保証委託契約と保証契約の違い|契約当事者・書面要件・実務リスク

保証委託契約と保証契約の違い

保証委託契約書に保証人がいると代位弁済後に請求される

📋 この記事の3ポイント要約
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契約当事者が完全に異なる

保証契約は債権者と保証人の契約、保証委託契約は債務者と保証人の契約で、混同すると契約構造を見誤る

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書面要件の違いが効力に直結

保証契約は書面必須で2020年民法改正により極度額記載が必要、保証委託契約は口頭でも成立する

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保証委託契約の保証人に要注意

住宅ローン契約書に保証人欄がなくても保証委託契約に保証人がついているケースがあり、代位弁済後に突然請求される

保証委託契約と保証契約の契約当事者の違い

不動産業務で保証に関わる契約を扱う際、保証委託契約と保証契約の違いを正確に理解していないと、顧客対応でトラブルを招く可能性があります。両者は名称が似ているものの、契約当事者がまったく異なる別の契約です。

保証契約は、債権者と保証人の間で締結される契約です。賃貸借契約であれば貸主と保証人、住宅ローンであれば金融機関と保証人が契約当事者となります。債務者本人は保証契約の当事者ではありません。

つまり保証契約ですね。

これに対して保証委託契約は、債務者と保証人の間で締結される契約です。借主が保証会社や個人保証人に対して「保証してください」と依頼する契約になります。文字通り「保証を委託する」契約であり、債権者は当事者に含まれません。

不動産賃貸の実務では、貸主と連帯保証人の間で保証契約が結ばれ、同時に借主と保証会社の間で保証委託契約が結ばれるケースが一般的です。この二つの契約は独立して存在し、それぞれ異なる法的効果を持ちます。

保証契約が成立するために保証委託契約は必須ではありません。債務者の委託がなくても、債権者と保証人が合意すれば保証契約は有効に成立します。実際に債務者の意思に反して保証契約が結ばれる場合もあるのです。

これは意外ですね。

ただし保証委託契約がある場合、保証人は債務者に対して求償権を行使できます。保証人が債権者に弁済した後、債務者に「立て替えた分を返してください」と請求できる権利です。委託を受けずに保証した場合よりも、求償権の範囲が広くなります。

契約構造を理解する際は、必ず「誰と誰の間の契約か」を確認してください。契約書のタイトルだけでなく、契約当事者欄を見れば一目瞭然です。債権者が当事者なら保証契約、債務者が当事者なら保証委託契約となります。

賃貸借契約の更新時に保証に関する書面を再確認する際も、どちらの契約を見ているのかを意識することで、顧客への説明ミスを防げます。「保証人になってもらう」という行為には、実は二つの異なる法的関係が含まれているということですね。

保証契約の書面要件と2020年民法改正の影響

保証契約には厳格な書面要件が課されており、これを満たさないと契約が無効になるリスクがあります。不動産業務では賃貸借契約や売買契約に伴って保証契約を扱うことが多いため、この書面要件を正確に理解しておく必要があります。

民法第446条第2項により、保証契約は書面または電磁的記録によって行わなければ効力を生じません。口頭での「保証します」という約束だけでは、法的に有効な保証契約にならないのです。

書面必須が原則です。

2020年4月1日に施行された改正民法では、個人が保証人となる根保証契約について、極度額を書面で定めることが義務化されました。根保証契約とは、継続的な取引から生じる不特定の債務を保証する契約のことで、賃貸借契約における連帯保証がこれに該当します。

極度額とは、保証人が負う責任の上限額です。賃貸借契約では家賃の12ヶ月分から24ヶ月分程度に設定されることが多く、例えば月額家賃7万円の物件であれば極度額は84万円から168万円程度となります。これは概ね年収の3分の1から2分の1程度に相当する金額ですね。

極度額を書面で定めなかった場合、または極度額の定めがない場合、その保証契約は無効となります。「賃料の○ヶ月分」という記載では不十分で、「100万円」のように具体的な金額を明示する必要があるのです。

