上下水道関連銘柄と老朽化対策
現在の更新ペースでは水道管更新に100年以上かかります。
上下水道関連銘柄の業績拡大が続く理由
不動産業に従事するあなたにとって、上下水道関連銘柄の動向は物件評価や地域リスク把握の観点から無視できない投資テーマとなっています。国土交通省の調査によれば、下水道管に起因する道路陥没事故は2022年度だけで2607件も発生しており、その大半は深さ50センチ未満の小規模なものですが、1メートルを超える規模の陥没も全体の2%を占めています。こうした事故の背景には、全国で約50万キロメートルに及ぶ下水道管のうち、耐用年数50年を超えた管が約7%、つまり約3万5000キロメートルに達している現状があります。
つまり老朽化が進行中です。
2025年1月に埼玉県八潮市で発生した大規模道路陥没事故は、老朽化した下水道管の破損が原因とされ、約120万人に2週間にわたって下水道利用の自粛を求める事態となりました。この事故は国民に強烈な衝撃を与え、水道インフラの予防保全が国家プロジェクトレベルの急務として認識されるきっかけとなっています。政府は2030年度までに基幹となる5000キロメートルの下水道更新工事を完了させる方針を打ち出しており、これに伴う維持管理・更新費用は今後30年間で総計38兆円規模に達すると国土交通省が試算しています。
水道管に関しても状況は深刻です。厚生労働省によれば、法定耐用年数40年を超えた水道管は全国で約15万キロメートル、全体の約20%を占めており、これらの交換費用だけで今後30年間に33兆円以上が必要とされています。しかし現状の更新率は年間0.7%程度にとどまっており、このペースでは計算上100年以上かかる計算です。
深刻な状況ですね。
不動産業の立場からこの状況を見ると、水道インフラの脆弱性が顕在化しているエリアでは、物件の資産価値そのものが下落リスクにさらされることになります。特に相続物件や築古物件を扱う際には、引き込み管の老朽化や耐震性、さらには古い鉛管使用の有無などが価格交渉の重要な要素となっており、購入希望者からの調査依頼も増加傾向にあります。こうした背景から、水道インフラ整備に関わる企業群への投資需要が高まっており、株式市場でも関連銘柄に断続的な資金流入が観測されています。
国土交通省の下水道管路メンテナンス年報では、管路の老朽化状況と今後の更新計画について詳細なデータが公開されています
上下水道コンサルティング銘柄の強み
上下水道分野のコンサルティング企業は、官公庁からの安定受注と高い専門性を武器に業績を拡大させています。代表的な企業としてNJS(証券コード2325)は、上下水道インフラ整備の調査・設計・計画策定で国内トップクラスの実績を誇り、官公需売上比率が非常に高い特徴があります。同社の2025年12月期業績予想では、国土強靱化関連の受注増加を背景に、前期比で増収増益を見込んでいます。
高い専門性が強みです。
オリジナル設計(証券コード4642)も上下水道の調査や計画に強みを持ち、特に地方自治体との取引実績が豊富です。同社はNJSの業績上方修正発表を受けて連れ高する動きを見せるなど、セクター全体での資金循環が活発化しています。日水コン(証券コード261A)は2024年10月に東証スタンダード市場に新規上場した注目企業で、上下水道を中心とした建設コンサルティングを展開しており、河川や砂防分野でも存在感を示しています。2025年12月期は営業利益で前期比6%増の23億円を見込み、上場後も堅調な成長軌道を維持しています。
これらコンサルティング企業の強みは、インフラ整備の川上工程である調査・診断・設計の段階から関与するため、プロジェクト全体を通じた長期的な受注が見込めることにあります。不動産業の視点では、こうした企業が手がける地域の水道インフラ診断結果が、将来的な物件評価や開発計画に影響を与える可能性があるため、どのエリアで大規模プロジェクトが進行しているかを把握することが重要になります。特に再開発エリアや新興住宅地では、上下水道の整備状況が入居率や賃料水準に直結するケースが増えています。
投資判断の参考材料になります。
コンサルティング企業への投資を検討する場合、官公庁受注残高の推移と、国や自治体の予算配分動向を定期的に確認することが有効です。国土強靱化計画は複数年にわたる継続的な予算措置が見込まれるため、受注環境の安定性は高いといえますが、政権交代や財政状況の変化によって優先順位が変動するリスクも考慮しておく必要があります。
上下水道管材・製品メーカーの成長性
上下水道用の管材や製品を製造するメーカー各社は、更新需要の本格化を見据えて生産体制の強化と製品開発を加速させています。日本ヒューム(証券コード5262)は下水道や上水道に使用されるヒューム管製造の最大手で、2024年度の市場シェアは23.5%を誇っています。同社が開発した「e-CON」という新しいコンクリート技術は、セメントを一切使用しないプレキャスト製品用コンクリートとして高評価を得ており、環境負荷低減の観点からも注目されています。
