地すべり防止区域マップで見落とす重要リスクと対策

地すべり防止区域のマップを正しく読み解く実務ガイド

地すべり防止区域のマップは「国土交通省のハザードマップポータルサイトで見れば十分」と思い込んでいると、取引後に数百万円規模のクレームに発展するケースがあります。

📌 この記事の3ポイント要約
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マップだけでは判断できない

国のハザードマップと都道府県指定の地すべり防止区域は範囲が異なる場合があり、複数ソースの照合が必須です。

⚖️

法的規制は取引前に必ず確認

地すべり等防止法に基づく区域内では、一定の土地改変行為に都道府県知事の許可が必要で、違反すると罰則があります。

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重説での告知義務を正確に理解する

地すべり防止区域は宅建業法上の重要事項説明義務の対象。告知漏れは業務停止処分や損害賠償リスクに直結します。

地すべり防止区域のマップとは何か:指定の根拠と仕組み

 

地すべり防止区域は、地すべり等防止法(昭和33年法律第30号)に基づいて農林水産大臣または国土交通大臣が指定する区域です。指定の目的は「地すべりによる被害を除去・軽減し、公共の利益を守ること」であり、単に危険を示すマップとは性格が異なります。

全国の指定箇所数は農林水産省と国土交通省を合わせると約7,000区域にのぼります。これは東京都の面積の約1.5倍に相当する規模です。指定区域の分布は西日本の山地に集中しており、特に高知県・島根県・新潟県では市街地に隣接した区域も少なくありません。

つまり「山の中だから関係ない」とは言えません。

マップを確認するには主に2つの窓口があります。まず国土交通省の「ハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ)」でレイヤーを切り替えて表示する方法。もう一つは、各都道府県の土木事務所や農業振興局が公開している独自のGISマップです。

重要なのはこの2つの範囲が完全に一致するとは限らないという点です。ポータルサイトの新タイミングと都道府県の台帳更新にはズレが生じることがあり、最新の指定状況は必ず各都道府県の窓口で台帳を確認する必要があります。照合は2ステップで完結します。

  • ステップ1:ハザードマップポータルサイトで対象地番周辺を目視確認
  • ステップ2:都道府県の担当窓口(土木事務所または農業振興局)で台帳照会を実施

参考リンク:農林水産省および国土交通省が所管する地すべり防止区域の指定状況や法的根拠を確認できます。

国土交通省:地すべり等防止法の概要

地すべり防止区域マップの正確な見方:土砂災害警戒区域との違い

不動産実務の現場で最も混同されやすいのが、地すべり防止区域と土砂災害警戒区域(イエローゾーン・レッドゾーン)の違いです。この2つは名称が似ていますが、根拠法も規制内容も全く異なります。

これは別物だと覚えておくのが原則です。

区分 根拠法 目的 行為規制
地すべり防止区域 地すべり等防止法 防止工事・行為制限 知事許可が必要な行為あり
土砂災害特別警戒区域 土砂災害防止法 警戒避難・開発抑制 特定開発行為に許可が必要
急傾斜地崩壊危険区域 急傾斜地法 崩壊防止 一定行為に許可が必要

マップ上でこれらを1枚のレイヤーで重ねて確認できるのがハザードマップポータルサイトの強みです。ただし、表示色やレイヤーの重なりで地すべり防止区域が土砂災害警戒区域の影に隠れて見えなくなることがあります。確認時は必ずレイヤーを1種類ずつ表示して目視確認してください。

実務では「土砂災害警戒区域に入っていないから安全」と判断して地すべり防止区域のチェックを省略するケースが後を絶ちません。厳しいところですね。土砂災害警戒区域から外れていても、地すべり防止区域に指定されていれば造成・掘削・盛土などに知事許可が必要になり、購入者が計画していたリフォームや外構工事が許可されない可能性があります。

参考リンク:土砂災害警戒区域と地すべり防止区域の違い、重要事項説明での取り扱いについて詳しく解説されています。

国土交通省:土砂災害警戒区域等の指定状況

地すべり防止区域内の行為規制と重要事項説明での告知義務

地すべり防止区域内では、地すべり等防止法第18条に基づき、以下の行為を行う場合は都道府県知事の許可が必要です。無許可で行った場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

  • 🔨 地下水の排除を目的とした工作物以外の地下水誘致・排水行為
  • ⛏️ のり切り、切土、掘削(一定規模以上)
  • 🪨 盛土、堆積(土石等の堆積を含む)
  • 🌊 ため池・用排水路・その他の施設の新設・改廃
  • 🏗️ 地すべり防止施設の損傷・除去

罰金刑が課される可能性があります。

宅地建物取引業法上、地すべり防止区域への該当は重要事項説明書(35条書面)への記載が義務付けられています。具体的には「造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域に関する事項」と並んで、地すべり防止区域の該当有無を明記しなければなりません。