これは厳格ですね。

改正民法の施行前に締結された保証契約でも、2020年4月1日以降に更新や合意更新を行う場合は、改正民法が適用されます。つまり極度額の定めがない保証契約は、更新時点で無効となる可能性があるということです。

賃貸借契約を更新する際に保証契約を更新しないという選択肢もありますが、その場合は旧民法の適用を受けるため極度額の定めは不要です。ただし保証期間が不明確になるリスクがあるため、実務上は極度額を定めた新しい保証契約を締結するケースが増えています。

書面要件を満たさない保証契約は無効となり、債権者は保証人に請求できなくなります。賃貸物件のオーナーにとっては家賃滞納時の回収リスクが高まるため、契約書の作成段階で書面要件を確実にチェックすることが重要です。

法務省が公開している民法改正のパンフレットには、保証契約の書面要件や極度額の定め方について詳しい説明があります。契約書のひな型作成時の参考資料として活用できます。

保証委託契約の書面要件と求償権の関係

保証委託契約は保証契約と異なり、民法上の書面要件が課されていません。債務者と保証人の合意があれば、口頭でも法的に有効な保証委託契約が成立します。この違いが実務上の混乱を招くことがあるため注意が必要です。

保証委託契約の最も重要な法的効果は、保証人に求償権を発生させることです。求償権とは、保証人が債権者に弁済した後、債務者に対して「立て替えた分を返してください」と請求できる権利です。委託を受けた保証人の事後求償権は民法第459条に規定されています。

求償できる範囲は、保証人が弁済した元本・利息・損害金に加えて、弁済のために支出した費用や、弁済後の利息も含まれます。例えば保証会社が賃貸物件の滞納家賃100万円を代位弁済した場合、借主に対して100万円に加えて遅延損害金や事務手数料も請求できるのです。

委託を受けた保証人には、一定の場合に事前求償権も認められます。これは保証人がまだ弁済していない段階で、債務者に対して「将来弁済することになるから今のうちに対応してください」と請求できる権利です。例えば債務者が破産手続開始決定を受けた場合などが該当します。

保証委託契約書には、保証する債務の範囲、求償債権の内容、遅延損害金の利率などを明記します。住宅ローンの保証委託契約では、保証会社が代位弁済した元本に加えて年14%程度の遅延損害金を請求できる条項が設けられているケースが一般的です。

年14%は決して小さくありません。

不動産賃貸の保証委託契約では、保証会社が立替払いした家賃だけでなく、原状回復費用や明渡訴訟費用も求償の対象となることがあります。契約書に「借主の債務不履行により保証会社が支出した一切の費用」と記載されている場合、想定以上の金額が請求される可能性があります。

保証委託契約に基づく求償債権は、債権者に対する主債務とは別個の債権です。例えば借主が貸主に家賃を支払う義務と、借主が保証会社に求償金を支払う義務は、独立した二つの債務として存在します。

これは重要です。

保証会社が代位弁済を行うと、債権者に対する債務は消滅しますが、同時に保証会社に対する求償債務が発生します。債務がなくなったわけではなく、債権者が交代しただけという状況になるわけですね。

実務上は保証委託契約書と保証契約書を同時に作成するケースが多く、両者の内容に齟齬がないよう注意が必要です。保証する債務の範囲や金額が食い違っていると、後日トラブルの原因となります。

保証委託契約書に隠れた保証人のリスク

住宅ローンや賃貸借契約で保証会社を利用する場合、主契約である金銭消費貸借契約書や賃貸借契約書には保証会社の名前だけが記載され、個人保証人の名前は出てきません。そのため債務者本人も不動産業者も、個人保証人の存在に気づかないケースがあります。

ここで注意すべきなのが、保証委託契約書に保証人がついている場合です。主契約に個人保証人が設定されていなくても、債務者と保証会社の間で結ばれる保証委託契約書には、債務者の親族などが連帯保証人として記載されていることがあるのです。

