連帯保証債務履行と求償権の税務対策

連帯保証債務履行と求償権

極度額の定めがない個人根保証契約は全額無効です。

この記事の3つのポイント
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連帯保証債務履行の基本理解

保証人が主債務者に代わって債務を弁済することの法的意味と求償権の仕組みを理解できます

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譲渡所得の非課税特例

保証債務履行のために不動産を売却した場合の税制優遇措置と適用要件を把握できます

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民法改正後の実務対応

2020年施行の改正民法による極度額設定義務や情報提供義務への対処法がわかります

連帯保証債務履行の基本的な仕組み

連帯保証債務履行とは、主たる債務者が債務を弁済しないときに、連帯保証人が代わりに債務を弁済することを指します。不動産賃貸借契約や融資契約において、連帯保証人は主債務者と同等の責任を負う立場です。

連帯保証人の責任は通常の保証人よりも重くなっています。通常の保証人には「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」がありますが、連帯保証人にはこれらの権利がありません。つまり、債権者は主債務者に請求する前に、いきなり連帯保証人に全額の支払いを求めることができるということです。

厳しい立場ですね。

実際の不動産賃貸の現場では、賃借人が家賃を3か月滞納した段階で、オーナーや管理会社が連帯保証人に直接請求するケースが多く見られます。このとき連帯保証人は「まず賃借人本人に請求してください」という主張ができません。連帯保証契約を結んだ時点で、この責任を引き受けたことになるのです。

連帯保証債務履行後の求償権とは

保証債務を履行した連帯保証人には「求償権」という権利が発生します。求償権とは、保証人が主債務者に代わって支払った金額を、後から主債務者に請求できる権利です。保証人が債務を肩代わりした後、その負担を主債務者に転嫁できる仕組みということですね。

求償権の範囲は、保証人が実際に支払った金額に加えて、支払日以降の法定利息、そして求償のために必要となった費用も含まれます。例えば、連帯保証人が500万円の賃料滞納分を支払った場合、その500万円に加えて、支払日から年3%の利息と、弁護士費用などの求償関連費用も請求できるのです。

ただし、求償権には重大な問題があります。主債務者に資力がない場合、求償権を行使しても実際には回収できません。破産している、所在不明、収入がないなどの理由で、法律上の権利はあっても現実には「絵に描いた餅」になってしまうケースが大半です。

つまり実効性がないということです。

不動産業従事者として知っておくべきは、連帯保証人から「求償できないなら最初から払わない」という相談を受けることがある点です。しかし、求償の見込みがなくても、連帯保証人としての支払義務は消えません。

これが連帯保証の厳しさです。

求償権には時効もあります。2020年4月以降に発生した求償権は、権利を行使できることを知った時から5年で時効にかかります。連帯保証人が債務を履行してから5年間、主債務者に請求しなければ、その権利は消滅してしまうのです。

時効は重要です。

国税庁の公式解説ページには、保証債務履行と求償権に関する税務上の取扱いが詳しく説明されています。特に求償権行使不能の判断基準について確認する際の参考資料として有用です。

連帯保証債務履行のための不動産売却と税制特例

保証債務を履行するために自己所有の不動産を売却した場合、通常であれば譲渡所得税が課税されます。しかし、所得税法64条2項には「保証債務履行に伴う譲渡所得の特例」という税制優遇措置があります。これは、求償権が行使できなくなった金額について、譲渡所得がなかったものとみなす制度です。

この特例を受けるには3つの要件があります。第一に、本来の債務者が既に債務を弁済できない状態であるときに債務の保証をしたものでないこと。第二に、保証債務を履行するために土地建物などを売っていること。第三に、履行した債務の全額または一部の金額が本来の債務者から回収できなくなったことです。

「回収できなくなった」とは、主債務者が資力を失っているなど、債務の弁済能力がないため将来的にも回収できない場合を指します。具体的には、主債務者が破産手続開始決定を受けた、行方不明になった、収入がなく財産もない状態などがこれに該当します。

判断基準は明確です。

所得がなかったものとされる金額は、次の3つのうち最も低い金額です。①肩代わりをした債務のうち回収できなくなった金額、②保証債務を履行した人のその年の総所得金額等の合計額、③売った土地建物などの譲渡益の額。この計算により、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

例えば、連帯保証人が3000万円の債務を肩代わりするために、自己所有の不動産を5000万円で売却したとします。取得費が2000万円だった場合、通常なら3000万円の譲渡益に対して約20%の譲渡所得税がかかります。しかし特例を適用すれば、求償権が行使不能な部分について課税されないため、数百万円の税負担軽減になるのです。

不動産業従事者としては、連帯保証人となっている顧客が不動産売却を検討している場合、この特例の存在を伝えることが重要です。ただし、特例の適用には確定申告時に一定の書類提出が必要となるため、税理士への相談を勧める必要があります。

専門家の確認が不可欠です。

連帯保証契約における民法改正の影響

2020年4月1日に施行された改正民法は、連帯保証制度に大きな変更をもたらしました。最も重要な改正点は、個人が連帯保証人となる根保証契約において「極度額」の設定が義務化されたことです。極度額とは、連帯保証人が負担する債務の上限額を指します。

