2026年度の税制改正で控除期間も変更に。
不動産業者が顧客に説明すべきポイントを網羅的に解説していますが、あなたは正確に案内できていますか?
既存住宅の住宅ローン控除の要件と注意点
築年数関係なく説明すると、顧客は最大140万円損します。
既存住宅の住宅ローン控除の基本的な要件とは
既存住宅で住宅ローン控除を受けるには、新築住宅とは異なる複数の要件をクリアする必要があります。不動産業者として最も重要なのは、これらの要件を正確に理解し、購入検討者に誤った情報を伝えないことです。
まず基本となる共通要件を整理しましょう。住宅ローンの返済期間が10年以上であること、合計所得金額が2,000万円以下であることは新築と同じです。床面積は登記簿上50平方メートル以上が原則で、その2分の1以上が自己居住用である必要があります。取得から6か月以内に居住を開始し、控除を受ける年の12月31日まで引き続き住んでいることも必須条件です。
既存住宅特有の要件として注目すべきは築年数と耐震基準です。2022年度の税制改正により、従来の「木造20年以内、鉄筋コンクリート造25年以内」という築年数制限が撤廃されました。
つまり新耐震基準です。
現在は1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された住宅であれば、築年数に関係なく控除対象となります。
これは業界にとって大きな変更点でした。
国税庁:中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
ただし1981年以前の旧耐震物件でも、耐震基準適合証明書や既存住宅性能評価書、既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書のいずれかを取得すれば控除対象になります。取得日前2年以内に証明や検査が完了している必要があるため、タイミングが重要です。購入検討者が旧耐震物件を希望する場合は、必ず証明書取得の可能性とコストを事前に確認しておくべきでしょう。
控除額の計算方法も押さえておきましょう。年末のローン残高または取得対価額のいずれか少ない方の金額に0.7%を乗じた額が、各年の控除額となります。認定長期優良住宅・認定低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅の場合、借入限度額は3,000万円で年間最大21万円、10年間で最大210万円の控除が受けられます。その他の住宅は借入限度額2,000万円で年間最大14万円、10年間で最大140万円です。
この70万円の差は顧客にとって無視できません。
既存住宅の床面積要件で見落としがちな測定方法
床面積50平方メートルという要件は、一見シンプルに見えて実は落とし穴が多い部分です。不動産業者が最も注意すべきは、この面積が「登記簿面積」で判定されるという点になります。販売図面や広告に記載される面積と、登記簿上の面積は必ずしも一致しません。
マンションの場合、共用部分は一切含まれず、専有部分のみで判定します。エントランスや廊下、階段といった共用スペースはカウントされないということです。戸建住宅でも、店舗併用住宅なら店舗部分を含めた建物全体の床面積で判断しますが、住宅部分だけでは50平方メートルに満たないケースもあります。
具体的な測定方法も理解しておく必要があるでしょう。登記面積は壁の中心線(壁芯)ではなく、壁の内側(内法)で測定されます。これにより、同じ物件でも販売図面の壁芯面積より登記面積の方が小さくなるのが一般的です。例えば壁芯で52平方メートルの物件でも、登記面積では49.8平方メートルとなり控除対象外になるケースがあります。
わずか0.2平方メートルの差です。
バルコニーやロフト、小屋裏収納は延床面積に含まれないことが多いため注意が必要です。「居住スペースとして使えるから大丈夫」という感覚的な判断は危険でしょう。必ず登記事項証明書で正確な面積を確認してから、顧客に控除適用の可否を伝えるべきです。
共有名義の場合も誤解が生じやすいポイントになります。夫婦や親子で共有する住宅では、自分の持分だけの面積ではなく、建物全体の床面積で判定します。持分が2分の1でも、建物全体が60平方メートルなら要件を満たすということです。ただしマンションの区分所有の場合は、その専有部分の面積で判断するため、建物全体ではなく自分が所有する部屋の広さが基準となります。
区別が必要ですね。
購入前の段階で登記事項証明書を取得し、正確な面積を確認する習慣をつけることが、トラブル防止の最善策でしょう。法務局で誰でも取得できますし、オンライン申請なら数百円で済みます。この小さな手間が、後々の大きなトラブルを防ぐのです。
既存住宅の耐震基準適合証明と瑕疵保険の活用法
旧耐震基準の既存住宅でも、適切な証明書類があれば住宅ローン控除の対象となります。不動産業者として知っておくべきは、耐震基準適合証明書、既存住宅性能評価書、既存住宅売買瑕疵保険の3つの証明方法です。これらを使い分けることで、本来なら控除対象外の物件でも顧客にメリットを提供できます。
耐震基準適合証明書は、建築士や指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人が発行できます。取得の日前2年以内に家屋の調査が終了している必要があるため、購入前に売主側で取得しておくか、買主が取得後すぐに申請する段取りが重要です。費用は物件規模により異なりますが、概ね5万円から15万円程度でしょう。
既存住宅性能評価書は、耐震等級1以上の評価を受ける必要があります。取得日前2年以内に評価されたものに限られ、申請から取得まで1か月程度かかることが一般的です。住宅性能表示制度に基づく第三者評価という位置づけのため、信頼性は高いといえます。
既存住宅売買瑕疵保険は、単なる保険ではなく住宅ローン控除のための証明手段としても機能します。保険加入には建築士による現況検査が必須で、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分について基準を満たす必要があります。取得日前2年以内に保険契約を締結したものが有効で、保険料と検査費用を合わせて10万円から20万円程度が相場でしょう。
検査で不適合箇所が見つかった場合、補修してから保険に加入する流れになります。補修費用が10万円から40万円程度で済む場合、控除による節税効果(10年で最大140万円)を考えれば、補修した方が得策です。買主にこの選択肢を提示することで、取引成立の可能性が高まります。
