10年超所有軽減税率の特例と相続の適用要件

10年超所有軽減税率の特例と相続での適用

相続人が親の家に住んでいなくても特例適用できると誤解される方がいます。

この記事の3ポイント要約
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10年超所有軽減税率の特例の基本

所有期間10年超の居住用財産を売却すると、譲渡所得6000万円以下の部分について税率14.21%に軽減される制度です

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相続における居住要件の誤解

被相続人が10年超所有していても、相続人自身が居住していない場合は原則として特例適用できません

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3000万円控除との併用メリット

居住用3000万円特別控除と併用可能で、控除後の譲渡所得6000万円以下に軽減税率が適用されます

10年超所有軽減税率の特例における相続時の所有期間計算

 

相続で取得した不動産の所有期間は、被相続人が取得した日から引き継いで計算されます。これは不動産業従事者にとって顧客への説明で重要なポイントです。

たとえばが平成25年に購入した不動産を令和5年に相続し、令和7年に売却する場合を考えてみましょう。相続人自身の所有期間は2年程度ですが、親の所有期間10年を含めて計算できるため、売却時点で所有期間は12年となります。

つまり所有期間は引き継がれるということですね。

この計算方法により、相続直後に売却しても長期譲渡所得として扱われる可能性が高まります。売却年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていれば、軽減税率の特例の所有期間要件を満たすことになります。

所有期間の起算日は被相続人が取得した日です。相続開始日(被相続人の死亡日)ではありません。

実務上、顧客から「いつから10年なのか」と質問されるケースが多くあります。登記簿謄本で被相続人の取得日を確認し、売却年の1月1日時点での所有期間を正確に計算することが必要です。

国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」では、特例の適用要件について詳しく解説されています。所有期間の計算方法を確認する際の参考資料として活用できます。

10年超所有軽減税率の特例と相続における居住用財産の判定

10年超所有軽減税率の特例は「居住用財産」が対象です。ここが相続案件で最も誤解が生じやすい部分になります。

親が住んでいた家を相続した場合、被相続人にとっては居住用財産でしたが、相続人が住んでいなければ相続人にとっては居住用財産になりません。特例の適用には「売却する本人が居住していた」ことが原則として求められます。

具体的には以下の条件が必要です。

  • 相続人自身が現に住んでいる家屋であること
  • 以前に住んでいた家屋で、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること

例外として、被相続人と同居していた相続人が相続後もそのまま居住を継続している場合は適用可能です。

同居継続のケースですね。

親と別居していた相続人が実家を相続し、自分は住まずに売却するケースでは、この軽減税率の特例は使えません。このような場合、空き家の3000万円特別控除や取得費加算の特例など、他の特例の検討が必要になります。

実務では「親が10年以上住んでいたから使える」と誤解される方が少なくありません。居住用財産の判定は売却する本人を基準に行われると明確に説明する必要があります。

不動産業従事者として、顧客の居住状況を丁寧にヒアリングすることが重要です。相続開始時に同居していたか、相続後に入居したか、一度も住んでいないかによって適用できる特例が変わります。

10年超所有軽減税率の特例と相続における3000万円控除との併用

10年超所有軽減税率の特例は、居住用財産の3000万円特別控除と併用できる数少ない特例の一つです。

この併用により大きな節税効果が生まれます。

計算の流れは以下のようになります。

まず売却益(譲渡所得)から3000万円を控除します。控除後の譲渡所得が残る場合、その6000万円以下の部分に軽減税率14.21%(所得税10.21%+住民税4%)が適用されます。通常の長期譲渡所得の税率20.315%と比較すると、約6%の差があります。

具体的な数字で見てみましょう。

譲渡所得が5000万円のケースを考えます。

3000万円控除適用後:5000万円 – 3000万円 = 2000万円

通常の長期譲渡所得税:2000万円 × 20.315% = 約406万円

軽減税率適用時:2000万円 × 14.21% = 約284万円

差額は約122万円です。

かなり大きな違いですね。

ただし併用には条件があります。被相続人と同居していた相続人が、相続後も継続して居住し、その後売却する場合に限られます。被相続人の居住用財産を相続しただけでは、相続人にとっての居住用財産にはなりません。

