滞納保証とサブリースの仕組み
サブリース契約は満室時の80~90%保証だが免責期間で収入ゼロになります。
滞納保証の基本的な仕組み
滞納保証は、入居者が家賃を滞納した際に保証会社がオーナーに立替払いをする制度です。入居者が契約時に保証会社に保証料を支払うことで、家賃滞納のリスクをカバーできます。
保証料の相場は初回が家賃の50~100%程度で、例えば家賃8万円の物件なら4万~8万円を入居者が負担します。これは契約時に入居者が支払うため、オーナーの持ち出しはありません。さらに1年または2年ごとに1万円前後の更新料が発生しますが、これも入居者負担です。
滞納保証では、空室がある場合は当然収入が入りません。しかし満室時には家賃全額がオーナーの収入になるため、収益性は高くなります。
つまり入居率が高い物件ほど有利です。
この制度を活用すれば、滞納リスクを回避しながら最大限の収益を確保できます。ただし空室リスクと管理業務はオーナーが負担する点に注意が必要です。入居率が常に90%以上を維持できる物件であれば、滞納保証だけで十分対応できるでしょう。
サブリース契約の基本的な仕組み
サブリース契約は、サブリース会社がオーナーから物件を一括で借り上げ、入居者に転貸する方式です。オーナーはサブリース会社と賃貸借契約を結び、会社から毎月一定の家賃を受け取ります。
保証賃料は満室時の家賃の80~90%が相場です。例えば満室時の家賃収入が月50万円なら、オーナーが受け取れるのは40万~45万円程度になります。手数料として10~20%、つまり5万~10万円がサブリース会社の取り分です。
この方式では、空室があってもサブリース会社から一定額が支払われます。入居者募集や物件管理、クレーム対応もすべて会社が行うため、オーナーの管理負担はほぼゼロです。
ただし免責期間という落とし穴があります。入居者退去後の1~3ヶ月間は家賃保証が適用されず、その期間の収入はゼロになります。年間5回退去が発生し免責期間が3ヶ月なら、30年間で15ヶ月分、つまり1年3ヶ月分の家賃が無収入になる計算です。
サブリースは安定収入が魅力ですが、実質的な手取りは想定より少なくなることを理解しておく必要があります。都心の新築物件なら手数料15~20%、郊外の築古物件なら25%以上という設定が一般的です。
滞納保証とサブリースの決定的な違い
滞納保証とサブリースの最大の違いは、空室リスクを誰が負うかという点です。滞納保証では空室時の収入はゼロですが、サブリースでは空室があっても保証賃料が支払われます。
契約形態も大きく異なります。滞納保証は入居者と保証会社の契約で、オーナーは賃貸借契約の当事者のままです。一方サブリースでは、サブリース会社が借主となり、オーナーは入居者と直接契約しません。そのため入居者の選定や家賃設定にオーナーが関与できない場合が多いです。
収益性の差も重要です。滞納保証なら満室時には家賃全額が収入になりますが、サブリースでは常に10~20%が差し引かれます。例えば年間家賃収入600万円の物件なら、滞納保証では満室時に600万円の収入ですが、サブリースでは最大でも540万円、物件条件によっては480万円程度になります。
年間で60万~120万円の差額です。
解約の自由度も大きく違います。滞納保証は管理委託契約なので、オーナーから比較的容易に解約できます。しかしサブリースは借地借家法が適用され、オーナー側から一方的な解約はほぼ不可能です。正当事由がない限り解約できず、違約金も賃料の数ヶ月分から1年分と高額になります。
滞納保証とサブリースのコスト比較
滞納保証の場合、オーナーが負担するのは通常の管理手数料のみです。相場は家賃の3~5%程度で、月10万円の家賃なら3,000~5,000円の管理料です。保証料は入居者負担なので、オーナーの実質的な負担は管理手数料だけになります。
サブリースの手数料は実質10~20%です。月10万円の家賃なら、オーナーの手取りは8万~9万円になり、1万~2万円がサブリース会社の取り分です。年間では12万~24万円のコストになります。
10戸のアパートで家賃が月8万円の物件を30年間運営すると仮定して比較してみましょう。滞納保証では満室時の年間家賃収入が960万円、管理手数料5%として年48万円、30年で1,440万円のコスト負担です。サブリースで手数料15%なら年144万円、30年で4,320万円のコストになります。差額は2,880万円、東京23区内のワンルームマンション1戸分に相当する金額です。
ただしサブリースには空室リスクがないため、空室率が高い物件では結果的に有利になる場合もあります。空室率10%の物件なら、滞納保証では実質収入が864万円に下がりますが、サブリースなら空室があっても816万円は確保できます。物件の立地や入居率によって、どちらが有利かは変わってきます。
不動産業従事者が提案すべき選択基準
オーナーの経営スタイルと物件特性によって、最適な選択肢は変わります。提案時には以下の基準を明確に伝える必要があります。
入居率が高く維持できる物件では、滞納保証を推奨すべきです。都心の駅近物件や築浅の人気エリアなら、入居率95%以上を維持できるケースが多く、満額に近い家賃収入が見込めます。この場合サブリースの手数料10~20%は純粋な損失になります。