この構造では、債務者が返済できなくなっても、保証会社が代位弁済するまでは個人保証人に請求が来ません。住宅ローンでは通常6ヶ月程度の延滞で代位弁済が実行されますが、それまでの間は金融機関から債務者本人にしか督促が行われないため、保証人は全く気づかない状態が続きます。

代位弁済が実行されると、保証会社は保証委託契約に基づいて債務者と保証人の両方に求償権を行使します。このタイミングで初めて、保証人のもとに数百万円から数千万円の請求書が届くことになるのです。

これは衝撃的ですね。

実際のケースでは、債務者が自己破産を決断した後、数ヶ月してから保証委託契約の保証人である親族に保証会社から請求が来て、家族関係が悪化するというトラブルが報告されています。保証人になった覚えはあっても、それが保証委託契約の保証人であることを理解していなかったというケースも少なくありません。

不動産業者としては、住宅ローンの相談を受ける際に、保証会社を利用する場合でも保証委託契約に個人保証人が必要かどうかを金融機関に確認する必要があります。必要な場合は、その保証人が保証委託契約の保証人であることを明確に説明しなければなりません。

保証委託契約書は金融機関や保証会社が債務者に交付しますが、その内容を詳しく説明しないまま署名・押印させるケースもあります。債務者側の立場で確認すべきポイントは、保証委託契約書に連帯保証人欄があるかどうか、ある場合は誰が保証人になっているかという点です。

賃貸物件の保証委託契約でも同様のリスクがあります。借主と保証会社の保証委託契約に、借主の親が連帯保証人として記載されているケースです。家賃滞納が続いて保証会社が代位弁済を行った後、親に対して求償請求が行われることになります。

このリスクを回避するためには、契約締結前に保証委託契約書の内容を確認し、連帯保証人欄の有無と保証人候補者への説明を徹底することが重要です。保証人になる方にも、保証委託契約の保証人であることの意味を理解してもらう必要があります。

保証契約と保証委託契約の実務上の使い分け

不動産取引の実務では、保証契約と保証委託契約がどのような場面でどのように使い分けられているかを理解しておくと、契約書の作成や顧客への説明がスムーズになります。両者は法的には別個の契約ですが、実務上は密接に関連して運用されています。

個人が保証人になる賃貸借契約では、貸主と連帯保証人の間で保証契約を締結するのが基本形です。この場合、借主と連帯保証人の間で保証委託契約を別途締結することは少なく、保証契約のみで完結させるケースが一般的になります。

つまりシンプルですね。

これに対して保証会社を利用する場合は、貸主と保証会社の間で保証契約が結ばれ、同時に借主と保証会社の間で保証委託契約が結ばれます。保証会社のビジネスモデルは、借主から保証料を受け取って保証サービスを提供するというものなので、借主との契約関係である保証委託契約が必須となるわけです。

保証料の相場は、賃貸住宅の場合で初回が家賃の50%から100%程度、年間更新料が1万円から2万円程度です。例えば家賃8万円の物件であれば、初回保証料が4万円から8万円、毎年1万円から2万円の更新料がかかる計算になります。家賃の半月分から1ヶ月分程度と考えるとわかりやすいですね。

住宅ローンでは、金融機関が指定する保証会社との保証委託契約締結が融資条件となっているケースがほとんどです。保証料は借入金額の2%程度が目安で、3000万円の借入であれば約60万円の保証料を初回に支払うか、金利に0.2%程度上乗せして分割払いする形式が一般的です。

60万円は決して小さくありません。

保証委託契約を結ぶことで、債務者は保証会社に保証料を支払う代わりに、個人保証人を立てる必要がなくなります。ただし前述のとおり、保証委託契約自体に個人保証人が設定されているケースもあるため、契約書の確認が重要です。

法人が債務者となる事業用不動産の賃貸借契約では、法人代表者が個人として保証契約を結ぶケースが一般的です。この場合は法人と個人の間に保証委託契約が存在するわけではなく、代表者が法人の債務を個人保証する構造になります。

これは注意が必要です。

民法改正により、事業用融資の個人保証については公正証書の作成が義務付けられました。法人の代表者や議決権の過半数を持つ主などは例外とされていますが、それ以外の第三者が事業用融資の保証人になる場合は、公証人による意思確認が必要となります。

