仮登記抹消は単独申請で登記原因証明情報を使う
混同を原因とする仮登記抹消では、登記原因証明情報の添付を省略できる。
仮登記抹消の単独申請とは何か
不動産登記では原則として権利者と義務者による共同申請が求められますが、仮登記の抹消については不動産登記法110条に基づく単独申請が認められています。これは仮登記が予備的な性質を持つ登記であり、抹消手続きの円滑化を図るための特例措置です。
単独申請には大きく分けて3つのパターンがあります。第一に、仮登記名義人自身が登記識別情報を提供して単独で抹消する方法です。第二に、登記上の利害関係人が仮登記名義人の承諾書を添付して単独申請する方法です。第三に、混同や錯誤などの原因により仮登記名義人が権利者兼義務者として単独申請する方法があります。
それぞれの方法で必要となる添付書類や手続きの流れが異なるため、実務では状況に応じた適切な選択が求められます。例えば古い仮登記で登記識別情報を紛失している場合、第二の方法である承諾書付きの単独申請が有効な選択肢となります。
つまり柔軟な対応が可能です。
不動産業務に携わる方であれば、売買予約や農地法許可待ちなど、様々な原因による仮登記に遭遇する機会があるでしょう。それぞれの仮登記の性質を理解し、最適な抹消方法を選択することで、取引の円滑化とトラブル回避につながります。
仮登記抹消で登記原因証明情報が必要となる場面
登記原因証明情報とは、登記の原因となった事実または法律行為と、それに基づいて権利変動が生じたことを証明する書面や電磁的記録のことです。不動産登記法では、権利に関する登記を申請する際に登記原因証明情報の提供が原則として義務付けられています。
仮登記の抹消においても、多くの場面で登記原因証明情報の提出が必要です。具体的には、売買予約の解除や放棄、条件不成就による抹消、合意解除による抹消などの場合には、その事実を証明する書面が求められます。報告形式で作成する場合、当事者の特定、原因となる事実の記載、不動産の表示などを明記する必要があります。
実務では、仮登記名義人が作成した放棄証書や解除証書などを登記原因証明情報として添付するケースが一般的です。どういうことでしょうか?これらの証書には、仮登記の権利を放棄する旨や契約を解除する旨が明記され、実印による押印と印鑑証明書の添付が求められます。
ただし例外的に登記原因証明情報の添付が不要となる場面もあります。代表的なのが混同を原因とする抹消の場合で、登記記録上から混同の事実が明らかな場合には「登記原因証明情報(添付省略)」として処理することができます。この例外規定は登記研究690号で明確にされており、実務上の負担軽減に寄与しています。
登記原因証明情報の基本的な考え方と作成方法について、佐伯司法書士事務所の解説ページで詳細な情報が確認できます。
仮登記抹消の単独申請で承諾書を使う方法
不動産登記法110条後段に基づき、仮登記の登記上の利害関係人は、仮登記名義人の承諾があれば単独で抹消登記を申請することができます。利害関係人とは、具体的には仮登記が設定されている不動産の所有者や、仮登記より後順位の抵当権者などが該当します。
この方法の最大の利点は、仮登記の登記識別情報(権利証)が紛失している場合でも申請が可能な点です。古い仮登記では登記済証を紛失しているケースが多く見られますが、承諾書方式であれば登記識別情報の代わりに仮登記名義人からの実印押印された承諾書と印鑑証明書を添付することで手続きを進められます。
承諾書には「不動産の表示」「承諾する内容(仮登記の抹消に同意する旨)」「承諾日」「仮登記名義人の住所・氏名」などを記載し、実印で押印します。印鑑証明書については発行後3ヶ月以内という制限がない点も実務上のメリットです。
厳しいところですね。
ただし承諾書方式でも実質的には2名の関与が必要となります。利害関係人が申請人となりますが、仮登記名義人から実印押印の承諾書と印鑑証明書を取得する必要があるため、仮登記名義人の協力が得られない場合には利用できません。この場合は裁判による解決を検討する必要が出てきます。
不動産業の実務では、取引の安全確保のため仮登記の早期抹消が求められる場面が多くあります。承諾書方式は柔軟な手続き方法として、特に登記識別情報紛失時の有効な選択肢となります。
仮登記抹消の登記原因証明情報を添付省略できるケース
登記原因証明情報の添付が不要となる主要なケースの一つが、混同を原因とする権利の抹消です。混同とは民法520条に規定される制度で、同一の権利と義務が同一人に帰属することにより、その権利が消滅する法律効果を指します。
仮登記の場面では、例えば所有権移転請求権仮登記の名義人が後にその不動産の所有権を取得した場合に混同が生じます。所有者となった以上、自分に対する所有権移転請求権を保持する意味がなくなるため、仮登記の権利は混同により消滅します。
つまり自動的に権利が失効するわけです。
登記記録上から混同の事実が明らかな場合、登記原因証明情報の提供は不要とされています(登記研究690号221頁)。具体的には、仮登記名義人が相続により所有権を取得したことが甲区の登記から読み取れる場合などが該当します。この場合、申請書に「登記原因証明情報(添付省略)」と記載することで手続きが進められます。