改正前は、不動産賃貸借契約における連帯保証人の責任範囲が明確でなく、延滞家賃や原状回復費用が積み重なって、連帯保証人が想定外の巨額請求を受けるケースがありました。しかし改正後は、極度額を書面または電磁的記録で定めなければ、その連帯保証契約自体が無効となります。

無効は致命的です。

極度額の設定水準は、一般的に月額賃料の12か月分から24か月分程度とされています。例えば、月額賃料10万円の物件なら、極度額は120万円から240万円程度に設定することが多いでしょう。ただし、極度額が低すぎるとオーナーの保護が不十分になり、高すぎると連帯保証人が見つからないというジレンマがあります。

バランスが重要です。

不動産業従事者として注意すべきは、2020年4月1日より前に締結された連帯保証契約であっても、その後に契約更新や再契約を行った場合は、改正民法が適用されるという点です。つまり、従来の契約書をそのまま使い続けることはできず、極度額を明記した新しい契約書に変更する必要があるのです。

極度額を定めていない連帯保証契約で債務履行を求めた場合、裁判になると保証契約無効の判決が出る可能性があります。

これは不動産業者にとって重大なリスクです。

契約書の見直しは必須の対応となります。

もう一つの重要な改正点は「情報提供義務」の新設です。主債務者は、事業のための債務について個人に保証を委託する場合、その個人に対して財産や収支の状況、他の債務の有無などの情報を提供しなければなりません。この義務に違反して保証契約が締結され、その違反を債権者が知っていたか知ることができた場合、保証人は保証契約を取り消すことができます。

取り消しは脅威です。

また、保証人から請求があった場合、債権者は主債務者の債務履行状況について情報提供する義務があります。不動産賃貸借において、連帯保証人から「現在の滞納状況を教えてください」という問い合わせがあれば、オーナーや管理会社は速やかに回答する必要があるのです。

連帯保証債務履行における実務上の注意点

不動産業従事者が連帯保証債務履行に関わる際の最大の注意点は、求償権行使不能の判断タイミングです。税制特例を受けるためには、保証債務履行時点で主債務者に資力がなく、将来的にも回収できないことを証明する必要があります。

具体的な証明資料としては、主債務者の破産手続開始決定書、行方不明を示す調査報告書、無収入・無財産を示す陳述書などが求められます。これらの書類を揃えることは容易ではありません。特に、主債務者が単に「連絡がつかない」という状況では、求償権行使不能とは認められない可能性があります。

証拠が必要です。

国税不服審判所の裁決事例では、主債務者が事業を継続しており純利益を計上している状況で、保証人が求償権を放棄したケースについて、求償権行使不能とは認めないという判断が示されています。つまり、主債務者に返済能力がある限り、保証人が「請求しても無駄だから」と判断して求償権を放棄しても、税制特例は適用されないということです。

もう一つの落とし穴は、保証債務を履行した後の主債務者の資力回復です。保証債務履行時点では資力がなかった主債務者が、その後事業を再建して返済能力を回復した場合でも、一度認められた税制特例が遡って取り消されることはありません。ただし、回復後に実際に求償権を行使して回収した金額については、その年の所得として課税されます。

課税は避けられません。

連帯保証人が複数いる場合の求償関係も複雑です。連帯保証人Aが債務全額を弁済した場合、Aは主債務者だけでなく、他の連帯保証人Bに対しても、Bの負担部分について求償できます。例えば、2人の連帯保証人がいて総額1000万円の債務をAが全額弁済した場合、Aは主債務者に1000万円を請求できるだけでなく、Bに対しても500万円(負担部分)を請求できるのです。

不動産賃貸借契約において、賃借人が死亡した場合の連帯保証債務の取扱いにも注意が必要です。賃借人の死亡により賃貸借契約が終了しない限り、連帯保証人の責任は継続します。相続人がいない場合でも、連帯保証人は引き続き家賃支払義務を負うため、速やかに契約解除の手続きを進める必要があります。

速やかな対応が肝心です。

保証債務履行に伴う訴訟リスクも考慮すべきポイントです。連帯保証人が債務を履行した後、求償権を行使するために主債務者を提訴することがあります。しかし、主債務者に返済能力がない場合、勝訴判決を得ても回収できず、弁護士費用や訴訟費用が無駄になるケースが多いのです。

費用対効果を慎重に検討する必要があります。

連帯保証債務履行の記録管理も重要です。いつ、いくらの債務を、どのような方法で履行したのか、その後の求償権行使の経過はどうか、といった情報を時系列で整理しておくことで、将来的な税務調査や法的紛争に備えることができます。特に、税制特例を適用する場合は、5年間の書類保存義務があるため、確実な記録管理が求められます。

不動産業従事者としては、連帯保証人候補者に対して、連帯保証の重さとリスクを十分に説明する責任があります。安易に連帯保証人を引き受けて、後に多額の債務履行を迫られるケースが後を絶ちません。特に、高齢の族が連帯保証人になる場合、将来的に自宅を売却せざるを得ない事態も想定されるため、慎重な判断を促す必要があります。

説明責任は重大です。