抵当権設定契約と印紙の関係知らないと損する税金のポイント

抵当権設定契約と印紙

抵当権設定契約書は本来200円の印紙で済むはずが、連帯保証人条項を併記すると逆に非課税になります。

この記事の3つの重要ポイント
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抵当権設定契約書は原則として印紙不要

平成元年4月1日以降、抵当権設定契約書は課税文書から除外されており、金銭消費貸借契約書とは異なり印紙税の負担がありません。

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例外的に課税される特殊パターンが存在

債権譲渡条項や連帯保証人に関する契約を併記した場合、200円の印紙税が発生するケースがあり、契約書の記載内容次第で課税判断が変わります。

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電子契約なら金銭消費貸借契約書の印紙も不要

電子契約で締結すれば、金銭消費貸借契約書の印紙税(最大60万円)も完全に不要となり、大幅なコスト削減が可能です。

抵当権設定契約における印紙税の基本ルール

 

抵当権設定契約書は平成元年4月1日以降、印紙税の課税対象から除外されています。これは印紙税法の改正により、質権や抵当権などの担保権設定契約書が非課税文書となったためです。

つまり原則は印紙不要です。

不動産業に従事している方なら、住宅ローン契約時に複数の契約書を扱う機会が多いでしょう。その中で金銭消費貸借契約書には契約金額に応じて200円から60万円の印紙が必要ですが、抵当権設定契約書自体には印紙を貼る必要がありません。例えば3,000万円の住宅ローンの場合、金銭消費貸借契約書には2万円の印紙が必要ですが、抵当権設定契約書は0円です。この差額だけでも顧客にとって重要な情報となります。

ただし課税文書に該当しないだけで、契約書自体の法的効力には何の影響もありません。印紙の有無と契約の有効性は別物ということですね。

不動産取引では金銭消費貸借契約書と抵当権設定契約書を別々に作成するのが一般的ですから、それぞれの印紙税の扱いを正確に理解しておくことが顧客への適切な説明につながります。契約書の種類によって印紙税の要否が異なる点を把握しておけば、無駄な出費を防げます。

抵当権設定契約書が例外的に課税されるケース

抵当権設定契約書は原則非課税ですが、特定の条項が含まれると課税対象になる例外があります。国税庁の見解によれば、根抵当権設定契約書に「収用その他の原因により補償金、清算金などの債権が生じたときは、債務者はその債権を貴行に譲渡します」という債権譲渡条項が入っている場合、第15号文書(債権譲渡に関する契約書)として200円の印紙税が必要になります。

どういうことでしょうか?

抵当権設定自体は非課税でも、同じ契約書内に別の課税事項が含まれていれば、その部分に対して印紙税が発生するという仕組みです。例えば道路拡張工事などで担保不動産が収用された場合の補償金請求権を、あらかじめ金融機関に譲渡する旨を契約書に明記すると、それは債権譲渡契約の性質を持つため課税されます。

これは使えそうです。

また連帯保証人に関する契約を抵当権設定契約書に併記した場合も、200円の印紙が必要になるケースがあります。「抵当権設定契約書兼連帯保証人に関する契約書」という形式で一体化した契約書を作成する金融機関も存在しますが、この場合は第13号文書(債務の保証に関する契約書)として課税対象になります。

見落としがちなのは「債権譲渡の手続をとります」という記載です。この表現は単なる事実の予告であって債権譲渡を約束するものではないため、課税対象にはなりません。契約書の文言次第で課税判断が変わるということですね。

契約書を確認する際は、抵当権設定の条項だけでなく、債権譲渡や連帯保証に関する記載がないかチェックする習慣をつけることで、税務上のトラブルを防げます。

国税庁「根抵当権設定契約書に関する質疑応答事例」では、課税・非課税の判断基準が具体的に示されています

金銭消費貸借契約書と抵当権設定契約書の印紙税の違い

住宅ローン契約で作成する主要な契約書は、金銭消費貸借契約書と抵当権設定契約書の2種類ですが、印紙税の扱いが大きく異なります。金銭消費貸借契約書は印紙税法上の第1号文書に該当するため、契約金額に応じた印紙税が必須です。

具体的な金額を見てみましょう。

契約金額が100万円を超え500万円以下なら2,000円、500万円を超え1,000万円以下なら1万円、1,000万円を超え5,000万円以下なら2万円の印紙が必要です。5,000万円を超えると6万円、1億円を超えると10万円と、融資額が大きくなるほど印紙税の負担も増えていきます。例えば4,500万円の住宅ローンなら2万円、8,000万円なら6万円です。これは東京ドーム約0.0015個分の面積の土地を購入する資金に相当する金額に対する税金ということになりますが、実際の感覚としては高級レストランでの食事1回分から家族旅行1回分といったイメージです。

印紙税額が決まるのは基本です。

一方、抵当権設定契約書は債務額に関係なく原則として印紙不要です。3,000万円の融資でも5億円の融資でも、単純な抵当権設定なら0円です。この違いを理解していないと、顧客から「抵当権の契約書にも印紙が必要ですか?」と聞かれたときに適切に答えられません。

ただし金銭消費貸借契約と抵当権設定契約を1つの契約書にまとめた「金銭消費貸借兼抵当権設定契約書」を作成する場合は、金銭消費貸借契約部分に対して印紙税が課されます。この場合も債務額に応じた印紙が必要ということですね。

