宅建業法違反罰則と監督処分から両罰規定

宅建業法違反の罰則と監督処分

宅建士証を提示しなくても前科はつきません。

宅建業法違反の罰則体系 3つの重要ポイント
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刑事罰と行政罰の違い

宅建業法違反には前科がつく「刑事罰」と前科にならない「行政罰(過料)」の2種類があり、違反内容によって適用される罰則が異なります。

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最大1億円の両罰規定

個人が違反した場合だけでなく、法人にも最大1億円の罰金が科される「両罰規定」があり、無免許営業や業務停止違反が対象です。

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5年間の免許取得制限

禁錮以上の刑を受けると刑の執行後5年間、宅建業法違反の罰金刑でも執行後5年間は免許が取得できない欠格事由に該当します。

宅建業法違反における罰則の種類と内容

 

宅建業法違反の罰則は、大きく分けて刑事罰と行政罰の2つに分類されます。刑事罰は刑法に基づく処罰で、懲役刑や罰金刑が該当し、これらは前科として記録に残ります。一方、行政罰は行政上の義務違反に対する制裁で、宅建業法では「過料」がこれに当たり、前科にはなりません。

刑事罰の中で最も重いのは「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」です。これは無免許営業、不正手段による免許取得、名義貸しで他人に営業させた行為、業務停止処分に違反して営業を続けた場合に適用されます。無免許営業は宅建業法の根幹を揺るがす重大な違反行為とされており、反復継続的に不動産取引をおこなう意図があれば、たとえ1回の売却でも対象となる可能性があります。

次に重い罰則は「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」で、これは営業保証金の供託義務違反などに適用されます。営業保証金は取引の相手方を保護するための制度であり、これを怠ると重い処分を受けることになります。

「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」の対象となるのは、重要事項の不告知や虚偽告知、不当に高額な報酬の要求などです。不当に高額な報酬を要求した場合は併科(懲役と罰金の両方)もあり得ます。重要事項説明を怠った場合も同様の罰則が適用され、業務停止処分の対象にもなります。

より軽い罰則として「6ヵ月以下の懲役または100万円以下の罰金」があり、これは誇大広告や守秘義務違反などに適用されます。誇大広告は消費者に誤った判断をさせる可能性があるため、厳しく規制されています。

「50万円以下の罰金」は、37条書面(契約書面)の交付義務違反、報告義務違反、立入検査の拒否などに適用されます。37条書面は契約内容を明確にする重要な書面であり、これを交付しなかった場合は業務停止処分も受ける可能性があります。

行政罰である「10万円以下の過料」は、宅建士が重要事項説明の際に宅建士証を提示しなかった場合や、事務禁止処分中に宅建士証を提出しなかった場合に科されます。これは刑事罰ではないため前科にはなりませんが、行政上の記録には残ります。過料と科料は混同されやすいですが、科料は刑事罰で1000円以上1万円未満、過料は行政罰で金額に上限がないという違いがあります。

これらの罰則に加えて、法人に対しては「両罰規定」が適用されます。宅建業者の代表者や従業員が違反行為をおこなって罰則を受けた場合、それらの者が務めている業者に対しても罰金刑が科されます。無免許営業や業務停止処分違反など、特に重大な違反については法人に対して「1億円以下の罰金」が科される可能性があります。それ以外の罰金刑が規定されている違反では、業者にも同様の罰金が科されます。

両罰規定は企業の管理責任を問う制度です。従業員個人が違反した場合でも、企業として適切な管理体制を構築していなかったとみなされ、法人自体にも罰金が科されます。例えば従業員が無免許営業をおこなった場合、その従業員には最大で懲役3年または罰金300万円が科され、さらに法人には最大1億円の罰金が科される可能性があります。東京ドーム約21個分の敷地面積を持つ大規模マンション開発で違反があった場合、その損失は計り知れません。

