課税取引と非課税取引の違い・判定基準と具体例

課税取引と非課税取引

住宅家賃なら全て非課税とは限りません。

この記事で分かる3つのポイント
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課税と非課税の判定基準

不動産取引における消費税の課税・非課税を4つの要件から正確に判断する方法

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不動産特有の例外ルール

1ヶ月未満賃貸や駐車場など、住宅でも課税対象になる意外なケース

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実務で役立つ具体例

土地建物の按分計算や仲介手数料の取扱いなど、現場で使える実践知識

課税取引と非課税取引の基本的な違い

 

不動産業務において課税取引と非課税取引を正確に区分することは、消費税計算の根幹を成す重要な作業です。両者の違いを理解せずに処理を進めると、納税額の誤りや税務調査での指摘につながります。

課税取引とは、消費税の課税対象となる取引のことです。国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供が該当します。具体的には建物の売買、事業用不動産の賃貸、仲介手数料などが含まれます。これらの取引では、消費税10%(軽減税率適用の場合は8%)が加算されることになります。

一方、非課税取引とは、本来は課税要件を満たすものの、社会政策的配慮や税の性質上、特別に消費税を課さないとされている取引です。不動産分野では土地の売買や賃貸、住宅用の家賃などが代表例となります。これらは取引自体は事業として対価を得て行われますが、法律によって非課税と定められているのです。

つまり課税取引です。

課税取引と非課税取引の最も重要な違いは、仕入税額控除の取扱いにあります。課税取引に対応する仕入れについては消費税額を控除できますが、非課税取引に対応する仕入れは原則として控除が認められません。例えば、事業用ビルの建築費用(課税仕入れ)は、そのビルを事業用として貸し出す(課税売上)場合には控除できますが、住宅として貸し出す(非課税売上)場合には控除に制限がかかります。

また、課税売上割合の計算においても両者は異なる扱いを受けます。課税売上割合は「課税売上高÷(課税売上高+非課税売上高)×100」で算出されます。非課税売上が大きいと課税売上割合が下がり、仕入税額控除の金額に影響を及ぼします。特に不動産業では土地の売却や住宅賃貸といった非課税取引の割合が高いため、この計算には細心の注意が必要です。

仕入税額控除が受けられる点が最大のポイントですね。

不動産実務では、同じ物件でも用途によって課税・非課税が変わるケースがあります。例えば、同じ建物を住宅として貸せば非課税、事務所として貸せば課税となります。契約書の記載内容や実際の使用状況を正確に把握し、適切に区分することが求められます。この区分を誤ると、消費税の納税額に直接影響するだけでなく、税務調査で修正申告を求められる可能性もあります。

国税庁「No.6209 非課税と不課税の違い」では、非課税取引の定義と具体例が詳しく解説されています。課税要件を満たしながらも政策的に非課税とされる取引について、公式見解を確認できます。

課税取引の判定基準と不動産における具体例

課税取引に該当するかどうかは、4つの要件すべてを満たすかで判断されます。この4要件は「国内取引であること」「事業者が事業として行うこと」「対価を得て行うこと」「資産の譲渡・貸付け・役務の提供であること」です。不動産取引においても、これらの要件に照らして課税・非課税を判定する必要があります。

不動産業における代表的な課税取引としては、まず建物の売買が挙げられます。事業者が建物を売却する場合、その建物部分の売買代金には消費税が課税されます。例えば、不動産会社が新築マンションを5,000万円(税抜)で販売する場合、消費税500万円が加算され、総額5,500万円となります。ただし、個人が自己居住用の住宅を売却する場合は「事業として」の要件を満たさないため、消費税は課税されません。

事業用不動産の賃貸も課税取引です。

事業用不動産の賃貸収入は課税売上となります。オフィスビル、店舗、倉庫、工場などの賃貸では、月額賃料、共益費、礼金などに消費税が課税されます。例えば、月額賃料100万円の事務所を賃貸する場合、消費税10万円を含めて110万円を借主から受け取ります。この場合、敷金や保証金は預り金であり返還義務があるため、消費税の課税対象外(不課税取引)となる点に注意が必要です。

仲介手数料やコンサルティング報酬などの役務提供も課税取引に該当します。不動産会社が物件の売買仲介を行った際の仲介手数料は、土地・建物を問わず課税対象です。売買価格が5,000万円の物件の仲介を行った場合、仲介手数料の上限は「売買価格×3%+6万円」で計算され、この金額に消費税が加算されます。つまり、171万6,000円(税込)が上限となります。

