遺留分侵害額請求の時効・起算点と不動産対応

遺留分侵害額請求の時効・起算点を正しく理解する

相続の開始を知っただけでは、時効の1年はまだ始まっていません。

⚖️ 遺留分侵害額請求の時効・起算点 3つのポイント
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時効は「2つの条件」が揃って初めてカウント開始

「相続が開始したこと」と「遺留分を侵害する贈与・遺贈があったこと」の両方を知った時から1年が時効期間。片方だけ知っていても起算点にはなりません。

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相続開始から10年は「除斥期間」で絶対的な期限

遺留分侵害を知らなくても、被相続人の死亡から10年が経過すると請求権は完全に消滅。この除斥期間は時効と異なり、止める手段がほぼありません。

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不動産評価額の争いが時効トラブルを長期化させる

不動産が遺産に含まれる場合、評価額が一義的に決まらないため交渉が長引きがち。時効が迫る中で交渉を続けるリスクがあり、早期に内容証明郵便を送ることが最重要です。

遺留分侵害額請求の時効における起算点の基本ルール

 

遺留分侵害額請求権の時効は、民法1048条に規定されており、大きく2つの期間制限が設けられています。これが混同されやすく、不動産業に関わる実務でもトラブルの原因になります。

まず1つ目は、「遺留分権利者が相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年」という消滅時効です。 ここで重要なのは「知った時」の解釈で、起算点は❶相続が開始したこと(被相続人の死亡)と❷遺留分が侵害されていること、この両方を知った日が基準になります。 片方だけ知っている状態では1年のカウントは始まりません。これが基本です。

参考)遺留分侵害額請求の時効は1年or10年!時効を止める対策紹介

2つ目は、相続開始の時から10年という除斥期間です。 こちらは遺留分侵害を知らなかった場合にも適用されます。つまり、遺留分侵害の事実を全く知らないまま10年が経過すると、請求権は完全に消滅します。legalplus+1

なお、遺留分侵害額請求権の対象は2019年7月1日以降に開始した相続(被相続人の死亡日が同日以降)であり、それ以前の相続は旧法の「遺留分減殺請求制度」が適用されます。 ただし時効期間自体は改正前後で変わりありません。つまり制度は変わっても、期間は同じです。

参考)遺留分侵害額請求権の時効はいつまでですか?

種類 起算点 期間 ストップ可否
消滅時効 相続開始+遺留分侵害の両方を知った時 1年 可能(内容証明等)
除斥期間 相続が開始した時(被相続人の死亡日) 10年 ほぼ不可
請求後の時効 遺留分侵害額請求を行った時 5年 可能

以下のページでは、時効の起算点に関する判例と考え方が詳しく解説されています。

遺留分侵害額請求の時効は1年or10年!時効を止める対策紹介(LegalPro)

遺留分侵害額請求の「知った時」の起算点・実務上の判断基準

「知った時」という言葉は一見シンプルに見えます。しかし実務では、その認定が非常に難しいケースが多くあります。

典型的な問題は、遺言書の存在を知った日=起算点になるとは限らない点です。 遺言書を見たとしても、そこに具体的な財産の内訳や生前贈与の詳細が記載されていなければ、「遺留分が侵害されている」と認識できたとは言えない場合があります。知っていたかどうかが条件です。

参考)遺留分の時効はいつから何年間ですか?|遺留分に強い弁護士なら…

たとえば、父が死亡してすぐに遺言書を見せられたが、そこには「全財産を長男に相続させる」とあっただけで、被相続人が長男に対して過去10年間に多額の生前贈与をしていた事実を後から知ったケースを考えてみましょう。この場合、生前贈与の事実を知った日が起算点として認定される可能性があります。

参考)遺留分侵害額請求権の時効は10年?知らないと損する法律知識|…

相続人への生前贈与については、相続開始前10年以内の特別受益が遺留分計算の対象です。 相続人以外への贈与は1年以内が対象になります。不動産業者として相続案件に関わる際、こうした生前贈与の有無に注意することが重要です。これは見落としがちな点ですね。

参考)遺留分侵害額請求の時効は1年と10年!期間内にやるべきことと…

参考:起算点の解釈・「知った時」の判断について詳しい解説はこちら

遺留分侵害額請求の1年の期間制限「知った時」の意味(横浜りんどう相続)

