賃借権登記費用と必要書類と手続き

賃借権登記の費用と手続き

賃借権の登記は貸主の承諾なしではできません。

この記事の3つのポイント
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登録免許税は評価額の1%

固定資産税評価額2,000万円の土地なら登録免許税だけで20万円、司法書士報酬と合わせて総額28万円以上の費用が発生します

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貸主の協力義務がない

賃借権の登記には貸主の承諾と実印押印が必須ですが、法律上貸主に登記協力義務はなく、ほとんど登記されないのが実態です

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建物登記で対抗力を得る

土地賃借権は建物の登記があれば第三者に対抗できるため、高額な賃借権登記をせず建物登記で対応する方が実務的です

賃借権登記にかかる登録免許税の計算方法

 

賃借権設定登記の登録免許税は、固定資産税評価額に1000分の10を乗じた金額になります。これは所有権移転登記の税率1000分の20(軽減措置適用時は1000分の15)と比べると低く見えますが、実際には決して安い金額ではありません。

例えば評価額1,000万円の土地に賃借権を設定する場合、登録免許税は10万円です。評価額2,000万円なら20万円、3,000万円なら30万円となります。つまり評価額が高額になるほど、登録免許税の負担も比例して増加していきます。この税額は土地の面積や立地によって大きく変動するため、事前に固定資産税評価証明書で確認しておくことが重要です。

固定資産税評価証明書は市町村役場で取得でき、発行手数料は1通300円程度です。登記申請する年度の評価額が基準となるため、毎年4月1日の年度新のタイミングを意識する必要があります。評価額は3年ごとに見直しが行われ、地価の変動により増減します。

登録免許税の計算では、1,000円未満は切り捨てとなります。例えば評価額が1,234万5,678円の場合、1000分の10を乗じると12万3,456円となり、1,000円未満を切り捨てて12万3,000円が納付額です。この計算ルールを知っていれば、事前に正確な税額を把握できます。

なお、賃借権の登記では住宅用家屋証明書による軽減措置は適用されません。所有権移転登記のように税率が下がる特例はないため、必ず原則税率である1000分の10が適用されます。

つまり費用削減の余地が少ないということですね。

賃借権登記の司法書士報酬の相場

賃借権設定登記を司法書士に依頼した場合の報酬相場は、基本報酬が8万8,000円から15万円程度です。これに登録免許税や必要書類の取得費用が加算されるため、総額では評価額1,000万円の土地で18万円から25万円、評価額2,000万円の土地では28万円から35万円程度になります。

司法書士報酬は事務所によって設定金額が異なり、地域差もあります。都市部では報酬が高めに設定される傾向があり、地方では比較的低めです。また、評価額が1,000万円を超えるごとに3,300円から5,500円程度の加算報酬が発生する事務所が多く、不動産の個数が複数になる場合も1個につき2,200円から3,300円程度が追加されます。

基本報酬に含まれる業務内容は、賃貸借契約書のリーガルチェック、登記申請書の作成、法務局への申請代行、登記完了後の書類受領などです。契約書の作成を依頼する場合は別途1万1,000円から3万3,000円程度の報酬が加算されます。複雑な特約条項がある場合や借地借家法の適用関係を確認する必要がある場合は、さらに報酬が上乗せされることもあります。

必要書類の取得代行を依頼すると、固定資産評価証明書の取得で3,300円から5,500円、登記事項証明書の取得で1通あたり1,500円から2,500円程度の実費込み報酬が発生します。遠方の法務局へ申請する場合は、郵送費や日当が別途請求されるケースもあります。

報酬総額を抑えるには、自分で書類を準備し、司法書士には登記申請業務のみを依頼する方法があります。ただし賃貸借契約書の内容が借地借家法の強行規定に違反していると登記が受理されないため、専門家のチェックを受けておくほうが安全です。トラブルを避けるなら、多少費用がかかっても全面的に依頼するのが賢明ですね。

賃借権登記に必要な書類と準備

賃借権設定登記は貸主と借主の共同申請となるため、双方が書類を準備する必要があります。貸主(登記義務者)が準備する書類は、賃貸借契約書印鑑証明書(発行から3か月以内)、登記済証または登記識別情報固定資産評価証明書、実印、本人確認書類です。一方、借主(登記権利者)が準備する書類は、認印と本人確認書類のみで済みます。

賃貸借契約書は登記原因証明情報として提出するため、公正証書で作成することが推奨されます。私文書でも受理されますが、公正証書であれば契約内容の真正性が担保され、後々のトラブル防止に有効です。契約書には必ず賃貸借の目的、賃料額、支払時期、存続期間、特約事項などを明記します。

登記済証または登記識別情報は、貸主が土地の所有権を取得した際に法務局から交付されたものです。紛失している場合は、司法書士に本人確認情報の作成を依頼する必要があり、別途3万円から8万円程度の報酬が発生します。登記識別情報は12桁の英数字で構成された通知書で、目隠しシールが貼られているため登記申請まで剥がさないよう注意が必要です。

印鑑証明書は市町村役場で取得し、発行から3か月以内のものを使用します。コンビニ交付を利用すれば1通200円程度で取得できますが、窓口交付では300円から450円程度です。貸主は実印を押印した委任状も準備する必要があるため、印鑑証明書と実印の印影が一致していることを事前に確認しておきましょう。