郊外の築古物件や入居付けが難しいエリアでは、サブリースの検討価値があります。空室率が20%を超える物件なら、手数料を払ってでも安定収入を確保したほうが資金繰りが安定します。ただし免責期間や賃料減額のリスクは必ず説明する必要があります。
オーナーが本業を持ち、賃貸経営に時間を割けない場合もサブリースが選択肢になります。管理業務を完全に任せられるため、時間的コストを削減できます。一方で不動産経営を本業とするオーナーや、物件管理に関わりたいオーナーには滞納保証のほうが適しています。
資金繰りに余裕がないオーナーには、安定収入が得られるサブリースを提案すべきです。ローン返済が厳しい状況では、空室による収入ゼロのリスクは致命的になります。たとえ手取りが減っても、確実に入金がある安心感は大きな価値です。
提案時には必ず数値シミュレーションを示しましょう。30年間の収支予測を、入居率90%・80%・70%の3パターンで作成し、それぞれの場合の総収入を比較します。免責期間や賃料減額の可能性も織り込んだ現実的な数字を提示することで、オーナーは適切な判断ができるようになります。
サブリース契約の賃料相場と手数料の詳細について解説している記事
滞納保証会社の選定ポイント
滞納保証会社は審査基準と代位弁済の速さで選ぶべきです。審査が厳しすぎる会社は入居率を下げる原因になり、緩すぎると滞納頻度が上がります。バランスの取れた会社を見極める必要があります。
代位弁済のスピードも重要です。滞納発生から立替払いまで1ヶ月以内が標準ですが、会社によっては2ヶ月以上かかるケースもあります。代位弁済が遅れるとオーナーのキャッシュフローに直接影響するため、実績を確認しましょう。
保証範囲の広さも確認ポイントです。家賃だけでなく、原状回復費用や訴訟費用まで保証する会社もあります。例えば原状回復費用30万円が回収不能になった場合でも、保証範囲に含まれていれば損失を回避できます。
全国賃貸保証機構や日本セーフティーなど、実績のある大手保証会社を選ぶことで、トラブル時の対応力も確保できます。地域によって対応可能な保証会社が限られる場合もあるため、複数の選択肢を用意しておくと入居者の幅が広がります。
保証料の設定も入居者の負担に直結します。初回保証料が家賃の100%だと入居者の初期費用が大きくなり、入居のハードルが上がります。50~70%程度の会社を選べば、入居希望者の負担を軽減しながら保証機能を確保できるでしょう。
サブリース契約書のチェックポイント
免責期間の設定は契約書で最も注意すべき項目です。1ヶ月が標準ですが、3ヶ月や5ヶ月という長期設定の契約もあります。免責期間が3ヶ月で年間3回退去が発生すれば、年間9ヶ月分の収入がゼロになり、実質的な保証率は大幅に下がります。
賃料見直しの条項も必ず確認しましょう。「2年ごとに市場家賃を参考に見直す」という文言がある場合、2年後に一方的に減額される可能性があります。実際に契約2年後に2割減額されたトラブル事例も報告されています。減額の条件や手続きを明確にしておく必要があります。
解約条項の内容も重要です。「オーナーからの解約には6ヶ月前の通知と違約金が必要」という条項が一般的ですが、違約金が賃料の12ヶ月分という高額設定の契約もあります。月40万円の賃料なら480万円の違約金です。解約の自由度が極端に制限されている契約は避けるべきです。
原状回復費用の負担区分も確認ポイントです。通常はオーナー負担ですが、サブリース契約では「軽微な修繕はサブリース会社負担」とされている場合もあります。どこまでが軽微で、どこからがオーナー負担なのか、金額基準を明記させましょう。
特約条項に潜むリスクにも注意が必要です。「サブリース会社が指定する業者でリフォームを実施する」という条項がある場合、相場より高額な工事を強制される可能性があります。実際に通常200万円の工事を500万円で請求されたケースもあります。
業者選定の自由度は確保すべきです。
サブリース契約のトラブル事例と対応方法をまとめた業界団体の資料
サブリース会社倒産時のリスク対策
サブリース会社が倒産すると、保証家賃の支払いが停止し、入居者からの家賃回収を突然オーナーが行う必要が出てきます。入居者は倒産した会社の口座に家賃を振り込み続ける可能性があり、オーナーへの支払いが滞ります。
倒産リスクを見極めるには、会社の財務状況を確認することが基本です。上場企業や大手不動産会社の子会社なら、財務情報が公開されており、経営状態を把握できます。非上場の中小サブリース会社の場合は、業歴や管理戸数、実績を確認しましょう。
契約前に帝国データバンクや東京商工リサーチで信用調査を実施する方法もあります。費用は1件あたり数千円から1万円程度ですが、数千万円の損失リスクを考えれば必要な投資です。評点が低い会社や赤字が続いている会社との契約は避けるべきです。
入居者との直接契約の準備も進めておく必要があります。サブリース会社が倒産した場合、オーナーと入居者の賃貸借契約が自動的に継承されますが、連絡先や契約内容を把握していないと混乱します。入居者リストや契約書のコピーを定期的に取り寄せておくことで、緊急時に迅速な対応が可能になります。
