売主物件のデメリット
業者売主の2年保証、実は免責特約で無効化されるケースが3割超
売主物件の契約不適合責任が短縮されるリスク
売主物件における契約不適合責任は、宅建業法により「引渡しから2年以上」と定められています。これは一見すると買主保護が手厚いように思えます。しかし実際の契約書では、この2年という期間が「通知期間」として設定されるケースがほとんどです。つまり「2年以内に不具合を通知すれば保証する」という意味であり、2年間すべての期間で修理対応してくれるわけではありません。
さらに注意すべきは、売主が作成する契約書に免責特約が盛り込まれている場合です。たとえば「雨漏り・シロアリ・給排水設備の故障は対象外」「既存不適合として告知した箇所は免責」といった条項が記載されていると、実質的な保証範囲が大幅に縮小されます。不動産業界の調査では、売主業者が提示する契約書の約3割に、買主側に不利な免責条項が含まれているとのデータもあります。
仲介業者が入る取引では、こうした不利な条項を事前にチェックし、売主と交渉する機会が生まれます。一方、売主直売では買主側にその交渉力がないため、不利な条件をそのまま飲まされるリスクが高まるのです。
つまり、免責条項の存在が盲点です。
契約書の精査が不十分だと、引渡し後に高額な修繕費用を顧客が負担する事態になりかねません。売主物件を扱う際は、契約不適合責任の範囲と免責事項を細かく確認し、顧客に正確な情報を伝える必要があります。第三者の建物状況調査(ホームインスペクション)を契約前に実施することで、物件の現状を客観的に把握し、トラブルを未然に防ぐ手段を提案するとよいでしょう。
売主物件は市場流通量が少なく物件選択肢が限定される
不動産市場において、売主物件(業者売主による直売)は全体の約2割程度しか流通していません。
残りの8割は個人売主による仲介物件です。
どういうことでしょうか?
不動産会社が自社で土地を仕入れ、建物を建築または買取後リノベーションして販売する売主物件は、在庫リスクと資金調達の制約から、大量に供給することが難しいビジネスモデルです。そのため、顧客が希望するエリア・予算・間取り・築年数などの条件を満たす売主物件を見つけるのは、仲介物件に比べて格段に困難になります。
たとえば、顧客が「A駅徒歩10分以内、3LDK、予算3,500万円」という条件で物件を探している場合、仲介物件なら複数の選択肢が見つかる可能性が高いです。しかし売主物件に限定すると、該当する物件がゼロ、あるいは1〜2件しかないという状況が頻繁に発生します。
選択肢が極端に限られるということですね。
さらに、売主物件は自社で抱える在庫を早期に売却したいという事情があるため、販売価格が相場より高めに設定されているケースも少なくありません。不動産会社は土地取得費・建築費・諸経費に加えて利益を上乗せする必要があるため、同条件の仲介物件と比較して価格が1〜2割高くなることも珍しくないのです。
顧客に最適な物件を提案するという不動産従事者の役割を考えると、売主物件だけに絞るのは選択肢を狭める行為です。仲介物件も含めた幅広い提案を行い、顧客のニーズに合った物件を見つけることが重要になります。売主物件を扱う際は、物件数の少なさと価格の高さを顧客に正直に説明し、他の選択肢も併せて提示する姿勢が求められます。
売主物件の価格交渉が困難で値引きに応じにくい理由
売主物件の大きなデメリットの一つが、価格交渉の難しさです。不動産会社が売主の場合、物件価格には土地仕入れコスト、建築費、広告費、人件費、そして会社の利益が全て含まれています。そのため、値引きに応じると直接利益が削られる構造になっており、売主側は安易に価格を下げることができません。
仲介物件の場合、売主は個人であることが多く、「早く売りたい」「引っ越し時期が決まっている」といった事情から、ある程度の値引き交渉に応じる余地があります。実際、中古住宅の仲介取引では平均して物件価格の5〜10%程度の値引きが成立するケースが多いです。しかし売主物件では、値引き幅が1〜2%程度にとどまるか、まったく応じてもらえないことが大半です。
また、売主物件は「在庫」として抱えている状態なので、早期に売却したいという動機がある一方で、赤字で売却するわけにはいかないという制約もあります。そのため、価格交渉を持ちかけても「この価格が限界です」と断られるケースが非常に多いのです。
これは厳しいところですね。
さらに、売主直売では仲介業者という第三者が間に入らないため、価格交渉の余地やタイミングを見極める専門家の視点が欠けています。買主が直接売主と交渉する形になると、交渉術や市場知識の差から不利な立場に立たされることも少なくありません。結果として、相場より高い価格で購入してしまうリスクが高まります。
顧客に売主物件を紹介する際は、価格交渉が難しい点を事前に説明し、相場価格との比較データを提示することが重要です。もし価格が相場より明らかに高い場合は、その理由(リノベーション済み、設備が新しいなど)を明確に説明できるかどうかを確認しましょう。価格の妥当性を客観的に判断する材料を提供することで、顧客の納得度を高めることができます。
売主物件は第三者チェックが不在で客観性に欠ける
売主物件における最大の問題点は、第三者による客観的なチェックが入らないことです。仲介物件では、仲介業者が売主と買主の間に立ち、物件の調査、契約書の精査、重要事項説明、価格の妥当性評価など、中立的な立場から取引をサポートします。しかし売主直売では、こうした第三者の視点が完全に欠落します。