告知漏れが発覚した場合、買主から損害賠償請求を受けるだけでなく、宅建業者として業務停止処分(最大1年)指示処分の対象となります。過去には告知漏れを理由に数百万円規模の損害賠償が認められた裁判例も存在します。結論はシンプルです。

重要事項説明作成時のチェックリストとして、以下の3点を確認する運用を徹底してください。

  1. 都道府県の台帳で地すべり防止区域の指定有無を確認(ポータルサイトのみの確認は不可)
  2. 指定区域内の場合、具体的な規制内容(許可が必要な行為の範囲)を担当窓口に照会
  3. 重要事項説明書の「その他重要な事項」欄に指定の事実と規制内容を具体的に記載

参考リンク:宅建業法35条に基づく重要事項説明義務の範囲と、土砂関連区域の記載方法について解説されています。

国土交通省:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

地すべり防止区域マップを使った実務調査の手順と注意点

実際の調査フローを整理します。物件の地番・住居表示が確定したら、以下の順序で進めるのが最も確実です。

① ハザードマップポータルサイトで概況把握

国土交通省の「重ねるハザードマップ」にアクセスし、地すべり防止区域のレイヤーをオンにして対象地点を確認します。このステップはあくまでスクリーニング(スクリーニング)です。ポータルサイトに表示がなくても、指定されているケースがあることを忘れないでください。

② 都道府県窓口への台帳照会

ポータルサイトで該当なしの場合でも、必ず都道府県の担当部署(農林水産部・砂防課・農村整備課などは県によって異なる)に問い合わせて台帳を照会します。照会は電話1本で対応してもらえる都道府県が多く、回答までのリードタイムは平均1〜3営業日です。

③ 現地調査との照合

マップ上の境界線と現地の地形を照合します。地すべり防止区域の境界は傾斜の変換点や尾根・谷筋に沿っていることが多く、現地を歩くことで対象地が区域内・外のどちらかをより正確に判断できます。

④ 調査記録の保存

照会した日時・対応者名・回答内容を書面で記録し、取引ファイルに綴じておきます。万一トラブルが発生した際に、調査義務を果たした証拠になります。記録は必須です。

実務上のよくある失敗として、複数の筆にまたがる物件で一部の筆だけを調査し、残りを省略してしまうケースがあります。地すべり防止区域の境界は筆界と一致しないことが多いため、隣接する筆も含めて面的に調査するのが鉄則です。

地すべり防止区域が不動産価格・融資・売却戦略に与える実務的影響(独自視点)

地すべり防止区域の指定は、法的規制の問題だけでなく不動産の資産価値・融資審査・売却戦略にも直接影響します。この視点を持っている不動産業従事者はまだ少数派です。これは使えそうです。

融資への影響

金融機関の住宅ローン審査では、担保評価の段階でハザード情報を参照するケースが増えています。地すべり防止区域の指定が判明すると、担保評価額が通常より10〜30%低く査定される金融機関もあります。買主がローンを申し込んだ後に判明して融資否決→契約解除、というトラブルは実際に起きています。

売却価格への影響

区域内でも「防止工事が完了し安全性が確認されている土地」と「未整備の土地」では市場評価が大きく異なります。国や都道府県が整備した地すべり防止施設(排水トンネル・抑止杭など)の有無と維持管理状況を把握しておくと、査定の根拠として説得力が増します。

売却戦略として、区域内の土地は農地転用や開発行為の可否も事前に確認しておく必要があります。地すべり防止区域+農業振興地域整備法上の農振農用地が重なる場合、農振除外と知事許可の両方が必要になり、スケジュールが大幅に延びることがあります。

買主説明のポイント

地すべり防止区域に指定されている土地を提案する際は、以下の情報をセットで提示すると買主の安心感が高まります。

  • 📋 都道府県が公表している防止工事の整備状況(工事済み/計画中/未整備)
  • 📍 区域の境界線と建物建設予定地との距離感(メートル単位で示す)
  • 🏛️ 過去の地すべり発生履歴(都道府県の防災情報や地すべり資料館のデータ)
  • 📄 建築確認や造成許可の取得見込み(事前に担当窓口へ照会した結果)

地すべり防止区域内の土地を「危険だから売れない」と最初から諦めるのではなく、整備状況と規制内容を正確に把握した上で適切な説明をすることが、不動産業従事者としての信頼につながります。情報の非対称性を埋めることが、この仕事の本質です。

参考リンク:地すべり防止施設の整備状況や維持管理に関する技術情報が掲載されています。土地の安全性を買主に説明する際の根拠資料として活用できます。

農林水産省:地すべり防止対策の取組み

参考リンク:地すべり防止区域の指定箇所一覧や指定基準について確認できます。都道府県窓口への問い合わせ前の予備知識として有用です。

国土交通省:砂防部門 地すべり防止対策

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