景観協定と建築協定の違いと不動産実務での注意点

景観協定と建築協定の違いを不動産実務で正しく理解する

景観協定と建築協定を「どちらも建物の制限でしょ」と同一視していると、契約後に買主から損害賠償を請求されるリスクがあります。

🏠 この記事の3つのポイント
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法的根拠がまったく異なる

景観協定は景観法、建築協定は建築基準法に基づき、効力の強さと締結プロセスが大きく違います。

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承継効の有無が取引の明暗を分ける

建築協定には「1人協定」制度があり、土地を売却した後も新所有者に協定が自動承継される点は見落とされがちです。

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重要事項説明への記載義務がある

両協定ともに重要事項説明書への記載対象です。記載漏れは宅建業法違反につながります。

景観協定と建築協定の法的根拠と基本的な違い

「景観協定」と「建築協定」は、どちらも地域の住環境を守るための住民ルールです。しかし、根拠となる法律がまったく異なります。

景観協定は景観法(2004年制定)に基づき、景観計画区域内において土地所有者等が締結する協定です。一方、建築協定は建築基準法第69条に基づき、建築物の敷地・構造・用途などについて定める協定になります。

つまり「景観」か「建築」かで管轄法が変わります。

景観協定の目的は、街並みの色彩・デザイン・緑化率など見た目の統一性を保つことにあります。対して建築協定は、建ぺい率・容積率・建物用途・最低敷地面積など建築そのものの基準を地域独自に上乗せして定めるものです。

不動産実務では「どちらも制限の話」と一括りにされがちですが、適用される場面・手続き・効力が異なるため、区別して理解することが必須です。

項目 景観協定 建築協定
根拠法 景観法 建築基準法
主な規制内容 外観・色彩・緑化など 敷地面積・用途・構造など
締結要件 全員同意(景観行政団体の認定) 全員同意(特定行政庁の認可)
承継効 あり(協定区域内の新所有者にも効力) あり(同上)
1人協定制度 なし あり

参考:景観法の概要と景観協定について

国土交通省「景観行政の推進」

景観協定の成立要件と不動産取引での注意点

景観協定が有効に成立するためには、景観行政団体(都道府県または景観行政を担う市町村)が景観計画を策定していることが大前提です。

締結には協定区域内の土地所有者および借地権者の全員の同意が必要で、締結後は景観行政団体の認定を受けて初めて効力が生じます。これが基本です。

認定を受けた後に協定区域内の土地の所有権が移転した場合、新しい所有者も自動的に協定の当事者となります。つまり承継効があります。

不動産取引の現場では、以下の点を売買前に必ず確認しておく必要があります。

  • 対象地が景観計画区域内にあるかどうか
  • 景観協定が締結・認定されているかどうか
  • 協定の具体的な内容(色彩制限・外壁素材・高さ制限など)
  • 協定の有効期間と新の有無

景観協定に違反して建築した場合、景観行政団体から是正命令が出される可能性があります。是正命令に従わないと氏名公表や行政代執行に至るケースもあり、金銭的なダメージは数百万円規模になることもあります。痛いですね。

買主への説明を怠ると、後日クレームや損害賠償請求に発展するリスクがあります。重要事項説明書には必ず記載しましょう。

参考:景観協定の認定事例と手続き

国土交通省「景観協定の手引き」(PDF)

建築協定の成立要件と「1人協定」制度の活用

建築協定は建築基準法第69条に基づき、特定行政庁(都道府県知事や市長など)の認可を受けて成立します。

成立には原則として全員の合意が必要ですが、建築協定には景観協定にはない「1人協定(単独協定)」制度が存在します。これが大きな特徴です。

1人協定とは、土地を分譲する前の段階で、1人の土地所有者が単独で建築協定を設定できる制度です(建築基準法第76条の3)。開発業者が宅地分譲前に設定し、購入者全員に協定内容を引き継がせる仕組みとして広く使われています。

具体的なイメージとしては、こんな場面で使われます。

  • 🏘️ 100区画の戸建て分譲地で「最低敷地面積100㎡以上」のルールを設定する
  • 🏠 「建物は2階建て以下にする」という高さ制限を設ける
  • 🚗 「1区画に1台以上の駐車場を確保する」という条件を義務付ける

1人協定は認可後3年以内に2人以上の所有者が生じることで正式な建築協定に移行します。3年を経過しても1人のままであれば、協定は失効します。これだけ覚えておけばOKです。

不動産業者として分譲地を仕入れる際や、すでに分譲された住宅地の物件を扱う際には、建築協定の存在と内容、設定日、有効期間を調べておくことが必要です。

景観協定と建築協定の違いが重要事項説明に与える影響

宅地建物取引業法第35条に基づく重要事項説明では、建築協定も景観協定も説明対象となります。どちらも「私法上の制限」ではなく、行政の関与を経た公的な拘束力のある制限として扱われます。

重要事項説明書(35条書面)への記載が求められる具体的な内容は以下のとおりです。

  • 協定の名称と根拠法(景観法 or 建築基準法)
  • 協定区域(対象地が含まれるかどうか)
  • 協定の主な内容(高さ・色彩・敷地面積・用途など)
  • 協定の有効期間
  • 協定違反時のペナルティ

記載を怠ると宅建業法違反(指示処分・業務停止処分)の対象になります。

特に注意が必要なのは、複数の制限が重複するケースです。例えば、用途地域の制限に加えて建築協定でさらに厳しい敷地面積制限が定められている場合、買主は法令上の制限だけを確認しても実際に建てられる建物がわからないことがあります。

「法令上の制限には引っかかっていない」と安易に判断すると、後日トラブルになります。建築協定・景観協定の内容は、市区町村の都市計画課や建築指導課で確認できます。取引前に必ず現地の行政窓口への照会を実施することをお勧めします。

参考:宅建業法上の重要事項説明に関する解説

国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」

景観協定と建築協定が不動産価値に与える影響と独自視点での活用法

「制限が多い土地=売れにくい」と思われがちですが、景観協定・建築協定が存在する地域は資産価値が安定しやすいという側面があります。意外ですね。

国土交通省の調査では、住環境に関する協定が整備された地域の住宅地価格は、周辺地域と比較して長期的に5〜15%程度高く推移する傾向が報告されています。統一感のある街並みは住みやすさの指標として評価されるため、高所得層や子育て世帯からの需要が高まりやすいです。

つまり、協定地域は「制限があるから不利」ではなく「品質が保証されているから高付加価値」という見方ができます。

不動産業者として、この視点を営業トークに組み込むことができます。

  • ✅ 「周辺の街並みが今後も守られる安心感」として買主に訴求する
  • ✅ 「隣家が突然派手な外観に変わるリスクがない」という安定性を説明する
  • ✅ 投資目的の買主には「賃貸需要・資産価値の維持」という観点で提案する

一方で、建築協定による最低敷地面積制限(例:最低120㎡)がある場合、敷地を分割して2棟建てる事業用途では使えないため、土地の流動性が下がるというデメリットもあります。

売主が業者で事業利用を想定していた場合、建築協定の内容次第で大幅な計画変更を余儀なくされることもあります。仕入れ前の調査が条件です。

協定の存在を「デメリット」として伝えるか「メリット」として伝えるかは、買主・売主の属性と目的に応じて柔軟に切り替えることが、不動産プロとしての腕の見せ所です。これは使えそうです。

参考:住環境整備と不動産価値に関する調査

国土交通省 地価公示・地価調査(地価情報検索)