複数物件を所有するオーナーには、サブリース会社を分散させる戦略も有効です。全物件を1社に任せると、その会社が倒産した場合に全収入が停止します。2~3社に分散させれば、1社が倒産しても他の物件からの収入は維持できます。
2025年問題とサブリース契約の見直し
2015年前後に契約されたサブリース物件が、2025年に契約更新時期を迎えています。この時期に賃料減額や契約条件の変更を迫られるケースが急増しており、「サブリース2025年問題」として注目されています。
契約更新時に賃料が2割減額されるケースが実際に発生しています。月40万円の保証賃料が32万円に減額されれば、年間96万円、10年で960万円の減収です。ローン返済計画が狂い、経営が立ち行かなくなるオーナーも出ています。
この問題の本質は、借地借家法がサブリース会社を保護している点にあります。オーナーが減額を拒否しても、サブリース会社は借主として保護され、賃料減額請求権を行使できます。最終的には裁判で相当賃料が決定されることになりますが、その間の訴訟費用や時間的負担も大きいです。
契約更新の拒絶も困難です。オーナー側から更新を拒否するには正当事由が必要で、単に「条件が悪い」というだけでは認められません。過去の判例では、契約期間満了を理由とした更新拒絶が認められなかったケースもあります。
オーナー側に一方的に不利な構造です。
対策としては、更新時期の1年前から交渉を開始することが重要です。減額幅の抑制や、免責期間の短縮などの条件交渉を粘り強く行います。他のサブリース会社への乗り換えも検討すべきですが、既存契約の解約には高額な違約金が必要になる場合が多いです。
弁護士や不動産コンサルタントへの相談も選択肢です。費用は数十万円かかりますが、不利な条件での更新を避けられれば、長期的には大きな損失を防げます。特に複数物件を所有するオーナーにとっては、専門家のサポートは不可欠でしょう。
滞納保証とサブリースの併用戦略
複数物件を所有するオーナーには、物件ごとに滞納保証とサブリースを使い分ける戦略が有効です。入居率が高い都心物件は滞納保証、郊外の築古物件はサブリースという組み合わせで、リスクと収益のバランスを取れます。
新築時の最初の5年間はサブリースで安定収入を確保し、入居率が安定してきたら滞納保証に切り替える時系列戦略もあります。ただしサブリース契約の解約には正当事由と違約金が必要なため、契約時に解約条件を明確にしておく必要があります。
1棟のアパートでも、階数や部屋タイプによって使い分けることが可能です。例えば1階の店舗部分はサブリース、2階以上の住居部分は滞納保証という方式です。店舗は空室期間が長くなりやすいため、サブリースで安定収入を確保し、住居部分は回転率が高いため滞納保証で収益を最大化します。
ただし管理が複雑になるデメリットもあります。複数の契約を並行管理する手間や、トラブル発生時の対応窓口が分散する問題があります。特に小規模オーナーの場合、管理負担が増えて本業に支障が出る可能性もあるため、自分の管理能力と時間的余裕を考慮して判断しましょう。
不動産業従事者としては、オーナーの物件数や経営方針に応じた最適な組み合わせを提案することが求められます。単純に「サブリースが良い」「滞納保証が良い」ではなく、物件特性と経営目標に合わせたカスタマイズ提案が、オーナーの信頼を得る鍵になります。
トラブル発生時の対応フローの違い
滞納保証では、入居者が家賃を滞納すると保証会社が代位弁済を行います。通常は滞納発生から1ヶ月以内にオーナーの口座に入金され、その後保証会社が入居者から回収します。
オーナーは滞納の影響をほとんど受けません。
サブリースでは、サブリース会社自体が家賃を滞納するケースがあります。この場合オーナーは直接入居者に請求できず、サブリース会社との交渉が必要です。サブリース会社が3ヶ月以上賃料を滞納した場合、信頼関係破壊を理由に契約解除を主張できる可能性がありますが、裁判が必要になります。
入居者トラブルへの対応も異なります。滞納保証では、騒音トラブルや設備故障などはオーナーまたは管理会社が対応します。
対応が遅れるとオーナーの責任になります。
サブリースでは、すべてのトラブル対応をサブリース会社が行うため、オーナーは関与しません。
建物の修繕が必要になった場合、滞納保証ではオーナーが業者選定から費用負担まで行います。サブリースでは、契約内容によって負担区分が異なります。大規模修繕はオーナー負担、日常的な修繕はサブリース会社負担という区分が一般的ですが、境界が曖昧でトラブルになるケースもあります。
法的トラブルの場合も対応が分かれます。入居者の孤独死や事故物件化した場合、滞納保証ではオーナーが遺族や保険会社と交渉します。サブリースでは、サブリース会社が借主として対応しますが、最終的な損失はオーナーが負担することが多いです。事故物件化による資産価値の下落は、どちらの方式でも避けられません。
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