造成宅地防災区域の調べ方と不動産取引で知っておくべき実務知識
重説チェックを「区域外」と記入する前に、擁壁工事費が数百万円~数千万円になる事実を知らないと取引後にクレームが来ます。
造成宅地防災区域とは何か|制度の定義と調べ方の前提知識
造成宅地防災区域とは、宅地造成等工事規制区域外にある造成済みの宅地のうち、地震などによる崖崩れや土砂の流出など、災害発生のおそれが大きいと判断された区域を指します。 都道府県知事(政令指定都市では市長)が「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)」に基づき指定します。iqrafudosan+1
制度が生まれた直接のきっかけは、2004年の新潟県中越地震です。 宅地造成工事規制区域外で崖崩れや土砂流出が多発したため、2006年の法改正によりこの区域指定制度が誕生しました。つまり、工事中の規制だけでは防げなかった被害がある、ということですね。
| 比較項目 | 造成宅地防災区域 | 宅地造成工事規制区域 |
|---|---|---|
| 対象 | 造成済み・既存の宅地 | 工事中または工事予定の土地 |
| 法的根拠 | 盛土規制法 第45条 | 盛土規制法(旧宅地造成等規制法含む) |
| 指定主体 | 都道府県知事・政令市長 | 同上 |
| 所有者の主な義務 | 擁壁設置・維持管理・改善命令対応 | 工事の届出・許可取得・施工基準遵守 |
重要なのは、宅地造成工事規制区域と造成宅地防災区域は重複指定できないという点です。 宅建試験の頻出事項でもありますが、実務でも混同すると重説の記載誤りに直結します。これが原則です。
参考)【宅建過去問】(平成19年問23)盛土規制法 –…
参考:国土交通省「宅地造成及び特定盛土等規制法(通称「盛土規制法」)について」
盛土規制法の制度全体像・改正内容・指定状況の概要が確認できます。
造成宅地防災区域の調べ方|自治体サイト・防災課への問い合わせ手順
調べ方の基本は、対象地の市区町村または都道府県の公式サイトで検索することです。 検索窓に「◯◯市 造成宅地防災区域」と入力するだけで、該当ページに辿り着けます。これだけ覚えておけばOKです。fudousan-wakaru+1
公式サイトで情報が見当たらない場合や、地番単位での正確な確認が必要な場合は、役所の防災課(自治体によって呼称が異なる場合あり)に直接電話・来庁して問い合わせます。 その際は以下の情報を手元に準備してから問い合わせましょう。
- 📍 対象地の地番(住居表示だけでなく「地番」を用意するとスムーズ)
- 📄 登記事項証明書や公図の写し(あれば)
- 📞 「この地番は造成宅地防災区域に指定されていますか?」とひと言確認
重要な落とし穴があります。 福岡市・大阪市など、そもそも区域内に指定がない自治体も多数存在します。 「うちの担当エリアは大都市だから指定はないだろう」という先入観はNGです。調べた結果「区域外」なら問題ありません。ただし「調べていない」は許されません。厳しいところですね。city.fukuoka+1
主要自治体別の調べ方をまとめると以下のとおりです。
参考)造成宅地防災区域の調べ方と全国自治体ごとの指定状況一覧と所有…
| 地域 | 公開形式 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 東京都 | デジタルハザードマップ | 区市町村ごとに色分け・擁壁情報あり |
| 埼玉県 | 土砂災害・造成宅地防災区域WebMAP | 地番入力で即時検索可能 |
| 福岡県 | 指定状況一覧PDF | 市区町村別で詳細確認 |
| 大阪府 | 防災情報地図サービス | 住所入力・マップ確認に対応 |
| 京都府 | 府公式サイト一覧 | 市町村ごとのPDF/マップ |
参考:京都府「造成宅地防災区域」
各指定区域の一覧と位置図を確認する際の参考になります。
造成宅地防災区域の調べ方で見落とされがちな盛土規制法との関係
2023年5月26日に施行された盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)の改正により、造成宅地防災区域の運用がより厳格化されました。 旧法と新法では対象範囲が拡大されており、以前は規制外だった土地が今後指定される可能性があります。意外ですね。
