建物滅失登記の費用相場と依頼先の正しい選び方
滅失登記を司法書士に頼んだら、断られて余計な時間を1週間ロスした事例があります。
建物滅失登記の費用相場:自分でやる場合と土地家屋調査士に依頼する場合
建物滅失登記の費用は、手続き方法によって大きく2つに分かれます。自分で法務局に申請する場合、必要書類の取得費用のみで済みます。具体的には登記事項証明書(600円程度)、住民票(300円程度)、印鑑証明書(300円程度)などで、合計1,000〜3,000円程度が目安です。
参考)滅失登記費用の相場はいくら?自分でやる方法や依頼先も解説
つまり、書類代だけが費用のすべてです。
一方、土地家屋調査士に依頼する場合の費用相場は4万〜5万円程度です。 土地家屋調査士は、資料調査・現地調査・申請書や調査報告書の作成など、複数の工程を代行してくれます。 1棟か複数棟かによって手間も変わるため、実費も含めた目安は「3万〜6万円程度」と幅をもたせておくほうが現実的でしょう。en-groups+2
地域別の費用相場を見ると、以下のような違いがあります。
| 地域 | 費用相場(土地家屋調査士依頼) |
|---|---|
| 北海道 | 約4万4,610円 |
| 東北 | 約4万4,588円 |
| 関東 | 約4万7,872円 |
| 中部 | 約4万9,240円 |
| 近畿 | 約4万8,735円 |
関東・近畿は他地域よりやや高め、東北・北海道は低めという傾向があります。同じ「5万円前後」でも地域で数千円単位の差があるので、複数業者に見積もりを取ることで適正価格かどうかを確認しておきましょう。
建物滅失登記費用が追加でかかるイレギュラーなケース
滅失登記の費用は一律ではありません。建物の状況によって、追加費用が発生するケースが複数あります。
参考)建物滅失登記の費用っていくらなの?依頼先や費用相場について解…
| ケース | 追加費用の目安 |
|---|---|
| 相続発生時の戸籍調査が必要な場合 | 3〜5万円程度 |
| 分合筆による所在変更がある場合 | 1〜2万円程度 |
| 広大な借地上の建物の場合 | 1〜2万円程度 |
| 抵当権が残存している場合 | 数万円程度 |
| 解体証明書がない場合 | 数万円程度 |
| 登記上の住所が変更されている場合 | 1〜2万円程度 |
「解体証明書がない」は珍しいケースではありません。解体業者が廃業していたり、古い建物で証明書が存在しないケースがあります。 この場合、上申書(印鑑証明書付き)の作成が必要になり、手間も費用も増えます。
参考)滅失登記の費用相場は?自分で提出すれば1100円で可能?
意外なのが「抵当権残存」の問題です。
抵当権が設定されたまま解体しても、抵当権は登記簿から自動的に消えません。別途、抵当権抹消の手続きを行う必要があるため、数万円単位で費用が積み上がるケースがあります。不動産業従事者として、解体前に抵当権の有無を必ず確認することが基本です。
建物滅失登記を自分でやる手順と必要書類
自分で滅失登記を行う場合の流れは、おおよそ以下の手順になります。
参考)建物滅失登記を怠ると10万円以下の罰金が発生|申請方法・必要…
- 登記事項証明書などの資料を法務局で取得する(約600円)
- 現地で対象建物が登記上の建物かどうかを確認する
- 解体業者から建物滅失証明書(取壊し証明書)を受け取る
- 滅失登記申請書を作成する(法務局のWebサイトで雛形をダウンロード可)
- 案内図・写真など添付書類を準備する
- 管轄の法務局に申請書類を提出する
- 完了後、登記完了証を受け取る
法務局への提出から完了までの日数は、おおよそ1週間が目安です。 申請に不備がある場合は、完了予定日が繰り延べになります。
これが基本の流れです。
不動産業に携わっている方でも「書類に不備があって差し戻された」という経験談は少なくありません。特に申請書の記載ミスや添付書類の漏れが多いので、法務局の相談窓口を事前に活用することが時間短縮につながります。自分でやる場合のコストは低くても、交通費やコピー代などの実費も忘れずに計算しておきましょう。
参考:法務局での申請書類の書式・雛形は下記から確認できます。
建物滅失登記を怠ったときの具体的なデメリットと罰則
放置は危険です。
