新耐震基準いつから昭和56年建築確認日が基準
昭和56年9月完成の物件でも旧耐震のケースがあります
新耐震基準昭和56年6月1日施行の正確な意味
新耐震基準は昭和56年(1981年)6月1日に施行された建築基準法の改正によって導入された耐震設計基準です。震度6強から7程度の大規模地震でも倒壊しないことを目標とした基準で、それ以前の旧耐震基準と大きく異なります。
旧耐震基準は震度5強程度の中規模地震を想定したものでした。新耐震基準では、中規模の地震ではほとんど損傷せず、大規模地震でも人命を守れる水準が求められるようになったのです。これは1978年の宮城県沖地震での被害を受けて、国が耐震性能の強化を図った結果です。
ここで重要なポイントがあります。新耐震基準が適用されるのは「建築確認を受けた日」が基準になるということです。
建物の完成日や引渡し日ではありません。
建築確認とは、建築主が工事を始める前に、その計画が建築基準法に適合しているかを確認する手続きのことです。
建築確認日が昭和56年6月1日以降であれば新耐震基準が適用されます。
たとえば、建築確認が昭和56年4月で完成が昭和56年8月の物件は旧耐震基準です。逆に、建築確認が昭和56年7月で完成が昭和57年2月の物件は新耐震基準となります。この違いを理解していないと、不動産取引で重大なミスを犯す可能性があります。
マンションなど大規模建築物の場合、建築確認から完成までに1年以上かかることも珍しくありません。そのため、昭和56年後半から昭和57年前半に完成した物件は、特に注意深く建築確認日を確認する必要があります。完成日だけで判断すると、新耐震だと思っていた物件が実は旧耐震だったという事態が発生するのです。
国土交通省の住宅ローン減税に関する公式情報では、昭和57年以後に建築された住宅を新耐震基準適合住宅としています
新耐震基準建築確認日の調べ方と必要書類
建築確認日を正確に調べるには、いくつかの方法があります。最も確実なのは「建築確認済証」を確認することです。建築確認済証には、建築確認を受けた日付が明記されています。この書類は建築主が保管しているはずですので、売主に提示を依頼しましょう。
建築確認済証が見つからない場合は「検査済証」でも確認できます。検査済証には建築確認申請日が記載されているため、これで新耐震基準かどうかを判断できます。検査済証は工事完了後の完了検査に合格した際に発行される書類です。
どうしても書類が見つからないケースもあります。
その場合は、市区町村の建築指導課などで「建築確認の台帳記載事項証明書」を取得することができます。この証明書には建築確認の年月日が記載されているため、新耐震基準かどうかを正確に判断できます。手数料は自治体によって異なりますが、数百円程度で取得できることが多いです。
登記簿謄本(登記事項証明書)で確認する方法もありますが、注意が必要です。登記簿謄本に記載されている「新築年月日」は建物の完成日を示しており、建築確認日ではありません。そのため、昭和56年から昭和57年にかけて完成した物件の場合、登記簿だけでは正確な判断ができないのです。
不動産業者として物件を扱う際は、築年数が昭和56年から昭和58年頃の物件については、必ず建築確認日を確認する習慣をつけるべきです。目安としては、昭和58年(1983年)以降に完成した建物であれば、ほぼ確実に新耐震基準と考えられます。木造住宅の建築期間は通常3〜6ヶ月程度だからです。
一方、マンションなどの大規模建築物は建築期間が長いため、昭和57年中に完成した物件でも旧耐震基準の可能性があります。つまり、物件の規模によって判断の注意点が変わってくるということですね。
新耐震基準税制優遇と住宅ローン控除の違い
新耐震基準を満たしている物件には、大きな税制上のメリットがあります。
最も注目すべきは住宅ローン控除です。
2022年度の税制改正により、昭和57年(1982年)以降に建築された新耐震基準適合住宅であれば、中古住宅でも住宅ローン控除を受けられるようになりました。
住宅ローン控除では、年末時点のローン残高に応じて最大13年間、所得税や住民税の一部が控除されます。中古住宅の場合、10年間で最大210万円が控除される可能性があります。3,000万円の借入がある場合、毎年10万円前後の減税を受けられることもあるのです。
これは買主にとって大きなメリットです。
登録免許税の軽減措置も重要です。新耐震基準を満たす住宅の所有権移転登記では、登録免許税の税率が軽減されます。本則税率2.0%のところ、0.3%まで軽減されるため、不動産価格が高い物件ほど節税効果が大きくなります。