注意点として、これらの証明書類は売買契約後では取得のタイミングが遅れるリスクがあります。購入検討段階で「この物件は旧耐震だが、証明書を取得すれば控除対象になる」という説明と、具体的な費用・期間の見積もりを提示すべきでしょう。曖昧な説明で後からトラブルになるケースが少なくありません。
売主が宅建業者の場合は、瑕疾保険への加入を依頼するのも一つの方法です。業者は保険加入により買主への訴求力を高められるため、交渉次第では対応してもらえる可能性があります。個人間売買では買主側で手配することになるため、信頼できる検査機関を事前にリストアップしておくと、スムーズな対応が可能になります。
既存住宅の買取再販物件における控除の特例措置
宅建業者が買い取ってリフォームした後に再販する「買取再販住宅」は、通常の既存住宅より有利な控除条件が適用されます。不動産業者にとって、この制度を理解しているかどうかが販売力の差につながるでしょう。買取再販物件の定義と、具体的なメリットを正確に把握しておく必要があります。
買取再販住宅として認められるには、いくつかの要件を満たさなければなりません。宅建業者が既存住宅を取得してから2年以内に個人に販売すること、販売時点でその住宅が新築から10年以上経過していること、特定増改築等工事を実施していることが条件です。
特定増改築等工事の内容にも基準があります。工事費用の総額が、個人への売買価額(税込)の20%相当額、または300万円のいずれか少ない方以上であることが求められます。例えば売買価額が2,000万円なら、最低でも300万円以上の工事が必要です。対象工事は、耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修、給排水管等の交換工事など、一定の性能向上を伴うものに限定されています。
買取再販住宅の控除内容は、住宅の性能により大きく異なります。認定長期優良住宅・認定低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅の場合、借入限度額は4,500万円で控除期間は13年、最大控除額は409万5,000円です。省エネ基準適合住宅なら借入限度額3,000万円で控除期間13年、最大273万円となります。通常の既存住宅が最大140万円(その他の住宅)または210万円(認定住宅等)であることを考えると、買取再販の優遇幅は非常に大きいといえます。
最大で約270万円の差が生まれます。
国税庁:買取再販住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合
買取再販住宅として控除を受けるには、増改築等工事証明書の取得が必須です。この証明書は、建築士事務所に登録している建築士や指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人が発行します。宅建業者側で確実に取得しておくべき書類でしょう。購入者が確定申告する際、この証明書がなければ買取再販としての控除は受けられません。
販売戦略として、買取再販物件では必ず増改築等工事証明書の有無を確認し、ある場合は通常の中古住宅との控除額の違いを明確に説明すべきです。「この物件なら最大409万5,000円の控除が受けられます」という具体的な数字は、購入の後押しになります。証明書がない場合は、業者に発行を依頼するか、通常の既存住宅としての控除内容を正確に伝える必要があります。
売主が証明書発行を怠っているケースも実際にあります。その場合、買主側から発行を依頼することも可能ですが、工事内容の確認に時間がかかるため、契約前に対応を求めるのが賢明でしょう。
既存住宅の2026年度税制改正による控除期間延長の影響
2025年12月に公表された2026年度税制改正大綱により、既存住宅の住宅ローン控除にも重要な変更が加えられました。不動産業者として、2025年入居と2026年以降入居で何が変わるのかを正確に理解し、顧客に適切なタイミングをアドバイスできる必要があります。
最も大きな変更点は、既存住宅の控除期間が延長されたことです。2025年までは原則10年間だった控除期間が、2026年以降入居の場合、認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅であれば新築と同じ13年間に延長されます。借入限度額も見直され、認定住宅等は最大3,000万円、省エネ基準適合住宅は2,000万円となりました。
特定の世帯にはさらなる優遇があります。19歳未満の子を有する世帯または夫婦いずれかが40歳未満の世帯(特例対象個人)の場合、認定住宅等の借入限度額が4,500万円に引き上げられ、控除期間13年で最大控除額は409万5,000円です。2025年の同条件が最大210万円だったことを考えると、約2倍の優遇になります。
つまり199万5,000円の差です。
省エネ基準を満たさない「その他の住宅」については、2026年以降も控除期間10年・借入限度額2,000万円で変更はありません。ただし、環境性能の高い住宅への誘導政策として、今後さらに要件が厳しくなる可能性も指摘されています。
不動産業者の実務対応として重要なのは、2025年中に契約して2026年に入居する顧客への説明です。控除の適用は「入居日」で判定されるため、2025年末までに契約しても2026年1月以降に入居すれば新制度が適用されます。認定住宅等を購入する顧客にとっては、2026年入居の方が有利になるケースが多いでしょう。
一方、その他の住宅を購入する場合は、2025年と2026年で条件が変わらないため、無理に急ぐ必要はありません。ただし金利動向や物件の在庫状況を総合的に判断すべきで、税制だけで購入時期を決めるのは適切ではないでしょう。
災害危険区域や土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に所在する住宅は、2026年以降、住宅ローン控除の対象外となる点にも注意が必要です。該当エリアの物件を扱う場合、必ず自治体のハザードマップで区域指定を確認し、顧客に正確な情報を提供すべきでしょう。説明を怠ると、後で大きなトラブルに発展するリスクがあります。
税制改正の内容は複雑で、毎年変更される可能性もあります。国税庁や国土交通省の公式資料を定期的にチェックし、最新情報を常にアップデートしておくことが、プロの不動産業者として求められる姿勢です。