解体後1ヶ月以内に申請しなかった場合、不動産登記法第164条により10万円以下の過料が科される可能性があります。 これは罰金(刑事罰)ではなく「過料(行政上の制裁)」ですが、前科にはならないものの、金銭的なダメージは無視できません。
参考)建物滅失登記とは?概要や申請期限&申請者、必要書類、怠った場…
費用面の被害だけでなく、実務上のトラブルも深刻です。
参考)滅失登記をしないとどうなる?手順や取り壊し証明書がない対策も…
- 🏷️ 固定資産税が課税され続ける:建物が存在しない状態でも、登記簿上は建物があるため課税対象になる
- 🚫 土地が売却できない:登記簿上に建物が残っていると、基本的に土地の売買ができない
- 🏗️ 新築の建築許可が下りない:既存の建物が登記上存在しているため、新たな建築許可が下りないケースがある
- 📋 相続手続きが複雑になる:所有者が亡くなると必要書類が増え、滅失登記が困難になる
特に固定資産税の問題は「見逃しやすい損失」です。
固定資産税の課税基準日は毎年1月1日です。 解体後に滅失登記を済ませていれば翌年から建物分の税金がなくなりますが、放置すると翌年以降も課税され続けます。年間数万円規模の無駄な税金を払い続けることになるため、解体完了後はすぐに手続きを進めるのが鉄則です。
参考:滅失登記をしないリスクの詳細解説はこちら
AlbaLink不動産コラム|滅失登記をしないとどうなる?手順や証明書がない場合の対処法
土地家屋調査士への依頼が向いているケースと業者の探し方
自分でやるか、専門家に任せるかの判断基準は「状況の複雑さ」です。
以下のような状況では、土地家屋調査士への依頼を強くおすすめします。
- 📂 相続が発生しており、所有者が死亡している
- 🔒 抵当権が残存している
- 📄 解体証明書が手元にない(業者が廃業しているなど)
- 🗺️ 登記上の所在・住所が現在と異なる
- 🏘️ 複数棟を同時に滅失登記する必要がある
これは専門家案件です。
なお、重要な注意点として「司法書士には滅失登記を依頼できません」。 滅失登記は建物の権利に関する登記ではなく「表題登記(表示登記)」に分類されるため、代理申請できる専門家は土地家屋調査士のみです。不動産の仕事をしていると司法書士に相談する機会も多いですが、この点だけは混同しないよう注意が必要です。
参考)滅失登記は誰がやる?土地家屋調査士、司法書士へ依頼は可能? …
土地家屋調査士を探す際は、日本土地家屋調査士会連合会の公式サイトから地域別の会員検索ができます。 複数に相見積もりを取ることで、数千円〜1万円程度のコスト差を把握できます。
参考:土地家屋調査士の役割と費用について詳しく解説された記事はこちら
エングループ|建物滅失登記の費用とは?依頼先や費用相場を土地家屋調査士が解説
不動産業従事者が見落としがちな滅失登記の盲点:固定資産税との連動タイミング
ここはあまり語られないポイントです。
滅失登記を完了すると、法務局から管轄市区町村の固定資産税課に通知が届きます。 しかしこの通知のタイミングと、実際に固定資産税の課税が止まるタイミングには「ズレ」が生じることがあります。
固定資産税は「毎年1月1日時点の登記情報」を基準に課税されます。 たとえば12月28日に解体が完了し、翌年1月10日に滅失登記を申請した場合、申請は1月1日より後になります。
参考)建物滅失後は滅失登記が必須!費用・流れ・依頼先を徹底解説
この場合、その年の固定資産税は建物分も含めて課税される可能性があります。
つまり年末に解体が完了した物件は、翌年の固定資産税に注意が必要です。年をまたいで登記が遅れると、約12ヶ月分の余分な固定資産税を払うリスクがあります。不動産業に従事していると、解体工事の完了報告だけで満足してしまいがちですが、「滅失登記の完了日=1月1日以前か以後か」を確認する習慣が、顧客へのより的確なアドバイスにつながります。
解体完了が年末に近い場合は、土地家屋調査士に即日依頼できるよう事前に候補をリストアップしておくことが現実的な対策です。年末年始は法務局も休業するため、スケジュール管理が非常に重要になります。
参考:固定資産税と建物滅失登記の関係について詳しく解説されている記事はこちら
解体エージェント|【プロが教える】解体工事後の建物滅失登記と固定資産税

図解 実務で迷う 建物表題登記のポイント-土地家屋調査士の確認と登記官の判断-
