都市計画施設と用途地域の関係を不動産業者が知るべき理由

都市計画施設と建築制限を不動産業者が正しく理解する方法

都市計画施設の区域内にある物件は、売れ残りやすいどころか、正しく説明できないと重要事項説明義務違反で宅建業法違反になります。

この記事の3つのポイント
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都市計画施設とは何か

都市計画法に基づき「将来整備する予定」として定められた施設のこと。道路・公園・学校などが対象で、区域内は建築制限を受ける。

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建築制限の具体的な内容

都市計画施設の区域内では、原則として2階以下・地階なし・木造等の建築物しか建てられない。これを知らずに重説すると違反になる。

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不動産業者が取るべき実務対応

都市計画図の確認・都市計画道路の有無チェック・許可申請の要否判断が必須。見落とすと取引後のクレームや損害賠償につながる。

都市計画施設の定義と不動産取引における基本的な位置づけ

 

都市計画施設とは、都市計画法第11条に基づいて「将来的に整備・開発する予定の施設」として都市計画に定められたものを指します。道路、公園、学校、病院、市場、河川、下水道など、生活インフラに関わる幅広い施設が対象です。

重要なのは、「現在は整備されていないが、将来整備する予定がある」という点です。つまり今は普通の土地や建物に見えていても、都市計画施設の区域に指定されていれば、将来その土地は公共事業のために取得・収用される可能性があります。

不動産業者にとってこれが問題になるのは、取引時の説明義務との関係です。宅地建物取引業法では、都市計画施設の区域内にある土地・建物については、重要事項説明書に必ずその旨を記載しなければなりません。これが基本です。

説明を怠った場合、買主または借主から「知らなかった」として契約解除損害賠償を求められるリスクがあります。実際に国土交通省への苦情・紛争案件のなかには、都市計画制限の説明漏れに起因するものが一定数含まれています。

都市計画施設の指定状況は、各市区町村が保有する都市計画図(都市計画情報システム)で確認できます。物件調査の段階でこれを確認する習慣をつけることが、トラブル防止の第一歩です。

都市計画施設の区域内における建築制限の詳細と許可申請の実務

都市計画施設の区域内では、建築物の建築に際して都道府県知事(または市長)の許可が必要になります。これは都市計画法第53条に定められており、許可なく建築すると違法建築物となります。

許可が下りる建築物にも条件があります。原則として以下の3要件をすべて満たす必要があります。

  • 🏠 階数が2以下で、かつ地階を有しないこと
  • 🪵 主要構造部が木造・鉄骨造・コンクリートブロック造など(容易に移転・除却できる構造)であること
  • 📋 都市計画施設の整備に支障を及ぼさないこと

つまり、「木造2階建てなら許可が取りやすい」ということですね。一方、鉄筋コンクリート造の3階以上の建物は、原則として許可が下りません。

この制限は、将来の公共事業(道路整備など)に備えて、除却しやすい建物だけを認めるという趣旨から来ています。移転補償のしやすさが基準になっているわけです。

実務で問題になりやすいのが、既存建物のリフォーム・増築です。区域内の建物を大規模改修しようとした場合も、許可申請が必要になることがあります。売買前にリフォーム計画がある買主に対しては、この点を必ず説明しておく必要があります。

許可申請は各市区町村の都市計画担当窓口で行います。申請から許可まで通常2〜4週間程度かかるため、スケジュールに余裕を持った対応が重要です。期限があります。

なお、都市計画事業の認可が告示された後(事業地内)になると、制限はさらに厳しくなり、知事許可なしには土地の形質変更や建築物の建築が一切できなくなります(都市計画法第65条)。「計画決定」と「事業認可」の違いを正確に理解しておくことが条件です。

参考:都市計画法第53条に基づく建築許可制度の概要(国土交通省)

国土交通省|都市計画制限について

都市計画道路の廃止・変更事例から学ぶ、長期指定リスクの実態

都市計画施設のなかで、不動産取引に最も影響を与えるのが「都市計画道路」です。意外と知られていないのは、都市計画道路には「指定から50年以上経過しているのに、いまだ整備されていない路線が全国に多数存在する」という現実です。

国土交通省の調査によると、2020年時点で全国の都市計画道路の整備率はおよそ65〜70%程度にとどまっています。つまり3割以上の路線がまだ「計画のまま」で残っているわけです。厳しいところですね。

このような長期未整備の都市計画道路の区域内にある土地は、何十年もの間「建て替えに制限がかかる土地」として市場に出続けることになります。実際、1950〜60年代に指定された都市計画道路が現在も変されずに残っているケースが各地にあります。

一方で近年、各自治体は「都市計画道路の見直し」を進めており、必要性が薄れた路線については廃止・変更する動きが活発化しています。東京都では2006年・2016年と2度にわたる見直しで、合計約170kmの都市計画道路を廃止または変更しました。

これは不動産業者にとってチャンスでもあります。廃止・変更された路線の区域内の土地は、建築制限が解除され、資産価値が上昇することがあるからです。これは使えそうです。

自治体の都市計画見直し情報を定期的にチェックする習慣をつけることで、価値が変わりつつある物件をいち早く把握できます。各都道府県・市区町村の都市計画担当ページを確認する、またはJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)提供の地図サービスを活用するのが効率的です。

