購入申込書キャンセルの対応と法的リスク

購入申込書のキャンセル対応

契約締結直前のキャンセルでも損害賠償請求が認められた判例があります。

📋 この記事の3ポイント要約
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購入申込書の法的効力

法的拘束力はないが、契約締結上の過失により損害賠償責任が発生するケースがある

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キャンセル率の実態

購入申込後のキャンセル率は10~15%、物件条件によっては15~20%に達する

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トラブル防止策

事前説明の徹底、ローン審査確認、早期契約締結でキャンセルリスクを最小化できる

購入申込書の法的性質と効力

 

購入申込書は、買主が「この物件を購入したい」という意思を売主に示す書類です。不動産取引の現場では「買付証明書」とも呼ばれます。

この書類には法的拘束力がありません。大阪高判平成2年4月26日の判例でも、買付証明書と売渡承諾書が相互に交付されていても、売買契約書の締結や手付金の授受がなければ売買契約は成立していないと判断されています。

つまり、購入の意思表示に過ぎないということです。

しかし、法的拘束力がないからといって、何の責任も負わないわけではありません。契約締結に向けた交渉が進み、売主に契約成立への合理的期待を与えていた場合、キャンセルによって損害賠償責任を負う可能性があります。東京地裁平成20年11月10日判決では、不動産市況の悪化を理由とした契約拒否について、正当な理由がないとして契約締結上の過失が認められました。

不動産業従事者は、この「グレーゾーン」を理解することが重要です。形式上は法的拘束力がなくても、実質的には一定の責任が発生し得るのです。

購入申込書キャンセルの統計データ

不動産取引におけるキャンセル率は、決して無視できない数字です。業界の肌感覚として、購入申込後のキャンセル率は10~15%程度とされています。

物件の条件によってキャンセル率は大きく変動します。旧耐震物件や借地権物件など、ローンが通りにくい物件では15~20%に達することもあります。これは、購入申込書提出前にローンが通らないことが判明するケースも多いためです。

相場より高い「チャレンジ価格」で販売している物件も、キャンセル率は約15%になります。後から条件が類似した安い物件が市場に出てきた場合、買主が乗り換えてしまうのです。

懸念事項が多い物件も要注意です。築年数が古い物件、権利関係が複雑な物件、土地の形状が悪い物件などは、契約前に不安が高まりやすく、キャンセル率は15~20%程度に上昇します。

一方で、駅近の築浅マンションなど条件が良い人気物件では、キャンセル率は5%未満と非常に低いです。買主の本気度が高く、競合が多いため、慎重に判断した上で申し込みをするためと考えられます。

購入申込書キャンセルで損害賠償が認められる条件

契約前のキャンセルでも、損害賠償請求が認められるケースがあります。その判断基準を理解しておくことが、不動産業従事者には不可欠です。

契約締結上の過失が認められるのは、主に以下のような状況です。売買契約書案が作成され、売買代金や決済日が具体的に決定している段階、売主が買主のために物件のリフォームを実施している段階、買主が契約準備として自社を売却するなど実費を投じている段階などが該当します。

福岡高判平成7年6月29日では、分譲マンション用地の売買について、売買契約書等の継続交換により相手に契約成立への合理的期待を与えたにもかかわらず、正当な理由なく契約締結を拒否した場合、損害賠償責任が認められました。

認められる損害の範囲は限定的です。売買契約が締結されるであろうという信頼を裏切ったことにより直接的に被った損害に限られます。具体的には、契約準備にかかった実費(書類作成費用、調査費用など)や、他の買主候補を断ったことによる機会損失などです。

ただし、契約締結上の過失が認められるケースは多くありません。東京地裁平成26年12月25日判決では、ドラフトや合意書が作成されていても、売買代金が確定していない、所有権移転登記手続の時期が定められていないなどの理由で、契約成立は認められませんでした。

購入申込書キャンセルの主な理由とパターン

キャンセルが発生する理由を把握しておくことで、事前の対策が可能になります。不動産業従事者として、典型的なキャンセル理由を理解しておきましょう。

最も多いのは人生設計の見直しです。物件探し中よりも、いざ購入となると深く検討するケースがほとんどで、ライフプランや資金計画を見直した結果、「今は購入をやめておこう」と判断します。特に大きな転換期に不動産購入を検討する人が多いため、このパターンは避けられません。

家族の反対も頻繁に見られます。夫が一人で物件を探している場合など、同居する家族の意思を確認していなかったり、親の反対があったりしてキャンセルになります。若年層の購入や親からの資金援助がある場合に多いです。

ローン事前審査の否決は、本人の意思とは無関係に発生します。個人の信用能力が原因の場合と、物件自体が原因の場合があります。フリーランスや個人事業主、転職して間もない人、過去に融資滞納があった人などは、個人に起因する理由です。借地権物件、旧耐震物件、オーナーチェンジ物件、違反建築物などは、物件に起因する理由となります。

