事業用資産相続税評価70%減額適用注意点

事業用資産相続税評価と70%ルール

定額法で償却していても定率法で再計算され相続税評価額が変わります

📊 この記事の3ポイント要約
🏗️

構築物・附属設備は70%評価

再建築価額から償却費を控除した金額の70%で評価されますが、固定資産税評価額に含まれないため別途評価が必要です

⚠️

一般動産は70%適用外

器具備品や機械装置などの一般動産には70%ルールが適用されず、売買実例価額や精通者意見価格等で評価します

🔄

定率法での再計算が必須

帳簿上は定額法で償却していても、相続税評価では定率法で再計算する必要があり、評価額が大きく変わる可能性があります

事業用資産の相続税評価における70%ルールの基本

 

個人事業主が所有する事業用資産は、相続発生時に相続税の課税対象となります。その評価方法において「70%」という数字が登場しますが、これはすべての事業用資産に適用されるわけではありません。不動産業従事者の皆様が顧客にアドバイスする際、この点を正確に理解しておくことが極めて重要です。

具体的には構築物と附属設備の評価において、再建築価額から減価償却累計額を控除した金額の70%相当額で評価する仕組みになっています。構築物とは門や塀、外構工事、庭園設備などを指し、附属設備とは建物と構造上一体となっていない電気設備やガス設備などを指します。

つまり70%評価が基本です。

例えば、5年前に500万円で設置した門扉や塀などの構築物があるとします。減価償却累計額が200万円の場合、帳簿価額は300万円です。しかしこれをそのまま相続税評価額とするのは誤りです。正しくは300万円×70%=210万円が相続税評価額となります。

この70%という調整率は、再建築価額の算定における概算性を考慮し、より実態に近い評価額にするために設けられています。国税庁の財産評価基本通達において明確に規定されており、実務上も頻繁に用いられる評価方法です。

国税庁「財産評価基本通達 第4章 構築物」

構築物の評価方法について、再建築価額の算定方法や償却方法の詳細が記載されています。

事業用資産で70%評価が適用されない一般動産の注意点

多くの不動産業従事者が見落としがちなのが、一般動産には70%ルールが適用されないという点です。器具備品、機械装置、車両運搬具などの一般動産は、構築物や附属設備とは異なる評価方法を用いる必要があります。

一般動産の相続税評価額は、原則として売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価します。これが困難な場合には、取得価額から減価償却費を控除した帳簿価額によって評価しますが、ここに70%を乗じる処理は行いません。

これは意外ですね。

例えば、事業で使用している商業用エアコンや業務用冷蔵庫などの附属設備については、家屋と構造上一体となっている場合は家屋の固定資産税評価額に含まれ、含まれていない場合は70%評価の対象となります。一方、オフィス家具やパソコン、複合機などの器具備品は一般動産として扱われ、70%評価の対象外です。

実務上、相続税申告書の作成時に事業用財産を計上する際、すべての減価償却資産に一律70%を適用してしまうケースが散見されます。これは明らかな誤りであり、税務調査で指摘される可能性が高い事項です。

相続税評価額の計算を誤ると、過少申告加算税や延滞税が課される可能性があります。特に事業用資産が多額の場合、評価方法の誤りによる影響額は数百万円に及ぶこともあり得ます。顧客の不利益を避けるためにも、資産の種類による評価方法の違いを正確に把握しておく必要があります。

相続税申告における事業用財産の計上ポイント

一般動産の評価において70%適用がない点について、具体的な注意事項が記載されています。

構築物の固定資産税評価額に含まれない部分の別途評価

構築物の評価において特に注意が必要なのは、固定資産税評価額に含まれていない構築物は別途評価しなければならない点です。これを見落とすと、相続財産の計上漏れとなり、税務調査で追徴課税を受けるリスクがあります。

建物の固定資産税評価額には、建物本体と一体となっている附属設備は含まれていますが、門、塀、外井戸、屋外ごみ処理設備、庭園設備、外構工事などは含まれていないケースが大半です。これらは構築物として別途評価する必要があります。

必ず確認すべきです。

例えば、賃貸アパートを所有する個人事業主が相続により死亡した場合を考えてみましょう。建物の固定資産税評価額は2000万円でしたが、敷地内には10年前に200万円で設置した立派な門扉と塀があります。これらは固定資産税評価額には含まれていません。

減価償却後の帳簿価額が100万円だとすると、相続税評価額は100万円×70%=70万円となります。この70万円を相続財産として別途計上しなければ、財産の計上漏れとなります。相続財産全体が基礎控除額を超えている場合、この計上漏れにより本来納付すべき相続税額が不足することになります。