罰則を受けた場合、その後の事業活動にも大きな影響が出ます。禁錮以上の刑を受けた場合、刑の執行を終わってから5年間は免許を取得できません。また、宅建業法違反や暴力行為等処罰法違反、刑法の傷害罪、現場助勢罪、背任罪などで罰金刑を受けた場合も、刑の執行を終わってから5年間は免許が取れない欠格事由に該当します。これは個人だけでなく、法人の役員についても同様に適用されます。

罰則を回避するためには、日常的なコンプライアンス体制の構築が不可欠です。違反行為が発覚するリスクを減らすために、定期的な社内研修の実施、業務マニュアルの整備、チェックリストの活用などが有効です。国土交通省が公開している「宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準」を参照することで、どのような行為が処分対象となるかを具体的に理解できます。

国土交通省「宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準」(監督処分の対象となる違反行為と処分内容の詳細が記載されています)

宅建業法違反の監督処分の段階と内容

宅建業法に違反した場合、刑事罰とは別に行政上の監督処分を受ける可能性があります。監督処分は違反の程度に応じて「指示処分」「業務停止処分」「免許取消処分」の3段階に分かれており、軽いものから順に適用されます。

指示処分は最も軽い監督処分で、宅建業者に対して違反状態の是正や再発防止のための具体的な措置を命じるものです。例えば、重要事項説明書の記載漏れがあった場合や、従業者名簿の備え付けを怠った場合などに適用されます。指示処分を受けた業者は、指示書に記載された内容に従って是正措置をおこなう必要があり、従わなかった場合は次の段階である業務停止処分の対象となります。

指示処分に従わなかった場合は、15日間の業務停止処分が科されます。また、報告義務違反や立入検査の拒否なども15日間の業務停止処分の対象です。業務停止処分は、宅建業者に対して一定期間、業務の全部または一部の停止を命じる処分で、期間は違反内容によって7日から90日まで幅があります。

業務停止期間は違反行為の内容によって細かく定められています。専任取引主任者の設置義務違反は7日、誇大広告等の禁止違反(損害が発生していない場合)も7日、取引態様の明示義務違反も7日です。媒介契約締結時における書面の交付義務違反は15日、重要事項説明義務違反は15日(損害が発生していない場合)となっています。

より重い違反になると業務停止期間も長くなります。営業保証金の供託等に関する義務違反は30日、自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限違反は15日から30日、名義貸しは営業目的の場合90日、表示又は広告目的の場合15日です。

業務停止期間中は、業務停止の開始日前に締結された契約(媒介契約を除く)に基づく取引を結了する目的の範囲内の行為を除き、宅地建物取引業に関する行為はできません。つまり新規の広告、媒介契約の締結、契約の締結などは一切おこなえなくなります。業務停止期間が1ヶ月でも、その間の収入がゼロになり、既存顧客との信頼関係も損なわれるため、事業への影響は甚大です。

免許取消処分は最も重い監督処分です。免許取消処分の対象となるのは、業務停止処分の対象となる違反行為で情状が特に重い場合、業務停止期間中に違反して宅地建物取引業に関する行為をおこなった場合などです。また、不正手段による免許取得、営業保証金の未供託、事務所の所在地が確知できない場合なども必ず免許取消処分となります。

免許取消処分を受けると、その業者は宅地建物取引業を営むことができなくなります。さらに、不正手段で免許取得した場合や業務停止処分に違反した場合、業務停止処分事由に該当し情状が特に重い場合は、免許取消しから5年間は再び免許を取得できません。5年間という期間は、日本の一般的な賃貸契約期間である2年の約2.5倍に相当し、事業の再開が事実上困難になります。

監督処分の手続きには「聴聞」という制度があります。これは指示処分、業務停止処分、免許取消処分をおこなう前に、処分の対象となる業者に弁明の機会を与えるものです。聴聞の期日は処分の1週間前までに公示され、業者は聴聞において自己の主張を述べることができます。

