採石権の登記とは|手続き・費用・リスク

採石権の登記とは

登記なしで採石権を主張すると相手から無視される可能性があります。

この記事の3つのポイント
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採石権は登記可能な物権

地上権に準じた物権として、不動産登記法に基づき登記が可能です。

登記により第三者への対抗力が生じます。

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存続期間は最長20年

採石権の存続期間は必ず設定が必要で、20年以内が上限です。更新は可能ですが、更新後も20年を超えられません。

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登録免許税は不動産価額の1%

採石権設定登記の登録免許税は不動産価額の1,000分の10(1%)です。

価額評価は固定資産税評価額を基準とします。

採石権の定義と法的性質

 

採石権とは、採石法に基づいて他人の土地において岩石や砂利などを採取する権利のことです。この権利は物権とみなされ、地上権に関する民法の規定が準用されています。採石権は単なる債権ではなく、物権として強い法的保護を受けることができるのが特徴です。

物権として扱われるということは、土地の所有者が変わっても採石権は引き続き有効であり、新しい所有者に対しても権利を主張できる可能性があります。ただし、これは登記をしている場合に限られます。登記がない場合、民法177条の対抗要件を満たさないため、第三者に対して権利を主張することができません。

不動産業に従事している方にとって、採石権は土地取引において重要な調査項目です。物件調査の際には、登記簿を確認し、採石権が設定されていないかをチェックする必要があります。採石権が設定されている土地は、岩石の採取により地形が変化する可能性があり、土地の利用価値や評価額に大きく影響します。

採石権は地上権と似た性質を持ちますが、目的が岩石や砂利の採取に限定されているのが特徴です。地上権が建物の所有や工作物の設置を目的とするのに対し、採石権は資源の採取という消費的利用を目的としています。このため、土地の原状回復義務が課される場合もあり、採石権消滅時の処理について契約で定めておくことが重要です。

e-Gov法令検索では採石法の全文を確認でき、採石権の法的要件や手続きについて詳細な規定を参照できます。

採石権の登記手続きと必要書類

採石権の登記は、原則として採石権者(登記権利者)と土地所有者(登記義務者)の共同申請により行います。これは不動産登記の一般原則に従ったもので、権利の設定について当事者双方の意思確認を担保するための仕組みです。

申請には登記原因証明情報として採石権設定契約書が必要です。契約書には、採石権の設定日、存続期間(必須)、採石権の内容(採取する岩石の種類)、採石料、支払時期などを明確に記載しなければなりません。存続期間は20年以内で設定することが法律で義務付けられており、これより長い期間を定めても自動的に20年に短縮されます。

土地に地上権や永小作権が既に設定されている場合は、これらの権利者の承諾が必要です。承諾書には権利者の記名押印と印鑑証明書の添付が求められます。この印鑑証明書は承諾書の一部として扱われるため、発行日の制限はありませんが、実務上は最新のものを用意するのが安全です。

登記申請時には、土地所有者の登記識別情報(または登記済証)と印鑑証明書も必要になります。印鑑証明書は作成後3か月以内のものでなければなりません。法人が申請人となる場合は、代表者資格証明情報(登記事項証明書など)も添付する必要があります。

登録免許税は不動産の価額の1,000分の10(1%)です。不動産の価額は固定資産税評価額を基準とします。例えば、固定資産税評価額が5,000万円の土地に採石権を設定する場合、登録免許税は50万円となります。この税額は決して小さくないため、事前に予算を確保しておく必要があります。

特殊なケースとして、当事者間で協議が整わない場合、経済産業局長の決定に基づいて採石権を設定することができます。この場合は登記権利者による単独申請が可能となり、登記義務者の協力なしに登記を完了できます。ただし、補償金や最初の採石料の受取証明または供託証明の提出が必要です。

採石権の登記事項と記載内容

採石権の登記簿には、法律で定められた絶対的登記事項と、設定契約の内容に応じて記載される相対的登記事項があります。これらの情報は登記記録に永続的に保存され、誰でも閲覧可能です。

絶対的登記事項として必ず記載されるのは、登記の目的、受付年月日および受付番号、登記原因とその日付、登記権利者の氏名または名称および住所、順位番号、そして存続期間です。存続期間は採石権の最も重要な要素の一つで、必ず設定しなければなりません。

