借地権価格求め方と評価
評価額で売れると思うと3割損します
借地権価格の基本的な計算方法と路線価
借地権価格を求める基本的な方法は、土地の評価額に借地権割合を乗じる計算です。この評価額は主に相続税や贈与税の計算に使われる指標で、実務における最も基本的な算定方式といえます。
土地の評価額は路線価方式または倍率方式で算出します。路線価方式では、国税庁が定める路線価(道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額)に土地面積を掛けて求めるのが基本です。例えば路線価が30万円で土地面積が100平方メートルなら、土地の評価額は3,000万円となります。これはちょうど学校のプール(25メートル×10メートル程度)ほどの面積です。
路線価が定められていない地域では倍率方式を使います。固定資産税評価額に国税庁が定めた倍率を掛けて土地の評価額を算出する方法です。
つまり基本はこうです。
借地権割合は地域ごとに異なり、国税庁の路線価図に記載されています。路線価図を見ると、道路ごとに数字とアルファベット(A~G)が記載されており、このアルファベットが借地権割合を示します。Aは90%、Bは80%、Cは70%、Dは60%、Eは50%、Fは40%、Gは30%です。一般的に地価の高い都心部ほど借地権割合が高く、住宅地で60~70%、商業地で80~90%程度が多い傾向にあります。
国税庁の「財産評価基準 路線価図・評価倍率表」は誰でもインターネットで閲覧できます。物件の住所から該当する路線価図を探し、接道している道路の記号を確認すれば借地権割合がわかります。
路線価図の見方や借地権割合の確認方法について詳細が記載されています。実際の計算に必要な情報がすべて揃っています。
借地権価格の種類別計算方法と定期借地権
借地権には普通借地権、定期借地権、一時使用目的の借地権など複数の種類があり、それぞれ計算方法が異なります。不動産実務において最も注意すべき点がこの違いです。
普通借地権は契約更新ができる借地権で、地主は正当な事由がない限り更新を拒絶できません。計算方法はシンプルで、「土地の評価額×借地権割合」で求められます。例えば土地の評価額が5,000万円、借地権割合が70%なら、借地権価格は3,500万円です。
これが基本ケースです。
定期借地権は契約終了時期が決まっており更新できない借地権です。計算方法は普通借地権よりも複雑で、「土地の評価額×(A÷B)×(C÷D)」という式を使います。Aは定期借地権の設定時における借地権者に帰属する経済的利益の総額、Bは設定時の宅地の通常の取引価額、Cは課税時期における残存期間年数に応じた基準年利率による複利年金原価率、Dは設定期間年数に応じた基準年利率による複利年金原価率を指します。
複雑ですね。
国税庁のホームページには「定期借地権等の評価証明書」が用意されており、各項目を記入することで計算できる仕組みになっています。複利年金原価率も国税庁のホームページで公開されているため、理論上は自分で計算可能です。
一時使用目的の借地権は、建築工事現場や仮設店舗など一時的な使用を前提とした借地権です。存続期間は10年以下が目安で、評価方法は雑種地の賃借権と同じ扱いになります。計算式は「雑種地の自用地としての評価額×法定地上権割合×1/2」または「雑種地の自用地としての評価額×法定地上権割合と借地権割合とのいずれか低い割合」です。法定地上権割合は残存期間が10年以下の場合、5%と定められています。
借地権の種類を間違えて計算すると評価額が大きく変わるため、契約書で借地権の種類を必ず確認することが不可欠です。定期借地権を普通借地権として計算してしまうと、実態とかけ離れた評価額になる危険があります。
借地権価格の評価額と実勢価格の違い
借地権価格の計算で最も重要な注意点は、相続税評価額と実際の売却価格(実勢価格)には大きな乖離があることです。この事実を知らないまま取引を進めると、大きな損失につながる可能性があります。
相続税評価額は更地価格の60~70%程度に設定されることが一般的です。しかし実際に借地権を売却する場合、市場での売却価格は更地価格の30~50%程度にしかならないケースが多いのが現実です。例えば相続税評価額が3,500万円の借地権でも、実際には2,000万円程度でしか売れないこともあります。この差額1,500万円は新車の高級セダン約5台分に相当する金額です。
なぜこのような乖離が生じるのでしょうか。
借地権を第三者に売却するには地主の承諾が必須で、承諾料として借地権価格の10%程度を支払う必要があります。また地主との関係が良好でない場合、借地非訟という裁判手続きを経なければならず、トラブル物件として扱われて価格が大幅に下がります。さらに借地権は所有権と異なり、地代の支払い義務や建物の用途制限など様々な制約があるため、買い手が限定されて市場性が低くなるのです。