処分内容は公表されます。指示処分であっても公表の対象となり、業務停止処分や免許取消処分の場合は処分内容がホームページに掲載されます。公表される情報には、処分日、業者名、主たる事務所の所在地、代表者氏名、免許番号、処分内容、処分理由が含まれます。これにより社会的信用が失墜し、取引先や顧客からの信頼を失うことになります。

監督処分を受けた履歴は、その後の免許更新にも影響します。過去5年間に指示処分や業務停止処分を受けていた場合、次に違反行為をおこなうと業務停止期間が加重されます。具体的には、通常の業務停止期間に3分の2を乗じた日数が加算されます。例えば、通常30日の業務停止処分であれば、加重により50日(30日+20日)になります。

監督処分を回避するためには、違反状態を早期に発見し、自主的に是正することが重要です。国土交通省の監督処分基準では、監督処分権者が違反の存在を覚知するまでに、または監督処分権者の指摘に応じて直ちに違反状態を是正した場合は、指示処分に軽減されることがあると定められています。また、関係者の損害を補填した場合も、業務停止期間が軽減される可能性があります。

宅建業法違反の具体的事例と処分内容

宅建業法違反の実際の事例を見ると、どのような行為が処分対象となるかがより明確になります。各都道府県では監督処分の結果を公表しており、違反内容と処分内容が詳細に記載されています。

無免許営業の事例では、2024年に静岡県富士市の元不動産賃貸業代表の男性が、2022年9月から2024年5月まで宅建業の免許を取得せずに不動産の売買を繰り返し、宅建業法違反の疑いで逮捕されました。無免許営業は宅建業法で最も重い罰則対象の一つで、懲役3年以下または罰金300万円以下が科されます。反復継続の判断は回数だけでなく、取引の意図や状況を総合的に判断されます。一般的には1年から数年の間に3回以上の売却をおこなうと業として見なされるリスクが高くなりますが、1回の売却でも転売目的で購入していた場合は反復継続と判断される可能性があります。

重要事項説明義務違反の事例も多数報告されています。重要事項説明書に記載すべき事項の一部を記載しなかった、または虚偽の記載をした場合、15日から30日の業務停止処分が科されます。関係者に損害が発生した場合は処分が重くなり、30日から60日の業務停止処分となります。重要事項説明書は35条書面とも呼ばれ、取引の判断に必要な情報を提供する重要な書面です。

37条書面の交付義務違反も頻繁に発生します。契約が成立したら遅滞なく契約書面を交付しなければなりませんが、これを怠った場合は15日の業務停止処分と50万円以下の罰金の対象となります。37条書面は契約内容を明確にし、後日のトラブルを防ぐために必須です。

誇大広告の事例では、架空の物件を使った広告や、実際とは異なる好条件を提示した広告により、業務停止命令と再発防止の業務改善命令が出されています。誇大広告により関係者に損害が発生した場合は15日から30日の業務停止処分となります。インターネット広告の普及により、誇大広告の摘発も増加傾向にあります。

手付金等の保全措置違反も重大な違反です。宅建業者が自ら売主となる場合、買主から受け取る手付金等について保全措置を講じる義務があります。これを怠った場合は業務停止処分の対象となり、買主に大きな損害が発生するリスクがあります。保全措置の金額基準は、未完成物件の場合は手付金等が代金の5%を超えるか1000万円を超える場合、完成物件の場合は代金の10%を超えるか1000万円を超える場合です。

媒介契約書面の交付義務違反では、媒介契約を締結したにもかかわらず、法定の事項を記載した書面を交付しなかった、または記載事項に虚偽があった場合に15日の業務停止処分となります。媒介契約書には、契約の有効期間、報酬額、業務の内容などを明記する必要があります。

専任取引士の設置義務違反は7日の業務停止処分の対象です。宅建業者は事務所ごとに、業務に従事する者5人に1人以上の割合で専任の宅地建物取引士を設置しなければなりません。専任の宅地建物取引士が退職した場合は、2週間以内に新たな専任取引士を設置する必要があります。