仲介手数料には必ず消費税がかかります。

駐車場の賃貸収入も多くの場合、課税取引となります。地面をアスファルトやコンクリートで舗装している、区画線を引いている、フェンスや照明などの設備を設置しているなど、「施設の貸付け」と判断される場合は課税対象です。月額2万円の駐車場であれば、消費税2,000円を含めて2万2,000円を借主から受け取ることになります。ただし、更地のまま一括で貸し付ける場合は土地の貸付けとして非課税となります。

不動産取引では、同じ取引でも売主の立場によって課税・非課税が変わることがあります。課税事業者である不動産会社が建物を売却すれば課税取引ですが、個人が自宅を売却する場合は事業として行う取引ではないため不課税(課税対象外)となります。この違いは買主にとって重要で、課税事業者から購入すれば消費税が上乗せされますが、個人から購入すれば建物代金に消費税はかかりません。

国税庁「消費税課税取引の判定表」には、取引ごとの課税・非課税・不課税の判定がまとめられています。実務で判断に迷った際の確認資料として活用できます。

非課税取引の判定基準と不動産における特例

非課税取引は、課税要件を満たしながらも法律で特別に消費税を課さないと定められた取引です。不動産分野では土地の譲渡や貸付け、住宅の貸付けが代表的な非課税取引となります。これらは社会政策的配慮や税の性質から、消費税になじまないとされているのです。

土地の売買は原則として非課税です。土地は消費されるものではなく「資本の移転」と考えられるため、消費税の課税対象から除外されています。例えば、3,000万円の土地を売却する場合、その金額に消費税は加算されません。ただし、土地付き建物を一括で売買する場合は、建物部分のみが課税対象となるため、契約書で土地と建物の価格を明確に区分しておく必要があります。

土地は消費税非課税が原則です。

住宅用の家賃収入も非課税取引に該当します。居住用のアパート、マンション、一戸建ての賃貸では、月額家賃、共益費、礼金、敷金などに消費税は課税されません。月額10万円の賃貸住宅であれば、その金額がそのまま賃料となり、消費税が上乗せされることはありません。これは住宅が生活の基盤であり、消費税を課すと国民の負担が大きくなるという社会政策的配慮に基づいています。

ただし、住宅用賃貸にも重要な例外があります。貸付期間が1ヶ月未満の場合は、住宅用であっても課税対象となります。ウィークリーマンションや短期滞在用の物件で、契約期間が1ヶ月に満たない場合は消費税が課税されるのです。例えば、3週間の契約で賃料が15万円の場合、消費税1万5,000円が加算され、総額16万5,000円となります。この1ヶ月の判定は実際の滞在期間ではなく、契約上の期間で判断される点に注意が必要です。

契約期間が判定のポイントになります。

また、旅館業法に規定される施設(ホテル、旅館、民泊など)の貸付けは、たとえ1ヶ月以上の契約であっても課税対象となります。これらは「施設の利用」とみなされ、住宅の貸付けには該当しないためです。同じ物件でも、賃貸借契約として貸せば非課税、旅館業として営業すれば課税となるため、契約形態の選択が税負担に直結します。

駐車場の取扱いも複雑です。住宅の賃貸に付随する駐車場で、全戸に1台分以上が割り当てられており、駐車場代が家賃に含まれている(または別建てでも合理的な範囲内の金額)場合は、住宅の貸付けの一部として非課税となります。しかし、駐車場だけを単独で貸す場合や、舗装・区画・設備がある駐車場は「施設の貸付け」として課税対象です。

非課税売上が多い不動産業では、課税売上割合が低くなりがちです。課税売上割合が95%未満になると、仕入税額控除に制限がかかり、個別対応方式または一括比例配分方式を選択する必要が生じます。特に土地の売却があった年は、非課税売上が急増して課税売上割合が大きく下がるため、「課税売上割合に準ずる割合」の承認申請を検討すべきです。

広島市の税理士事務所による「不動産取引にかかる消費税(課税・非課税の考え方)」では、不動産特有の課税・非課税の判断基準が実務的に解説されています。

課税取引と非課税取引の区分で間違いやすいケース

不動産実務において、課税取引と非課税取引の区分を誤りやすいケースがいくつか存在します。これらの間違いは消費税の納税額に直接影響するため、正確な理解が不可欠です。

最も間違いやすいのは、住宅と事業用の混在物件です。1階が店舗、2階以上が住居となっている建物を賃貸する場合、用途ごとに課税・非課税を区分する必要があります。店舗部分の賃料は課税取引、住宅部分の賃料は非課税取引となります。この場合、面積按分などの合理的な基準で賃料を配分し、それぞれの消費税区分を正しく記録しなければなりません。

