地区計画と地区整備計画の違いを宅建で正確に理解する

地区計画と地区整備計画の違いを宅建で正確に理解する

地区整備計画が定められている区域内で着手30日前に届出を忘れると、勧告対象になって取引が止まります。

📌 この記事の3つのポイント
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地区計画=大枠の方針

地区計画は「緑豊かな住宅街にする」といった目標・方針の大枠を定める都市計画の一種。地区整備計画はその具体的な実施内容を定めた下位計画です。

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地区整備計画は省略できるケースがある

特別な事情があれば、地区計画の区域の全部または一部に地区整備計画を定めなくてもよい(都市計画法12条の5)。宅建試験でも出題されるポイントです。

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届出は「許可」ではない

地区整備計画が定められた区域内での建築行為は「許可」ではなく「届出(着手30日前)」が必要。市町村長は違反行為に対して命令ではなく「勧告」のみ可能です。

地区計画とは何か:宅建で問われる基本定義

 

地区計画は、都市計画の一種として都市計画法第12条の5に規定された「地区レベルの街づくり計画」です。 都市全体の方針を決める都市計画が「国道・幹線道路」レベルの話だとすれば、地区計画は「一つの住宅街」レベルで良好な環境を整備・保全するための計画といえます。utsunomiya-baikyaku+1

定義が大枠の方針です。

地区計画に都市計画として「必ず定める事項」は、①地区計画の種類・名称・位置・区域、②地区施設、③地区整備計画の3つです。 一方、「定めるよう努める事項」として扱われるのが①面積、②目標、③整備・開発・保全に関する方針の3つで、この区別が宅建試験で出題されます。 「面積は努力義務」という点は特に頻出です。ss-up+1

地区計画を定めることができる区域は限られています。

参考)都市計画法4 地区計画 地区整備計画・地区計画の届出・届出不…

  • 用途地域が定められている区域:積極的に活用が期待される
  • 用途地域が定められていない区域:不良な街区の形成防止など一定の場合に限られる
  • 準都市計画区域:地区計画を定めることができない(重要な例外)

地区整備計画の定義と地区計画との階層関係

地区整備計画とは、地区計画の目標・方針を達成するために「地区施設の配置・規模」「建築物の敷地・用途・構造等」を具体的に定めた計画です。 地区計画が「緑豊かな住宅街にする」という目標を定めた場合、地区整備計画では「公園はここに何㎡」「建物の高さは○m以下」という細部を定めます。 つまり「地区計画=上位の大方針」「地区整備計画=その実施の細則」という階層構造になっています。takken-siken+1

項目 地区計画 地区整備計画
位置づけ 都市計画の一種(上位計画) 地区計画の一部(下位計画)
内容 目標・方針の大枠 建物・施設の具体的制限
必須性 必ず定める事項あり 特別な事情があれば省略可
主体 市区町村が策定 市区町村(住民要請も可)
届出義務 なし 着手30日前に届出必要

重要な点は、地区整備計画は「必ず定めなければならない」わけではないということです。 都市計画法第12条の5第6項の規定により、「特別の事情があるときは、地区計画の区域の全部または一部について地区整備計画を定めることを要しない」とされています。 ただし一部だけ省略する場合は、どの区域に地区整備計画があるかを都市計画に明記しなければなりません。

参考)https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/028/76000028/76000028.html

宅建試験で狙われる届出のルール:許可ではなく届出

ここは宅建試験でも不動産実務でも、最もミスが多いポイントです。

地区整備計画が定められている区域内で「土地の区画形質の変更」「建築物の建築」「工作物の建設」「建築物等の用途変更」を行う場合、行為に着手する日の30日前までに市町村長に届け出なければなりません。 「届け出た後に着手する」のではなく、「着手の30日前」というタイミングが条件です。city.chuo.lg+1