旧来の「宅地造成等規制法」時代に確認して「区域外」だった物件でも、盛土規制法施行後に状況が変わっているケースがあります。 特に過去に大規模造成が行われた丘陵地や、昭和~平成初期の住宅団地エリアは要注意です。最新情報で再確認が条件です。
参考)盛土規制法とは? 主な規制内容と重要事項で説明すべき項目を解…
新法で強化されたポイントは以下のとおりです。
- ✅ 既設の造成宅地まで指定対象に拡大
- ✅ 指定基準が明確化(地形・土質・過去の災害履歴を詳細調査)
- ✅ 行政による定期的な実地調査・改善命令の実施が強化
- ✅ 自治体ごとの情報公開・住民説明の推進
参考:国土交通省「重要事項説明における各法令に基づく制限等についての概要一覧」
不動産業:重要事項説明における各法令に基づく制限等についての…
重要事項説明で確認すべき法令制限の全体像を把握できます。不動産実務者の必携資料です。
造成宅地防災区域の調べ方と重要事項説明書への正確な記載方法
調べた結果を重説に正確に反映することが、不動産業従事者の実務上の責務です。 重要事項説明書には「当該宅地建物が造成宅地防災区域内か否か」の項目があり、「内」または「外」にチェックを入れます。つまり「調べた上で記載する」が原則です。
区域内と判明した場合、チェックを入れるだけでは不十分です。 以下の内容も合わせて説明する義務があります。
- 🔴 区域内であることの明示
- 🔴 擁壁の設置または改造義務があること(盛土規制法 第20条)
- 🔴 都道府県知事による勧告・改善命令の可能性
- 🔴 擁壁設置費用の目安(数百万円~数千万円以上になることがある)
- 🔴 行政指導履歴がある場合はその内容
説明漏れが発生した場合のリスクは深刻です。 説明義務違反として宅建業法上の処分対象になる可能性があるうえ、買主から損害賠償を請求されるケースも実際に起きています。これは使えない知識ではなく、絶対に知っておくべき情報です。
重説の記載文例(区域内の場合)は次のとおりです。
「本物件は造成宅地防災区域内に位置しています。造成宅地防災区域内の造成宅地の所有者等は、宅地造成に伴う災害が生じないよう、擁壁等の設置または改造その他必要な措置を講ずる義務があります。また、都道府県知事は必要に応じて勧告または改善命令を行う場合があります。」
参考:LIFULL HOME’S「重説時の水害リスク説明義務化と造成宅地防災区域」
重要事項説明における防災区域・水害リスクの説明範囲と実務対応を解説しています。
造成宅地防災区域の調べ方で独自に押さえたい「指定されていない土地のリスク」
ここが多くの不動産業者が見落としているポイントです。「造成宅地防災区域外だから安全」と判断するのは早計です。 区域外でも、過去に大規模な盛土が行われた土地は同等のリスクが潜在していることがあります。
大切なのは、造成宅地防災区域の有無に加えて、以下の観点も並行してチェックすることです。
- 🗺️ 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)・特別警戒区域(レッドゾーン)の有無:土砂災害防止法に基づく別の制度で、急傾斜地や谷合い付近では重複指定も多い
- 🏔️ 大規模盛土造成地マップの確認:国土交通省が公開している「大規模盛土造成地マップ」で、昭和~平成期に造成された大規模団地などのリスクが可視化されている
- 🌊 ハザードマップ(浸水・土砂)との照合:自治体のハザードマップで複数のリスクを一度に確認できる
- 🧱 擁壁の現状確認:現地でひび割れ・傾き・水染みがないかを目視確認する
「区域外だから大丈夫」ではなく、「区域外であっても関連リスクを確認した」という姿勢が重要ですね。 特に築年数の古い宅地では、建築確認済みの擁壁でも老朽化により安全率が低下しているケースがあり、取引後に大規模な補修費用が発生した事例も報告されています。
参考)その地名、実は「災害のサイン」かも! 不動産投資で後悔しない…
参考:国土交通省「大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドライン」関連情報
不動産業:重要事項説明における各法令に基づく制限等についての…
実務では、不動産取引前のリスク確認ツールとして自治体の「大規模盛土造成地マップ」を活用するのが有効です。 国土交通省の都市局のサイトから各都道府県のマップへのリンクを辿れるため、対象物件の住所で検索するだけで数分以内にリスク概要が把握できます。購入検討者へのヒアリング時に「盛土リスクの説明をしたか」という記録を残しておくことも、業者としてのリスク管理につながります。