転貸借サブリース違いを知る契約リスク回避法

転貸借とサブリースの違い

サブリース契約の保証賃料は2年ごとに減額される可能性があります。

この記事でわかる3つのポイント
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転貸借とサブリースの法的構造の違い

転貸借は一般的な又貸しの仕組みで、サブリースは不動産会社による一括借り上げ型の転貸借です。

家賃保証の有無が最大の違いとなります。

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サブリース契約の賃料減額リスク

契約時は30年保証とうたわれても、実際には2~5年ごとに賃料見直しが入り、借地借家法により減額請求が認められる判例が存在します。

契約前の必須チェック項目

転貸承諾書の取得、保証賃料の見直し条件、免責期間の有無、修繕費用の負担区分など、契約書の細部確認が後のトラブル回避につながります。

転貸借の基本的な定義と仕組み

 

転貸借とは、賃借人賃貸人から借りた物件を、賃貸人の承諾を得て第三者に貸す行為を指します。民法第612条では、賃借人は賃貸人の承諾なしに転貸を行うことができず、無断で転貸を行った場合は契約解除事由となると規定されています。

転貸借には3つの当事者が関わります。賃貸人(オーナー)、賃借人(転貸人)、そして転借人(実際に物件を使用する第三者)です。この構造では、賃貸人と賃借人の間に賃貸借契約が存在し、賃借人と転借人の間に転貸借契約が存在する二重の契約関係が成立します。

法的には賃貸借契約が終了すると転貸借契約も原則として終了します。例えば、オーナーと転貸人の契約が解除されると、転借人は法的根拠を失い退去を求められる可能性があります。これは転貸借における大きなリスク要因の一つです。

転貸借を行う際は必ず賃貸人の承諾が必要です。転貸承諾書という書面で明確に承諾を得ることが推奨されており、口頭の承諾だけでは後日トラブルの原因となります。承諾を得ずに転貸を行った場合、賃貸人から契約解除や損害賠償請求を受けるリスクが生じます。

転貸借の法律関係とリスク防止について詳しく解説した専門記事(CBRE)

サブリースの契約形態と特徴

サブリースは法律上「転貸借契約」の一種に位置づけられますが、通常の転貸借とは異なる特徴を持ちます。最大の違いは、サブリース会社が複数の物件や建物全体をまとめて借り上げ、空室の有無に関わらず一定の家賃をオーナーに保証する点です。

サブリース契約の構造は2つの契約で構成されます。オーナーとサブリース会社の間の「マスターリース契約」と、サブリース会社と入居者の間の「サブリース契約」です。マスターリース契約がオーナー側の賃貸借契約であり、実際の入居者との契約はサブリース会社が行います。

保証賃料は市場家賃の80~90%が相場です。例えば、入居者から10万円の家賃を受け取る物件の場合、オーナーには8万円から9万円が保証される仕組みです。差額の1万円から2万円(10~20%)がサブリース会社の手数料となり、これには管理業務や空室リスクの負担に対する対価が含まれます。

サブリース契約では賃料見直しが定期的に行われます。契約期間は10年から35年と長期にわたることが多いですが、実際には2年から5年ごとに保証賃料の見直しが契約書に盛り込まれています。これはサブリース2025年問題として注目されており、2015年頃に契約した物件が更新時期を迎え、賃料減額を要求されるケースが増加しています。

借地借家法の適用があることも重要です。最高裁判所の判例(平成15年10月21日判決)により、サブリース契約にも借地借家法第32条の賃料減額請求権が適用されることが確定しています。つまり、契約書に「30年間家賃保証」と記載されていても、経済事情の変動を理由にサブリース会社から減額請求が認められる可能性があります。

国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイトでサブリース規制について詳しく確認できます

転貸借とサブリースの法的な相違点

転貸借とサブリースは法的には同じ「転貸借」に分類されますが、実務上の取り扱いと法的保護の程度が異なります。

転貸借では家賃保証の概念がありません。転借人からの家賃が滞れば、転貸人は賃貸人への支払いができなくなるリスクを直接負います。空室が発生しても転貸人は賃貸人への賃料支払い義務を負い続けるため、収益性は入居状況に完全に依存します。

一方、サブリースでは空室保証が提供されます。ただし、多くの契約には「免責期間」が設定されており、入居者退去後1~2ヶ月間は家賃が支払われない条項が含まれています。例えば、入居者が3月末に退去した場合、4月と5月の2ヶ月間はオーナーへの賃料支払いがゼロになる可能性があります。これは月に換算すると年間で2~4ヶ月分の収入減となります。