以下は宅建過去問で繰り返し出題されている”ひっかけパターン”です。

参考)【宅建過去問】(平成01年問19)都市計画法(地区計画) &…

  • ❌「行為の後30日以内に届け出る」→ 誤り(事前届出が必要)
  • ❌「都道府県知事の許可が必要」→ 誤り(許可ではなく届出)
  • ❌「市町村長の許可が必要」→ 誤り(許可制度ではない)
  • ✅「着手する日の30日前までに市町村長に届け出る」→ 正しい

届出が不要な例外も覚えておく必要があります。

  • 通常の管理行為・軽易な行為
  • 非常災害のための応急措置として行う行為
  • 都市計画事業の施行として行う行為
  • 国または地方公共団体が行う行為
  • 開発許可を要する行為(これも届出不要)

「開発許可を要する行為は届出不要」という点は盲点になりやすいです。

違反時は命令ではなく勧告のみ:市町村長の権限の限界

地区整備計画の区域内で違反行為があった場合、市町村長が取れる措置は「勧告」だけです。 命令や強制執行といった強制的な措置はできません。これは宅建試験でも実務でも重要な知識です。

参考)https://takkenn01.com/979/

具体的には、「地区計画の内容に適合しない届出があった場合」に、市町村長は届出をした者に対して「設計の変更その他必要な措置をとることを勧告することができる」とされています。 勧告が条件です。

また、住民(地権者等)が市区町村に対して地区整備計画の策定を申し出ることも可能ですが、その申し出に強制力はありません。 ただし「地権者全員の合意がある場合」に限り、市区町村から地権者に対して要請ができる仕組みがあり、この場合は前者よりも強制力が高くなります。

不動産実務でこの違いが問題になるのは、取引の相手方が地区計画の内容に違反した建物を建てようとしているケースです。この場面のリスクを整理すると次のとおりです。

  • 違反建築に対して市町村長は「勧告」のみで「命令」は不可
  • 勧告に従わない建築物は、法的に強制撤去できない
  • 取引後に発覚した場合、買主からのクレームや損害賠償のリスクが生じる

事前に地区計画の有無と地区整備計画の内容を確認することが、トラブル回避の基本です。

確認方法としては、市区町村の都市計画課への照会や、国土交通省の「都市計画情報提供システム」の活用が実務では標準的な手順です。

参考:地区計画制度の法的根拠については国土交通省の公式ページが詳しい。

地区計画等 | 国土交通省

宅建試験での独自視点:地区整備計画が定められていない区域の実務リスク

地区計画があっても地区整備計画が定められていない区域は、実は届出義務が発生しません。 地区整備計画が存在して初めて届出義務が生じるからです。この事実を知らないと、不要な届出手続きに時間を取られたり、逆に必要な届出を見落としたりします。

参考)地区計画の区域内での行為(都市計画法第58条の2)/高岡市公…

意外なポイントですね。

不動産業従事者が「地区計画あり」と確認しただけで安心してしまうケースは珍しくありません。ところが「地区計画はあるが、地区整備計画はまだ策定されていない区域」が都市部にも存在します。この場合、建築制限が実質的に機能していない状態であり、将来的に地区整備計画が追加されると突然規制が生じるリスクがあります。

  • 現在:地区整備計画なし → 届出義務なし・建築制限なし
  • 将来:地区整備計画が追加 → 突然、高さ制限・用途制限が適用開始

購入後に地区整備計画が策定され、想定していた建物が建てられなくなるという事例は全国で報告されています。重要事項説明において「地区計画の有無」だけでなく「地区整備計画の有無と今後の策定予定」まで確認することが、買主保護の観点から求められます。

市区町村の都市計画課に「今後地区整備計画の策定予定があるか」を口頭で照会するだけで、この種のリスクは大幅に減らせます。実務では1本の電話で確認できることなので、取引前のルーティンに入れておくと安心です。

参考:地区計画の届出制度の実務的な詳細(高岡市の解説ページ)

地区計画の区域内での行為(都市計画法第58条の2)|富山県高岡市

参考:宅建試験における地区計画の出題パターン(過去問解説)

【宅建過去問】令和3年10月問15・都市計画法(地区計画)|e-takken.tv

基礎から応用までしっかりわかる 都市計画法の教科書