契約書を作成する際は、保証契約と保証委託契約のそれぞれについて、必要な記載事項が漏れていないか確認してください。保証契約では極度額の明示が必須、保証委託契約では求償債権の範囲を明確にすることが重要なポイントとなります。

実務上の混乱を避けるためには、契約書のタイトルを正確に付けることも大切です。「保証契約書」と「保証委託契約書」を明確に区別し、それぞれの契約当事者欄を確認することで、どちらの契約を見ているのかが一目でわかるようにしておきましょう。

保証委託契約のトラブル予防策と顧客説明のポイント

不動産業者として保証委託契約に関わる際、トラブルを未然に防ぐためには契約締結前の確認と顧客への丁寧な説明が不可欠です。特に保証会社を利用する契約では、借主側の理解不足から後日クレームに発展するケースが少なくありません。

まず確認すべきは、保証委託契約書の内容と保証範囲です。家賃の保証だけなのか、原状回復費用や損害賠償も含まれるのか、保証期間はいつまでなのかを明確に把握してください。保証範囲が広いほど保証料も高くなりますが、同時に借主の将来的な負担リスクも大きくなります。

保証会社によっては、家賃滞納だけでなく設備破損や近隣トラブルの損害賠償まで保証範囲に含めているケースがあります。この場合、保証会社が貸主に立替払いした後、借主に高額な求償請求が来る可能性があるため、契約前にその点を説明しておく必要があります。

保証委託契約に個人保証人が設定される場合は、その保証人に対しても直接説明を行うことが望ましいです。「保証会社を使うから保証人は形だけ」と誤解している保証人も多く、実際には保証会社からの求償請求に対して責任を負うことを理解していないケースがあります。

形だけではありません。

借主が家賃を滞納した場合の流れを具体的に説明することも重要です。一般的には滞納発生から保証会社が貸主に立替払いを行うまで数ヶ月かかり、その後保証会社から借主に求償請求が来るという流れになります。この時点で借主は貸主ではなく保証会社に対して債務を負うことになるのです。

保証会社の求償請求には遅延損害金が付加されるケースが多く、年14%から20%程度の高い利率が設定されていることがあります。例えば100万円の滞納家賃を保証会社が立替払いした場合、1年後には114万円から120万円に膨らむ計算になります。

これは見過ごせません。

契約更新時の保証料についても事前に説明してください。初回保証料だけでなく、1年ごとまたは2年ごとに更新料が必要となる契約が多く、長期間居住する場合は累積で相当な金額になります。家賃7万円の物件で年1万円の更新料を10年間支払うと、保証料だけで10万円以上になる計算です。

保証会社を選ぶ際は、審査基準や保証範囲だけでなく、求償請求の方法や分割払いの対応なども確認しておくとよいでしょう。一部の保証会社は借主が支払困難な状況に陥った場合でも柔軟な対応をしてくれますが、厳格な回収方針を持つ保証会社もあります。

貸主側の立場では、保証会社の経営状態や代位弁済の実績を確認することも重要です。保証会社が倒産すると保証が履行されなくなるリスクがあるため、信用力のある保証会社を選ぶ必要があります。

大手保証会社であれば比較的安心できますね。

契約書の控えを必ず借主に交付し、保証委託契約の内容を記録として残してもらうようにしてください。後日「そんな説明は受けていない」というトラブルを避けるため、重要事項説明の際に保証委託契約の主要条項を説明し、説明を受けた旨の署名をもらうことも有効です。

東京信用保証協会の保証委託契約約款には、標準的な保証委託契約の条項例が掲載されており、契約書作成時の参考になります。業界標準を把握することで、特殊な条項や不利な条項を見抜くことができます。

トラブル予防の基本は、契約内容の正確な理解と丁寧な説明です。保証委託契約は保証契約と混同されやすいため、両者の違いを明確に伝え、それぞれの法的効果を理解してもらうことが、不動産業者としての責任ある対応といえるでしょう。