報告義務違反や立入検査の拒否は15日の業務停止処分の対象です。国土交通大臣や都道府県知事は、宅建業者に対して報告を求めたり、事務所への立入検査をおこなったりする権限を持っています。これに対して虚偽の報告をしたり、検査を拒んだりすると処分の対象となります。

取引態様の明示義務違反は7日の業務停止処分です。宅建業者は、宅地建物の売買や交換、貸借の広告をするときや、注文を受けたときは、自らが売主なのか、代理なのか、媒介なのかという取引態様を明示しなければなりません。これを怠ると、取引の相手方が誤解する可能性があります。

守秘義務違反では、業務上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らした場合、6ヵ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。不動産取引では顧客の個人情報や財産情報を扱うため、守秘義務の遵守は極めて重要です。

名義貸しは特に重い処分の対象です。営業を目的として他人に名義を貸した場合は90日の業務停止処分、表示又は広告を目的として名義を貸した場合は15日の業務停止処分となります。名義貸しは、無免許営業を助長する行為として厳しく規制されています。

これらの違反事例を見ると、宅建業法違反は「知らなかった」では済まされないことがわかります。日常業務の中で何気なくおこなっている行為が、実は法令違反になっている可能性があります。定期的に業務内容を見直し、法令遵守の体制を整えることが不可欠です。

宅建業法違反を回避するための実務対策

宅建業法違反を回避するためには、日常業務の中で具体的な対策を講じることが必要です。違反の多くは、法令の理解不足や業務手順の不備から発生しています。

まず重要なのは、社内での定期的な研修の実施です。宅建業法は改正が頻繁におこなわれるため、最新の法令内容を把握しておく必要があります。年に2回程度、全従業員を対象とした研修を実施し、違反事例や処分内容を共有することで、法令遵守の意識を高めることができます。研修では、実際の処分事例を題材にして、どのような行為が違反となるかを具体的に説明すると効果的です。

業務マニュアルの整備も欠かせません。重要事項説明書や37条書面の作成手順、媒介契約書の記載事項、広告の表現方法など、業務の各段階で守るべき事項を文書化しておきます。マニュアルには、チェックリストを添付し、各業務の完了時に確認できるようにします。重要事項説明書の作成では、35条に定められた記載事項をすべて網羅しているか、虚偽の記載がないかを複数の担当者でダブルチェックする体制を構築します。

重要事項説明の実施時には、宅建士証の提示を必ずおこないます。提示義務を怠ると10万円以下の過料の対象となりますが、これは前科にはなりません。しかし、行政上の記録には残るため、注意が必要です。宅建士証の提示は、説明を始める前におこない、相手方が確認できるようにします。

契約書面の交付は契約成立後、遅滞なくおこないます。「遅滞なく」とは、社会通念上、合理的と認められる期間内という意味で、一般的には契約締結後、数日以内を指します。契約書面には、宅建士の記名押印が必要ですが、説明義務はありません。ただし、トラブル防止のため、記載内容について説明することが望ましいでしょう。

広告の作成では、誇大広告にならないよう細心の注意を払います。「完璧な物件」「絶対に値上がりする」といった断定的な表現や、実際とは異なる好条件の提示は避けます。広告に使用する写真や図面も、実際の物件と相違がないか確認します。インターネット広告では、情報の更新を怠ると、既に契約済みの物件が掲載され続けることになるため、定期的な確認が必要です。

媒介契約の締結時には、必ず書面を交付します。媒介契約書には、契約の有効期間、報酬額、業務の内容、専任媒介契約の場合は指定流通機構への登録義務などを明記します。口頭での合意だけで業務を進めることは絶対に避けましょう。

専任取引士の設置状況は常に把握しておきます。専任取引士が退職や異動により不在となった場合は、2週間以内に新たな専任取引士を設置し、変更の届出をおこないます。届出を怠ると7日の業務停止処分の対象となります。

