所有権保存登記 登録免許税 軽減の実務知識
登記申請後に軽減措置に気づいても還付されません。
所有権保存登記の登録免許税軽減措置とは
所有権保存登記の登録免許税は、個人が新築住宅を取得した場合に大幅な軽減措置を受けられる制度です。通常の税率は不動産の固定資産税評価額に対して0.4%(1000分の4)ですが、一定の要件を満たせば0.15%(1000分の1.5)まで引き下げられます。
つまり税率が62.5%も減少します。
新築住宅で固定資産税評価額が2,000万円の場合、本則では8万円の登録免許税がかかりますが、軽減措置を適用すれば3万円で済むのです。この5万円の差額は、購入者にとって大きな負担軽減になります。不動産業従事者として、この制度を正確に理解しお客様に適切なタイミングで情報提供することが重要です。
さらに長期優良住宅や認定低炭素住宅の場合は、税率が0.1%(1000分の1)まで軽減されます。同じ2,000万円の評価額なら、登録免許税はわずか2万円です。環境性能の高い住宅を選択することで、購入時の負担が一層軽くなるわけですね。
この軽減措置の適用期限は令和9年(2027年)3月31日までと延長されました。令和6年度の税制改正により3年間延長されたため、現在新築住宅を検討している購入者には確実に適用されます。ただし土地の売買による所有権移転登記の軽減措置は令和8年(2026年)3月31日までと期限が異なるため、注意が必要です。
国税庁:登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ(PDF)
軽減措置の詳細な税率と適用期限について記載されています。
所有権保存登記の軽減措置適用要件
軽減措置を受けるための要件は明確に定められており、1つでも満たさなければ適用されません。まず個人が自己の居住用として取得した住宅であることが前提条件です。
投資用物件や事業用物件は対象外となります。
床面積が50平方メートル以上であることも必須です。
この床面積は登記簿上の面積で判断されます。マンションの場合、壁の中心線で囲まれた部分(壁芯面積)ではなく、壁の内側で測定した面積(内法面積)が登記簿に記載されるため、パンフレット記載の面積より小さくなる点に注意してください。49.9平方メートルでは要件を満たさず、軽減措置は一切適用されません。
新築または取得後1年以内に登記を受けることも絶対条件です。この「1年以内」という期限を過ぎてしまうと、たとえ他の要件を全て満たしていても軽減措置は適用されません。新築の場合は建物完成日から、建売住宅や分譲マンションの場合は引渡日から1年以内にカウントされます。
併用住宅の場合は、居住部分の床面積が全体の90%を超えていることが条件です。たとえば1階を店舗、2階を住居とする建物では、住居部分が90%を超えないと軽減措置の対象外になります。
この点は事前確認が不可欠ですね。
昭和59年(1984年)4月1日以降に新築された建物であることも要件の1つです。ただし実務上、現在新築される住宅はすべてこの日付以降のため、この要件が問題になることはほとんどありません。
所有権保存登記の軽減に必要な住宅用家屋証明書
登録免許税の軽減措置を受けるには、登記申請時に住宅用家屋証明書を添付する必要があります。この証明書は市区町村の窓口で発行されるもので、対象住宅が軽減措置の要件を満たしていることを公的に証明する書類です。
証明書の発行手数料は1通あたり1,300円程度です。
手数料は自治体によって若干異なりますが、概ね1,000円から1,500円の範囲内に収まります。この数千円の支出で数万円から数十万円の税金が軽減されるのですから、費用対効果は極めて高いといえます。
お客様には必ず取得を勧めるべき書類です。
住宅用家屋証明書を取得するには、いくつかの書類を市区町村に提出する必要があります。建物の登記事項証明書(登記簿謄本)、住民票、売買契約書または工事請負契約書などが基本的な必要書類です。新築住宅の場合は建築確認済証や検査済証のコピーも求められることがあります。
証明書の発行には通常即日から数日かかります。自治体の窓口の混雑状況や必要書類の確認作業により、発行までの時間は変動するため、余裕を持って申請することが重要です。登記申請の期限である新築・取得後1年以内に間に合うよう、早めの手続きを促しましょう。
注意すべきは、住宅用家屋証明書の申請時点で既に住民票を新住所に移している必要がある点です。つまり物件の引渡しを受けた後、速やかに転居手続きを済ませてから証明書を申請する流れになります。引渡し後すぐに転居できない事情がある場合は、軽減措置の適用が難しくなる可能性があります。