実務上、構築物の評価漏れは非常に多く発生しています。特に不動産賃貸業を営んでいた被相続人の場合、複数の物件に門扉、塀、駐車場の舗装、外灯、防犯カメラ設置設備などが存在することが多く、これらをすべて把握して評価することは容易ではありません。

現地調査を徹底的に行い、固定資産台帳と照合しながら、固定資産税評価額に含まれていない構築物を洗い出す作業が不可欠です。税理士に相続税申告を依頼する際も、この点について明確に確認しておくことをお勧めします。

定率法と定額法の違いによる相続税評価への影響

建物附属設備や構築物の相続税評価において、もう一つの重要なポイントは償却方法です。帳簿上は定額法で減価償却していても、相続税評価では定率法で再計算する必要があります。この点を見落とすと、評価額が大きく変わる可能性があります。

平成28年4月1日以降に取得した建物附属設備・構築物については、所得税や法人税の計算上、定額法のみが認められるようになりました。しかし相続税評価においては、より実態に近い時価を反映するため、定率法で償却費を再計算することが財産評価基本通達で定められています。

これが盲点です。

例えば、平成30年に1000万円で取得した建物附属設備があり、所得税の確定申告では定額法(償却率0.200)で処理してきたとします。令和7年の相続発生時点で、定額法による帳簿価額は400万円です。しかし相続税評価では定率法(償却率0.333)で再計算します。

定率法で計算すると、5年経過後の残存価額は約約1000万円×(1-0.333)^5≒約135万円となります。そしてこれに70%を乗じた約95万円が相続税評価額となります。定額法の帳簿価額400万円×70%=280万円と比較すると、185万円もの差が生じることになります。

この差額は相続税の計算に直接影響します。最高税率55%が適用される場合、185万円×55%=約102万円の相続税額の差となる可能性があります。複数の建物附属設備や構築物がある場合、この影響はさらに大きくなります。

定率法での再計算は複雑な作業ですが、国税庁の耐用年数表に基づいて正確に行う必要があります。実務上は、簡便的に帳簿価額に70%を乗じて評価することもありますが、これは厳密には誤りです。税務調査で指摘される可能性を考慮し、正確な計算を行うことが望ましいでしょう。

建物附属設備の減価償却と相続税評価

定額法と定率法の違い、相続税評価における定率法での再計算について詳しく解説されています。

事業用資産相続での小規模宅地特例と納税猶予制度の活用

事業用資産の相続において、評価方法だけでなく、小規模宅地等の特例や個人版事業承継税制(納税猶予制度)の活用も検討すべき重要なポイントです。これらの制度を適切に活用することで、相続税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

小規模宅地等の特例のうち、特定事業用宅地等に該当する場合、400㎡までの土地について評価額を80%減額できます。被相続人が個人で事業を営んでいた土地(店舗、事務所、工場など)が対象となります。例えば、評価額1億円の事業用地300㎡がある場合、特例適用により評価額は2000万円(1億円×20%)となり、8000万円もの評価減が実現します。

80%減額は強力です。

ただし、この特例を受けるためには厳格な要件を満たす必要があります。相続人が相続税の申告期限まで事業を継続すること、土地を保有し続けること、相続税の申告書に特例の適用を受ける旨を記載し、必要書類を添付することなどが求められます。

さらに令和元年度税制改正で創設された個人版事業承継税制(租税特別措置法第70条の6の10)も活用できます。これは個人事業主が所有する事業用資産を後継者が相続で取得した場合、一定の要件のもとで相続税の納税を猶予し、最終的には免除される制度です。

対象となる事業用資産には、土地(400㎡まで)、建物(床面積800㎡まで)、減価償却資産、自動車や建設機械等、棚卸資産などが含まれます。相続税額の100%が納税猶予の対象となり、後継者が事業を継続している限り猶予が続き、後継者の死亡時または次の後継者への贈与時に免除されます。

ただし、事業を継続できない場合や資産を譲渡・廃業した場合には、猶予されていた相続税に利子税を加えて納付する必要があります。また、毎年、都道府県知事への報告と税務署への継続届出が必要となるため、事務負担も考慮しなければなりません。

不動産業従事者として顧客にアドバイスする際は、これらの制度のメリットとデメリットを十分に説明し、顧客の事業承継計画に合わせた最適な選択を支援することが求められます。専門的な判断が必要な場合は、税理士や公認会計士と連携して対応することをお勧めします。

国税庁「個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除」

個人版事業承継税制の詳細な要件や手続きについて、国税庁の通達で確認できます。

Please continue.


日本法令 税理士のための 個人の事業用資産についての納税猶予制度 V107 岩下忠吾