手付金等を受け取る場合は、保全措置の要否を必ず確認します。自ら売主として新築住宅を販売する場合、未完成物件なら手付金等が代金の5%超または1000万円超、完成物件なら10%超または1000万円超の場合は保全措置が必要です。保全措置には、保証委託契約と保険契約の2種類があります。

報告義務や立入検査には誠実に対応します。国土交通大臣や都道府県知事から報告を求められた場合は、期限内に正確な情報を提供します。虚偽の報告や報告の拒否は15日の業務停止処分と50万円以下の罰金の対象です。立入検査を受ける際は、帳簿書類を整理しておき、検査官の質問に対して正確に答えられるよう準備します。

取引態様の明示は、広告をおこなう時点と、注文を受けた時点でおこないます。広告には「売主」「代理」「媒介(仲介)」のいずれかを明記し、電話での問い合わせに対しても口頭で明示します。取引態様の明示を怠ると7日の業務停止処分の対象です。

従業者名簿の備え付けと従業者証明書の携帯も忘れてはいけません。各事務所には従業者名簿を備え付け、従業者には従業者証明書を携帯させます。従業者名簿に虚偽の記載をした場合は50万円以下の罰金の対象です。

守秘義務の遵守も重要です。業務上知り得た顧客の個人情報や財産情報は、正当な理由なく他に漏らしてはいけません。情報漏洩を防ぐため、顧客情報の管理体制を整備し、アクセス権限を制限します。

名義貸しは絶対におこなってはいけません。免許番号や商号を他人に使用させることは、無免許営業を助長する行為として、重い処分の対象となります。

コンプライアンス体制を強化するために、外部の専門家の活用も検討します。顧問弁護士や行政書士に定期的に相談し、業務内容が法令に適合しているか確認してもらいます。また、不動産適正取引推進機構(RETIO)が提供する情報や研修を活用することで、最新の法令動向や処分事例を把握できます。

違反を発見した場合は、速やかに是正措置をおこないます。監督処分基準では、監督処分権者が違反の存在を覚知する前に、または指摘に応じて直ちに違反状態を是正した場合は、処分が軽減される可能性があります。関係者に損害が発生した場合は、誠実に補填の取り組みをおこなうことで、指示処分に軽減される場合もあります。

宅建業法違反の罰則が将来に与える影響

宅建業法違反により罰則を受けた場合、その影響は処分期間だけにとどまりません。将来にわたって事業活動に制約が生じるため、長期的な視点でのリスク管理が必要です。

最も大きな影響は、免許の欠格事由に該当することです。禁錮以上の刑を受けた場合、刑の執行を終わってから5年間は宅建業の免許を取得できません。宅建業法違反や暴力行為等処罰法違反、傷害罪、暴行罪、背任罪などで罰金刑を受けた場合も、刑の執行を終わってから5年間は免許が取れません。5年間という期間は、事業の継続を事実上不可能にする長さです。

欠格事由は個人だけでなく、法人の役員にも適用されます。法人が免許を取得する際、役員の誰かが欠格事由に該当していると、法人全体が免許を取得できません。また、免許取得後に役員が欠格事由に該当した場合は、免許取消処分の対象となります。役員の選任や変更の際には、欠格事由に該当しないか慎重に確認する必要があります。

業務停止処分を受けた場合、その期間中は新規の契約ができなくなります。業務停止期間が1ヶ月でも、その間の収入はゼロになり、固定費の支払いは続くため、資金繰りが悪化します。業務停止期間中に賃料や人件費の支払いができず、倒産に至るケースも少なくありません。

業務停止処分の情報は公表されるため、社会的信用が失墜します。取引先や金融機関からの信頼を失い、既存の取引関係が解消されることもあります。顧客からの問い合わせも減少し、処分期間が終了した後も、事業の回復には長い時間がかかります。

