生産緑地解除の流れと申請手続きを完全解説

生産緑地解除の流れと手続きを完全解説

生産緑地の買取申出から指定解除まで、実は市区町村が「必ず買い取らなければならない」わけではありません。買取申出後も最長3か月間、行政側に猶予があり、その間に第三者への斡旋が行われるため、解除完了まで想定以上の時間がかかるケースが多数あります。

🌿 生産緑地解除の流れ|3つのポイント
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買取申出のタイミングは限られている

指定から30年経過後または農業従事者が死亡・重篤な農業継続困難状態になった場合のみ申出可能。条件を満たさないと申請自体が受理されません。

行政の買取・斡旋期間は最長3か月

買取申出後、市区町村が買い取るか農業委員会等へ斡旋するかを3か月以内に決定。斡旋不成立の場合に初めて指定解除となります。

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解除後は宅地化・売却が可能になる

指定解除後は宅地転用・売却・建築が自由になりますが、固定資産税が農地課税から宅地課税へ切り替わるため、税負担が一気に増加します。

生産緑地解除の申請条件と買取申出が可能になるタイミング

生産緑地の指定解除を進めるには、まず「買取申出」の要件を満たしているかどうかの確認が第一歩です。要件を満たさない状態で申請しても受理されないため、この確認を怠ると時間とコストを無駄にすることになります。

買取申出が可能になる条件は、大きく分けて2つです。

  • 📅 指定から30年が経過した(1992年指定の場合は2022年以降が対象)
  • 🏥 主たる農業従事者が死亡・重篤な疾病・障害により農業継続が不可能になった

1992年に生産緑地法が大幅改正されて一斉指定された土地の多くは、すでに30年要件を満たしています。これが「2022年問題」として業界で注目されていた背景です。

つまり、現在は多くの生産緑地で買取申出が可能な状態になっているということです。

ただし、注意点があります。2022年の法改正により「特定生産緑地制度」が導入されており、30年経過前に特定生産緑地の指定を受けた土地は、指定解除の手続きが異なります。特定生産緑地に指定された場合は、10年ごとに指定新の手続きが必要で、更新を繰り返すことで保全が継続されます。指定更新を行わなかった場合は、改めて買取申出の手続きに進む流れとなります。

特定生産緑地かどうかは、各市区町村の都市計画課や農業委員会に確認するのが確実です。

国土交通省|生産緑地制度の概要と特定生産緑地制度の解説(参考:指定要件・手続きフローの公式情報)

生産緑地解除の手続きの流れ|買取申出から指定解除まで

買取申出の要件を満たした後は、以下の手順で手続きを進めます。流れを把握しておくことが大切です。

  1. 市区町村の農業委員会または都市計画課に買取申出書を提出
  2. 🔍 市区町村による買取意思の確認(申出から約1か月以内)
  3. 🤝 買取不可の場合、農業委員会による農業従事者等への斡旋開始(最長3か月)
  4. 斡旋不成立の通知(申出から最長3か月で確定)
  5. 📜 生産緑地の指定解除(都市計画の変更告示)

重要なのは「斡旋不成立」にならない限り、指定解除にはならないという点です。市区町村が積極的に農業従事者へ斡旋する間、所有者は土地を自由に動かすことができません。

斡旋が成立してしまった場合、その農業従事者に土地を売却しなければならなくなります。価格交渉は当事者間で行いますが、折り合いがつかないこともあります。

斡旋不成立の確認後、都市計画の変更手続きを経て告示が行われ、正式に指定解除となります。告示までにさらに数週間かかるケースもあり、買取申出から解除完了まで、最短でも4〜5か月はかかると見ておくのが現実的です。

手続きが完了するタイミングを見誤ると、融資のスケジュールや販売計画が大幅にずれるリスクがあります。スケジュール管理には余裕を持たせておきましょう。

※各市区町村の都市計画課Webサイトで手続きフロー・様式のダウンロードが可能(大阪市の例として参照)