特例措置の詳細と要件について国土交通省の公式情報が確認できます。
所有権保存登記の長期優良住宅と認定低炭素住宅の違い
長期優良住宅と認定低炭素住宅は、どちらも登録免許税のさらなる軽減措置が受けられる住宅ですが、その特徴と認定基準には明確な違いがあります。両者とも所有権保存登記の税率が0.1%(1000分の1)まで下がるため、通常の軽減措置(0.15%)よりもさらに有利です。
長期優良住宅は長期にわたって良好な状態で使用できることを目的とした住宅です。
認定基準には、耐震性、劣化対策、維持管理・更新の容易性、省エネルギー性、居住環境、住戸面積、維持保全計画など、複数の項目が設けられています。建物の長寿命化を総合的に評価する制度といえます。マンションでも一戸建てでも認定を取得できますが、マンション全体での認定が必要なケースもあります。
一方で認定低炭素住宅は、二酸化炭素の排出削減に特化した住宅です。一次エネルギー消費量が省エネ基準より10%以上削減されていることが主な認定基準となります。断熱性能や省エネ設備の導入が重視され、環境負荷の低減を重点的に評価する制度です。
長期優良住宅のほうが認定基準の項目数が多く、取得のハードルは高めですね。
ただし長期優良住宅は固定資産税の軽減期間が一般住宅より長く設定されるなど、登録免許税以外のメリットもあります。新築戸建ての場合、一般住宅は3年間、長期優良住宅は5年間の固定資産税軽減が受けられます。総合的な税制メリットを考えると、長期優良住宅の取得は大きな経済的利点があるといえるでしょう。
認定低炭素住宅は比較的取得しやすく、省エネ性能に特化している点が特徴です。建設コストの増加も長期優良住宅ほど大きくない傾向があります。環境意識の高い購入者や、初期コストを抑えつつ税制優遇を受けたい購入者には、認定低炭素住宅が適しているかもしれません。
両方の認定を同時に取得することも可能です。要件が重複する部分もあるため、両方の認定を目指すことで最大限の税制優遇を受けられます。お客様の予算や優先事項に応じて、どちらの認定を目指すべきか適切にアドバイスすることが、不動産業従事者には求められます。
所有権保存登記の登録免許税軽減を逃さないためのチェックポイント
実務上、登録免許税の軽減措置を逃してしまうケースがいくつか見られます。最も多いのが新築・取得後1年以内という期限を過ぎてしまうパターンです。引渡しから登記完了まで通常2週間から1ヶ月程度かかるため、引渡し後すぐに手続きを開始する必要があります。
11ヶ月目に気づいても手遅れになることがあります。
住宅用家屋証明書の取得に数日、司法書士との打ち合わせや書類準備に1週間、登記申請から完了まで2週間かかると仮定すると、最低でも1ヶ月前には動き出すべきです。引渡し後10ヶ月を過ぎた時点で「まだ時間がある」と考えるのは危険といえます。
住民票を移していないケースも要注意です。住宅用家屋証明書の取得には、原則として新住所の住民票が必要になります。旧住所のままでは証明書が発行されないため、軽減措置を受けられません。お客様には引渡し後速やかに転居届を出すよう、具体的にアドバイスすることが重要です。
床面積が50平方メートルギリギリの物件では、登記簿面積が50平方メートルを下回っていないか事前確認が必須です。販売資料に「約50㎡」と記載されていても、登記簿上は49.8平方メートルということがあり得ます。わずか0.2平方メートルの差で数万円の税負担が増える可能性があるため、契約前に登記簿面積を確認しておくべきですね。
登記申請後に軽減措置があったことに気づいても、過納分の還付は一切できません。
この点は特に重要です。
登記は一度受理されると訂正が困難であり、税金を多く払いすぎたからといって後から返してもらえる仕組みはありません。事前の確認と適切な申請が全てということです。
司法書士に依頼する場合でも、軽減措置の適用を明確に伝えることが大切です。通常、司法書士は軽減措置を前提に費用見積もりを出しますが、念のため「住宅用家屋証明書を使った軽減措置を適用してください」と確認しておくと安心です。コミュニケーションの行き違いで軽減措置が適用されなかったというトラブルを防げます。
不動産業従事者として、契約時にこれらのチェックポイントをお客様に説明し、期限管理をサポートする体制を整えておくことが望ましいでしょう。引渡し後のフォローアップとして、1ヶ月後と6ヶ月後に登記手続きの進捗を確認する連絡を入れるなど、具体的なアクションが顧客満足度の向上につながります。
登記申請後の還付不可について実務家の視点から解説されています。