従業員への影響も深刻です。業務停止期間中は営業活動ができないため、従業員を休業させるか、最悪の場合は解雇せざるを得なくなります。優秀な人材が流出し、処分期間終了後の事業再開が困難になります。従業員のモチベーション低下も避けられず、組織全体の士気が下がります。

金融機関との関係にも影響が出ます。業務停止処分や免許取消処分を受けた場合、金融機関からの信用が低下し、融資の継続が困難になることがあります。既存の融資についても、期限の利益を喪失し、一括返済を求められる可能性があります。新規の融資を受けることはほぼ不可能になり、事業の拡大計画は白紙に戻ります。

取引先との契約にも支障が出ます。多くの契約には、宅建業法違反により処分を受けた場合は契約を解除できるという条項が含まれています。仕入先や販売先との契約が解除されると、事業の継続そのものが危うくなります。

損害賠償責任も発生します。宅建業法違反により顧客や取引先に損害を与えた場合、民事上の損害賠償責任を負います。違反行為により顧客が損失を被った場合、その補填をおこなう必要があり、多額の賠償金を支払うことになる可能性があります。賠償額が営業保証金や弁済業務保証金の範囲を超える場合は、業者が自己資金で支払わなければなりません。

免許取消処分を受けた場合、再度免許を取得することは極めて困難です。不正手段で免許取得した場合、業務停止処分に違反した場合、業務停止処分事由に該当し情状が特に重い場合は、免許取消しから5年間は再び免許を取得できません。5年後に免許を取得しようとしても、過去の処分歴が審査で不利に働きます。

宅建士個人への影響も見逃せません。宅建士が事務禁止処分を受けた場合、最長1年間、宅建士としての業務ができなくなります。事務禁止処分を受けた宅建士は、速やかに宅建士証を都道府県知事に提出しなければならず、これを怠ると10万円以下の過料の対象です。事務禁止処分の期間中は、他の宅建業者に転職しても宅建士としての業務はおこなえません。

登録消除処分を受けた場合は、さらに深刻です。登録が消除されると、宅建士資格そのものを失います。登録消除処分の対象となるのは、不正手段による登録、登録の欠格事由に該当した場合、事務禁止処分事由に該当し情状が特に重い場合などです。登録を消除されると、再度、宅建士試験に合格し、登録手続きをおこなわなければなりません。

これらの影響を回避するためには、日常的な法令遵守が不可欠です。一度の違反が、事業の存続そのものを脅かすことを認識し、コンプライアンス体制の構築に投資することが、長期的には最も合理的な選択です。違反を未然に防ぐための研修費用や、外部専門家への相談費用は、処分を受けた場合の損失と比較すれば、はるかに小さなコストで済みます。

宅建業法違反における両罰規定と法人の責任

宅建業法には両罰規定が設けられており、従業員個人が違反行為をおこなった場合でも、法人自体が罰則の対象となります。この制度は、企業の管理責任を問うものであり、経営者は十分に理解しておく必要があります。

両罰規定は、宅建業法84条に規定されています。宅建業者の代表者や従業員が業務に関して違反行為をおこない、罰則を受けた場合、その行為者を罰するだけでなく、業務主である業者に対しても罰金刑が科されます。無免許営業や業務停止処分違反など、特に重大な違反については、法人に対して1億円以下の罰金が科される可能性があります。それ以外の罰金刑が規定されている違反では、業者にも同様の罰金が科されます。

1億円という金額は、中小企業にとっては致命的な額です。例えば、従業員10名程度の不動産会社の年間売上が5億円程度だとすると、1億円の罰金は年間売上の5分の1に相当します。これだけの金額を一度に支払うことは、多くの企業にとって不可能であり、倒産に直結します。

両罰規定が適用されるのは「業務に関して」違反行為がおこなわれた場合です。従業員が業務とは無関係に個人的におこなった行為については、法人に責任は及びません。しかし、業務時間中に、業務の一環として、あるいは業務に関連しておこなわれた違反行為については、たとえ経営者が知らなかったとしても、法人が責任を負います。