相対的登記事項には、採石権の内容、採石料、支払時期などが含まれます。採石権の内容は「花こう岩採取」「雲母採取」「砂利採取」のように、具体的な採取対象を明記します。採石料は「毎年○○円」「1平方メートル1年○○円」のように記載され、支払時期も「毎年○月○日」と具体的に定めます。

権利消滅の定めを設けることもできます。例えば「採石権者が死亡した時は採石権が消滅する」といった条件を登記することで、相続を防ぐことができます。このような定めは、土地所有者が特定の事業者とだけ採石契約を結びたい場合に有効です。

複数の採石権者がいる場合は、それぞれの持分も登記されます。ただし、共有持分に対する採石権設定登記の申請は却下されるという先例があります。つまり、土地が共有されている場合、共有者の一部だけから採石権を取得することはできません。

これらの登記事項を確認することで、採石権の内容と範囲を正確に把握できます。

採石権登記を怠った場合のリスク

採石権の登記を行わない場合、最大のリスクは第三者に対して権利を主張できないことです。民法177条により、不動産に関する物権の変動は登記をしなければ第三者に対抗できないと定められています。

具体的には、土地所有者が土地を第三者に売却した場合、登記のない採石権は新しい土地所有者に対抗できません。新所有者から「あなたの採石権は認めない」と言われても、法的に対抗する手段がないのです。契約書があっても、それは前の所有者との間の債権にすぎず、新所有者には効力が及びません。

また、土地に抵当権が設定され、競売になった場合も同様です。登記のない採石権は競落人に対抗できないため、高額な設備投資をして採石事業を始めていても、すべてが無駄になる可能性があります。採石事業は大型機械や設備が必要で、初期投資が数千万円から数億円規模になることも珍しくありません。

さらに、採石権が登記されていないと、土地の権利関係が不透明になります。不動産業者が物件を仲介する際、登記されていない採石権の存在を見落とす可能性があり、買主とのトラブルに発展するリスクがあります。重要事項説明で採石権の存在を説明しなかった場合、宅建業法違反として業者の責任が問われる可能性もあります。

登記には費用がかかりますが、権利保護のコストとしては必要不可欠です。

土地取引の際は、採石権の有無を必ず確認し、登記されているかどうかをチェックしましょう。登記がない場合は、権利の実態を慎重に調査する必要があります。契約書の存在だけでは安心できないという認識が重要です。

採石権と他の権利との関係と注意点

採石権を設定する際には、既に土地に設定されている他の権利との関係を慎重に確認する必要があります。特に地上権や永小作権が設定されている場合は、これらの権利者の承諾が法律上必須です。

地上権や永小作権が設定されている土地に採石権を設定する場合、採石権の内容がこれらの権利による土地の利用を妨げないものに限定されます。例えば、建物が建っている土地の地下部分だけを採石権の対象とするような場合です。この場合でも、地上権者や永小作権者の承諾書が登記申請の添付書類として必要です。

農地や採草放牧地に採石権を設定する場合は、農地法3条の許可が必要です。農地法の許可を受けずに採石権設定契約を結んでも、契約は無効となります。許可申請には一定の時間がかかるため、スケジュールに余裕を持って手続きを進める必要があります。

許可書は登記申請時の添付書類となります。

採石権と鉱業権は異なる権利です。鉱業権は鉱業法に基づく権利で、金属鉱物や石炭などの地下資源の採掘を対象としています。一方、採石権は地表の岩石や砂利の採取を対象とします。同じ土地に両方の権利が設定される可能性もあり、その場合は相互の調整が必要です。

採石権の存続期間は20年以内と定められていますが、更新は可能です。更新する場合も、更新時から20年を超えることはできません。つまり、10年経過後に更新しても、更新後の期間は最長20年であり、合計30年になるわけではありません。更新時にも登記が必要で、登録免許税も再度発生します。

採石権が消滅した場合、土地を原状に回復する義務が課されることがあります。これは採石法で定められており、土地所有者保護のための規定です。原状回復義務の有無や範囲については、採石権設定契約で明確に定めておくことが、後のトラブルを防ぐために重要です。

不動産取引の実務では、採石権付きの土地は評価が難しいという側面があります。

東建コーポレーションの宅建用語辞書では、採石権の基本的な定義と実務上の取り扱いについて簡潔にまとめられており、現場での確認に役立ちます。

採石権が設定されている土地や、採石権設定の可能性がある土地を扱う際は、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。司法書士や土地家屋調査士に相談し、権利関係を正確に把握してから取引を進めることが、リスク回避につながります。


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