空き家の3000万円特別控除とは併用できない点にも注意が必要です。空き家特例は被相続人が一人暮らしだった場合の特例であり、10年超所有軽減税率は居住用財産の特例という位置づけが異なるためです。

税理士法人チェスター「相続した不動産を売却」では、特例の併用について事例を交えて解説しています。複数の特例の適用関係を整理する際に参考になります。

10年超所有軽減税率の特例における相続特有の適用要件

相続で取得した不動産に10年超所有軽減税率の特例を適用するには、通常の要件に加えて相続特有の確認事項があります。

第一に、売却先が親族でないことです。特別の関係がある人への譲渡では特例が使えません。生計を一にする親族、配偶者、内縁関係者、特殊な関係のある法人などが該当します。

相続案件では、他の相続人や親族に売却するケースも考えられますが、そのような場合は特例適用ができません。

第三者への売却が条件です。

第二に、前年・前々年にこの特例を受けていないことです。

3年に1回しか使えない制限があります。

相続人が自宅を売却した後、相続した実家も売却するようなケースでは、タイミングの調整が必要になります。どちらの物件で特例を使うか、事前に検討しておくことが賢明です。

第三に、他の特例との適用関係です。マイホームの買換え特例や交換の特例とは併用できません。ただし3000万円特別控除とは併用可能という例外があります。

取得費加算の特例(相続税の一部を取得費に加算できる特例)との関係も重要です。両方の特例を比較検討し、どちらが有利かシミュレーションする必要があります。相続税を多く支払っている場合は取得費加算の方が有利なケースもあります。

確定申告の手続きも忘れてはいけません。譲渡所得の内訳書、登記事項証明書、居住していたことを証明する書類などを添えて申告が必要です。期限は売却した年の翌年の3月15日までです。

10年超所有軽減税率の特例を相続案件で活用するための実務対応

不動産業従事者として相続案件に携わる際、10年超所有軽減税率の特例を正しく活用するための実務ポイントをまとめます。

まず顧客との初回面談時に、詳細な居住状況のヒアリングを行うことです。被相続人との同居の有無、同居していた場合の期間、相続後の居住状況などを確認します。住民票の移動履歴だけでなく、実際の生活実態も把握することが大切です。

同居の実態があったかどうかは重要です。住民票が同じでも実際には別居している場合、特例は使えません。逆に住民票が別でも生計を一にして同居していた実態があれば適用できる可能性があります。

次に所有期間の正確な計算です。登記簿謄本で被相続人の取得日を確認し、売却予定年の1月1日時点で10年を超えているか計算します。10年ちょうどではなく「10年を超える」必要があるため、境界線上のケースでは慎重な判断が求められます。

適用できる特例の選択肢を複数提示することも重要です。10年超所有軽減税率、空き家3000万円特別控除、取得費加算の特例など、ケースによって使える特例が異なります。それぞれの適用要件とメリット・デメリットを説明し、顧客の状況に最適な選択を支援します。

税理士との連携も欠かせません。複雑な税務判断が必要なケースでは、早期に税理士を紹介し、チームとして対応する体制を整えます。売却前の段階で税理士に相談することで、最適な売却時期や方法を検討できます。

顧客への情報提供も大切な役割です。特例の適用要件は複雑で、一般の方には理解しにくい部分が多くあります。図や具体例を使って分かりやすく説明し、誤解を防ぐ努力が必要です。

相続案件では感情的な要素も絡むため、丁寧なコミュニケーションを心がけることが大切ですね。相続人が複数いる場合は、全員の意向を確認しながら進めていく配慮も必要になります。

ポラスの不動産売却「相続不動産の売却に使える特例・控除まとめ」では、相続不動産売却時の各種特例について包括的に解説しています。

顧客への説明資料作成の参考になります。


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