境界確定費用負担の相場と注意点

境界確定費用負担

境界確定の立会い拒否でも売主が全額負担するリスクがあります。

この記事の3つのポイント
💰

費用の原則と例外

売主負担が商慣習だが民法では折半が原則。官民査定なら60万~80万円が相場

📋

隣地との協力義務

立会いは任意で法的義務なし。拒否された場合は筆界特定制度の活用が有効

⚖️

訴訟時の費用負担

境界確定訴訟では原告被告が折半負担。鑑定測量費40万~50万円が別途必要

境界確定費用の基本的な負担者

不動産取引において境界確定測量の費用は、原則として売主が負担するのが商慣習です。これは法律で明確に定められているわけではありませんが、売主には売却する土地の範囲を明確にして買主に引き渡す責任があるという考え方に基づいています。

売主負担が一般的になった背景には、買主が安心して土地を購入できるよう、境界を確定し証明書類を準備するのが売主の義務であるという不動産取引の慣行があります。境界が不明確な土地は「安心して買えない土地」と見なされ、売却価格の値下げを余儀なくされたり、最悪の場合は売却自体が困難になったりするリスクがあります。

つまり売主負担が原則です。

ただし、これはあくまで商慣習であり、売買契約の特約により買主が一部を負担したり、売主と買主で費用を按分したりするケースも存在します。特に売却前に買主が既に決まっている場合は、買主に対して費用の一部負担を依頼できる交渉の余地があります。買主にとっても境界が明確になることは大きなメリットであるため、折半や一部負担に応じるケースも少なくありません。

野村不動産ソリューションズによる確定測量の費用負担に関する解説記事では、測量費用の負担者について詳しく説明されており、実務上の参考になります。

不動産業従事者としては、売買契約締結前に費用負担について明確に取り決めを行い、契約書に明記しておくことが重要です。後々のトラブルを避けるため、どちらがどの程度負担するのかを文書で残しておく必要があります。

境界確定における民法の費用負担ルール

実は民法223条と224条には、境界標の設置と保存に関する費用負担のルールが明記されています。民法224条では「境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する」と規定されています。

これが意外ですね。

つまり、境界標の設置費用は隣地所有者との折半が原則であり、測量費用については土地の面積に応じて分担することになっています。例えば、100平方メートル(約30坪、テニスコート半面くらい)の土地と200平方メートルの土地が隣接している場合、測量費用は1対2の割合で負担することが民法上の原則となります。

しかし、不動産売買における境界確定測量では、この民法のルールがそのまま適用されるわけではありません。売買の場面では、売主が自らの責任で土地の範囲を明確にする必要があるため、商慣習として売主負担が優先されるのです。

民法のルールが適用されるのは、売買とは無関係に隣地同士で境界を確定する場合です。例えば、相続で土地を取得したため境界を明確にしたい場合や、建築計画のため境界を確認したい場合など、売買を伴わない境界確定では民法224条に基づいて隣地所有者と折半することになります。

みずほ中央法律事務所による民法223条・224条の解説では、境界標設置の費用負担について詳細に説明されており、法的根拠を確認できます。

不動産業従事者が売買以外の境界確定案件に関わる際は、この民法のルールを理解しておく必要があります。顧客に対して「売買なら売主負担、それ以外なら折半」という原則を明確に説明できるようにしておくべきです。

境界確定測量の費用相場と内訳

境界確定測量の費用相場は、土地の条件によって大きく変動しますが、一般的には35万円から80万円程度です。この費用の幅は、隣接する土地の種類や数、土地の広さ、形状の複雑さなどによって決まります。

最も費用を左右する要因は、官民査定が必要かどうかです。隣接地がすべて民有地の場合(民民立会いのみ)の費用相場は30万円から50万円程度ですが、道路や水路など官有地に接している場合(官民立会いが必要)は60万円から80万円程度にまで上昇します。

