原価法 計算式と建物評価
木造住宅は築22年で価値ゼロというのはウソです。
原価法の基本的な計算式と構成要素
原価法は不動産鑑定評価の三大手法の一つで、建物の価値を費用性から算出する方法です。
原価法の基本式は「積算価格=再調達原価-減価額」となります。この計算式において、再調達原価とは価格時点で同じ建物を新築した場合にかかる費用のことを指します。そこから築年数による劣化や機能低下を減価額として差し引くことで、現時点での適正な建物価値を導き出すのです。
具体的な計算手順を見ていきましょう。まず建物の再調達原価を「再調達単価×延床面積」で算出します。再調達単価は建物の構造や仕様によって異なり、木造住宅であれば1平方メートルあたり14万円から18万円程度、鉄筋コンクリート造であれば25万円から35万円程度が目安となります。
次に減価修正を行います。減価修正には耐用年数に基づく方法と観察減価法があり、両者を併用することが不動産鑑定評価基準で定められています。耐用年数に基づく方法では「残存耐用年数÷耐用年数」で減価修正率を計算し、これを再調達原価に乗じることで積算価格を求めるのです。
つまり基本が確立されているということですね。
例えば築10年、延床面積100平方メートルの木造住宅を評価する場合を考えてみましょう。再調達単価を15万円、木造の耐用年数を22年とすると、計算は以下のようになります。
再調達原価:15万円×100平方メートル=1,500万円
減価修正率:(22年-10年)÷22年=0.545
積算価格:1,500万円×0.545=818万円
このように原価法の計算式は数値を当てはめることで機械的に算出できる特徴があります。ただし、実務では建物の維持管理状態や設備のグレード、リフォーム履歴などを考慮した個別補正が必要になります。
原価法における再調達原価の算定方法
再調達原価の算定には直接法と間接法の2つのアプローチがあります。
直接法は建物の設計図書や請負契約書が存在する場合に使用する方法です。標準的な工事費に発注者が負担すべき通常の付帯費用を加算して再調達原価を求めます。工事費には材料費や労務費、現場管理費が含まれ、付帯費用には設計料や各種申請手続き費用、建築確認申請費用などが該当します。
直接法が適用できない場合は間接法を使います。間接法では近隣地域または同一需給圏内の類似不動産の建築事例から単価を類推する方法です。同じ構造、同じ規模の建物の建築費データを収集し、地域補正や時点修正を加えて対象建物の再調達原価を算出します。
国税庁が公表している「建物の標準的な建築価額表」も実務上よく参照されます。この表には構造別、用途別に1平方メートルあたりの標準建築単価が年度ごとに示されており、土地建物を一括で取得した際の按分計算などで活用されています。令和5年分では木造住宅が約14万8千円、鉄骨鉄筋コンクリート造が約29万2千円となっています。
ただし標準建築価額表の単価は全国平均値であるため、都市部や地方での建築費の違い、建物の品質グレードの差異を考慮する必要があります。例えば東京都心部では資材運搬費や人件費が高騰しているため、標準単価の1.2倍から1.5倍程度の補正を加えることが実務では一般的です。
これは地域性が影響するということです。
土地の再調達原価については、素材となる土地の標準的な取得原価に造成費と通常の付帯費用を加算して求めます。既成市街地の宅地であれば取引事例比較法や収益還元法で求めた更地価格を土地の再調達原価として採用することも可能です。
国税庁「建物の標準的な建築価額表」では構造別の建築単価が年度ごとに示されており、土地建物の一括取得時の按分計算の参考資料として活用できます
原価法での減価修正の実践的手順
減価修正は建物の価値減少を適切に把握するための重要なプロセスです。
耐用年数に基づく方法では、まず経済的残存耐用年数を判定します。経済的残存耐用年数とは、建物が経済的に使用可能な残りの年数のことで、単に法定耐用年数から築年数を引いた年数ではありません。建物の維持管理状態、使用状況、市場での需要動向などを総合的に考慮して判定するのです。
例えば木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、適切なメンテナンスが行われている建物であれば経済的残存耐用年数は30年以上と判定されることもあります。国土交通省の調査によれば、木造住宅の平均寿命は約65年であり、法定耐用年数とは大きく乖離しているのが実態です。
観察減価法は建物を実地調査して減価額を直接求める方法です。設計や設備の機能性、維持管理の状態、補修の状況、周辺環境との適合状態などを詳細に観察します。物理的減価として構造部分の劣化や設備の老朽化、機能的減価として間取りの陳腐化や設備の旧式化、経済的減価として立地条件の変化や需要の減退などを評価するのです。
これらを組み合わせて判断するわけですね。
実務では耐用年数に基づく方法で機械的に算出した減価額を、観察減価法で再吟味するプロセスが重要になります。例えば定額法で計算した減価額が建物価格の70%になったとしても、実地調査で構造に問題がなく設備も良好であれば、減価額を50%程度に修正することがあります。