経営者が違反行為を知らなかったという主張は、両罰規定の適用を免れる理由にはなりません。両罰規定は無過失責任であり、法人側に過失がなくても責任を負います。ただし、法人が違反行為を防止するために相当の注意及び監督をおこなっていた場合には、免責される可能性があります。この免責を受けるためには、日常的に法令遵守の体制を構築し、実際に機能させていたことを立証する必要があります。

具体的な免責の要件として、以下のような措置が求められます。

まず、社内規程の整備です。

コンプライアンス規程や業務マニュアルを作成し、従業員に周知します。

次に、定期的な研修の実施です。

年に複数回、全従業員を対象とした法令研修をおこない、出席記録を残します。

さらに、内部監査の実施です。

定期的に業務内容を監査し、法令違反がないか確認します。

違反行為を発見した場合の対応体制も重要です。内部通報制度を設け、従業員が違反行為を発見した際に、上司に報告しやすい環境を整えます。報告を受けた場合は、速やかに調査をおこない、是正措置を講じます。違反行為をおこなった従業員に対しては、懲戒処分をおこない、再発防止を徹底します。

これらの措置を講じていたとしても、実際に違反行為が発生した場合は、法人が責任を免れることは困難です。両罰規定は厳格に適用されるため、違反を未然に防ぐことが最も重要です。

両罰規定の対象となる違反行為の中でも、特に注意が必要なのは無免許営業です。従業員が個人的に無免許で不動産取引をおこなっていた場合でも、それが業務時間中におこなわれていたり、会社の設備を使用していたりすると、会社の業務に関連するとみなされる可能性があります。無免許営業の場合、個人には懲役3年以下または罰金300万円以下、法人には1億円以下の罰金が科されます。

業務停止処分違反も両罰規定の対象です。業務停止期間中に従業員が違反して宅地建物取引業に関する行為をおこなった場合、個人には懲役3年以下または罰金300万円以下、法人には1億円以下の罰金が科されます。業務停止期間中は、全従業員に対して業務の内容と範囲を明確に指示し、違反行為がおこなわれないよう厳重に管理する必要があります。

誇大広告も両罰規定の対象です。従業員が広告を作成する際に誇大な表現を使用した場合、個人には6ヵ月以下の懲役または100万円以下の罰金、法人にも100万円以下の罰金が科されます。広告の作成手順を明確にし、複数の担当者でチェックする体制を構築します。

37条書面の交付義務違反も両罰規定の対象です。従業員が契約書面の交付を怠った場合、個人には50万円以下の罰金、法人にも50万円以下の罰金が科されます。契約締結後の書面交付を確実におこなうため、チェックリストを活用します。

守秘義務違反も両罰規定の対象です。従業員が業務上知り得た秘密を漏らした場合、個人には6ヵ月以下の懲役または100万円以下の罰金、法人にも100万円以下の罰金が科されます。顧客情報の管理体制を強化し、情報漏洩を防ぎます。

両罰規定による罰金は、法人の経費として損金算入できません。税務上、罰金や科料、過料は損金不算入とされており、法人税の計算上、費用として認められません。つまり、罰金を支払った上に、その金額に対して法人税も課税されることになり、実質的な負担はさらに大きくなります。

両罰規定のリスクを軽減するためには、日常的な管理体制の強化が不可欠です。経営者自身が法令の内容を十分に理解し、従業員に対して明確な指示をおこないます。また、外部の専門家を活用し、定期的に業務内容の適法性を確認します。違反行為が発生した場合は、速やかに是正措置をおこない、再発防止策を講じることで、処分の軽減を図ります。

結論として、両罰規定は企業にとって極めて重いリスクです。1億円の罰金が科される可能性があることを認識し、法令遵守の体制を構築することが、企業の存続にとって不可欠な投資です。

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