シェアトップの強みがあります。
業績面では2026年3月期に営業利益が前期比9%増の22億円と、13期ぶりにピーク利益を更新する見通しです。株価も2025年7月に上場来高値2561円をつけており、今後さらなる最高値圏突入が期待されています。前澤化成工業(証券コード7925)は上下水道機材の製造と水処理システムを展開し、管工機材が売上の9割を占めています。下水道分野では継手や塩ビ製フリーインバートマスなどで受注を伸ばしており、2027年3月期を最終年度とする中期計画では売上高260億円、営業利益25億円を目標としています。
栗本鐵工所(証券コード5602)は鋳鉄管大手で、上下水道管向けダクタイル鉄管などで安定した収益を上げています。同社は燃料電池分野やナノテク関連技術でも先駆的な取り組みを行っており、他社と差別化された事業ポートフォリオを構築しています。高配当利回りと低PBRが投資家から評価されており、2025年7月には年初来高値7080円を更新し、実質的な青空圏での強調展開が続いています。
配当も魅力的です。
イトーヨーギョー(証券コード5287)はマンホールやライン導水ブロックで高い商品競争力を持ち、豪雨対策製品への引き合いが旺盛です。2026年3月期も2ケタ成長が視野に入っており、PER10倍近辺、PBR0.6倍前後と指標面で極めて割安な水準に放置されています。小型株特有の急騰習性があり、2025年2月の年初来高値857円奪回が時間の問題とされています。
不動産業の観点では、これら管材メーカーの製品がどの地域のインフラ更新に採用されているかを追跡することで、将来的な水道トラブルリスクが低い安全なエリアを見極める手がかりになります。特に新築分譲や大規模リノベーション案件では、採用される管材の耐用年数やメンテナンス性が長期的な物件価値を左右するため、施工仕様書の確認が重要です。
株探の下水道関連銘柄テーマページでは、関連企業の株価動向と業績情報が一覧で確認できます
上下水道工事・設備企業の受注動向
実際の施工を担う工事・設備企業も、インフラ更新需要の恩恵を直接受ける立場にあります。水道機工(証券コード6403)は上下水道向け水処理機器の製造販売を手掛け、東レ(証券コード3402)が過半の株式を保有する親会社となっています。官公庁関連案件が売上の9割を占め、水インフラ分野の施設老朽化に伴う更新需要が今後中期的に収益に反映される見込みです。
安定した受注基盤があります。
2025年3月期には売上高が過去最高を記録し、営業利益も3.3倍増益と急回復を遂げました。2026年3月期は売上高が前期比16%増で初の300億円台乗せを見込み、営業利益も同8%増の16億円予想と、27年前に記録したピーク利益に肉薄する勢いです。荏原実業(証券コード6328)は上下水処理施設向けで優位性を持つ研究開発型のファブレス型装置メーカーで、環境関連事業の育成に注力しています。
月島ホールディングス(証券コード6332)は上下水処理設備など水環境事業を主力とし、下水汚泥処理装置では国内市場の3割を占めるトップ企業です。大盛工業(証券コード1844)は下水道工事などを主力とする建設会社で、地方自治体からの継続的な受注実績があります。これら施工・設備企業の受注残高推移は、実際にどの程度のインフラ更新工事が発注されているかを示す先行指標となります。
受注残が業績を示します。
不動産業では、特定エリアでの大規模な上下水道工事の実施時期を把握することで、工事期間中の騒音や交通規制による物件への影響を事前に顧客に説明できるほか、工事完了後はインフラが刷新された安心感を販促材料として活用できます。また、築古物件のリノベーション提案時には、建物内の給排水管更新だけでなく、公共インフラ側の更新予定も併せて確認することで、総合的な水回りトラブルリスクの低減を訴求できます。
投資判断においては、これら企業の四半期ごとの受注高発表をチェックし、国や自治体からの大型案件受注の有無を確認することが重要です。特に複数年にわたる長期契約案件の獲得は、安定した収益基盤を示すポジティブな材料となります。
上下水道インフラと不動産価値の相関
水道インフラの老朽化は、不動産価値に直接的かつ深刻な影響を及ぼす要因として、近年ますます注目されています。国土交通省試算では、現在の更新ペースでは水道管の完全更新に100年以上かかるとされており、この間に老朽化に起因する事故やトラブルが各地で頻発する可能性が高いと指摘されています。不動産売買の現場では、土地や建物の購入時に水道管の整備状況、引き込み管の種類、老朽化の程度などを正確に把握することが、取引後のトラブル回避や資産価値維持の観点から不可欠となっています。
知らないと損します。