用途ごとの区分が必須です。

仲介手数料の計算における土地・建物の区分も注意が必要です。土地付き建物の売買では、土地部分は非課税、建物部分は課税となりますが、仲介手数料の計算基準となる「売買価格」は税抜価格を使用します。売買総額5,000万円(土地3,000万円、建物2,000万円+消費税200万円)の物件の場合、仲介手数料は税抜の4,800万円を基準に計算します。建物の消費税を含めた5,000万円で計算すると、過大な手数料を請求することになってしまいます。

社宅として借りる場合の取扱いも誤解されがちです。法人が従業員の住居として物件を借り上げる場合、用途は「居住」であるため、家賃は非課税です。法人契約だから課税取引になると勘違いして消費税を上乗せ請求すると、借主から指摘を受けることになります。契約の名義ではなく、実際の使用目的で判断することが重要です。

駐車場の消費税判定も複雑です。青空駐車場で区画線もフェンスもない更地を一括で貸す場合は土地の貸付けとして非課税ですが、砂利を敷いただけでも「整備」と判断され課税対象になることがあります。また、住宅に付随する駐車場でも、入居者以外にも貸している場合や、住宅1戸あたり2台目以降の駐車場については課税対象となるケースがあります。

整備状況で判定が変わります。

礼金・更新料の取扱いも迷いやすいポイントです。住宅賃貸における礼金は、住宅の貸付けに付随するものとして非課税です。しかし、事業用賃貸における礼金は課税対象となります。更新料も同様で、住宅用なら非課税、事業用なら課税です。同じ「礼金」「更新料」という名目でも、物件の用途によって消費税の取扱いが変わるのです。

土地と建物の一括譲渡で価格の内訳が契約書に記載されていない場合も問題です。この場合、売買代金を土地と建物の時価の比率で按分する必要があります。固定資産税評価額の比率や不動産鑑定評価額を用いて按分しますが、その記録を残しておかないと、税務調査で説明できなくなります。

個人からの建物購入も注意が必要です。個人が自宅を売却する場合は「事業として」の要件を満たさないため、建物部分も消費税はかかりません(不課税取引)。一方、個人でも不動産賃貸業を営んでいる課税事業者が賃貸用建物を売却する場合は、建物部分に消費税が課税されます。

売主の事業実態を確認することが重要です。

不動産会社が代理や媒介ではなく自ら売主となる場合、建物の売却は課税取引となります。この場合、建物価格に消費税を加算した金額が売買代金となります。ただし、2年前の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者である場合は、消費税を納める義務がないため、建物価格に消費税を上乗せしないこともあります。買主は売主の課税事業者・免税事業者の区分を確認すべきです。

駐車場管理サービスによる「駐車場の消費税、課税?非課税?条件と具体例」では、駐車場における課税・非課税の判定基準が詳しく解説されています。

課税売上割合と仕入税額控除への影響

不動産業において非課税取引の割合が高いと、消費税の納税額計算に大きな影響が出ます。

その鍵となるのが「課税売上割合」です。

この割合によって、支払った消費税のうちどれだけを控除できるかが決まります。

課税売上割合は「課税売上高÷(課税売上高+非課税売上高)×100」で計算されます。例えば、年間の課税売上が3,000万円、非課税売上が2,000万円の場合、課税売上割合は60%となります。この割合が95%以上で、かつ課税売上高が5億円以下であれば、支払った消費税の全額を控除できます。しかし、95%未満になると、個別対応方式または一括比例配分方式を選択して控除額を計算しなければなりません。

全額控除できるのは95%以上です。

不動産業では土地の売却や住宅賃貸という非課税取引が多いため、課税売上割合が低くなりがちです。特に土地を売却した年は、非課税売上が急増して課税売上割合が大きく下がります。例えば、通常は課税売上割合が90%の会社が、5億円の土地を売却したことで課税売上割合が40%に下がった場合、その年の仕入税額控除が大幅に制限されます。

個別対応方式では、課税仕入れを「課税売上にのみ対応するもの」「非課税売上にのみ対応するもの」「両方に共通するもの」の3つに区分します。課税売上にのみ対応する仕入れは全額控除、非課税売上にのみ対応する仕入れは控除不可、共通する仕入れは課税売上割合分のみ控除となります。この方式は手間がかかりますが、適切に区分すれば控除額を多く確保できる可能性があります。

一括比例配分方式では、すべての課税仕入れに課税売上割合を乗じて控除額を計算します。計算は簡単ですが、課税売上にのみ対応する仕入れも按分されるため、控除額が少なくなることがあります。一度この方式を選択すると2年間は継続適用が必要なため、慎重な判断が求められます。