減価の要因は物理的要因、機能的要因、経済的要因の3つに分類されます。物理的要因には経年劣化や災害による損傷、機能的要因には設計の陳腐化や設備の旧式化、経済的要因には需給バランスの変化や周辺環境の変化が含まれます。同一の減価要因を耐用年数に基づく方法と観察減価法で二重に計上しないよう注意が必要です。
原価法で土地と建物を一括評価する注意点
土地建物を一括で取得した場合の価額按分は税務上の重要な論点となります。
不動産を一括で購入した際、契約書に土地と建物の価格が区分されていない場合があります。この場合、購入者は何らかの合理的な方法で土地と建物の取得価額を按分しなければなりません。建物は減価償却資産であるため、按分比率によって将来の減価償却費や譲渡所得の計算が大きく変わってくるからです。
按分方法としては固定資産税評価額比による方法が最も一般的です。土地と建物それぞれの固定資産税評価額の比率で購入総額を按分する方法で、客観性が高く税務署にも受け入れられやすい特徴があります。例えば土地の固定資産税評価額が3,000万円、建物が2,000万円、購入総額が6,000万円の場合、土地:建物=3:2の比率で按分し、土地3,600万円、建物2,400万円とします。
しかし固定資産税評価額による按分が常に適切とは限りません。建物が老朽化している場合や特殊な用途の建物の場合、固定資産税評価額が実態を反映していないケースがあるからです。このような場合は不動産鑑定士による鑑定評価額を用いた按分や、原価法による再調達原価を基にした按分が合理的と判断されることもあります。
按分が重要な理由は明確です。
税務調査では土地建物の価額按分が合理的でないと指摘されるケースが増えています。特に建物の比率を高く設定して減価償却費を多く計上しようとする場合、税務署から不合理な按分として否認されるリスクがあります。過去の裁判例では、契約書に記載された土地建物の価額が時価と大きく乖離している場合、税務署が再按分を行うことが認められています。
原価法を用いた按分計算を行う場合、建物の再調達原価から減価修正を行った積算価格を建物価額とし、残額を土地価額とする方法が考えられます。この方法は建物の実態を反映した合理的な按分として評価されますが、再調達原価の算定根拠や減価修正の妥当性について十分な説明資料を準備しておく必要があります。
土地と建物を一括取得した場合の按分方法については、固定資産税評価額比、鑑定評価額比、原価法など複数の方法があり、それぞれの合理性を検討する必要があります
原価法の計算式を不動産実務で活用する応用例
原価法は建物評価だけでなく様々な不動産実務場面で応用されます。
住宅ローンの担保評価では金融機関が積算価格を重視します。積算価格は土地の路線価評価と建物の原価法評価を合算したもので、融資限度額の判定基準となるためです。例えば土地が路線価ベースで2,000万円、建物が原価法で800万円と評価されれば、積算価格は2,800万円となります。金融機関は通常この積算価格の70%から80%を融資上限とするため、この物件では1,960万円から2,240万円が融資可能額の目安になります。
不動産売買の価格交渉でも原価法の知識が役立ちます。売主が提示する価格が適正かどうかを判断する際、原価法で試算した積算価格と比較することで交渉材料を得られるのです。例えば売主が3,000万円を提示している物件について、原価法で試算したところ積算価格が2,500万円だった場合、500万円の開きについて合理的な説明を求めることができます。
相続税評価でも原価法の考え方が応用されます。賃貸アパートなどの収益物件を相続する場合、固定資産税評価額による評価が原則ですが、建物が特殊な構造や用途の場合は再調達原価を基にした評価が認められることがあります。
実務での活用シーンは多岐にわたります。
リフォーム後の建物評価でも原価法が使われます。大規模なリフォームを実施した建物は、リフォーム費用を再調達原価に加算し、減価修正を行って評価します。例えば築20年の木造住宅に1,000万円のフルリノベーションを実施した場合、新築時の再調達原価1,500万円にリフォーム費用を加えた2,500万円を基準として、経過年数に応じた減価修正を行います。ただしリフォーム部分については独立して耐用年数を設定することもあります。
建物の保険金額設定でも原価法の再調達価格が基準となります。火災保険や地震保険の保険金額は建物の再調達価格を上限として設定されるため、適正な再調達原価の算定が重要です。建築費の高騰が続いている現状では、過去に設定した保険金額が現在の再調達価格を大きく下回っているケースが増えており、定期的な見直しが必要となっています。
不動産鑑定士に正式な鑑定評価を依頼する場合でも、事前に原価法で概算評価を行っておくことで、鑑定結果の妥当性を検証できます。鑑定評価額が自身の試算と大きく乖離している場合は、その理由について鑑定士に詳しく説明を求めることができ、より納得感のある評価結果を得られるでしょう。