不動産取得税も軽減の対象となります。新耐震基準適合住宅を取得した場合、一定の条件を満たせば不動産取得税の軽減措置を受けられます。固定資産税評価額から一定額を控除できるため、取得時の税負担が大幅に軽減されるのです。
地震保険料の割引も見逃せません。新耐震基準で建築された建物は、地震保険料が10%割引されます。さらに耐震等級を取得していれば、最大50%の割引を受けられるケースもあります。毎年の保険料負担が軽減されるため、長期的には大きな節約につながります。
旧耐震基準の物件でも、耐震基準適合証明書を取得すれば、これらの税制優遇を受けられる可能性があります。ただし、耐震診断と必要に応じた耐震改修工事が必要となるため、費用対効果を慎重に検討する必要があります。耐震診断費用は数万円から十数万円、耐震改修工事は平均で約183万円かかるとされています。
不動産業者としては、買主に対してこれらの税制優遇について正確に説明する責任があります。特に住宅ローン控除については、買主の資金計画に大きく影響するため、建築確認日の確認を怠らないようにしましょう。
新耐震基準2000年基準木造住宅の落とし穴
新耐震基準だから安心と思っていると、大きな落とし穴があります。実は木造住宅については、2000年(平成12年)6月1日にさらなる耐震基準の強化が行われているのです。この基準は「2000年基準」や「現行耐震基準」と呼ばれています。
2000年基準で何が変わったのでしょうか。
主な変更点は3つあります。
まず、地盤調査が義務化されました。
地盤の強度に応じて適切な基礎設計を行うことが求められるようになったのです。次に、柱と土台、柱と梁などの接合部に金物を使用することが明確化されました。そして、耐力壁をバランスよく配置することが詳細に規定されたのです。
衝撃的なデータがあります。日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の調査によると、新耐震基準(1981年〜2000年)で建てられた木造住宅の約8割が、現行の耐震基準を満たしていないという結果が出ています。つまり、新耐震基準で建てられたはずの木造住宅でも、十分な耐震性がない可能性が高いということです。
実際に、2016年の熊本地震では、新耐震基準の木造住宅でも倒壊や大破した事例が報告されています。特に1981年〜2000年の間に建てられた木造住宅(通称:81-00住宅)は、接合部の金物が不十分だったり、耐力壁の配置バランスが悪かったりするケースが多いのです。
2000年基準以降の木造住宅でも、熊本地震では3〜4割が大きな被害を受けたという調査結果もあります。これは、耐震基準を満たしていても「倒壊はしないが、住めなくなる」というリスクがあることを示しています。命は助かっても、家に大きなダメージを負い、修繕費用が数百万円かかるケースもあるのです。
不動産業者としては、木造住宅を扱う際にこの事実を理解しておく必要があります。築20年超の木造住宅(2000年5月以前の建築)を取り扱う場合は、買主に対して耐震診断を推奨するのが良心的な対応でしょう。耐震診断によって耐震性能を正確に把握し、必要に応じて耐震補強を提案することで、買主の安全と資産価値を守ることができます。
一般財団法人日本耐震診断協会の調査では、新耐震基準でも2000年5月以前の木造住宅の約8割が十分な耐震性がないと報告されています
マンションなど鉄筋コンクリート造の場合は、新耐震基準であれば比較的安心です。新耐震基準のマンションは、阪神・淡路大震災や東日本大震災でも倒壊した例はほとんどありません。ただし、1981年〜2000年の新耐震マンションでも、壁のひび割れなどの損傷が発生した事例はあります。
新耐震基準重要事項説明での注意点と説明義務
不動産業者には、宅地建物取引業法第35条に基づき、重要事項説明を行う義務があります。耐震性に関する情報も、この重要事項説明の対象となる重要な項目です。特に昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた旧耐震基準の建物については、耐震診断の実施状況を説明する義務があります。
具体的な説明義務の内容を見ていきましょう。まず、耐震診断を実施しているかどうかの調査結果を説明する必要があります。耐震診断が実施されている場合は、その結果の記録が存在するかを確認し、記録がある場合はその内容を説明しなければなりません。
新耐震基準か旧耐震基準かの判断自体は、重要事項説明書に明記すべき情報です。建築確認日を正確に調査し、その日付を重要事項説明書に記載することで、買主が正確な情報に基づいて判断できるようにする必要があります。誤った情報を伝えると、後日トラブルになる可能性が高いです。