計算方法の選択は2年間継続です。

たまたま土地を売却した年に課税売上割合が大きく下がった場合、「課税売上割合に準ずる割合」の承認申請という救済措置があります。これは、通常の事業における課税売上割合を使用することを認めてもらう制度です。例えば、土地売却がなければ課税売上割合が85%だった会社が、土地売却により40%に下がった場合、税務署長の承認を得て85%を使用できます。ただし、事前または遅くとも適用年度中に申請が必要です。

居住用賃貸建物の取得にも特別なルールがあります。令和2年10月1日以降に取得した居住用賃貸建物(取得価額1,000万円以上)は、取得時の仕入税額控除が制限されます。ただし、取得後3年以内に売却または事業用に転用した場合は、一定の調整計算を行って仕入税額控除を受けられます。この規定により、居住用賃貸物件を活用した消費税還付スキームは実質的に封じられました。

不動産業の課税売上割合は事業の構成によって大きく異なります。事業用ビルの賃貸や仲介業務が中心であれば課税売上割合は高くなりますが、住宅賃貸や土地の売買が多ければ低くなります。自社の課税売上割合を常に把握し、95%を下回る可能性があれば、事前に仕入れの区分や控除方式の選択を検討しておくべきです。

国税庁「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認」では、土地売却時の課税売上割合の特例について詳しく解説されています。

インボイス制度と不動産取引における課税区分の関係

2023年10月から開始されたインボイス制度は、不動産取引における課税・非課税の区分をより重要なものにしています。適格請求書(インボイス)を発行できるのは課税事業者のみであり、非課税取引にはインボイスの発行義務がありません。

住宅賃貸を営む不動産オーナーは、基本的にインボイス登録の必要がありません。住宅家賃は非課税取引であり、インボイスを発行する必要がないためです。月額10万円の住宅を賃貸している大家さんが免税事業者であっても、借主に不利益はありません。住宅の賃貸借契約では、インボイス制度の影響をほとんど受けないのです。

住宅賃貸はインボイス不要です。

一方、事業用不動産の賃貸では状況が異なります。オフィスや店舗の賃料は課税取引であり、借主が課税事業者の場合、仕入税額控除を受けるためにインボイスが必要です。貸主が免税事業者でインボイス登録をしていない場合、借主は賃料に含まれる消費税相当額を控除できず、税負担が増えることになります。このため、借主から値下げ交渉や契約解除を申し出られる可能性があります。

不動産仲介業務もインボイス制度の影響を受けます。仲介手数料は課税取引であり、依頼者が課税事業者の場合はインボイスの発行が求められます。不動産会社が免税事業者のままでは、法人顧客との取引で不利になる可能性があります。特に事業用不動産の仲介を多く手がける会社は、インボイス登録を検討すべきです。

駐車場の取扱いも注意が必要です。舗装や設備のある駐車場は課税取引であり、借主が課税事業者であればインボイスが必要になります。月額2万円の駐車場でも、借主が法人で仕入税額控除を受けたい場合は、貸主にインボイス登録を求められることがあります。住宅に付随する駐車場で非課税の場合は、インボイス不要です。

借主の属性で必要性が変わります。

インボイス制度では、課税取引と非課税取引の区分記載が重要になります。同一の請求書に課税取引と非課税取引が混在する場合、それぞれを明確に区分して記載する必要があります。例えば、1階が店舗(課税)、2階が住居(非課税)の建物の家賃を一つの請求書で請求する場合、店舗部分には「※課税10%」、住居部分には「※非課税」などと明示すべきです。

免税事業者がインボイス登録をする場合、課税事業者となるため消費税の納税義務が生じます。これまで免税事業者として消費税分を益税として得ていた場合、登録後は消費税を納める必要があり、実質的な収入減となります。住宅賃貸のみの大家さんであれば、非課税取引のため登録のメリットはほとんどありません。事業用不動産や仲介業務がある場合のみ、登録を検討すべきです。

インボイス制度における経過措置も理解しておくべきです。令和5年10月から令和8年9月までは、免税事業者からの課税仕入れについても80%の控除が認められます。令和8年10月から令和11年9月までは50%の控除となり、令和11年10月以降は完全に控除不可となります。この経過措置期間中は、免税事業者のままでも取引への影響は限定的です。

不動産取引の実務では、取引先ごとにインボイス登録の有無を確認し、課税・非課税の区分を正確に記録することが求められます。会計システムで課税区分を適切に設定し、インボイス番号を正確に記載することで、税務調査にも対応できる体制を整えておくべきです。

武蔵コーポレーション「インボイス制度が不動産オーナーに与える影響とは?」では、不動産賃貸業におけるインボイス制度の具体的な影響と対応策が解説されています。

国際取引の課税問題