官民査定が高額になる理由は、役所とのやり取りや手続きに多くの労力と時間が必要になるためです。例えば、東京都内の100平方メートル程度の土地で、隣接地が民有地3箇所と道路1箇所の場合、官民立会いを含む境界確定測量の費用は約70万円程度となることが一般的です。これは新車の軽自動車が購入できる金額に相当します。

費用の内訳は以下のようになります。

• 現況測量費:10万円~20万円(土地の現状を把握するための基礎測量)

• 隣接地立会い・確認書作成:1箇所あたり2万円~3万円(隣地所有者の数に応じて増加)

• 官民境界査定:10万円~30万円(役所との調整や書類作成)

• 境界標設置費:1本あたり5千円~1万円(境界杭の設置)

• 図面作成・登記申請:5万円~10万円(確定測量図の作成と法務局への提出)

土地家屋調査士による境界測量費用の詳細解説では、費用の決まり方や節約方法について実務的な情報が得られます。

隣接地の数が多い場合や、所有者が遠方に住んでいる場合は、交通費や日当が追加でかかることもあります。例えば、隣地所有者が海外在住の場合、現地に来てもらうための渡航費を負担することもあり、その場合は100万円を超える費用になることもあります。

不動産業従事者としては、売却査定の段階で境界確定の必要性と費用を見積もり、売主に事前説明しておくことが重要です。売却価格から測量費用を差し引いた実質的な手取り額を明確にすることで、売主の納得を得やすくなります。

境界確定時の隣地立会いと協力義務

境界確定測量では隣接地の所有者に立会いを依頼する必要がありますが、実は立会いに応じる法的義務はありません。境界立会いはあくまで任意であり、隣地所有者が多忙や体調不良を理由に断ることも可能です。

立会いは任意です。

しかし、立会いを拒否されると境界確認書への署名押印が得られず、確定測量が完了できないという問題が生じます。この場合、不動産取引がストップしてしまう可能性があります。買主が確定測量を購入条件としている場合、売買契約そのものが白紙撤回されるリスクさえあります。

立会い拒否への対処法としては、まず内容証明郵便で正式に境界立会いの協力を依頼することが有効です。これにより「協力依頼の記録」と「相手方への意思表示の証明」が残り、後々の法的手続きの際に役立ちます。内容証明郵便の費用は1通あたり1,500円程度(配達証明付き)で、弁護士に依頼せずとも郵便局で手続きできます。

それでも協力が得られない場合は、以下の制度を活用できます。

筆界特定制度を利用すれば、法務局の登記官が境界を特定してくれます。申請手数料は土地の価格に応じて計算されますが、一般的な住宅地であれば数千円から数万円程度です。ただし、法務局が選任する測量実施者による測量費用が別途50万円から80万円程度必要になります。

処理期間は半年から1年程度です。

東京法務局による筆界特定制度のよくある質問では、手続きの流れや費用の計算方法が詳しく説明されています。

また、法務局に残っている過去の測量図が現在の境界標と一致していると判断できれば、立会いなしでも境界線を確定できる場合があります。この方法は「立会省略」と呼ばれ、費用を抑えられるメリットがありますが、後々トラブルになるリスクもあるため慎重な判断が必要です。

不動産業従事者としては、売却相談を受けた段階で隣地所有者との関係性を確認し、立会い拒否のリスクがある場合は早めに筆界特定制度の利用を検討すべきです。売買契約のスケジュールに余裕を持たせることも重要になります。

境界確定訴訟における費用負担の特殊性

隣地所有者との境界紛争が深刻化し、話し合いでの解決が困難な場合、境界確定訴訟を提起することになります。この訴訟における費用負担には、通常の民事訴訟とは異なる特殊なルールがあります。

境界確定訴訟では、訴訟費用は原告と被告が平分する、つまり折半するのが原則です。これは民法224条の「境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する」という規定を類推適用したものです。通常の民事訴訟では敗訴した側が訴訟費用を全額負担しますが、境界確定訴訟では勝敗に関係なく折半となります。