底地についても同様の問題があります。相続税評価では底地割合(100%-借地権割合)で評価されますが、実際の売却価格は更地価格の10~20%程度にとどまることが多いのです。借地権割合が60%の土地で更地価格が5,000万円なら、相続税評価での底地価格は2,000万円(5,000万円×40%)です。しかし実際には500万円~1,000万円程度でしか売れないケースが大半です。
この評価額と実勢価格の乖離は、相続税の納税資金を準備する際に大きな問題となります。相続税評価額をもとに納税額を計算すると高額になりますが、実際に借地権を売却して納税資金を調達しようとすると、評価額よりはるかに低い価格でしか売れず、資金不足に陥る危険性があるのです。
相続が発生する前に借地権の実勢価格を把握しておくことで、こうしたリスクを回避できます。不動産会社による査定を受けておけば、実際の市場価値を知ることができ、適切な相続対策が可能になります。
借地権価格の計算ミスと評価の注意点
借地権価格の計算では、専門家でもミスを犯しやすいポイントがいくつか存在します。税理士の損害賠償請求事例でも、借地権の評価ミスは頻繁に発生している分野です。
最も多いミスは借地権割合のアルファベット記号の読み違いです。路線価図でDとBを見間違えると、借地権割合が60%と80%で20ポイントも差が出ます。土地の評価額が5,000万円なら、この読み違いだけで1,000万円もの評価差が生じることになります。1,000万円は年収500万円の人の2年分の収入に相当する金額です。
倍率地域での評価ミスも注意が必要です。評価倍率表には複数の地区が記載されており、該当する地区を間違えると全く異なる倍率を適用してしまいます。また固定資産税評価額を誤って記載したり、土地面積の単位を間違えたりする初歩的なミスも実務では散見されます。
土地の形状による補正を忘れるケースも多発しています。不整形地、間口が狭い土地、奥行が長い土地、高低差がある土地などは、標準的な土地と比べて評価額を減額する補正が認められています。この補正を適用し忘れると、実態より高い評価額になってしまい、過大な相続税を支払う結果になります。
減額補正が適用できます。
相当の地代を支払っているケースでの評価ミスにも注意が必要です。通常の地代(更地価格の2~3%程度)ではなく、相当の地代(更地価格の6%程度)を支払っている場合、借地権の評価方法が異なります。相当の地代を支払っているにもかかわらず通常の借地権として評価すると、借地権価格が過大になり、借地人に不利な結果となります。
定期借地権の残存期間による評価額の変動も見落としやすいポイントです。定期借地権は残存期間が短くなるほど価値が下がりますが、この減価を正確に反映させるには複利年金原価率を用いた複雑な計算が必要です。残存期間が30年と10年では評価額が大きく異なるため、契約書で正確な契約期間と経過年数を確認することが不可欠です。
借地権と底地の合計が更地価格を超えてしまうという論理矛盾も、計算ミスの典型例です。相続税評価では借地権割合と底地割合の合計が100%になるよう設定されていますが、実際の鑑定評価では「借地権価格+底地価格<更地価格」となるのが正常です。両者が更地価格に等しくなるのは、借地権と底地を同一人物が取得して完全所有権となる場合に限られます。
計算ミスを防ぐためには、国税庁のホームページで最新の路線価図と評価倍率表を必ず確認することです。また複雑なケースでは、不動産鑑定士や相続税に詳しい税理士に相談して、専門的な評価を依頼することをおすすめします。評価額が数千万円単位になる場合、専門家への報酬を支払っても、正確な評価による節税効果の方が大きくなることが多いのです。
借地権価格が必要になる場面と実務対応
借地権価格が実務で必要になる場面は、主に相続税の計算と借地権の売却の2つです。それぞれの場面で求められる精度や対応方法が異なるため、目的に応じた適切な評価方法を選ぶ必要があります。
相続が発生した場合、被相続人が持っていた借地権は相続財産として評価し、相続税の課税対象となります。相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内で、この期限内に借地権価格を含む全ての相続財産を評価し、申告書を提出しなければなりません。期限を過ぎると延滞税や加算税が課されるため、早めの対応が必要です。
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。法定相続人が配偶者と子2人の合計3人なら、基礎控除額は4,800万円です。預貯金や株式などの財産と借地権価格の合計がこの基礎控除額を超える場合、相続税の申告と納税が必要になります。
基礎控除額を超えなければ申告不要です。
借地権を相続する場合、小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。この特例を使えば、被相続人の居住用または事業用に使われていた宅地について、相続税評価額を最大80%減額できます。適用要件は複雑ですが、借地権でも適用可能なケースがあるため、税理士に相談して適用の可否を確認することが重要です。