遺留分侵害額請求の時効を止める方法と内容証明の効果

時効が迫っているとき、最も確実で速い手段が内容証明郵便による意思表示です。

参考)遺留分侵害額請求に期限はある?時効を止める方法も詳しく解説

重要なのは、金額が確定していなくても「遺留分侵害額の請求をする」という意思さえ伝えれば、時効はストップするという点です。 不動産評価額の算定が終わっていないケースでも、まず内容証明を送ることが先決です。厳しいところですね。meigi-henkou+1

具体的には、内容証明郵便に以下の内容を記載します。

  • 遺留分侵害額の請求をする旨の意思表示
  • 侵害の対象となる財産や金額(判る範囲でよい)
  • 請求する相手方の氏名・住所

ここで注意が必要なのは、内容証明を送っただけで終わりにしてはいけない点です。 内容証明による時効の中断(正確には「完成猶予」)は6か月間の猶予を与えるものであり、その間に調停や訴訟など法的手続きへ移行しないと、最終的な解決にはなりません。つまり内容証明はゴールではなく入口です。

内容証明を送った後に遺留分侵害額の協議・調停・訴訟を経て解決した場合、請求後の新たな消滅時効は5年でカウントされます。 この点も見落とされがちなので把握しておきましょう。

遺留分侵害額はいつまで請求できる?時効を止める方法(ALG名古屋)

不動産が絡む相続で起算点の認定が複雑になるケース

不動産が遺産に含まれる相続では、起算点の認定が特に複雑になります。これは不動産業に関わる方が最も注意すべき場面です。

不動産の評価額は市場価格・路線価・固定資産税評価額など算定方法が複数あり、評価額が一義的に決まらないため当事者間で最も激しい対立点になりやすいという特性があります。 仮に相続財産が1億円の不動産で、相続人への10年前の生前贈与が2,000万円、相続債務が1,000万円あった場合、遺留分計算の基礎財産は1億1,000万円となり、その計算に使う不動産評価額が数百万円単位でずれることもあります。koyano-cpa.gr+1

こうした評価の争いに時間を取られている間にも、除斥期間の10年は止まらずに進み続けます。 そのため不動産案件では、正確な評価が出る前であっても速やかに内容証明を発送し、時効ストップと評価交渉を並行して進めることが鉄則です。評価交渉は後でも間に合います。

参考)遺留分侵害額請求の期限と時効を止める方法について

また、不動産の遺留分侵害額請求が認められた場合、支払いは原則として金銭での支払いになります(2019年の民法改正後)。 旧法では現物返還もあり得ましたが、改正後は金銭債権化されたため、不動産を手放すことなく金銭で解決できるようになりました。不動産取引を行う実務家にとってはこれは使えそうです。

参考)遺留分を侵害された!遺留分侵害額請求の基礎知識と相続トラブル…

不動産が絡む遺留分侵害額請求権について(遺産分割専門サイト)

遺留分侵害額請求と相続税申告・修正申告の関係(見落とし注意)

遺留分侵害額請求が成立した後、見落とされがちな重要な手続きがあります。それが相続税の修正申告または更正の請求です。

遺留分侵害額請求によって財産が移動した場合、受け取った側(請求者)は追加で相続税を払う「修正申告」が必要になります。 一方、支払った側(受遺者・受贈者)は相続税の「更正の請求」によって還付を受けられる可能性があります。更正の請求には期限があります。

この修正申告・更正の請求のタイミングは「遺留分侵害額請求が確定した日の翌日から4か月以内」とされており、非常にタイトなスケジュールです。 不動産仲介や売買を行う業者が相続案件に関与している場合、顧客に対してこの税務的な後処理についても情報提供することが、信頼関係の構築につながります。これが顧客に大きな差をつける一手です。

特に不動産を含む遺産では、売却タイミングや評価額によって相続税額が数十万円単位で変動することもあります。遺留分の解決と税務手続きはセットで考えることが原則です。顧客の損失を防ぐためにも、税理士や弁護士への早期連携を勧めることをお薦めします。

  • ⚠️ 正の請求:期限は「確定した日の翌日から4か月以内」
  • ⚠️ 修正申告:速やかに行わないと延滞税・過少申告加算税のリスク
  • 💡 不動産売却を伴う場合は譲渡所得税の計算も必要

遺留分を侵害された!遺留分侵害額請求の基礎知識と相続トラブル対応(名義変更.jp)

侵害額を少なくするための 遺留分対策完全マニュアル