折半が原則です。

境界確定訴訟にかかる費用は、主に以下の項目で構成されます。

• 弁護士費用:着手金22万円程度、報酬22万円程度(境界確定のみの場合)

• 鑑定測量費用:40万円~50万円程度(裁判所が選任する測量実施者による測量)

• 訴訟手数料:対象土地の価格に応じて計算(一般的な住宅地で1万円~3万円程度)

例えば、対象土地の価格が1,000万円の場合、鑑定測量費50万円、弁護士費用44万円、訴訟手数料2万円で合計約96万円となり、これを原告被告で折半すると1人あたり約48万円の負担となります。

これは国内旅行10回分に相当する金額です。

清水誠治法律登記事務所による境界トラブルの解説では、境界確定訴訟の費用と期間について実務的な情報が提供されています。

訴訟期間は争点の複雑さによって異なりますが、おおむね2年程度かかることが多く、その間の精神的・時間的負担も相当なものになります。検証による実地見分が必要なことが多いという境界確定訴訟の特殊性が、手続きを長期化させる主な理由です。

訴訟費用が折半になる理由は、境界確定訴訟が「形式的形成訴訟」という特殊な性質を持つためです。この訴訟では、裁判所が独自の判断で境界を確定するため、原告と被告のどちらが勝ったとも言えない性質があります。原告の主張する境界線と被告の主張する境界線のちょうど中間に裁判所が境界を確定することもあり、その場合は双方が部分的に勝訴し部分的に敗訴したことになります。

不動産業従事者としては、顧客が境界紛争を抱えている場合、訴訟に発展する前に筆界特定制度や調停など、より費用と時間を抑えられる解決方法を提案することが重要です。訴訟は最終手段として位置づけ、まずは話し合いによる解決を目指すべきです。

境界確定費用を抑えるための実務的アプローチ

境界確定測量の費用は決して安くありませんが、工夫次第で負担を軽減することが可能です。不動産業従事者として知っておくべき費用削減の方法をいくつか紹介します。

まず、複数の土地家屋調査士から見積もりを取ることが基本です。同じ条件でも業者によって10万円から20万円程度の差が出ることは珍しくありません。ただし、単純に安い業者を選ぶのではなく、実績や専門性、対応の丁寧さなども総合的に判断する必要があります。

官民査定が不要かどうかを事前に確認することも重要です。道路に面しているように見えても、実は私道であったり、既に官民境界が確定済みであったりする場合があります。法務局や役所で過去の測量図を調査することで、官民査定の必要性を判断できます。官民査定を省略できれば20万円から30万円程度の費用削減になります。

使えそうですね。

既存の測量図面を活用することも有効です。法務局に保管されている地積測量図や、役所に保管されている道路境界確定図などの既存資料が、現在の境界標と一致している場合、一から測量をやり直す必要がなくなります。この場合、現況測量のみで済むため、費用を10万円から20万円程度に抑えられます。

ただし、既存図面の活用にはリスクもあります。図面作成時期が古い場合、現在の境界標の位置とずれている可能性があります。また、買主が新しい確定測量図を要求する場合は、既存図面では対応できません。費用削減と確実性のバランスを考えて判断する必要があります。

境界確定のタイミングも重要です。売却を決めてから慌てて測量を依頼すると、繁忙期で費用が高くなったり、納期が間に合わなくなったりするリスクがあります。可能であれば、売却の半年から1年前に測量を済ませておくことで、余裕を持った交渉ができます。

相続で土地を取得した場合は、相続登記と同時に境界確定を済ませておくことをお勧めします。後から測量が必要になると、相続人全員の同意を再度取る手間が発生します。相続手続きのタイミングで境界確定も完了させておけば、将来の売却がスムーズになります。

三井のリハウスによる測量費用の節約方法では、実務的な費用削減のポイントが詳しく解説されています。

不動産業従事者としては、売却相談を受けた段階で測量の必要性とコスト削減の可能性を調査し、顧客に最適な提案をすることが求められます。費用を抑えつつも確実性を担保するバランス感覚が重要です。