責任の所在も異なります。転貸借では物件の破損や修繕について、賃貸人・転貸人・転借人の3者間で責任の所在が曖昧になりやすく、紛争の原因となります。サブリースでは修繕費用の多くがオーナー負担と契約書に明記されることが一般的で、原状回復費用や設備交換費用が想定外の支出として発生するケースが報告されています。

契約解除の難易度にも差があります。転貸借契約は当事者間の合意で比較的柔軟に解除できますが、サブリース契約は借地借家法の保護を受けるため、オーナー側からの一方的な解約は極めて困難です。契約期間が満了しても、サブリース会社が更新を望めば法的に拒否することが難しいという判例があります。

転貸承諾の取り扱いも重要です。通常の転貸借では個別に承諾を得る必要がありますが、サブリースでは最初の契約時に包括的な転貸承諾が組み込まれており、その後個別の承諾は不要となります。これはサブリース会社の運営効率を高める一方、オーナーの入居者選定権が制限されることを意味します。

転貸借契約で発生しやすいトラブル事例

無断転貸による契約解除リスクが最も深刻なトラブルです。民法第612条第2項により、賃貸人の承諾なく転貸を行った場合、賃貸人は契約を解除できます。ただし、判例では「背信的行為と認めるに足りない特段の事情」がある場合は解除が認められないとされています。

具体的な事例として、賃借人が家族や親族に無償で又貸しした場合、信頼関係が破壊されていないと判断され解除が無効となったケースがあります。一方、営利目的で賃料を上乗せして転貸した場合は、明確な契約違反として即座に解除が認められる傾向にあります。

転貸人と転借人の契約終了時のトラブルも頻発します。転貸人が賃貸人に賃料を滞納して原契約が解除されると、転借人は突然退去を求められる状況に陥ります。転借人は直接の契約相手である転貸人にしか権利主張できないため、転貸人が破産した場合には救済が困難になります。

修繕費用の負担トラブルも典型例です。転借人が設備を破損した場合、修繕責任は転貸人が負いますが、転貸人が転借人に求償できない状況では、転貸人が全額負担を強いられます。エアコンの故障や水漏れなど、高額な修繕が発生すると数十万円の出費となり、転貸人の収益を大きく圧迫します。

契約書の不備によるトラブルも見逃せません。転貸借契約書に原状回復義務や禁止事項が明確に記載されていないと、退去時に転借人とトラブルになります。原状回復費用の範囲が不明確だと、転貸人が想定以上の費用を負担する結果となります。

サブリース契約の独自リスクと対策ポイント

賃料減額請求のリスクがサブリース特有の問題として挙げられます。借地借家法第32条により、経済事情の変動や周辺相場の下落を理由に、サブリース会社はオーナーに対して賃料減額を請求できます。裁判例では、契約書に「賃料固定」と記載されていても減額請求が認められたケースが複数存在します。

実際のトラブル事例として、「30年一括借り上げ・家賃保証」をうたった契約でも、わずか5年後に「周辺相場が下落した」として月額家賃の20%カットを迫られたケースがあります。月額20万円の保証が16万円に減額されると、年間で48万円の収入減となり、ローン返済計画に大きな影響を及ぼします。

解約拒否問題も深刻です。オーナー側から契約解約を申し出ても、サブリース会社が同意しなければ解約できません。借地借家法第28条の「正当事由」が必要とされ、オーナーが「自分で管理したい」という理由だけでは認められない判例があります。契約を終了させるために立退料として数百万円を要求されるケースも報告されています。

修繕費用の高額請求トラブルも頻発しています。サブリース契約では、室内の原状回復費用や設備交換費用がオーナー負担となることが一般的です。退去のたびに「壁紙の全面張替え」「床材の交換」として1室あたり30万円から50万円を請求され、複数戸が同時に退去すると数百万円の出費となる事例があります。

サブリース会社の倒産リスクも考慮すべきです。サブリース会社が経営破綻すると、入居者から受け取った敷金や前払い家賃がオーナーに引き継がれず、オーナーが入居者に返還義務を負う事態が発生します。過去には大手サブリース会社の倒産により、多数のオーナーが数十万円から数百万円の損失を被った事件がありました。

これらのリスクに対する対策として、契約前の徹底的な内容確認が不可欠です。賃料見直し条項の具体的な基準(何年ごと、どの指標を基準とするか)、免責期間の有無と期間、修繕費用の負担範囲と上限額、中途解約の条件と違約金の設定などを、弁護士や不動産鑑定士に相談しながら確認することが推奨されます。

特に、「賃料が減額される条件」と「減額幅の上限」を契約書に明記させることが重要です。例えば「5年ごとの見直しとし、減額幅は当初賃料の10%以内」といった具体的な条項を交渉することで、予測可能な収支計画を立てることができます。

ちんたい協会のサブリース契約トラブル対応ガイドで実務的な対処法を確認できます

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