借地権を売却する場合の価格設定は、相続税評価額とは全く異なるアプローチが必要です。売却価格は市場での需要と供給によって決まるため、地主との関係性、立地条件、周辺環境、売却までの希望期間などの要素を総合的に考慮しなければなりません。
地主の承諾が得られるかどうかが最大のポイントです。地主が売却に協力的であれば、比較的スムーズに取引が進み、相場に近い価格での売却が期待できます。一方、地主との関係が悪化している場合、借地非訟という裁判手続きを経て承諾に代わる許可を得る必要があり、時間もコストもかかります。この場合、売却価格は大幅に下がることを覚悟しなければなりません。
借地権の売却先には、第三者への売却、地主への売却、借地権と底地の同時売却という3つの選択肢があります。第三者への売却は地主の承諾料(借地権価格の10%程度)が必要です。地主への売却は承諾料が不要で手続きも簡単ですが、地主の買取価格は市場価格より低くなることが一般的です。借地権と底地を同時に売却する方法は、完全所有権として売却できるため最も高値がつきやすく、更地価格に近い価格での売却が期待できます。
同時売却が最も有利です。
不動産会社に借地権の査定を依頼する際は、借地権の取り扱い実績が豊富な会社を選ぶことが重要です。借地権は通常の不動産取引とは異なる専門知識が必要で、経験の少ない会社では適切な価格査定ができない可能性があります。複数の不動産会社に査定を依頼し、査定価格と売却方法の提案を比較検討することをおすすめします。
相続発生前に借地権の売却を検討することも有効な相続対策です。相続税評価額より低い価格でも現金化しておけば、相続税の納税資金として活用でき、相続人間での遺産分割も容易になります。また被相続人が存命中に売却すれば、売却益に対する譲渡所得税を被相続人の所得として納税でき、相続人の負担を軽減できる場合もあります。
借地権価格の独自視点と権利金との関係
借地権価格を理解する上で見落とされがちなのが、権利金との関係性です。権利金は借地権を設定する際に借主から貸主へ支払われる一時金で、借地権価格と密接に関連しています。
権利金の相場は「更地価格×借地権割合」で計算され、実質的に借地権価格と同じ金額になります。更地価格が1億円で借地権割合が70%の土地なら、権利金は7,000万円が目安です。7,000万円は都心の新築マンション1戸分に相当する金額で、借地契約を結ぶ際の大きな負担となります。
ただし実務では、権利金を支払わない「権利金なし」の借地契約も存在します。この場合、相当の地代(更地価格の6%程度)を毎年支払うことで、権利金の支払いに代えるケースが多いです。権利金ありと権利金なしでは、借地権の相続税評価方法が全く異なるため、税務上の取り扱いに注意が必要です。
権利金なしの場合は注意が必要です。
権利金を支払った借地権は、通常の借地権として「自用地評価額×借地権割合」で評価されます。一方、権利金を支払わず通常の地代を支払っている借地権は、自用地評価額の20%相当額として評価されます。この20%評価は、借地権が経済的に発生していないとみなされるための措置で、借地人にとって有利な評価となります。
借地権を譲渡する際にも権利金との関連が出てきます。借地権を第三者に譲渡する場合、地主に対して譲渡承諾料を支払う必要があり、その相場は借地権価格の10%程度とされています。借地権価格が3,500万円なら、譲渡承諾料は350万円です。350万円は年収700万円の人の半年分の給料に匹敵する金額で、売却時の大きなコストとなります。
借地権の更新時にも更新料が発生します。更新料の相場は借地権価格の5%程度で、30年ごとの更新時に支払うのが一般的です。借地権価格が3,500万円なら更新料は175万円となり、長期的な保有コストとして考慮する必要があります。
借地権を相続した場合、権利金や更新料は発生しません。相続は借地契約の承継であり、新たな借地権の設定ではないためです。これは相続人にとって大きなメリットで、多額の一時金を支払うことなく借地権を引き継げます。
借地権価格と権利金の関係を正しく理解しておけば、借地契約の新規設定、譲渡、相続など、あらゆる場面で適切な判断ができるようになります。特に不動産業従事者にとっては、顧客に対して正確なアドバイスを提供するために必須の知識といえるでしょう。
また借地権価格を算定する際には、鑑定評価を活用することも選択肢の一つです。国税庁が定める路線価による評価と実勢価格が大きく乖離している場合、不動産鑑定士による時価評価を取得することで、より実態に即した評価額を主張できる可能性があります。特に定期借地権で残存期間が短い場合や、土地に特殊な制約がある場合には、鑑定評価の活用が有効です。鑑定評価の費用は20万円~50万円程度かかりますが、評価額が数千万円単位で変わる可能性がある場合は、費用対効果が十分に見込めます。
借地権価格の求め方を正確に理解し、評価額と実勢価格の違いを認識しておくことが、不動産実務における適切な判断につながります。