契約書を2通に分けるか1通にまとめるかで印紙税の総額は変わりませんが、書類の管理や保管の観点からは別々に作成するのが実務上の標準となっています。

抵当権設定契約で電子契約を活用するメリット

電子契約を利用すれば、金銭消費貸借契約書の印紙税を完全にゼロにできます。印紙税法では「紙の文書」に対してのみ課税すると定められているため、電子データで作成された契約書は課税対象外です。

これは大きいメリットです。

例えば5,000万円の住宅ローンを電子契約で締結すれば、本来必要だった2万円の印紙代が不要になります。年間100件の融資を扱う不動産会社なら、平均融資額3,000万円として年間200万円の印紙コスト削減が可能です。これは従業員1名分の社会保険料相当額に匹敵する金額ですから、経営上も無視できない効果があります。

顧客側から見ても印紙代の節約は魅力的です。住宅購入時は登録免許税、不動産取得税、仲介手数料など様々な費用が発生するため、少しでもコストを抑えられる点は大きなメリットとなります。

電子契約を導入する際の留意点として、一部の金融機関では電子契約手数料として5,500円程度を徴収するケースがあります。ただし2万円の印紙代と比較すれば依然として14,500円の節約になりますので、電子契約の方が有利な選択肢です。

電子契約の普及により、契約書の保管スペースも不要になり、紛失リスクも軽減されます。セキュリティ面でも電子署名とタイムスタンプによる改ざん防止機能があるため、紙の契約書以上の安全性を確保できます。

不動産業務の効率化とコスト削減を両立させたい場面では、電子契約システムの導入を検討する価値があります。顧客に対して電子契約のメリットを説明できるようになれば、競合他社との差別化要因にもなります。

抵当権設定契約の印紙で不動産業者が注意すべきポイント

不動産業従事者として最も注意すべきは、契約書の記載内容によって印紙税の要否が変わる点です。顧客から「印紙は必要ですか?」と質問されたときに、契約書の内容を確認せずに「不要です」と即答してしまうと、後で問題になる可能性があります。

契約書を必ず確認することです。

特に注意が必要なのは、金融機関が独自に作成した契約書のフォーマットです。一部の金融機関では、抵当権設定契約書に債権譲渡条項や連帯保証条項を含めているケースがあり、この場合は200円の印紙が必要になります。契約書のタイトルだけで判断せず、必ず内容を精査する習慣をつけましょう。

また印紙税の貼り忘れには厳しいペナルティがあります。税務調査で発覚した場合、本来の印紙税額の3倍(つまり元の税額+2倍の過怠税)を納付しなければなりません。200円の印紙を貼り忘れると600円、2万円なら6万円の負担になります。ただし調査前に自主申告すれば1.1倍に軽減されますので、ミスに気付いたら速やかに税務署に申し出ることが重要です。

過怠税は痛いですね。

消印を忘れた場合も、本来の印紙税額と同額の過怠税が課されます。印紙を貼っただけでは不十分で、必ず消印(印鑑や署名による印紙と文書にまたがる押印)が必要です。この作業を省略すると、せっかく印紙を貼っても納税していないと見なされます。

顧客への説明責任も重要です。「抵当権設定契約書には印紙が不要」という一般原則と、「例外的に必要になるケース」の両方を説明できるようにしておくことで、専門家としての信頼性が高まります。特に連帯保証人を立てる融資案件では、契約書の構成によって印紙の要否が変わる点を事前に伝えておくと、後のトラブル防止になります。

実務上は、司法書士や金融機関の担当者と連携して印紙の要否を確認する体制を作ることが効果的です。不明な点があれば税務署に照会するか、専門家に相談することで、確実な対応ができます。

法務局「登記申請手続きに関する案内」で登録免許税の計算方法や軽減措置の詳細を確認できます

抵当権設定に関連する登録免許税との違いを理解する

抵当権設定では印紙税とは別に、登録免許税という税金が発生します。この2つの税金は性質が全く異なるため、混同しないよう注意が必要です。印紙税は契約書という文書の作成行為に対して課される税金ですが、登録免許税は法務局での登記申請に対して課されます。

つまり課税のタイミングが違います。

抵当権設定登記の登録免許税は、債権金額(融資額)の0.4%が原則です。3,000万円の融資なら12万円、5,000万円なら20万円の登録免許税がかかります。ただし住宅用家屋の場合は特例措置があり、一定の条件を満たすと0.1%に軽減されます。この場合、3,000万円で3万円、5,000万円で5万円となり、4分の3もの税額が削減されます。

軽減税率の適用条件は厳しいところですね。

軽減措置を受けるには、床面積50㎡以上、自己居住用、新築または取得後1年以内の登記、新耐震基準適合といった要件を満たす必要があります。さらに市区町村が発行する「住宅用家屋証明書」を登記申請時に添付しなければなりません。この証明書の取得を忘れると、せっかくの軽減措置が受けられず、数万円から数十万円の損失につながります。

登録免許税は金融機関が指定する司法書士に支払うのが一般的ですが、費用の負担者は債務者(借主)です。不動産業者としては、顧客に対して登録免許税の金額と軽減措置の条件を事前に説明し、住宅用家屋証明書の取得手続きをサポートすることが重要なサービスとなります。

電子契約で印紙税は不要にできても、登録免許税は必ず発生します。この違いを理解した上で、トータルの諸費用を顧客に提示することが、透明性の高い取引につながります。

登記費用の見積もりを作成する際は、登録免許税と司法書士報酬を分けて明示することで、顧客の理解が深まります。また軽減措置の適用可否によって費用が大きく変わる点も、契約前に必ず説明しておくべきポイントです。


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