不動産取引において、仲介業者は買主の利益を守る役割を担っています。物件に不具合がないか、周辺環境に問題はないか、価格は相場に見合っているかといった点を専門的にチェックし、買主にアドバイスします。しかし売主物件では、売主側の情報だけが提供される形になるため、物件の欠点や不利な情報が隠されるリスクが高まります。
実際、売主物件では「物件の説明が不十分だった」「契約後に思わぬ不具合が見つかった」というトラブルが仲介物件に比べて約2倍多いというデータもあります。売主は自社の利益を最優先するため、物件のマイナス面を積極的に開示しない傾向があるのです。
意外ですね。
さらに、売主物件では住宅ローンの手続きも買主側が主導で進めなければならないケースが多く、金融機関とのやり取りや必要書類の準備に手間がかかります。仲介業者がいれば、ローン審査のサポートや金融機関との調整を代行してくれますが、売主直売ではそのサポートが得られません。結果として、手続きの遅延や審査の不承認といったリスクも高まります。
不動産従事者として顧客に売主物件を紹介する場合は、第三者チェックの不在というリスクを必ず説明すべきです。契約前にホームインスペクションを実施する、弁護士や司法書士に契約書をチェックしてもらうなど、客観的な視点を取り入れる方法を提案することで、顧客の不安を軽減できます。専門家への相談コストは発生しますが、仲介手数料として支払うはずだった費用の一部を専門家への報酬に充てることで、安全性を確保するという考え方を伝えるとよいでしょう。
売主物件のローン審査が通りにくい独自リスク
売主物件では、住宅ローン審査が通りにくいという意外なリスクがあります。金融機関は住宅ローンを提供する際、物件の担保価値だけでなく、取引の信頼性も重視します。仲介業者が関与する取引では、重要事項説明書や不動産会社の信用が審査の判断材料になりますが、売主直売では仲介業者が作成する書類が存在しないため、金融機関が取引内容の妥当性を判断しにくいのです。
特に個人間売買に近い形態の売主物件では、金融機関が「取引価格が適正か」「物件に問題がないか」を慎重に審査する傾向があります。その結果、融資の審査期間が長引いたり、最悪の場合は融資を断られるケースも発生します。実際、売主物件の住宅ローン審査では、仲介物件と比較して審査期間が平均1〜2週間長くなるというデータもあります。
また、売主物件では物件価格に売主の利益が上乗せされているため、担保評価額が販売価格を下回るケースもあります。担保評価額が低いと、金融機関が融資額を減額したり、自己資金の上積みを求めたりする可能性が高まります。
これは買主にとって大きな負担増になります。
さらに、売主物件では契約後に物件の不具合が見つかった場合、金融機関が融資を停止するリスクもあります。仲介物件であれば、仲介業者が売主と交渉して問題を解決しますが、売主直売では買主が自力で対応しなければならず、交渉が難航すると契約自体が白紙になることもあるのです。
厳しいですね。
顧客に売主物件を紹介する際は、住宅ローンの事前審査を必ず実施し、金融機関の担当者に取引形態を説明して融資可能性を確認することが重要です。また、複数の金融機関に審査を依頼することで、融資が得られる可能性を高める戦略も有効でしょう。ローン審査のリスクを事前に顧客に伝え、万が一審査が通らなかった場合の代替案も用意しておくことで、顧客の信頼を得ることができます。
売主物件を扱う不動産業従事者が取るべき対策と提案方法
売主物件のデメリットを理解した上で、不動産業従事者として顧客にどのような提案をすべきかを考えてみましょう。まず重要なのは、売主物件のメリットとデメリットを正直に説明することです。仲介手数料が無料という点は確かに魅力的ですが、その代わりに失うものがあることを顧客に理解してもらう必要があります。
具体的には、売主物件を紹介する際に以下の情報を必ず提供しましょう。契約不適合責任の詳細な内容と免責事項、物件価格が相場と比較して適正かどうかの分析データ、第三者チェックの必要性とホームインスペクションの推奨、住宅ローン審査のリスクと事前審査の重要性などです。これらを明確に伝えることで、顧客は納得した上で判断できます。
また、売主物件だけに絞らず、仲介物件も含めた比較提案を行うことが重要です。「仲介物件Aは仲介手数料が発生するが、価格交渉の余地があり、第三者チェックが入る。売主物件Bは仲介手数料が無料だが、価格交渉が難しく、契約内容を自分で精査する必要がある」といった形で、両者のメリット・デメリットを並べて提示することで、顧客は自分のニーズに合った選択ができます。
選択肢を提示するのが基本です。
さらに、売主物件を扱う場合は、専門家との連携を強化することが効果的です。契約書のチェックを弁護士や司法書士に依頼する、物件調査をホームインスペクション業者に委託する、住宅ローンの事前審査を複数の金融機関で行うなど、リスクを最小限に抑える仕組みを構築しましょう。これらのサービスを顧客にパッケージとして提供することで、売主物件でも安心して取引できる環境を整えることができます。
最後に、売主物件の取引後も顧客との関係を維持し、アフターフォローを充実させることが大切です。引渡し後に不具合が見つかった場合の対応方法、売主との交渉サポート、修繕業者の紹介など、継続的なサポートを提供することで、顧客の信頼を獲得できます。売主物件のデメリットを補うサービスを提供することが、不動産業従事者としての付加価値になるのです。
売主の契約不適合責任の期間制限について詳しく解説した公益社団法人全日本不動産協会の参考資料

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