特に相続物件や築30年以上の物件では、引き込み管が隣地と共有されているケースや、古い鉛管が使用されているケースが少なくありません。鉛管は健康被害のリスクがあるため、発覚した場合は交換費用として30万円から50万円程度の追加負担が発生します。また、水道管の老朽化による破裂リスクは、地面を掘削してコンクリートを切削する大規模工事が必要となるため、修繕費用が高額になりやすい特徴があります。
こうしたリスクは物件の販売価格や賃料設定に直接反映されるべきですが、実際には売主や仲介業者が十分に把握していないケースも多く、契約後にトラブルとなる事例が増えています。購入希望者側も、インフラ老朽化問題に対する認識が高まっており、物件選定時に上下水道の状態を重視する傾向が強まっています。特にファミリー層や長期居住を前提とする購入者は、将来的なメンテナンスコストを含めた総保有コストを慎重に試算するようになっています。
総保有コストが重要です。
不動産価値の観点では、エリア全体の水道インフラ更新計画も重要な判断材料です。自治体が公表している水道事業計画や下水道整備計画を確認することで、今後5年から10年のスパンでどのエリアのインフラが優先的に更新されるかが把握できます。更新済みエリアや近い将来に更新予定のエリアは、長期的な安心感から物件価値が相対的に高く評価される傾向があります。
逆に、更新計画の優先順位が低いエリアや、自治体の財政状況が厳しく更新予算が十分に確保できていない地域では、インフラトラブルのリスクが高まり、それが物件価値の下押し要因となる可能性があります。こうした情報は、各自治体の水道局や下水道局のウェブサイト、または直接問い合わせることで入手可能です。不動産業者としては、取引物件周辺のインフラ更新計画を事前に調査し、顧客への説明資料に含めることで、信頼性の高い提案が可能になります。
不動産総合の専門サイトでは、土地売却時に水道管がネックとなるケースと価格への影響について、具体的な事例とともに解説されています
上下水道関連銘柄への投資戦略とリスク
上下水道関連銘柄への投資を検討する際には、国策としての継続性と企業の受注力を総合的に評価することが重要です。政府が2026年度から5年間で約20兆円強の事業規模を投じる公共インフラ更新計画は、複数の政権にまたがる長期プロジェクトとなる見込みで、関連企業にとっては安定した成長基盤となります。特に2025年に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故以降、国民の関心が高まっており、政治的にも予算配分の優先順位が上がっている状況です。
国策の後押しがあります。
投資対象の選定では、企業の事業構成と収益源を精査することが肝要です。官公庁受注比率が高い企業は景気変動の影響を受けにくい一方、公共予算の削減リスクに左右されやすい特性があります。NJSやオリジナル設計、日水コンといったコンサルティング企業は、プロジェクトの川上工程に位置するため、インフラ更新の初期段階から継続的な受注が見込めます。一方、日本ヒュームや前澤化成工業などの管材メーカーは、実際の施工段階での需要となるため、受注から収益化までのタイムラグが生じる点に注意が必要です。
配当利回りも投資判断の重要な要素です。栗本鐵工所や前澤化成工業は配当利回り3%台後半から4%近い水準を維持しており、インカムゲイン狙いの投資家にとって魅力的です。また、PBRが0.6倍前後と低水準に放置されている銘柄は、株主還元強化や自社株買いといった資本政策の変更が株価上昇のトリガーとなる可能性があります。
配当狙いも有効です。
リスク要因としては、原材料価格の高騰や人件費の上昇による利益率の圧迫が挙げられます。特に管材メーカーは鉄鋼や樹脂といった原材料の価格変動の影響を受けやすく、四半期ごとの決算発表では売上高だけでなく営業利益率の推移を確認することが重要です。また、技術者や熟練工の人材不足も業界全体の課題となっており、人件費上昇を製品価格に転嫁できるかどうかが収益性維持のカギを握ります。
競合状況も見逃せません。上下水道分野は技術力と実績が重視される業界ですが、近年は大手ゼネコンや総合インフラ企業が参入を強化しており、競争が激化する局面も想定されます。特に大型プロジェクトでは価格競争が厳しくなる傾向があり、受注高は増加しても利益率が低下するケースもあります。企業の四半期報告や決算説明会資料で、受注案件の採算性についての言及をチェックすることが有効です。
不動産業従事者の視点では、これら関連銘柄への投資と同時に、自社が扱う物件エリアのインフラ更新動向を把握することで、投資と本業の両面でシナジーを生み出すことが可能です。例えば、特定の管材メーカーの株価が上昇基調にある場合、その企業の製品が採用されているエリアでは大規模なインフラ更新が進行している可能性が高く、そのエリアの物件は長期的な安全性が高まると判断できます。こうした多面的な情報収集と分析が、不動産業と投資の両立において有効な戦略となります。
野村證券の「高市銘柄」解説ページでは、上下水道・国土強靭化関連の注目企業と経済効果について詳細に分析されています
Please continue.