生産緑地解除後の固定資産税の変化と税負担の実態

解除後の税負担増加は、多くの土地オーナーが予想以上に驚くポイントです。

生産緑地に指定されている間、固定資産税は「農地課税」として非常に低く抑えられています。都市部の農地では、同面積の宅地と比較すると固定資産税が数十分の一から百分の一以下になることもあります。

たとえば、東京23区内で200㎡(約60坪)の生産緑地を例にすると、農地課税では年間数万円程度の固定資産税が、宅地課税に切り替わると年間数十万円〜百万円以上になるケースがあります。

固定資産税の負担が一気に10〜100倍になるということです。

ただし、急激な税負担増を緩和する「激変緩和措置」があります。生産緑地の指定解除後、即座に宅地並み課税が適用されるわけではなく、一定の経過措置が設けられています。具体的には、解除後から宅地並み課税へ段階的に移行する仕組みが多くの自治体で採用されています。

ただし激変緩和措置の内容は自治体によって異なるため、必ず管轄の市区町村税務課に確認が必要です。

不動産業者としては、解除後のランニングコストを正確に試算して土地オーナーに提示することで、売却・開発のタイミング判断をサポートする提案が喜ばれます。これは他社との差別化にもつながりやすい実践的な知識です。

生産緑地解除後の土地活用と宅地転用の注意点

指定解除が完了しても、すぐに建物が建てられるわけではないケースがあります。意外と見落とされがちなポイントです。

まず確認すべきは都市計画法・建築基準法上の規制です。生産緑地は「市街化区域内農地」ですが、解除後も以下の規制は引き続き適用されます。

特に農地転用許可については、「生産緑地が解除されたから農地法の手続きは不要」と勘違いするケースが散見されます。生産緑地の指定解除と農地転用許可は、別の法令による別の手続きです。両方の手続きを並行して進める必要があります。

農地転用許可は農業委員会へ申請し、許可取得まで通常1〜2か月かかります。

宅地として整備・造成が必要な場合はさらに期間と費用が発生します。造成費用は土地の形状・規模・地盤条件によって大きく異なりますが、都市部の200㎡程度の土地でも100〜300万円程度かかるケースが珍しくありません。

解除から引渡しまでの総期間と費用を買主・売主双方に正確に説明することが、不動産業者としての信頼性向上につながります。

不動産業者が知っておくべき生産緑地解除の独自視点|2025年以降の市場動向と提案戦略

2022年の「2022年問題」を経て、生産緑地の解除件数は年々増加傾向にあります。国土交通省のデータでは、全国の生産緑地指定面積は2010年代後半から2020年代にかけて減少が続いており、特に東京・大阪・名古屋といった三大都市圏での供給増加が注目されています。

2025年以降も、指定から30年以上経過した生産緑地の解除申出が続くと予測されています。

これは不動産業者にとってビジネスチャンスでもあり、同時に競争激化のリスクでもあります。

生産緑地所有者へのアプローチで成果を出しやすいのは、「税負担の試算」「手続きのロードマップ提示」「解除後の活用シミュレーション」をセットで提案できる業者です。単純な売却仲介だけでなく、開発・賃貸・等価交換なども含めた複数の選択肢を比較提示することで、土地オーナーからの信頼を得やすくなります。

特に注目すべきは「特定生産緑地の更新期限切れ」です。10年ごとの更新を行わずに期限を迎えた特定生産緑地は、次のタイミングで買取申出が可能になります。この「更新切れ予定物件」を事前に把握しておくことが、競合他社より早く情報を取得するための実践的な戦略となります。

  • 📊 市区町村の都市計画課に生産緑地指定一覧の情報公開請求を行う
  • 📅 特定生産緑地の更新期限をリスト化してアプローチスケジュールを立てる
  • 🤝 農業委員会との連携で農業従事者の高齢化状況などの背景情報を把握する

手続きの流れを熟知していることが、オーナーにとっての安心感に直結します。税理士・司法書士・土地家屋調査士との連携体制を整えておくことで、ワンストップで解決策を提供できる体制を作っておくことをおすすめします。

国土交通省|生産緑地地区の指定状況(面積推移データ・統計情報の参考資料)