都市計画施設区域内の物件を扱う際の重要事項説明の書き方と注意点

重要事項説明書において、都市計画施設の区域内にある物件は「都市計画法・建築基準法等の法令に基づく制限の概要」の欄に記載します。記載すべき内容は以下の通りです。

  • 📝 都市計画施設の種類(例:都市計画道路、都市計画公園など)
  • 📍 施設の名称(例:○○号線、△△公園など)
  • 📐 区域内に含まれる土地の面積または割合(可能な場合)
  • 🚧 建築制限の内容(法第53条の制限または法第65条の制限)
  • 📆 計画決定年月日・事業認可の有無

「制限があることを書けばOK」という認識は危険です。制限の具体的な内容(何階まで建てられるか、許可申請が必要かどうか)まで説明しなければ、説明義務を果たしたとは言えません。

特に注意が必要なのが、「一部のみ区域内」のケースです。土地の一部だけが都市計画施設の区域に含まれている場合でも、建物の配置によっては建築制限が実質的に土地全体に影響することがあります。図面上で区域の境界線がどこを通っているかを正確に確認することが必須です。

また、買主が「将来収用されるリスク」を十分理解した上で購入判断できるよう、口頭でも補足説明を行うことが望ましいです。書面に記載するだけでなく、口頭での補足も実務上の標準対応と考えておきましょう。

なお、都市計画施設の計画が廃止された場合は制限が解除されますが、廃止の告示前に締結した売買契約では、廃止後の状況を保証する記載は原則できません。契約時点の法令状況を正確に反映することが原則です。

都市計画施設の調査方法:不動産業者が使うべき情報源と実務フロー

都市計画施設の調査は、物件調査の初期段階で必ず実施すべきです。調査が遅れるほど、取引スケジュール全体に影響が出ます。

調査に使える主な情報源は以下の通りです。

  • 🗺️ 都市計画図:各市区町村の窓口またはウェブサイトで入手可能。最も基本的な資料です
  • 💻 国土数値情報ダウンロードサービス(国土交通省):都市計画区域や都市計画施設のGISデータを無料でダウンロード可能
  • 🏛️ 各自治体の都市計画情報システム:ウェブ上で住所検索するだけで都市計画施設の指定状況を確認できる自治体が増えています
  • 📞 役所の都市計画担当窓口への照会:複雑なケースや境界が不明確な場合は直接照会するのが確実です

実務フローとしては、①都市計画情報システムで対象地の指定状況をスクリーンショット保存→②都市計画図で区域境界を確認→③不明点があれば窓口照会→④重要事項説明書に反映、という流れが基本です。

調査時に特に確認すべきポイントは、「計画決定のみか、事業認可まで進んでいるか」の区別です。事業認可後は法第65条の制限が加わり、制限内容が大幅に厳しくなります。この違いを重説で正確に伝えることが条件です。

また、都市計画施設の情報は更新されることがあります。前回の調査から時間が経過している場合は、再調査を行うことを習慣にしてください。特に自治体の都市計画見直し作業が進んでいる地域では、指定状況が変わっているケースもあります。

GIS技術を活用した調査効率化のために、各自治体が提供するウェブマップサービス(例:東京都の「都市計画情報提供システム」、大阪府の「大阪府GISポータル」など)を積極的に活用することをおすすめします。これらは無料で利用でき、住所を入力するだけで都市計画の指定状況を地図上で確認できます。

参考:国土数値情報ダウンロードサービス(都市計画区域・施設データ)

国土交通省|国土数値情報ダウンロードサービス

参考:東京都都市計画情報提供システム(区域・制限の確認に有用)

東京都都市計画情報提供システム

不動産業者だけが知るべき、都市計画施設区域内物件の価格交渉と活用の独自視点

一般的に「都市計画施設の区域内=マイナス要因」と捉えられがちですが、局面によってはプラスに転じる要素もあります。この視点を持つことが、不動産業者としての差別化につながります。

まず価格面です。都市計画施設の区域内の土地は、建築制限を理由に周辺相場より安く評価されるのが通常です。例えば、都市計画道路の区域内にある土地は、同エリアの区域外土地と比較して10〜30%程度低く査定されるケースが実務上よくあります。

この価格差を「リスクの割引」として正しく伝えることが、買主への誠実な対応です。一方で、事業化の見通しがほぼない長期未整備路線の場合は、「制限はあるが将来の収用リスクは低い」という現実も伝える余地があります。

また、将来的に収用(土地の買い上げ)が行われる場合は、正当な補償金が支払われます。この補償額は「近傍類地の取引価格」を参考に算定されるため、著しく低い金額にはなりにくいという特徴があります。つまり収用=損失確定、とは必ずしも言えません。

さらに、都市計画道路の整備によって周辺の利便性が向上した場合、残った区域外の土地の価値が上昇することもあります。区域内外両方の土地を持つオーナーにとっては、一部収用後に残地の価値が上がるケースもあります。意外ですね。

こうした多面的な情報を提供できる業者は、買主・売主双方から「信頼できる担当者」と評価されます。都市計画施設に関する知識は、単なる法令対応を超えて、顧客との信頼関係構築のツールになるわけです。

都市計画事業に関する補償制度の詳細は、各都道府県の収用委員会や用地交渉担当部署のウェブページで確認できます。補償の仕組みを事前に理解しておくと、顧客への説明がよりスムーズになります。

参考:土地収用法に基づく補償制度の概要(国土交通省)

国土交通省|用地取得・補償制度について

都市計画(第4版)