他物件への乗り換えも無視できません。申し込みしている物件よりも希望条件に合う物件が出てきた場合や、ほぼ同じ条件で価格が安い物件が出てきた場合に発生します。高層階、良い方角・眺望、土地の形状が良い、建物のグレードが高い、築年が若いなどの物件に乗り換えられます。

物件への不安も典型的な理由です。築年数が経っている物件、権利関係が複雑な物件、周辺環境に懸念がある物件では、入居後や将来の売却時の不安を感じてキャンセルになります。本人が納得していても、第三者の助言で覆ってしまうことも多いのです。

購入申込書キャンセル時の不動産業者の対応実務

キャンセルが発生した際の対応は、タイミングによって大きく異なります。不動産業従事者として、各段階での適切な対応を理解しておく必要があります。

売買契約前のキャンセルは、最も頻繁に発生します。ローンの事前審査段階や、購入申込書を受け取っていても売買契約を締結していない段階では、法的な拘束力がないため、申込者に対して金銭的な請求は困難です。

対応方法としては、仲介業者経由でキャンセル理由を丁寧にヒアリングすることです。

理由によっては再交渉の余地があります。

例えば、価格面での不安であれば値引き交渉、家族の反対であれば改めて家族同伴での物件案内、ローン否決であれば別の金融機関への打診などが考えられます。

売買契約後のキャンセルは、費用負担が生じます。契約締結から2週間~3週間後の手付解除期日までであれば、買主は手付金を放棄することで解約できます。

手付金の目安は物件価格の5%程度です。

手付解除期日を過ぎている場合は、物件価格の10%程度の違約金が発生します。これは双方にとって大きな負担となるため、この段階でのキャンセルは極めて少ないです。

契約後のローン解除は、特殊なケースです。ローン解除期日までにローンが不承認または減額となった場合、白紙解約となる可能性があります。対応としては、期日を延長して他の銀行へローン打診をする猶予を与えることが考えられます。事前審査段階で個人の信用能力は確認されていることが多いので、本審査で否決される場合は物件が理由のケースが多いです。

申込証拠金を受け取っている場合は、速やかに返還する必要があります。申込証拠金は契約前の意思表示の証拠金であり、手付金とは性質が異なります。キャンセル時には原則として全額返還しなければなりません。返還を拒否すると、不動産業者側が法的トラブルに巻き込まれる可能性があります。

公益社団法人全日本不動産協会の買付証明書の法的性格解説では、契約締結上の過失についての詳細な法律解釈が掲載されています。

購入申込書キャンセルのリスク最小化戦略

キャンセルは一定数避けられませんが、適切な対策を講じることでリスクを最小限に抑えられます。不動産業従事者として実践すべき戦略を解説します。

事前説明と確認の徹底が最重要です。懸念点のある物件については、内見時やその前の段階で、買主にしっかり説明しておくことが必要です。申し込み率は下がるかもしれませんが、キャンセルによる対応や販売停止期間の不利益を避けることができます。ローンの事前審査の詳細についても確認しておき、別の物件で事前審査をしている場合は、申し込み物件でその金融機関が使えるかどうかを確認します。

余裕を持ったスケジュール調整も有効です。どのような物件でもキャンセルが発生する可能性はあるため、あらかじめ余裕を持った売却活動をすることが望ましいです。契約後のローン解除にも備えて、いくつかの金融機関にローン解除期日までに結果が出るように打診するよう買主に依頼することも推奨されます。

二番手、三番手の確保は実務上非常に重要です。一番手がキャンセルになった場合に備えて、販売活動を継続し、契約締結までは二番手、三番手の顧客を確保しておくと安心です。住み替えのスケジュールがタイトな場合は、不動産業者による買取もあらかじめ打診しておくことで、キャンセルに備えられます。

早めの契約締結が最も効果的です。契約締結後には費用負担が発生し、法的拘束力が生じるため、キャンセルはほとんどなくなります。購入申し込みからなるべく間をおかず契約を締結することで、キャンセルリスクを大幅に減らすことが可能です。申し込みから1週間以内の売買契約が目安となります。場合によっては、一番手の顧客よりも先に契約を締結できる二番手の顧客がいれば、そちらを優先することも検討に値します。

信頼できる金融機関とのネットワーク構築も重要です。物件起因のキャンセルは、事前説明や金融機関の確認で対応可能なことも多いです。査定段階で物件について詳しく理解しており、金融機関にも詳しい不動産業者は、契約につながりにくい人の案内を控えたり、ローンの事前審査を先回りして手配したり、購入希望者の本気度や資金計画を見極めたうえで効率的な販売活動を展開できます。

三井住友トラスト不動産の契約締結直前のキャンセルトラブル解説には、信義則上の注意義務について詳しい事例分析があります。

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