固定資産評価証明書は登録免許税の算定根拠となる重要書類で、市町村の資産税課や都税事務所で取得します。発行手数料は1通300円程度で、郵送請求も可能です。登記申請する年度のものを取得することが原則ですが、4月1日から評価替えの通知が届くまでの間は前年度のものを使用することもあります。

本人確認書類は運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどの顔写真付き身分証明書が基本です。司法書士に依頼する場合は、面談時にこれらの書類を提示し、本人確認と意思確認が行われます。

代理人が申請する場合は委任状が必要ですね。

賃借権登記のデメリットと費用対効果

賃借権の登記は高額な費用がかかる割に、実務上のメリットが限定的です。最大のデメリットは貸主に登記協力義務がないため、貸主が拒否すれば登記できない点です。民法上、賃借権は債権であり、貸主が特約で承諾した場合のみ登記手続請求権が発生するという判例法理が確立しています。したがって、契約書に「賃借権の登記に協力する」という明確な特約がなければ、貸主は登記を拒否できます。

仮に登記できたとしても、存続期間が満了すれば賃借権は消滅し、登記も抹消しなければなりません。更新する場合は改めて登記が必要になり、その都度登録免許税と司法書士報酬が発生します。30年の存続期間で設定した場合、更新時にさらに数十万円の費用がかかる計算です。

建物所有を目的とする土地賃借権の場合、借地借家法第10条により、借地上の建物を登記すれば賃借権を第三者に対抗できます。建物の表題登記や保存登記の費用は合計で5万円から10万円程度であり、土地の賃借権登記に比べて圧倒的に安価です。つまり建物登記で対抗要件を満たせるなら、わざわざ高額な賃借権登記をする必要はないということですね。

さらに、建物賃借権の場合は建物の引渡しを受けることで対抗要件を具備できます(借地借家法第31条)。登記がなくても、引渡しという事実行為だけで第三者に対抗できるため、建物賃貸借で賃借権を登記するケースはほぼ皆無です。貸主も借主も、費用をかけて登記するメリットを感じないのが実情です。

ただし例外的に、大規模商業施設や長期定期借地権付き建物のように、権利関係を明確にしておく必要がある場合は賃借権登記が行われることがあります。金融機関から融資を受ける際に、担保価値を高めるため賃借権の登記を求められるケースもあります。しかし一般的な住宅や小規模店舗では、費用対効果を考えると登記しないほうが合理的です。登記すべきかどうかは、取引の性質と費用を比較して慎重に判断する必要があります。

賃借権登記が必要になるケースと実務対応

賃借権の登記が実務上必要となるのは、建物が存在しない土地の賃貸借や、建物が借主名義で登記されていない場合です。例えば駐車場や資材置き場として土地を賃借する場合、建物がないため建物登記による対抗要件を備えることができません。このような場合、土地が第三者に売却されると、新所有者に賃借権を主張できないリスクがあります。

また、借地上の建物が未登記のままである場合や、建物の登記名義が借主以外の第三者になっている場合も、賃借権を対抗できません。相続や売買により土地所有者が変わると、新所有者から立ち退きを求められる可能性があります。このようなリスクを回避するためには、賃借権の登記が有効な手段となります。

長期定期借地権や事業用定期借地権のように、契約期間が50年や30年といった長期に及ぶ場合、権利関係を登記で明確にしておくことが推奨されます。長期間の契約では所有者が何度も変わる可能性があり、登記がなければ権利の継承がスムーズに行われないためです。金融機関が融資する際にも、登記された賃借権であれば担保価値として評価されやすくなります。

実務対応としては、まず貸主に登記協力を依頼する際、登記費用の負担割合を事前に明確にしておく必要があります。通常は借主が全額負担しますが、特約で貸主が一部負担することもあります。貸主が登記協力を拒否した場合は、建物登記による対抗要件の取得を検討するか、または契約書に「賃借権の登記に協力する」という条項を盛り込むよう交渉します。

司法書士に依頼する際は、契約書の内容が借地借家法の強行規定に違反していないか確認してもらうことが重要です。例えば建物所有目的の土地賃借権であれば、存続期間は30年以上でなければ無効となります。また、契約期間を1年未満とする建物賃貸借契約は期間の定めのない契約とみなされるため、登記申請時に補正を求められることがあります。こうした法的リスクを回避するためにも、専門家のアドバイスを受けながら進めるのが得策ですね。

不動産業従事者として顧客に賃借権登記を提案する際は、費用対効果を丁寧に説明し、建物登記や引渡しによる対抗要件で十分な場合はそちらを提案することも大切です。無駄な費用をかけさせるのではなく、顧客にとって最適な方法を選択できるようサポートすることが、信頼される業者としての姿勢といえます。

法務局の不動産登記申請書様式

登記申請書の具体的な記載例や様式を確認できる法務局の公式ページです。賃借権設定登記の申請書作成時に参考になります。

国税庁の登録免許税額表

登録免許税の税率や計算方法について、国税庁が公表している公式情報です。

賃借権設定登記の税額確認に役立ちます。


不動産登記の落とし穴-法令・先判例から読み解く実務のポイント-