注意したいのは、完成日だけを見て判断してしまうケースです。
昭和56年後半から昭和57年前半に完成した物件については、必ず建築確認日を確認しましょう。建築確認済証や台帳記載事項証明書で正確な日付を把握し、それに基づいて新耐震か旧耐震かを判断します。この手間を惜しむと、買主に誤った情報を伝えることになり、損害賠償責任を負う可能性もあります。
売主への調査も重要です。耐震診断の実施状況や結果については、まず売主に確認します。売主が把握していない場合は、マンションであれば管理組合や管理会社に問い合わせます。戸建ての場合は、市区町村の建築指導課などで記録が残っているか確認することもあります。
税制優遇に関する情報も、買主にとって重要な判断材料です。新耐震基準であれば住宅ローン控除や登録免許税の軽減が受けられることを説明し、旧耐震基準であっても耐震基準適合証明書を取得すれば優遇を受けられる可能性があることを伝えましょう。ただし、証明書取得には費用がかかるため、費用対効果についても説明するのが親切です。
木造住宅で築20年超の物件を扱う場合は、2000年基準についても触れることをおすすめします。新耐震基準ではあるものの、2000年基準は満たしていない可能性があること、必要に応じて耐震診断を検討することを提案すると、買主の信頼を得られます。
重要事項説明での説明漏れは、宅建業法違反となる可能性があります。特に耐震性に関する情報は、買主の生命・財産に関わる重要な事項です。調査を徹底し、正確な情報を伝えることが、不動産業者としての責任です。
新耐震基準不動産売却時の価格への影響
新耐震基準か旧耐震基準かによって、不動産の売却価格は大きく変わります。一般的に、旧耐震基準の物件は新耐震基準の物件と比べて、売却価格が10〜30%程度安くなる傾向があります。これは買主が感じる不安やリスク、そして前述した税制優遇の有無が影響しているのです。
旧耐震基準の物件が売れにくい理由はいくつかあります。まず、住宅ローンの審査が厳しくなることです。金融機関によっては、旧耐震基準の物件に対して融資を行わない、または融資額を制限するケースがあります。買主の選択肢が狭まるため、売却の難易度が上がるのです。
地震保険料の負担も購入を躊躇させる要因です。
旧耐震基準の建物は、地震保険料が新耐震基準と比べて割高になります。年間数千円から数万円の差が生じることもあり、長期的な負担として買主に敬遠されます。地震への意識が高まっている現代において、この点は購入判断に大きく影響するのです。
しかし、旧耐震基準の物件でも売却を成功させる方法はあります。最も効果的なのは、耐震基準適合証明書を取得することです。耐震診断を実施し、必要に応じて耐震補強工事を行った上で証明書を取得すれば、買主は新耐震基準の物件と同等の税制優遇を受けられます。
耐震診断の費用は、木造住宅で5万円〜15万円程度、マンションで10万円〜30万円程度が相場です。耐震補強工事が必要な場合、木造住宅の平均工事費は約183万円とされていますが、部分的な補強であれば数十万円で済むケースもあります。売却価格への影響を考えれば、投資する価値は十分にあります。
売主として物件を売却する際は、建築確認日を明確にしておくことが重要です。昭和56年後半から昭和57年前半に完成した物件の場合、新耐震基準であることを証明できれば、価格面で有利になります。建築確認済証や台帳記載事項証明書を用意しておき、買主や仲介業者に提示できるようにしましょう。
逆に、旧耐震基準であることが明らかな物件を売却する場合は、最初から価格を適切に設定することが大切です。相場より2〜3割安い価格設定にすることで、投資家や現金購入者など、住宅ローンを使わない買主層をターゲットにできます。立地が良ければ、建て替え前提の土地として需要がある可能性もあります。
不動産業者として売却を仲介する場合は、売主に対して現実的なアドバイスを行うべきです。耐震補強にかかる費用と、それによって得られる価格上昇効果を比較し、費用対効果が見込めるなら証明書取得を提案しましょう。一方、費用対効果が悪い場合は、価格調整で対応する方が合理的かもしれません。
市場の動向も考慮に入れる必要があります。大規模地震の発生後は、耐震性への関心が高まり、旧耐震物件の売却難易度がさらに上がる傾向があります。逆に、不動産市況が良好な時期は、旧耐震物件でも比較的売れやすくなります。タイミングを見極めることも、成功する売却戦略の一つなのです。