ただし混同による抹消でも、仮登記の登記識別情報と印鑑証明書は通常どおり添付する必要があります。添付が省略されるのはあくまで「登記原因証明情報」のみである点に注意が必要です。
痛いですね。
所有権保存登記についても登記原因証明情報の添付は不要です。これは所有権保存登記が最初の権利登記であり、その前提となる権利変動が存在しないためです。また私人の住所変更登記で住民票コードを提供した場合や、法人の住所変更登記で会社法人等番号を提供した場合にも添付省略が認められています。
混同による仮登記抹消の具体的な事例と手続きについて、古江司法書士事務所のブログで実務での取扱いが詳しく紹介されています。
仮登記抹消で登録免許税と費用を把握する
仮登記の抹消登記を申請する際には、登録免許税として不動産1個につき1,000円が課税されます。土地と建物はそれぞれ別の不動産として扱われるため、一戸建て住宅の敷地に仮登記がある場合は土地1,000円、建物1,000円の合計2,000円となります。
マンションの場合は計算に注意が必要です。建物部分(専有部分)と敷地権(土地の共有持分)はそれぞれ独立した不動産として扱われますが、敷地権が複数の土地にまたがる場合はその筆数分だけ不動産の個数が増えます。例えば3筆の土地上に建つマンションの1室であれば、建物1個と土地3個の計4個となり、登録免許税は4,000円となります。
同一の申請書により20個を超える不動産について仮登記抹消を受ける場合には、申請件数1件につき20,000円の定額制が適用されます。大規模な土地取引や複数の不動産をまとめて処理する場合には、この上限規定により費用負担が軽減されます。
結論は上限適用です。
司法書士に仮登記抹消を依頼する場合、報酬額は事務所や案件の複雑さによって異なりますが、一般的には1万円から3万円程度が相場となっています。これに登録免許税、登記事項証明書の取得費用(不動産1個につき600円)、郵送費などの実費が加算されます。
登記識別情報を紛失しており事前通知制度を利用する場合や、本人確認情報を作成する場合には、追加で数万円の費用が発生することがあります。承諾書方式を採用する場合でも、印鑑証明書の取得費用(1通300円程度)が必要となります。不動産業務では、こうした費用を事前に顧客へ説明し、予算計画に組み込んでおくことが重要です。
仮登記抹消を進める際の不動産業実務での注意点
不動産の売買仲介や資産管理の場面では、登記簿に古い仮登記が残っているケースに遭遇することがあります。売買予約、代物弁済予約、農地法許可待ちなど、仮登記の原因は多岐にわたりますが、いずれも放置すれば取引の障害となります。
仮登記名義人の所在が不明な場合、まず戸籍の附票や住民票の除票を取得して現住所を調査します。転居を繰り返している場合は追跡調査が必要となり、時間と労力がかかります。
意外ですね。
それでも所在が判明しない場合は、不在者財産管理人の選任申立てや失踪宣告などの法的手続きを検討する必要があります。
仮登記名義人が死亡している場合、相続人全員の協力を得る必要があります。相続人が多数に及ぶ場合や、相続人間で連絡が取れない場合には、手続きが長期化するリスクがあります。こうしたリスクを回避するため、売買契約の段階で仮登記抹消の見込みを慎重に判断し、必要に応じて契約条件に織り込むことが重要です。
売買予約による仮登記の場合、予約完結権の消滅時効が成立している可能性があります。2020年民法改正により、2020年4月1日以降に締結された売買予約については、権利を行使できることを知ったときから5年、または権利を行使できるときから10年で時効消滅します。旧民法下の契約では10年の消滅時効が適用されます。
時効を援用して抹消する場合、時効期間の経過を証明する書面と、時効援用通知書を登記原因証明情報として添付します。ただし時効は援用しなければ効果が生じないため、仮登記名義人または相続人に対する時効援用の意思表示が必要です。
時効が基本です。
農地法の許可を条件とする仮登記では、許可申請協力請求権も債権として時効の対象となります。長期間許可申請が放置されている場合、この権利が時効消滅している可能性があり、抹消の根拠となり得ます。農地転用許可の見込みがない土地では、時効による整理を検討する価値があります。
不動産業務の現場では、仮登記の存在が融資審査を止める要因となることも少なくありません。金融機関は担保価値の確実性を重視するため、権利関係が不明確な不動産への融資には慎重になります。顧客が購入を希望する物件に仮登記がある場合、抹消の実現可能性とスケジュールを早期に見極め、適切なアドバイスを提供することが求められます。
仮登記抹消の具体的な手続きパターンと実務上の工夫について、今井法務事務所の解説ページで豊富な事例とともに紹介されています。

Q&Aとケースでみる 休眠担保権等の抹消登記-担保権・用益権・買戻し特約・仮登記-
