
不動産仲介手数料の法律規制について、賃貸の報酬告示の詳細な解説と判例分析がこちらで確認できます
仲介報酬以外に請求できる費用の範囲
仲介手数料は成功報酬であり、原則として通常の仲介業務にかかるすべての費用が含まれています。物件調査、広告活動、案内対応、契約書類の作成など、標準的な業務については別途費用を請求することはできません。
これが原則です。
しかし、例外として請求できる費用が2つあります。
1つ目は、依頼者が特別に依頼した広告の料金です。通常の範囲を超える広告、例えば大手新聞の全面広告やテレビCM、高額な不動産ポータルサイトへの特別掲載などを、売主が明確に依頼し、事前に承諾した場合に限り、実費を請求できます。重要なのは「特別に依頼した」という点で、不動産会社が勝手に実施した広告費用は請求できません。
2つ目は、遠隔地への出張旅費です。例えば、東京の不動産会社が北海道在住の購入希望者と交渉するために現地へ出張した場合、その交通費や宿泊費を実費で請求できます。ただし、これも依頼者の事前承諾が必要で、媒介契約書に明記されていることが条件です。承諾なしに後から請求すると、トラブルの原因になります。
実務で誤解されやすいのは、「通常業務の範囲」の解釈です。例えば、測量費用や建物の解体費用、廃棄物の処分費用などは、仲介業務ではなく物件の売却準備として必要な費用ですから、売主が負担すべきものです。これらを仲介手数料に含めることはできませんが、不動産会社が立て替えた場合の実費精算は可能です。費用の性質を正確に区分することが、適正な請求の前提です。
トラブルを避けるための実践的な対策として、媒介契約書の「報酬及び報酬以外に受領する金銭」の欄を必ず記入しましょう。特別広告の予定額や出張費用の見込みを具体的に記載し、依頼者の署名を得ることで、後日の紛争リスクを大幅に減らせます。
透明性が信頼の基礎です。
仲介報酬の違反事例とペナルティ
仲介報酬の上限違反は、宅建業法の中でも特に厳しく取り締まられる違反類型です。監督官庁による立ち入り調査で発覚するケースもあれば、消費者からの通報によって明らかになるケースもあります。いずれの場合も、業者には重いペナルティが科されます。上限超過で実際に報酬を受領した場合は100万円以下の罰金、請求しただけでも1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象です。
行政処分としては、指示処分、業務停止処分、免許取消処分という段階的な処分があります。報酬上限違反の程度や悪質性によって処分内容が決まりますが、常習性が認められたり、多数の消費者から被害申告があったりする場合は、業務停止や免許取消という重い処分に至ることもあります。業務停止になれば収入が途絶え、免許取消になれば事業継続が不可能です。
違反の典型例として、計算ミスによる上限超過があります。例えば、消費税込みの売買価格で仲介手数料を計算してしまい、結果的に上限を超えて請求したケースです。故意ではなくても、法律は「過失」も処罰対象としていますから、「知らなかった」「うっかりしていた」という言い訳は通用しません。
計算の二重チェック体制を整備するべきです。
もう1つの典型例は、賃貸仲介で承諾を得ずに1ヶ月分を請求するケースです。借主が法律を知らずに支払ってしまうことも多いですが、後で知識を得た借主から返還請求されたり、行政に通報されたりするリスクがあります。近年は消費者の権利意識が高まっており、SNSでの情報拡散も容易ですから、一度の違反が企業の信用を大きく損なう可能性があります。
違法請求は絶対に避けましょう。
予防策として、社内研修の徹底と報酬計算チェックシートの活用が有効です。特に新人や経験の浅いスタッフが報酬額を計算する際は、必ず上司や管理者がダブルチェックする仕組みを作りましょう。また、媒介契約書の記載内容を契約時に依頼者と一緒に確認し、報酬額の根拠を明確に説明する習慣をつけることが、トラブル防止の基本です。
法令遵守は事業継続の前提条件です。

